時は慶長。天下人豊臣秀吉が世を去り、太平の世は早くも再燃した戦火に燃えていた。そうした不穏な世の裏では、関ヶ原で石田三成を破り、実質覇権を握った徳川家康率いる諸国の大名軍に対抗すべく、秀吉の妻淀君が呼び寄せた立身出世を狙う浪人達と共に、人ならざる者——
そしてとある寺の裏にもまた、その争いに敗れた1体の妖が倒れ伏し、石灯籠に身を寄せて何とか身を起こす。
「(ハァ、何とも無様なもんだ。尤も所詮独り者の物見遊山如きじゃ、遅かれ早かれこうなる
「あぁ……ありがとうございます!ありがとうございます妖様!」
「礼はいいさ、啖呵切ってこの様じゃね。しかし弱肉強食は世の常と言え、下らん世迷い事に踊らされるような奴等が……羽虫よろしく鬱陶しいったらありゃしねぇ……」
傷だらけの左半分に比べ、無傷な右側の腹の下から這い出てきたのは、幼い赤子を抱えた年若い女性。昔から徳の高い僧や巫女、汚れ無き赤子の様な
そうして雑兵を蹴散らし、親玉格にも粘り勝ってみせたはいいものの、激戦で負った数多の傷は彼女の命を削られ、最早その命は風前の灯で、刻々と死が迫る。このまま果てるのも已む無し。そう腹を括り、涙を流し、何度も礼を言いながら去って行く母親を眺めながら、しかしせめて伴侶をつがい、彼女の様に次代を繋ぎたかったと叶わぬ願いに思いを馳せていたところに、声をかけてくる者がいた。
「何じゃ何じゃ、随分手酷くやられたもんじゃのう。骨のある奴なら仲間に誘うつもりでいたが、その様じゃ
「アンタも生き胆目当てかい?生憎獲物はついさっき逃げちまってな。追えってんなら、五体満足でもお断りだよ」
「要らん要らん、ソイツ等と一緒にすんな。
その妖が手にした刀で示す先には、周囲に転がる先程対峙し殺めた異形の連中。後ろに長く伸びた髪を除けば、姿は人と大差ないが、奴等が比べ物にならないその身に宿す力――『
「しかし誰にやられたか知らんが、この程度の烏合の衆共々十把一絡げに果てるには惜しいの……ちょうどいいか、ちと待っとれ」
名乗ることなくどこかへ飛び去った妖が戻って来た時、その腕には、どこぞの貴族の姫らしき1人の人間を抱えていた。姫を抱えたまま八目蟷螂に近寄った妖は、彼女の手が届く距離に降ろす。
「この妖が……」
「見ての通り酷い有様でな。せめて峠を越せるくらいまではできんか?」
「わ、わかりました。やってみます……!」
妖に言われるまま、貴族の姫が八目蟷螂の腹にできた一際大きな傷に手をかざすと、徐々に塞がっていく。同様に各所の傷を塞いでいけば、脚をやられたため動けはせずとも、だいぶ楽にはなった。その特異な力を目の当たりにした八目蟷螂は、生き胆信仰に溺れた奴等が一際口にしていた存在を思い出し、眼前の姫が何者か気付く。
「病傷を癒やす異能……アンタ、噂に聞く
「そしてワシはぬらりひょん!ちょうど珱姫を手下共に顔合わせさせようと思ったところにお前さんが倒れてたんでな、ついでに助けてもらった訳よ!」
「アンタがぬらりひょんか。その畏、只者じゃないとは思ったが、噂に違わぬだけあるね。八目蟷螂だ、よろしくな」
八目蟷螂の傷を塞ぎ終え、霧散しつつある襲撃者の骸に手を合わす『珱姫』を眺めていたところに名乗った妖――『ぬらりひょん』。彼率いる『奴良組』の快進撃は八目蟷螂も耳にしており、畏の強さにも納得する。
「さて、そろそろ手下共んとこに向かわにゃならんが、脚も羽もないとなりゃ、どうやって連れてくか……」
「そこに関しちゃ安心しな。おかげで動くくらいなら何とかなるさ」
このまま珱姫を連れて配下の元へ行こうにも、八目蟷螂は脚も羽も失い、満足に動けない身。このまま置いていくのは論外だが、さすがに巨大な腹を引きずって無理矢理動かすのは辛かろうし、力自慢の部下を読んで運ばせようにも、まだ盃を交わしてない相手を託すのも、とぬらりひょんが頭を悩ませていると、声をかけた八目蟷螂の下半身を煙が覆い、晴れた先には人と変わらぬ2本の脚が。これなら見失いさえしなければ、そのままついていけそうだ。
「おぉ、そんな便利な能力持ってたか。ならいいか、行くぞ!」
「え、きゃあ!?」
悩みが無事解決した途端、連れて来た時同様珱姫を抱えたぬらりひょんが向かったのは、島原の一角。そこに屯していた大小様々な妖達に珱姫を紹介したぬらりひょんは、続けて珱姫越しに八目蟷螂の肩を掴んで続ける。
「そしてコイツは八目蟷螂!珱姫を迎えに行く道中で死にかけとったが、ほっとくには惜しかったんで、ついでに助けてもらってきた!」
「生憎盃はそれどころじゃなかったんでまだ交わしちゃいないが、後でそのつもりだから、よろしくな」
前から話していた珱姫に加え、偶々拾ってきた八目蟷螂。どちらも美人とあって、雪女の『
話を時系列純ってことで、まずは過去編から
早速登場したオリキャラ八目蟷螂は主要キャラでこそありますが、タイトル通りオリ主は彼女じゃないですww