三度目の侍   作:最強系妄想おじさん

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※本話は二話連続投稿の二話目です。未読の方は前話からお読みください。


第七話「宴の中の風」

 

 

 

 

 

焚き火が揺れている。

 

酒の匂い。肉の焼ける音。笑い声が夜に溶けていく。ローラの海賊団も、影を取り戻した海賊たちも、入り乱れて騒いでいた。島全体が、解放の熱に包まれている。

 

ルフィが肉をかじりながら笑う。ウソップが大声で何かを語り、チョッパーが跳ね、フランキーが騒ぐ。ナミが呆れ、ロビンが静かに笑い、サンジが皿を配り、ゾロが酒をあおる。

 

その中心で、ブルックがバイオリンを構えていた。

 

弓が弦に触れ、音が広がる。軽やかな旋律に、海賊たちが手を叩き、声を上げる。宴の空気が、そこに集まる。

 

リューマは少し外れた場所にいた。

 

混ざらない。だが背を向けてもいない。音を聞き、人の声を聞き、生きている者たちの空気を、ただ受けている。

 

ブルックの音が、ふと変わる。

 

ゆっくりとした旋律。喧騒の中に、ほんのわずかな静けさが差し込む。

 

そして。

 

演奏を続けたまま、ブルックが口を開いた。

 

「……ルフィさん」

 

音の合間。静かな声。

 

「私も、仲間に入ってよろしいですか?」

 

演奏は止まらない。だが、手がわずかに震えている。

 

ルフィは即答だった。

 

「ああ!いいぞ!」

 

迷いも、間もない。

 

ナミが叫ぶ。

 

「軽っ!?」

 

ウソップが突っ込む。

 

「今決めるのかよ!?」

 

チョッパーが跳ねる。

 

「やったぁ!!」

 

フランキーが笑う。

 

「スーパー歓迎だ!」

 

サンジが煙を吐く。

 

「……船に音楽はあった方がいい。退屈は嫌いだ」

 

ロビンが微笑む。

 

「賑やかになるわね」

 

ゾロは何も言わない。ただ酒を飲む。杯の向こうから、ほんの一瞬だけブルックを見る。それだけ。

 

ブルックの演奏が、少しだけ揺れる。それでも止めない。

 

「ヨホホ……ありがとうございます……!」

 

歓声が広がる。拍手。笑い声。歌声。

 

“新しい仲間”が、自然にそこにいた。

 

その光景を、リューマは黙って見ていた。

 

理屈はない。ただ「いいぞ」の一言で、人が増える。打算も秤もない。強いからでも、役に立つからでもない。面白いから。気に入ったから。それだけで決まる。

 

一度目の人生には、そんな選択肢はなかった。選ばれる側にすら立てなかった。

 

二度目の人生では、剣だけだった。守るために振るい、斬るために振るい、剣と共に終わった。

 

だが今。

 

酒の匂い。火の熱。笑い声。無防備な背中が、そこにある。

 

あの男は迷わない。だから人が集まる。

 

(……強い男だ)

 

口が、自然に動いた。

 

「……麦わら」

 

ルフィが振り向く。

 

「ん?」

 

リューマは静かに言う。

 

「しばらく、船に乗せてくれ」

 

理由は言わない。説明もしない。ただ、それだけ。

 

ルフィは一瞬だけ目を丸くする。

 

そして、にっと笑った。

 

「いいぞ!」

 

また、即答だった。

 

ナミが頭を抱える。

 

「ちょっと待って!?また!?」

 

ウソップが叫ぶ。

 

「即決すぎるだろ!!」

 

チョッパーが跳ねる。

 

「侍だ!!」

 

フランキーが笑う。

 

「スーパー賑やかだな!」

 

サンジが煙を吐く。

 

「面倒は起こすなよ」

 

ロビンが静かに頷く。

 

「面白くなりそうね」

 

ゾロは何も言わない。ただ酒を飲む。そしてもう一度だけ、リューマを見る。その視線だけが、残る。

 

焚き火が揺れる。酒が回る。音が続く。

 

夜が、少しずつほどけていく。

 

侍は杯を置いた。

 

三度目の人生。

 

今度は――風の中へ。

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