ぬらりひょんの孫は一人にあらず   作:ゲオザーグ

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記憶が怪しいんで展開やセリフ確認しながら書く癖に,手元にないんで漫画喫茶で読みながら書いてますが、まぁ結構距離があるのはいい運動になるし、料金かかるのも会員特典に繋がるから、中古で買い揃えるよりは・・・


()構えし蟷螂を侮るべからず

 過ぎる程に気さくな振舞いに一騒動こそあれど、無事ぬらりひょんと盃を交わした八目蟷螂の奴良組入りも兼ねた宴も落ち着いてきた頃、ぬらりひょんに「ワシの(おんな)になれ」と言われた珱姫の戸惑いと、それに錯乱した雪麗の被害を『鴉天狗』が受ける等、余計な騒ぎで混乱のまま迎えた夜明け間際、自室に送り届けた珱姫を後ろから抱きしめ、誘い続けるぬらりひょんの姿を見る八目蟷螂は、先程助けられた直前に思いを馳せたことを思い出す。

 

「(夫妻(めおと)ねぇ。助けられた手前、雪麗みたいにデカい(ツラ)して割り込むつもりはないが……そういや鴉天狗の奴、雪麗に藪蛇かまして雪で生き埋めにされてたけど、無事かねぇ……)」

 

「ホレ、八目。そろそろ戻ろう。長居すると陰陽師共が騒ぎ立てて、返事どころじゃなくなっちまう」

 

「ん、悪いね……」

 

 偶然にも思考が脱線したところに声をかけ、揃ってお(いとま)するぬらりひょんの背中を見るうち、その願望はどんどんと膨れ上がっていき、遂に歯止めが利かなくなるや、気付いた時には後ろから抱き着いて、そのまま変化を解いて押し倒していた。

 

「のわ!?や、八目どうした!?」

 

「悪いねぇ。アンタの恋路を邪魔するつもりはないが、如何せんあのまま死ぬと思った折、願わくば番って子を残したいと考えてて、さっきからその欲が(くすぶ)って、どうにも収まらないんだよ。雪麗みたいに付き纏うつもりはないし、遊びとでも思ってくれりゃ結構。今この一時だけ……!」

 

「おい、てめ!のわぁ~~……!

 

 後にぬらりひょんは当時を振り返り、「あの時ばかりは、ある意味その直後より大変な目に遭ったもんだった……」と、しみじみ明後日の方角を遠い目で眺めながら、乾いた笑いを漏らしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 それから間もなく、住処にしていた森で古い皮を脱ぎ捨てた八目蟷螂は、流れる川で身を流し、服を着直して己の体を確かめる。

 

「とりあえず、脚と羽は何とかなったか。()は後でいいとして、ひとまず腹ごしらえを……!?」

 

 欠落した部位のうち、移動を優先して回復させた部分がしっかりと戻ったことを確かめ、軽く狩りに出てと考えた矢先、妙な悪寒が身を走る。

 

「誰だい?ぬらりひょん(アイツ)の恋路を邪魔しようって無粋な輩は……」

 

 陰陽師の使う式神のような存在とでも言うべきか、彼女が妖力から生み出し、使役する分身、『蜉蝣便(かげろうだより)』。先程珱姫を送り帰した際、何かと妖に狙われると聞き、そうした有象無象に対する警戒のため、破損すれば「虫の報せ」が届くそれを周辺に忍ばせていたが、軒並み一瞬で潰し尽くされた。6つの複眼で見たそれぞれの最期の場面から、どうやら相手は無差別に暴れ、護衛の陰陽師を殺めた末に彼女を連れ去ったようだが、幸いにも着物に紛れ込ませていた分はまだ残っており、それからの妖気を辿った先に見えるのは、天下の豊臣がお膝元、大阪城。早速直って間もない羽を広げると、大きく上下させると共に、巨体が宙に浮きあがる。

 

「誰が何のつもりか知らんが、あのお嬢ちゃんの隣に並ぶのはぬらりひょん(アイツ)だよ。さっきの詫びって訳じゃないが、妖蟲のアタシでもそれくらいの分別は付くってもんさ……」

 

 

 

 

 

 

「はーやれやれ、八目の奴やってくれる……」

 

