TS爆乳暴食悪徳サイコシスターの勘違い救国記 作:ちんぽ良い肉
私、ボルマンという男の脳内に構築された思考回路、およびこの世の価値基準における絶対的な優先度というものは、極めてシンプルな階層構造によって成り立っております。
まず最上位に君臨するのは、私の手足となり、私の為にその尊い命すらも投げ出してくれる『愛すべき部下たち』。
次いで、私めに莫大な利益と富をもたらしてくださる『大切なお客様』。
そして三番目に位置するのが『私自身』。……ええ、それだけです。
私の世界において価値が存在するのは、この三つの階層のみ。
そこから果てしなく、それこそ天文学的な隔絶と絶対的な次元の壁を挟んだ最下層、いや、地獄の底の泥濘にすら劣る場所に位置するのが、その他の『有象無象の音の出るだけの生ゴミ』でございます。
ですから、私と私の部下、そして私のお客様以外が、この理不尽な世界でどれほど凄惨に殺されようが、飢えて泥水をすすろうが、理不尽に搾取されて絶望の淵で首を括ろうが、私めには一切、一ミリたりとも知ったことではないのでございます。ゴミが焼却炉で燃やされるのを見て悲しむ人間がおりましょうか? いえ、おりません。それと同じことです。
さて、その確固たる信念を持つ私めが、先日あの森でどれほどの怒りと屈辱に打ち震えていたか。
そもそも、私めがあのような知能が猿以下の薄汚い盗賊のウジ虫ども――知性も尊厳も母親の胎内に置き忘れてきたような下等生物、息をするだけで大気が穢れる歩く汚物、社会の底辺にこびりついた排泄物のごとき連中――ごときに後れを取るはずなど、万に一つもなかったのです。万全の私の護衛達であれば、あんな輩は欠伸をしながら片手で皆殺しにし、その生首を街道沿いに並べて芸術的なオブジェにしてやれたはずでした。
しかし……同業他社、あのクソ忌々しいゴミ溜め商会の回し者が我が部隊にスパイとして潜り込んでおり、こともあろうに内側から護衛部隊を半壊させやがったのです。あろうことか、私の命より大切な可愛い部下たちを凶刃で貫き、下手人は尻尾を巻いて逃げ失せました。あの時の腹の底から煮えくり返るような怒り、絶望、そして理不尽な暴力に対する激烈な殺意……私めは絶対に、絶対にあの商会と下手人を許しません。必ず寿命を迎えるまで一秒の狂いもなく苦痛を与え続ける地獄を用意してやると誓いました。
そんな満身創痍、文字通り死の淵に立たされていた私めの前に現れたのが、あの方……グラ様でございました。
商人としての冷徹な観察眼で申し上げましょう。乱入してきた当初、あのお方の強さはせいぜい『下級下位』の冒険者程度のものでした。いくら奇襲の形をとったとはいえ、万全の状態の私めと比べれば、ギリギリ私めの方が強いかという程度の、取るに足らない小娘の実力しか備わっていなかったのです。
しかし、あの方は異常でした。文字通り、常識の枠を完全に破壊するバケモノだったのです。
あの方は、あろうことか転がっていた盗賊どもの死肉を、嬉々として、それこそ王侯貴族が極上のスイーツでも味わうかのように貪り食い始めたではありませんか。ガツガツバクバクと狂ったような咀嚼音を響かせ、血と内臓を喉の奥へ流し込む。そして……驚くべきことに、その下劣極まる狂気の食事を続けるうちに、あの方の放つ気配が、筋力が、傷の再生力が、みるみるうちに膨れ上がっていったのです!
