三度目の侍 作:最強系妄想おじさん
今日は3話投稿です。
潮の匂い。波の音。木材の軋み。
甲板の上に、朝の光が落ちている。
スリラーバークを出航した船は、ゆっくりと進んでいた。
白い航跡が海に伸びる。
泡が弾け、潮が細かく甲板へ飛ぶ。
帆が風を孕み、低く唸る。
「腹減ったーー!!」
「さっき食っただろ!!」
「動いたら減るんだよ!!」
ナミが額に手を当てる。
ウソップが笑い、チョッパーが跳ねる。
フランキーが大声で笑う。
サンジがキッチンから顔を出す。
「お前らメシ出来たぞ」
ロビンが本を閉じる。
風に髪を揺らし、静かに海を眺めている。
ゾロは甲板の端で寝転がっていた。
酒瓶だけが手元にある。
その少し離れた場所。
リューマは、帆柱にもたれて立っていた。
海を見る。波の動き。風の匂い。人の声。
生きている者の世界。
(……騒がしい)
だが、不思議と嫌ではない。
ルフィが突然、柵に身を乗り出す。
「おーい海ィー!!」
ナミが怒鳴る。
「落ちるわよ!?」
「落ちねェよ!」
本気でそう思っている顔だった。
(……無防備だ)
ルフィが振り向く。
「お前、泳げんのか?」
「沈まぬ」
短く答える。
ウソップが吹き出す。
「いやそこ自慢するとこか!?」
チョッパーが目を丸くする。
「え、沈まないの!?すげぇ!!」
その瞬間、強い風が吹く。
チョッパーの帽子が飛ばされた。
「うわあああ!!」
ウソップが慌てて掴む。
「危ねェな!!」
「ありがとー!!」
フランキーが豪快に笑う。
「スーパー朝だなァ!」
甲板に笑いが広がる。
リューマは、わずかに口元を緩める。
甲板の端。
ゾロが酒瓶を傾ける。
一瞬だけ、視線が交わる。
何も言わない。
問いもしない。
だが、敵意はない。
それだけで十分だった。
その時。
風が変わる。
海面がきらめく。
ロビンが静かに言う。
「いい風ね」
ナミが頷く。
「しばらく荒れないわ」
ルフィが帆の方を見る。
「このまま真っ直ぐ行くぞー!」
「だから航路は私が決めるって言ってんでしょ!!」
また笑いが起きる。
波を割り、
白い泡を残し、
風を掴み、
帆を震わせ、
海を進む。
リューマは目を閉じる。
足裏に、揺れが伝わる。
不規則ではない。
だが一定でもない。
船が、呼吸しているようだった。
木材の軋み。
帆が風を受ける音。
人の笑い声。
(……騒がしい)
目を開ける。
甲板の向こうで、ルフィがまた怒鳴られている。
(……面倒な連中だ)
騒がしく、無防備で、無計画だ。
普通なら、距離を置く。
だが。
距離を置こうとは、思わなかった。
理由は、まだ分からない。
それでいい。
今日も、ただ静かに船は進む。