つぶやきギデオン   作:赤銀

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ぽとり2個目

 

 

夜は、静か。

 

上は、風が動く。

 

葉が揺れる。

 

遠くで水が鳴る。

 

でも。

 

下は、あまり動かない。

 

ぼくは、そのほうが好き。

 

光は、少し苦手。

 

明るいところは、

みんなよく見える。

 

きれいなものも、

強いものも、

速いものも。

 

ぼくは、あまり速くない。

 

あまり目立たない。

 

土の色は、

遠くから見ると、

ただの茶色。

 

岩も、

苔も、

落ち葉も、

 

だいたい似た色。

 

だから、たまに思う。

 

ぼくは、

ここにいても、

気づかれないんじゃないかって。

 

でも。

 

気づかれなくても、

なくなったわけじゃない。

 

踏まれても、

削れても、

 

土は、残る。

 

落ちたものは、

消えない。

 

形が変わるだけ。

 

花びらは、

やわらかくなる。

 

葉は、

土に戻る。

 

声も、

少しずつ沈む。

 

ぼくは受け止める。

 

上では、

いろんなことが起きる。

 

花が咲く。

 

風が吹く。

 

誰かが笑う。

 

誰かが怒る。

 

でも。

 

終わったあと、

みんな少しずつ落ちてくる。

 

花びらも。

 

雨も。

 

声も。

 

全部、少しずつ。

 

ぼくのところに。

 

だから、ぼくは

あまり急がない。

 

急がなくても、

いつか来るから。

 

怒るのも、あまり好きじゃない。

 

怒ると、

地面が硬くなる。

 

硬くなると、

根っこが伸びない。

 

だから、疲れる。

 

でも。

 

たまに、怒る。

 

あまりにも

踏みつける人がいるとき。

 

静かな場所を

壊す人がいるとき。

 

そのときは、

少し大きい声を出す。

 

……疲れるけど。

 

でも、本当は。

 

怒るより、

残るほうがいい。

 

強い人は、

上に立つ。

 

でも。

 

残る人は、

下にいる。

 

上にいる人は、

遠くまで見える。

 

でも。

 

下にいる人は、

長く覚える。

 

誰がここで笑ったか。

 

誰が泣いたか。

 

誰が座ったか。

 

全部、少しずつ

沈んでくる。

 

ぼくは、それを

覚えている。

 

だから。

 

一人でいるのは、

そんなに寂しくない。

 

静かな場所には、

いろんな時間が

残ってる。

 

それを触ると、

少しあたたかい。

 

でも。

 

たまに。

 

少しだけ、

誰かの声があるといい。

 

大きくなくていい。

 

隣で、何かをしてる音。

 

石を動かす音。

 

火がはぜる音。

 

そういうのが、

少しだけ聞こえると、

 

ここは、

まだ動いてるんだなって思う。

 

ぼくは、

強くなりたいわけじゃない。

 

深くなりたい。

 

強いものは、

折れることがある。

 

でも、

深いものは、

 

すぐには崩れない。

 

時間がかかる。

 

でも、

そのぶん、

静かに続く。

 

もし。

 

誰かが疲れて、

ここに座ったら。

 

ぼくは何も言わない。

 

引っ張ったりもしない。

 

ただ、

 

下で受け止める。

 

それだけでいい。

 

それだけで、

たぶん少し楽になる。

 

だから。

 

もし君が、

 

うまくいかないなって思う日があっても。

 

それは、

消えてない。

 

上で終わったように見えても、

 

下では、

まだ変わってる。

 

ぼくはそれを知ってる。

 

土は、

急がない。

 

でも。

 

ちゃんと、

芽を出す。

 

いつか。

 

きっと。

 

……ゆっくりだけど。

 

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