盗賊の部下どもを数名平らげた頃には、あの方の実力は完全に私めを凌駕し、あっという間に『下級中位』の領域へと足を踏み入れておりました。
食えば食うほど強くなる。そのような冗談のような、世界の法則を根底から覆す凶悪なスキルが存在するのでしょうか? なんと恐ろしく、そして……なんと底知れない『成長性を持つ駒』なのかと、私めは背筋が凍りつくような恐怖と同時に、商人としての熱い、熱すぎる興奮を禁じ得ませんでした。あの食欲が向かう先をコントロールできれば、いかなる商会すらも凌駕する絶対的な暴力になり得るからです。
しかし、あのグラ様という存在を、私めの完璧に整理された脳内ファイルにおいて、果たしてどこに分類すべきか。これが実に悩ましい大問題なのでございます。
グラ様は、間違いなく品性下劣で、性格は最悪中の最悪、倫理観などというものは母親の胎盤と一緒に下水に流してきたような生粋のサイコパスであり、街に放てば瞬く間に大惨事を引き起こすであろう『生ける反社会的害獣』でございます。本来ならば、関わることすら忌避すべき絶対的な災厄そのもの。
私の愛する部下にするには、あまりにも精神がクソすぎます。部下たちはもっと善良で、美しく、勤勉な、純粋な精神を持っていなければなりません。
かといって、あの方を『その他の有象無象のゴミ』のカテゴリに放り込むには……ああ、なんということでしょう。私めは、あの方と気が合いすぎるのです。
思い出しても思わず笑みが溢れ、頬が紅潮してしまいます。あの盗賊のボスを共に嬲り、悲鳴をBGMに語り合ったあの至福の時間。あの方が満面の笑みで腕を引きちぎり、私めが歓喜の声を上げながら目に塩酸を注ぎ込む。あの完璧な連携、あの美しい血のハーモニー! これほどまでに完璧なマリアージュを見せるとは誰が想像したでしょうか!
お互いに大口を開けて「ギャハハハ!」「ヒッヒッヒ!」と笑い合いながら、バカ命を徹底的に蹂躙する、あの甘美な快感。
彼女は間違いなく人食いのキチガイですが、不思議なことに、善良で真っ当で誠実な一介の商人であるこの私めと、恐ろしいほどに波長が合い、馬が合うのです。
まったく、グラ様は私の人生において初めて遭遇した、完全なる『謎のカテゴリ』に属する特異点です。
あの方がこれからこの迷宮都市キャッスルで、どれほどの人間を頭から食い殺し、どれほどの悲劇を巻き起こし、街の通りを真っ赤な血の海に沈めようとも、私めには一切関係のないこと。私と、私の大切な部下と、私のお客様さえ安全な場所で無事であれば、その他の有象無象のゴミどもが何万人、いや何十万人ミンチ肉に変わろうと、心の底から知ったことではございませんぞ
。
むしろ、グラ様という理不尽な劇薬が暴れ狂えば暴れ狂うほど、この腐敗して停滞した街の構造が破壊され、私めの商会に新たな莫大な利益の風が吹くやもしれません。
この清廉潔白で真っ当で善良な商人ボルマン、貴女様という極上の反社会的害獣が引き起こすであろうこの世の終わりのような地獄の喜劇を、最高の特等席で、ワインでも傾けながら最後まで拝見させていただきますぞ。
そう思っていると私の愛する部下が入ってきました
「ボルマン様! 大変です、店の前にスラム街の連中が……あの『穢民』どもが、徒党を組んで大量に押し寄せてきております!!」
血相を変えて報告に駆け込んできた部下の声に、私めは優雅に傾けていた紅茶のカップをソーサーに置き、深く、ひどく深く溜め息を吐き出しました。
スラム街の連中だと? あの、前世の罪を背負ったなどという教会の妄言はどうでもいいにせよ、文字通り泥水と排泄物をすすって生きている、知性も品性もゴキブリ以下の歩く汚物どもが、この美しく清潔な『クロック商会』の敷地を跨ごうとしているというのですか?
私めの完璧な脳内階層において、奴らは当然『私』でも『私の部下』でも『私のお客様』でもありません。つまり、存在しているだけで大気を汚染する音の出る生ゴミ、一秒でも早くまとめて巨大な焼却炉に放り込んで、灰一つ残さず焼き払うべき『有象無象の畜生共』でございます。
何の用かは知りませんが、暴動か、それとも炊き出しの要求か。どちらにせよ反吐が出る。店の前の美しい石畳に奴らの足跡が一つでもつけば、どれほど強力な酸で洗浄しなければならないか。
「……衛兵を呼んでください。まったく、ただでさえあの森での大損害の処理で忙しいというのに……」
その時部下は大信じられない言葉を口にしたのです。
「違います! 暴動でも物乞いでもありません! 奴ら……『金』を持っているんです! しかも、見たこともないような大量の、正真正銘の純金貨を……!!」
「…………は?」
スラムの畜生共が、純金貨を? メッキのおもちゃではなく?
