先輩に裏切られ、最強になってしまったJKエクソシストちゃん。宿敵となった先輩と出会う   作:RJミラ

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苦しいけど、幸せでもある

 

 

 

 「まさか君がブヘェ!?」

 「すぐに拠点に戻るぞ。話はそれからだ」

 

 何か言おうとしていた吸血鬼は一撃で壁に叩きつけられて、動かなくなる。攻撃を雑に放った先輩は特に気に留めず、爽華を持ち上げた。

 

 普通の人間でも通れる通路を使って地上へ戻る。自身が怪我をしていなければ省けた手間にエクソシストとしての爽華は恥を感じる。

 

 「……どこへ?」

 「事前に取っておいたホテルだ。ここの近くにある」

 

 繁華街から少し外れた駅。駅前というのは人の往来が激しいため、滞在の為のホテルも複数ある。

 

 「怪我は治せるか?」

 「もうやってますし、自分で立てます。降ろしてください。恥ずかしいです」

 

 人前で抱っこされている爽華には多くの視線に晒されているため、頬がほのかに赤くなっている。傷をふさがっているため、ボロボロの衣服は猟奇的でなく、煽情的になってしまった。

 

 「……とりあえず休んでろ。俺は服を買ってくる」

 「ありがとうございます」

 

 ホテルの鍵を受け取り、さっさと部屋に入る。下水道で戦闘をしたことで汗をかいたため、シャワー室に入った。

 風呂を1時間以上楽しんでから出ると、脱衣所に綺麗な服が置かれている。部屋には先輩がいた。

 

 「お洋服ありがとうございます」

 「それよりも怪我は大丈夫か」

 「シャワーでも痛みはありませんでした」

 

 ホテルのベットは2つある。1室だけで2人眠れるようになっているが、チャックインの際に2つの部屋を取っている様子を見ていた。不慣れな物には適当である先輩の癖が生み出したものだと、弟子の爽華は理解していた。

 

 「あの吸血鬼はどうでした?」

 「偵察を放ったら何もなかった。逃げられたな」

 

 自身の救出がなければ仕留められたであろう敵の逃走に思わず眉をひそめる。

 

 「すみません」

 「痛い目は合わせた。しばらく動けないだろ」

 

 仕事の話は終わりとばかりに食事を用意する先輩。風呂に入っている時間で料理を作ってくれたのだろう。暖かい生姜焼きとお米は爽華が好きなものの1つだ。

 

 「覚えていたんですね」

 「当たり前だ。お前はいつも居残りになるからな」

 「その節はすみません」

 

 先輩と共に席に着く。あの日から1人で食べることが日常だった。料理も姉に任せていたため、総菜や弁当などで過ごした日も数えきれないほどある。故に、他人が作った手料理は見るだけでも楽しかった。

 

 「先輩……」

 「なんだ?」

 

 口が何を言いたいのかを爽華は自覚している。なぜ裏切ったのか、吸血鬼には家族を捨てるほどの魅力があったのか。

 吸血鬼に家族を殺され、エクソシストとして醜い部分を見続けてきた爽華にとって、目の前の男が吸血鬼になったことはまったく理解できないことだった。

 

 「……どうして吸血鬼になったんですか?」

 

 だからこそ、聞かなければならない。エクソシストとしてではない。弟子として、恋焦がれた者として、知りたいのだ。

 

 「……言いたくはないな」

 「なんでですか?」

 「……恥ずかしいからだな」

 

 少しずつと確信に近づいていく。本当に大事なことはまだ知ることはできない。だが、先輩が向き合おうとしていることは爽華には分かった。

 

 「悪い。まだ言えない」

 「またですか。いつまで待てばいいんですか?」

 「この仕事が終わったら。お前に絶対に話すよ」

 

 言質は取った。爽華がするべきことも定まった。元々やるべきだったことをやらなければならない物になっただけ。食事を終えた爽華は立ち上がった。

 

 「先輩。もう1つ約束してください」

 「なんだ?」

 「この仕事が終わったら、また一緒に暮らしましょう。私、家族と離れ離れになりたくないです」

 「分かったよ。絶対に守る」

 

 久しぶりに希望を抱いた。この希望を未来につなげたい。だからこそ、彼女は前を向いたのだ。

 

 「行ってきます」

 「いってらっしゃい」

 

 エクソシストが持つ秘術の1つである追跡術。時間がなかったため、先輩は知らないが、爽華は逃げた吸血鬼の所在を把握していた。

 

 「私が勝ちます。助けは大丈夫です」

 「分かってるさ。邪魔はさせない」

 

