つぶやきギデオン   作:赤銀

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カケラ10個目

 

 

洞窟の奥で、あなたは巻物を広げる。

 

青い光が、じわりとにじむ。

 

「また、なの。」

 

光が弾ける。

 

ぽん。

 

ギデオンが、二人になる。

 

少しだけ間。

 

二人同時にあなたを見る。

 

そして。

 

両手を伸ばす。

 

肘をくねくね。

 

謎の歓迎ダンス。

 

息ぴったり。

 

左右対称。

 

完璧な無表情。

 

あなたは吹き出す。

 

「なんでそんな揃ってるの。」

 

片方が言う。

 

「同期。」

 

もう片方が言う。

 

「共有。」

 

くねくね。

 

ぴたり。

 

止まる。

 

何事もなかったように、二人は石卓の方へ歩く。

 

あなたはまだ笑っている。

 

洞窟の中央。

 

石の床に、ドミノがずらりと並んでいる。

 

一人のギデオンは、腕を組んで立っている。

 

少し胸を張って。

 

もう一人は、床にしゃがみ込み、

 

せっせとドミノを並べている。

 

あなたは状況を理解しきれずに立ち尽くす。

 

「分裂したら、まずそれ?」

 

腕組みのギデオンが言う。

 

「拡張実験。」

 

しゃがんでいるギデオンが言う。

 

「効率化。」

 

あなたは小さく笑う。

 

あなたは腕を組んでいる方を見る。

 

「手伝わないの?」

 

腕組みギデオンは、ゆっくり瞬きをする。

 

「監督。」

 

しゃがんでいる方が、小さく言う。

 

「現場。」

 

あなたは少し眉を上げる。

 

「監督って、何するの?」

 

腕組みギデオンは真顔で答える。

 

「全体を見る。」

 

「今、何見てるの?」

 

少し間。

 

「美。」

 

しゃがんでいるギデオンの手が一瞬止まる。

 

「……置くのは、ぼく。」

 

あなたはしゃがんでいる方の隣に座る。

 

「ほんとに大丈夫?」

 

置くギデオンは、小さくうなずく。

 

「速いから。」

 

その瞬間。

 

腕組みギデオンが、こつ、と最初のドミノを倒す。

 

ぱた。

 

ぱたぱたぱた。

 

連鎖が始まる。

 

しゃがんでいるギデオンが、超高速で動く。

 

すっ。

 

すっ。

 

倒れてくる直前に、新しいドミノを差し込む。

 

ぱたぱたぱた。

 

腕組みギデオンは、少しだけ満足そう。

 

「いい流れ。」

 

あなたは言う。

 

「やっぱり置くほうが大変じゃない?」

 

ぱたぱたぱた。

 

置くギデオンが、ほんの少しだけ息を整える。

 

腕組みギデオンが、少しだけ視線を逸らす。

 

「……役割。」

 

あなたはにやりとする。

 

「じゃあ、交代ね。」

 

ぴたり。

 

ドミノが途中で止まる。

 

二人のギデオンが顔を見合わせる。

 

腕組みギデオンが、ゆっくりしゃがむ。

 

「監督も、現場を知る。」

 

置く側だったギデオンが、腕を組む。

 

「美、見とく。」

 

あなたは笑う。

 

「それでいい。」

 

 

 

幾分か、2人のギデオンが交代した後。

 

しばらく、誰も倒さない。

 

三人で、ただドミノを並べる。

 

倒れる前の形。

 

まだ何も起きていない、まっすぐな列。

 

洞窟の中は静かだ。

 

さっきまでの高速も、役割も、競争もない。

 

ただ、等間隔に置かれていく小さな板。

 

あなたはふと思う。

 

増えたからって、急がなくていいのかもしれない。

 

腕を組んだギデオンが、列を眺める。

 

しゃがんでいるギデオンが、最後の一枚を置く。

 

少し曲がっている。

 

誰も直さない。

 

少しだけ不揃いなまま、並んでいる。

 

「倒す?」

 

あなたが聞く。

 

二人は顔を見合わせる。

 

少し考えて。

 

同時に首を振る。

 

「今日は、見てるだけ。」

 

洞窟の奥で、青い光の残りが、まだかすかに揺れている。

 

ドミノは倒れていない。

 

でも、そこにある。

 

三人の影が、床に重なる。

 

増えた分だけ、影も少し濃い。

 

誰も急がない。

 

それでも、列はちゃんと続いている。

 

洞窟の外で、風がひとつ鳴る。

 

まだ倒れていないドミノの列は、

静かなまま、そこにある。

 

崩れないことも、

ひとつの形なのかもしれない。

 

二人のギデオンは何も言わない。

 

あなたも言わない。

 

ただ、並んだままの景色を見ている。

 

 

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