私めはすぐさま身を翻し、商館の正面玄関へと早足で向かいました。重厚な扉を開け放つと、そこには確かに、泥とヘドロの臭いを漂わせたスラムの連中が、荷車を引いて群がっておりました。しかし、彼らの目は血走った暴徒のそれではなく、何か神聖な奇跡にでもすがるような、熱を帯びた必死な目をしていたのです。
そして、先頭に立つ屋台の親父と思しき薄汚れた男が、震える両手で私めに向かって差し出してきたもの。
それは、夕日に照らされて燦然と輝く、紛れもない『本物の金貨の山』でした。
その瞬間、私めの脳内で、カチリ、と絶対的なスイッチが切り替わりました。
スラムの畜生? 薄汚え有象無象? 歩くゴミ?
……何を馬鹿なことを。
「おおおおお……! これはこれは、ようこそお越しくださいました!! クロック商会へようこそ、大切なお客様ああああ!!」
私めは、泥だらけの男の手を両手でがっしりと握りしめ、商人の鑑のような、それはそれは美しく完璧な営業スマイルを満面に浮かべて、深々と九十度の最敬礼を決めました。
そう、金を持っている。私めの商会に利益をもたらそうとしている。ならば、彼らの身分が何であろうと、どれほど異臭を放っていようと関係ありません! 彼らは『有象無象』の最底辺から、私めの価値基準における第二位、神にも等しき『お客様』のカテゴリへと、光の速さで昇格を果たしたのです!
「さあさあ、どうぞ中へ!……と言いたいところですが、お召し物が少々汚れておられるようですので、こちらでご要件を伺いましょう! 私めが責任を持って、最高の商品をご用意させていただきますぞ!」
泥のついた金貨を一枚、また一枚と受け取りながら、私めの目はその刻印と重量を正確に弾き出していました。
……ん?
待て。この金貨の削れ方、この特有の重み。商人の目は誤魔化せません。これは、間違いありません。
(つい数時間前、私めがあの『生ける反社会的害獣』こと、グラ様に手渡した一〇〇〇万相当の現金そのものじゃないか!!)
心臓がドクンと跳ねました。どういうことだ? なぜ、あの食欲と狂気の化身に渡したはずの金が、スラムの連中の手に渡っている?
「ボルマンの旦那! 頼む、これだけの金があるんだ! まともなパンを、肉を、綺麗な水を売ってくれ! それから……『黒死の病』の特効薬を! 教会のぼったくりじゃない、あんたのところの真っ当な薬を売ってくれえ!!」
男が涙ながらに懇願してきます。
私めは、内心の凄まじい混乱を完璧な笑顔の下に隠し、深く頷きました。
「ええ、ええ、もちろんでございますとも! クロック商会は、お代を頂戴するすべてのお客様に対して、絶対の誠実をお約束しております。パンも肉も、そして特効薬も、適正価格で、最高の品質のものをご用意いたしましょう!」
私めの商売は、いついかなる時も『誠実』です。
相手がスラムのお客様だからといって、足元を見て腐った肉を売りつけたり、特効薬に偽物を混ぜて暴利を貪るような三流の真似は絶対にいたしません。頂いた代金に見合う、いや、それ以上の価値と満足を提供する。それがお客様に対する私の絶対のルールであり、美学なのです。
私めは直ちに部下たちに指示を飛ばし、倉庫から上質な塩漬け肉、焼きたての白パン、樽いっぱいの清水、そして貴重な企業ルートの特効薬を運び出させ、彼らの荷車に丁寧に積み込ませました。
「ありがとう……ありがとう、ボルマンの旦那! あんた、本当に誠実な商人だ! これで俺たちは、明日の……あの方へのご馳走を作れる……! 聖女様万歳!!」
「へ? せ、聖女様……?」