 たった一人で勝負に挑むという愚行。つい先ほど負けた相手なのにも関わらず、爽華は勝てる気しかなかった。これはなにも感情論だけのものじゃなかった。

 

 「見つけましたよ」

 「……ははは…生き残る目などなかったか」

 

 複数の死体から血を吸っていた吸血鬼。回復をするための行動であったが、根本的に食事というだからだろう。

 先輩によって負わされた傷を回復するには至らなかった。

 

 「現行犯の殺人ですか……抵抗しなければ、拘束で済ませます」

 「はは、私は吸血鬼だよ。ならば血の世界から逃げるわけにはいかない!」

 

 鋭く、直線的な攻撃。並みの吸血鬼とは比べ物にならないが、今の爽華と戦うにはあまりにも遅すぎた。

 

 「残念です」

 「……私は大満足だよ。戦女神が最期の相手であることにね」

 

 心臓を貫かれた後に四肢を切り刻まれる。首に傷がないのは、最期の言葉を話せるようにするためなのだろうか。

 凄惨な体にされた吸血鬼は満足気な笑みを浮かべ、塵と化した。

 

 「……あっさり終わりました」

 「手負いに負けるほど、お前が弱いわけないからな」

 

 後ろから近づいてくる先輩。爽華は嫌悪でも警戒でもなく、安心と歓喜が生まれた。

 

 「やっぱり……私はバカだな」

 「何がだ?」

 「なんでもありません。それよりも先輩。何か言うことがありますよね」

 「ああ、なんで俺が吸血鬼になった理由。全部話すさ」

 「違いますよ!私が今聞きたいのはそっちじゃないです」

 

 約束を果たそうとした先輩の口を塞ぐ。驚きを露わにする先輩を見て笑いながら、爽華は本当に欲しい物を口にした。

 

 「褒めてください」

 「褒める?」

 「今までの分。先輩もお姉ちゃんもいなくなってから頑張ったんです。少しは褒めてもいいじゃないですか」

 

 先輩が何を考え吸血鬼になったのかは知らなければならないと今でも考える。だけれども、なによりも欲しかったのは心を許した者からの労いだった。

 

 「よくやった。頑張ったな」

 「……!」

 

 爽華の口から嬉しさのあまりため息が出る。どんな事情があったとしても、どんな仕打ちを受けたとしても、心を許した者への情は消えることはないのだと爽華は実感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さて!そろそろ言ってもらいますよ!先輩!!なんで吸血鬼になったのか!私の前にいなくなったのか!」

 「そう……だな」

 

 円満な雰囲気をぶった切り、爽華は持ち前のマイペースで先輩を問いただした。

 気まずそうに目を逸らす先輩を逃がすことなく圧を出しつづける彼女に折れたのは必然だっただろう。

 

 「……とある日の居酒屋が始まりだったんだ」

 「居酒屋……?」

 

 怪訝な顔をする爽華を無視……いや、反応を見ないようにしながら、先輩は言葉を振り絞り、説明する。次の瞬間、爽華は信じられない単語を聞いた。

 

 「みんなで酒飲んでいる時に猥談になったんだ」

 「へ?」

 

 思わずポカンとする彼女を意図的に置いてきぼりにして先輩は早口で全て話す。

 

 「そしたら、俺以外非童貞でな……」

 「???」

 「酔っていた俺は勢いで行ったんだ……ソープランドへ」

 

 脳の処理が追い付かないのだろう。言葉を話すことも忘れた爽華に衝撃の真実が襲い掛かった!!

 

 「それでな……嬢が吸血鬼だったんだ。最初の一発で性病貰って、そのまま吸血鬼になっちまった」

 

 想像にもしていなかったことに思わず体が震える。今までの自分の苦しみはこんなくだらないことがきっかけで生まれたのか……

 

 「ふざけないでください!!こんなことで……こんなことで……」

 「本当にすまない。合わせる顔がなかったんだ」

 

 不愛想な面をしているクソ先輩も今はとても申し訳なさそうにしている。思い人のそんな姿を見た爽華は冷静な心を取り戻す。だけれども、怒りの感情が収まることはない。

 ムカつくことはムカつくのだ。

 

 「……はあ、先輩。これだけは言わせてください」

 「なんだ」

 「くたばれ!!糞ヤローー!!!」

 「ぐぎゃあああああああああああ!?」

 

 晴天の中、クソ先輩は空を飛ぶ。爽華ははっきりと明確に、すごい確信を得た。やっぱりこんな人、絶対に好きじゃない!!?

 

 

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