つぶやきギデオン   作:赤銀

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BOOTHにて販売いたします。

https://booth.pm/ja/items/8090929


カケラ15個目

 

洞窟の奥。

 

石卓の上に、あなたは小さなものを置く。

 

透明なガラス。

 

細いくびれ。

 

中に入っているのは、淡い色の砂。

 

ギデオンが顔を上げる。

 

「それ、なに?」

 

あなたは指でつまんで持ち上げる。

 

「砂時計。」

 

ギデオンは少し身を乗り出す。

 

「時計?」

 

「時間を測るやつ。」

 

あなたはくるりとひっくり返す。

 

さら……

 

砂が落ち始める。

 

細い流れ。

 

止まらない。

 

ギデオンはそれをじっと見ている。

 

長い間。

 

砂は、ゆっくり下に積もっていく。

 

さら……

 

さら……

 

あなたが聞く。

 

「面白い?」

 

ギデオンは少し考える。

 

「……見える。」

 

「何が?」

 

「時間。」

 

砂がまた少し落ちる。

 

さら。

 

ギデオンは石卓の破片をひとつ拾う。

 

ころ。

 

指で転がす。

 

少し考える。

 

ぽつり。

 

「……石でも、できるかな。」

 

あなたは笑う。

 

「砂じゃないよ?」

 

「うん。」

 

ギデオンはうなずく。

 

「だから。」

 

少し間。

 

「落ちる形にする。」

 

 

それからしばらく。

 

洞窟の中には、削る音が響く。

 

カリ。

 

カリ。

 

カリ。

 

石卓の上に、小さな柱ができている。

 

石柱。

 

その外側に、溝。

 

ぐるぐると回る。

 

螺旋。

 

あなたが覗き込む。

 

「それ、何?」

 

ギデオンは石を削りながら言う。

 

「石時計。」

 

あなたは少し笑う。

 

「時計になる?」

 

ギデオンは少し考える。

 

「……わからない。」

 

また削る。

 

カリ。

 

カリ。

 

溝は、少しずつ下へ降りていく。

 

きれいな螺旋ではない。

 

少し歪んでいる。

 

段差も、そろっていない。

 

それでも。

 

下まで続いている。

 

ギデオンは石の破片を拾う。

 

小さく削る。

 

丸くする。

 

ころ。

 

螺旋の上に置く。

 

石が転がる。

 

ころ。

 

少し進む。

 

段差で止まる。

 

沈黙。

 

あなたが言う。

 

「詰まった。」

 

ギデオンはうなずく。

 

石を拾う。

 

また削る。

 

今度は、少し丸い。

 

もう一度置く。

 

ころ。

 

ころ。

 

段差を落ちる。

 

「カツン」

 

また転がる。

 

ころ。

 

「カツン」

 

あなたは少し笑う。

 

「音する。」

 

ギデオンは目を細める。

 

「……うん。」

 

また石が落ちる。

 

ころ。

 

「カツン」

 

少し間。

 

また。

 

「カツン」

 

リズムは整っていない。

 

少し速く。

 

少し止まる。

 

それでも。

 

下まで転がる。

 

ギデオンは砂時計を見る。

 

砂は、もうほとんど落ちている。

 

最後の粒が、細い首を通る。

 

さら……

 

止まる。

 

少し間。

 

ギデオンが砂時計をひっくり返す。

 

くる。

 

また砂が落ち始める。

 

さら……

 

あなたは石時計を見る。

 

石が、まだ転がっている。

 

ころ。

 

「カツン」

 

少し間。

 

「カツン」

 

ギデオンが小さく言う。

 

「……違う。」

 

「何が?」

 

「砂は。」

 

少し考える。

 

「見える。」

 

石を見つめる。

 

ころ。

 

「カツン」

 

「石は。」

 

少し間。

 

「聞こえる。」

 

また。

 

「カツン」

 

あなたは石時計を見つめる。

 

きれいな形ではない。

 

段差もばらばら。

 

でも、石はちゃんと下まで降りていく。

 

ギデオンが言う。

 

「……時間。」

 

少し間。

 

「聞こえる。」

 

そのとき。

 

石が最後の段を落ちる。

 

「   」

 

洞窟の中に、小さな音が残る。

 

ギデオンはそれを少し見つめてから、

 

また石をひとつ拾う。

 

ころ。

 

螺旋の上に置く。

 

石はまた、ゆっくり降りていく。

 

 













次の章からはギデオン+土の上級精霊ガヴィアがいたら?
というお話になります
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