スラムの連中は、パンと肉と薬を抱きしめ、天を仰いでボロボロと涙を流しながら、聞いたこともないような狂信的なコールを叫び始めました。
『慈愛の聖女様』『我らを人間として扱ってくださった真の神様』。
そんな言葉を口走りながら、彼らは何度も私めに頭を下げ、歓喜のどんちゃん騒ぎを起こしながらスラムへと帰っていったのです。
嵐が去った後の商館の前。
私めは、一人、ぽつんと立ち尽くしておりました。
手元にあるのは、スラムの連中が置いていった革袋。中には、商品代金として支払われた金貨がぎっしりと詰まっています。
「…………どういう、ことだ?」
私めは、誰もいなくなった大通りで、革袋を抱えたまま宇宙猫のような顔になっておりました。
あの害獣……グラ様に護衛の報酬としてお渡しした、一〇〇〇万相当の金貨。それが、商品の仕入れ代金として、ほぼ全額、私めの手元に『帰ってきている』のです。商品という現物はかなり持っていかれましたが、利益を乗せた適正価格で売ったため、これだけ見れば黒字です
いや、金が戻ってきたことは最高に喜ばしい。商売としては大成功だ。
しかし、プロセスが全く理解できない。
あの方は、あの恐ろしいまでの飢餓感を満たすため、街中の美味いものを食い尽くす勢いでお金を受け取ったはず。
それがなぜ、スラム街に行き着いた?
百歩譲って、安飯を求めてスラムに突撃したとしよう。だとしても、なぜこれほどの大金がスラムのお客様の手に渡っているのだ? 相場より遥かに多いですし…あの方が『施し』をする? あの、死体の腕を笑いながら引きちぎり、ボスの眼球をチューチュー吸っていた、あの歩くサイコパス害獣が!?
『我らを人間として扱ってくださった慈愛の聖女様』
先ほどのスラムの男の言葉が脳裏に蘇ります。
まさか……いや、まさか。あの狂人グラ様が、スラムで何か慈悲深い奇跡でも起こしたとでも言うのか? 飢えた者にパンを与え、病める者を癒やしたとでも?
……あり得ない。絶対にあり得ない。あの方がもしスラムの病気のガキに近づいたとしたら、それは絶対に『病気で肉が柔らかくなっていそうだから味見しようとした』とか、そういう次元の猟奇的な理由のはずだ!
「…………グラ様」
私めは、手元の金貨の袋をぎゅっと握りしめ、顔を引き攣らせながら呟きました。
あのお方は、一体全体、スラムで何をやらかしたというのか。
食えば食うほど強くなる謎の特性。底なしの残虐性。そして今度は、なぜかスラムの底辺どもから『聖女』として狂信的に崇め奉られ、結果的に私めの商会に莫大な利益を(なぜか一周回って)もたらしている。
分からない。何もかもが異常すぎる。
私めの完璧な計算も、人間の悪意の底すらも知り尽くした商人としての経験も、あの『グラ様』という存在の前では、すべてが音を立てて崩れ去っていく。
「フ、フフフ……アッハッハッハッハッハッ!」
私めは、夕暮れの空に向かって、狂ったように笑い声を上げておりました。
最高だ。最高に恐ろしく、最高に意味が分からず、そして……最高に面白い!!
私の愛する部下でもなく、もちろん有象無象のゴミでもない。グラ様、貴女様はやはり、私めの人生に突然舞い降りた、唯一無二の劇薬にして、究極のイレギュラーだ!
「さあて、明日はどんな地獄……いや、どんな極上の喜劇を見せてくださるのでしょうなあ、我らが『聖女様』? フフフ、楽しみで夜も眠れそうにありませんぞ!」
私めは、手元に戻ってきた一〇〇〇万の金貨袋にうやうやしく口付けをし、まだ見ぬ明日の混沌に思いを馳せながら、足取りも軽く商館の中へと戻っていくのでした。商売は誠実に。そして、狂気には極上の特等席を。それが、私めボルマンの流儀でございますから。