 その日の晩、あろうことか入ったばかりの八目蟷螂(泥棒ネコ)に襲われたと知られ、癇癪を爆発させた雪麗や、「何たる不義」と憤慨し討たんとした牛鬼の暴走を、奴良組でも古参の『関東大猿会』会長、『狒々』が大笑いしながら煽り立てるわと、昨晩以上の喧騒から抜け出したぬらりひょんは、ある意味それどころではなかったとあって事情を知らぬまま、昨夜の返事を求めて珱姫の元を訪ねるも、そこには凄惨な図が広がり、護衛を務めていた『花開院家(けいかいん)』の陰陽師が1人、『花開院是光(これみつ)』が呆然としていた。

 

「お前は…ぬらりひょん…………そうか…かすかな妖気はお前だったか…………」

 

「んなこたどーでもいい、珱姫はどこだ!?」

 

 腑抜けて何も感じてないかに見えても、是光は妖気で気づいたらしい。振り返りぬらりひょんを眺めるが、ぬらりひょんは珱姫の姿がないことに苛立ちを露わにする。

 

「貴様の仲間じゃないなら…………妖に連れていかれたよ…………」

 

「珱姫を狙う妖…そいつらはどこへ…」

 

「大阪城………」

 

「(———羽衣狐(はごろもぎつね)か!!)」

 

 古来から京に巣食い、日本でも最大規模の妖を統べる、「魑魅魍魎の主」と呼ばれる存在、『羽衣狐』。ぬらりひょんでもその名を知り、それでもなお越えて己がそこに立たんとする存在が首謀者と知り、目の色を変えると共に、その視線が捉えたのは、無造作に転がる珱姫の護身刀。先日誤って切られた際、自身を傷つけられたぬらりひょんは、無意識にそれを手に取って大阪城へ向かう最中、牛鬼に呼び止められる。

 

「どこへ行くのです総大将」

 

「……牛鬼」

 

「我が大将よ…そんなに血の気多く走らば妖気となり妖を呼びますぞ。あなたらしくもない…今夜は誰にケンカを売るつもりです」

 

 「あの八目蟷螂(ムシケラ)を成敗するならぜひ私に」と殺気を撒き散らす牛鬼の姿に、思わず「お前も人のこと言えんだろ」と指摘しそうになったのを止めたぬらりひょんだが、一刻を争うとあって、再度足を動かさんと構え、手短に目的地を告げる。

 

「大阪城に向かう、お前はついてこんでいいぞ」

 

「お…大阪城だと!?バカな…大阪城に巣食う“奴”を知らぬわけないでしょう!羽衣狐は…普通の妖じゃかなわない!!」

 

 八目蟷螂どころではない相手に主が挑むつもりと知るや、牛鬼は一転して狼狽する。いずれはぶつかるべきとは言え、それは今じゃないと断言できる。羽衣狐とは、それだけ危険な相手なのだ。

 

「やめろ…まだその時期ではない!!力をもっとためるんだ…魑魅魍魎の主となるのなら!!

 

「だまれ牛鬼」

 

 しかしぬらりひょんに止まるつもりなどない。牛鬼の懇願を一蹴し、珱姫の護身刀を抜き、その刃を見せつけながら凄む。それだけ彼は珱姫に惚れ込んでいたのだ。

 

「羽衣狐が魑魅魍魎の主ってんなら―――ワシが魑魅魍魎の主(そいつ)を超えるまでよ!!

 

 

 

 

 

「待っておったぞ、珱姫」

 

「ああ、あれが……珱姫?」

 

 カエルのような顔つきの小柄な『(サトリ)』と、面長で下顎と首が一体化した様な『鬼一口(おにひとくち)』に攫われ、大阪城の実質的主、淀殿の前に投げ出された珱姫。両者の間には、先んじて秀吉の遺児秀頼の側室として連れてこられた3人の姫が座っていたが、振り替えって珱姫の顔を覘くその1人——一際長い髪の美しさから、『髪長姫』と称えられた『宮子姫』は、さほど興味なさげに漏らす。

 

「京で一番の美貌と噂の…噂どおり美しいのう、近う近う」

 

「は…はい……」

 

 欲を掻いた末路とその巻き添えと言え、自身を呼ぶために父や護衛の陰陽師達を殺めたことへの恐怖で動けないのを、緊張と思い込んだのか、淀殿達は特に気にしてないようだが、姫の1人、『貞姫』も同様に恐怖に身を震わせ、同様に緊張と捉えた宮子姫が、嘲笑いながら淀殿に自己紹介に入る。

 

