洞窟の奥。
石卓の上に、あなたは小さなものを置く。
透明なガラス。
細いくびれ。
中に入っているのは、淡い色の砂。
ギデオンが顔を上げる。
「それ、なに?」
あなたは指でつまんで持ち上げる。
「砂時計。」
ギデオンは少し身を乗り出す。
「時計?」
「時間を測るやつ。」
あなたはくるりとひっくり返す。
さら……
砂が落ち始める。
細い流れ。
止まらない。
ギデオンはそれをじっと見ている。
長い間。
砂は、ゆっくり下に積もっていく。
さら……
さら……
あなたが聞く。
「面白い?」
ギデオンは少し考える。
「……見える。」
「何が?」
「時間。」
砂がまた少し落ちる。
さら。
ギデオンは石卓の破片をひとつ拾う。
ころ。
指で転がす。
少し考える。
ぽつり。
「……石でも、できるかな。」
あなたは笑う。
「砂じゃないよ?」
「うん。」
ギデオンはうなずく。
「だから。」
少し間。
「落ちる形にする。」
⸻
それからしばらく。
洞窟の中には、削る音が響く。
カリ。
カリ。
カリ。
石卓の上に、小さな柱ができている。
石柱。
その外側に、溝。
ぐるぐると回る。
螺旋。
あなたが覗き込む。
「それ、何?」
ギデオンは石を削りながら言う。
「石時計。」
あなたは少し笑う。
「時計になる?」
ギデオンは少し考える。
「……わからない。」
また削る。
カリ。
カリ。
溝は、少しずつ下へ降りていく。
きれいな螺旋ではない。
少し歪んでいる。
段差も、そろっていない。
それでも。
下まで続いている。
ギデオンは石の破片を拾う。
小さく削る。
丸くする。
ころ。
螺旋の上に置く。
石が転がる。
ころ。
少し進む。
段差で止まる。
沈黙。
あなたが言う。
「詰まった。」
ギデオンはうなずく。
石を拾う。
また削る。
今度は、少し丸い。
もう一度置く。
ころ。
ころ。
段差を落ちる。
「カツン」
また転がる。
ころ。
「カツン」
あなたは少し笑う。
「音する。」
ギデオンは目を細める。
「……うん。」
また石が落ちる。
ころ。
「カツン」
少し間。
また。
「カツン」
リズムは整っていない。
少し速く。
少し止まる。
それでも。
下まで転がる。
ギデオンは砂時計を見る。
砂は、もうほとんど落ちている。
最後の粒が、細い首を通る。
さら……
止まる。
少し間。
ギデオンが砂時計をひっくり返す。
くる。
また砂が落ち始める。
さら……
あなたは石時計を見る。
石が、まだ転がっている。
ころ。
「カツン」
少し間。
「カツン」
ギデオンが小さく言う。
「……違う。」
「何が?」
「砂は。」
少し考える。
「見える。」
石を見つめる。
ころ。
「カツン」
「石は。」
少し間。
「聞こえる。」
また。
「カツン」
あなたは石時計を見つめる。
きれいな形ではない。
段差もばらばら。
でも、石はちゃんと下まで降りていく。
ギデオンが言う。
「……時間。」
少し間。
「聞こえる。」
そのとき。
石が最後の段を落ちる。
「 」
洞窟の中に、小さな音が残る。
ギデオンはそれを少し見つめてから、
また石をひとつ拾う。
ころ。
螺旋の上に置く。
石はまた、ゆっくり降りていく。
次の章からはギデオン+土の上級精霊ガヴィアがいたら?
というお話になります