三度目の侍   作:最強系妄想おじさん

8 / 13

今日は3話投稿です。


第八話「海賊の朝」

 

 

 

潮の匂い。波の音。木材の軋み。

甲板の上に、朝の光が落ちている。

 

スリラーバークを出航した船は、ゆっくりと進んでいた。

 

白い航跡が海に伸びる。

泡が弾け、潮が細かく甲板へ飛ぶ。

帆が風を孕み、低く唸る。

 

「腹減ったーー!!」

「さっき食っただろ!!」

「動いたら減るんだよ!!」

 

ナミが額に手を当てる。

ウソップが笑い、チョッパーが跳ねる。

フランキーが大声で笑う。

 

サンジがキッチンから顔を出す。

「お前らメシ出来たぞ」

 

ロビンが本を閉じる。

風に髪を揺らし、静かに海を眺めている。

 

ゾロは甲板の端で寝転がっていた。

酒瓶だけが手元にある。

 

その少し離れた場所。

 

リューマは、帆柱にもたれて立っていた。

 

海を見る。波の動き。風の匂い。人の声。

生きている者の世界。

 

(……騒がしい)

 

だが、不思議と嫌ではない。

 

ルフィが突然、柵に身を乗り出す。

 

「おーい海ィー!!」

 

ナミが怒鳴る。

「落ちるわよ!?」

 

「落ちねェよ!」

 

本気でそう思っている顔だった。

 

(……無防備だ)

 

ルフィが振り向く。

「お前、泳げんのか?」

 

「沈まぬ」

 

短く答える。

 

ウソップが吹き出す。

「いやそこ自慢するとこか!?」

 

チョッパーが目を丸くする。

「え、沈まないの!?すげぇ!!」

 

その瞬間、強い風が吹く。

 

チョッパーの帽子が飛ばされた。

 

「うわあああ!!」

 

ウソップが慌てて掴む。

「危ねェな!!」

 

「ありがとー!!」

 

フランキーが豪快に笑う。

「スーパー朝だなァ!」

 

甲板に笑いが広がる。

 

リューマは、わずかに口元を緩める。

 

甲板の端。

 

ゾロが酒瓶を傾ける。

 

一瞬だけ、視線が交わる。

 

何も言わない。

問いもしない。

 

だが、敵意はない。

 

それだけで十分だった。

 

その時。

 

風が変わる。

海面がきらめく。

 

ロビンが静かに言う。

「いい風ね」

 

ナミが頷く。

「しばらく荒れないわ」

 

ルフィが帆の方を見る。

「このまま真っ直ぐ行くぞー!」

 

「だから航路は私が決めるって言ってんでしょ!!」

 

また笑いが起きる。

 

波を割り、

白い泡を残し、

風を掴み、

帆を震わせ、

海を進む。

 

リューマは目を閉じる。

 

足裏に、揺れが伝わる。

不規則ではない。

だが一定でもない。

 

船が、呼吸しているようだった。

 

木材の軋み。

帆が風を受ける音。

人の笑い声。

 

(……騒がしい)

 

目を開ける。

 

甲板の向こうで、ルフィがまた怒鳴られている。

 

(……面倒な連中だ)

 

騒がしく、無防備で、無計画だ。

普通なら、距離を置く。

 

だが。

 

距離を置こうとは、思わなかった。

 

理由は、まだ分からない。

それでいい。

 

今日も、ただ静かに船は進む。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。