「私のような田舎者を側室に選んでいただき光栄です。五つの齢まで髪の生えなかったこの私ですが、絶望し海に身を投げたその先に沈んでいた金色(こんじき)の仏様を丁重におまつりしたところ、このようにありがたい髪を授かったのです」

 

「しっておるぞ…髪長姫。どうれさわらせてみい」

 

 誇示する様にその長い髪を両手に乗せて見せつける宮子姫に対し、手を伸ばし撫でる淀殿。宮子姫も好印象で寵愛を身にして優遇されれば、他の3人を始め他の側室達に優位を取れるとあって、犬や猫の如く気持ちよさげにされるがまま撫でられる。

 

「なるほど、さすが日本一美しい髪を持つ“絶世の美女”」

 

「光栄至極に存じます…………」

 

 髪に限らず、その美貌に対する絶対的な自信は、それこそ「珱姫とて己に敵うまい」と傲慢とも思われる程。しかし今回ばかりは、その慢心が命取りとなってしまった。

 

「ではさっそく―――」

 

 髪を撫でていた手が肩に伸び、顔を近づけた淀殿が口を狙う。尤もその場を狙っていたものは彼女だけでなく、間に割り込んできた存在を察した淀殿がとっさに避けた先には、宮子姫の美しい顔を隠すように伸びた3本の大鎌が畳に刺さり、反応が遅ければ、それに刈られた自身の首が転がっていただろう。

 

「隙を狙って身を潜ませていたが、狡猾なだけあって殺気に気づきやがったか。そっちの嬢ちゃんとは偉い違いだこって……」

 

「…………え????

 

 一方あまりにも唐突過ぎる展開に理解が追い付かず、完全に置き去りとなっていた宮子姫は、突如割り込み場の空気を乱した眼前の相手が人ならざる者で、両肩上下から伸びる2槌本の節足のうち、左上以外の先に付いた大鎌を淀殿に掲げる姿をその下半身に当たる腹部に遮られ、見えずにいたが、少なくとも一転して己が場違いに思える様な緊迫に、それまでの優越感は掻き消え、動けずにいた。

 

「あれは…八目様!?」

 

「はう…はう…やっぱり…()()()()()しまうのね…」

 

 一方淀殿に対峙するその巨躯が、つい昨晩自らが傷を癒した八目蟷螂と気づいた珱姫の隣にいた貞姫は、「私の……()()()()が現実に…!」とすっかり動転し、慌てて振り返り部屋を飛び出そうとした矢先、それまで部屋の左右に並んでいた臣下達が立ち塞がり、異形の本性を晒す。

 

「未来が見える…妖に…私は……」

 

「おい!あんま動き回んな!!」

 

 遂には錯乱して叫び出す貞姫に、珱姫の着物に紛れ込ませていた分に新しく追加した『蜉蝣便』を部屋の各所に飛ばし、室内の様子を随時確認していたものの、背後の宮子姫を気遣い、淀殿と対峙したまま動くに動けない八目蟷螂の声は届かず、騒ぎを聞いて駆け付けた家老は、まだ人の姿をしていた『しょうけら』に首を跳ねられかけたところを、嗾けた『蜉蝣便』が身代わりになって助かる。

 

「おいジイさん!ソイツ連れて他の嬢ちゃん方と一塊になってろ!この数じゃ守りに徹するにゃちと厳しいぜ……」

 

「か、かたじけない……!」

 

 淀殿や周囲の者達が示した本性はともかく、少なくとも今身代わりに斬り伏せられた虫を繰る、背を向けた蟲の異形——八目蟷螂は、彼等より害意がないと認識した家老が、貞姫に駆け寄って肩を貸した珱姫と共に、未だ動けぬ宮子姫の元に来たのを確認した八目蟷螂は、1対の脚で抱え込むように4人を持ち上げ、広げた翼を即席の盾代わりに覆う。

 

「フン、虫けら風情が異な真似を。汚らわしい、早う()ね」

 

「奥方様は『一寸の虫にも』、なんて民草の言葉にゃ興味もねぇか。なら教えてやろうか、『蟷螂の斧』ってなぁ、そうして余裕こいてると痛てぇ目見るってことをな!




読み直してくうちに思ったけど・・・鬼一口お前立ち位置逆じゃね?(某菌漫画の実写版で自分がモデルのキャラやった大阪付近出身芸人の片割れに見えてきた)
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