三度目の侍 作:最強系妄想おじさん
※本話は二話連続投稿の二話目です。未読の方は前話からお読みください。
焚き火が揺れている。
酒の匂い。肉の焼ける音。笑い声が夜に溶けていく。ローラの海賊団も、影を取り戻した海賊たちも、入り乱れて騒いでいた。島全体が、解放の熱に包まれている。
ルフィが肉をかじりながら笑う。ウソップが大声で何かを語り、チョッパーが跳ね、フランキーが騒ぐ。ナミが呆れ、ロビンが静かに笑い、サンジが皿を配り、ゾロが酒をあおる。
その中心で、ブルックがバイオリンを構えていた。
弓が弦に触れ、音が広がる。軽やかな旋律に、海賊たちが手を叩き、声を上げる。宴の空気が、そこに集まる。
リューマは少し外れた場所にいた。
混ざらない。だが背を向けてもいない。音を聞き、人の声を聞き、生きている者たちの空気を、ただ受けている。
ブルックの音が、ふと変わる。
ゆっくりとした旋律。喧騒の中に、ほんのわずかな静けさが差し込む。
そして。
演奏を続けたまま、ブルックが口を開いた。
「……ルフィさん」
音の合間。静かな声。
「私も、仲間に入ってよろしいですか?」
演奏は止まらない。だが、手がわずかに震えている。
ルフィは即答だった。
「ああ!いいぞ!」
迷いも、間もない。
ナミが叫ぶ。
「軽っ!?」
ウソップが突っ込む。
「今決めるのかよ!?」
チョッパーが跳ねる。
「やったぁ!!」
フランキーが笑う。
「スーパー歓迎だ!」
サンジが煙を吐く。
「……船に音楽はあった方がいい。退屈は嫌いだ」
ロビンが微笑む。
「賑やかになるわね」
ゾロは何も言わない。ただ酒を飲む。杯の向こうから、ほんの一瞬だけブルックを見る。それだけ。
ブルックの演奏が、少しだけ揺れる。それでも止めない。
「ヨホホ……ありがとうございます……!」
歓声が広がる。拍手。笑い声。歌声。
“新しい仲間”が、自然にそこにいた。
その光景を、リューマは黙って見ていた。
理屈はない。ただ「いいぞ」の一言で、人が増える。打算も秤もない。強いからでも、役に立つからでもない。面白いから。気に入ったから。それだけで決まる。
一度目の人生には、そんな選択肢はなかった。選ばれる側にすら立てなかった。
二度目の人生では、剣だけだった。守るために振るい、斬るために振るい、剣と共に終わった。
だが今。
酒の匂い。火の熱。笑い声。無防備な背中が、そこにある。
あの男は迷わない。だから人が集まる。
(……強い男だ)
口が、自然に動いた。
「……麦わら」
ルフィが振り向く。
「ん?」
リューマは静かに言う。
「しばらく、船に乗せてくれ」
理由は言わない。説明もしない。ただ、それだけ。
ルフィは一瞬だけ目を丸くする。
そして、にっと笑った。
「いいぞ!」
また、即答だった。
ナミが頭を抱える。
「ちょっと待って!?また!?」
ウソップが叫ぶ。
「即決すぎるだろ!!」
チョッパーが跳ねる。
「侍だ!!」
フランキーが笑う。
「スーパー賑やかだな!」
サンジが煙を吐く。
「面倒は起こすなよ」
ロビンが静かに頷く。
「面白くなりそうね」
ゾロは何も言わない。ただ酒を飲む。そしてもう一度だけ、リューマを見る。その視線だけが、残る。
焚き火が揺れる。酒が回る。音が続く。
夜が、少しずつほどけていく。
侍は杯を置いた。
三度目の人生。
今度は――風の中へ。