洞窟の前。
あなたが植木鉢を持ってくる。
ギデオンが言う。
「……ちょっと待ってて。」
少しして戻ってくる。
手のひらに、茶色い種。
あなたが聞く。
「なんの種?」
ギデオンは首をかしげる。
「……わからない。」
少し間。
「植えてみれば、わかる。」
洞窟の外。
岩のそば。
あなたが植木鉢を置く。
中は土。
ギデオンが種を見ている。
「ここ?」
あなたが言う。
「たぶん。」
ギデオンは指で穴を開ける。
小さい穴。
種を落とす。
ぽとり。
土をかぶせる。
少し押す。
あなたが聞く。
「芽、出るかな。」
ギデオンは少し考える。
「……時間。」
「どれくらい?」
ギデオンは首をかしげる。
「わからない。」
少し間。
「でも。」
土を見る。
「待つと、出る。」
ギデオンはそう言って、
土をもう一度だけ指で押す。
ぽん。
少しだけ、やさしく。
その隣。
コップを静かに置く。
ー数日が経って
小さな土の山。
まだ芽は出ていない。
ギデオンがしゃがみこんでいる。
手には小さな木のコップ。
あなたが聞く。
「水?」
ギデオンはうなずく。
「……乾いてる。」
植木鉢の土を、指で少し触る。
ぱさ。
「そろそろ、いる。」
あなたは横で見ている。
ギデオンがコップを傾ける。
とぽ。
水が土に落ちる。
そのとき。
土が、もぞ、と動く。
あなたが止まる。
「……え?」
次の瞬間。
土の真ん中が、ゆっくり盛り上がる。
ちょうど植木鉢の真下。
もこ。
そして。
ぽこ。
ガヴィアの頭が出てくる。
同時に。
水が、ちょうどその頭にかかる。
ぱしゃ。
沈黙。
ガヴィアは、目をぱちぱちする。
髪から水が落ちる。
頭には植木鉢が乗っかっている。
ぽた。
ぽた。
ギデオンが固まる。
「……ごめん。」
少し間。
ガヴィアは何も言わない。
頭に、植木鉢を乗せたまま。
水がまだ、ぽたぽた落ちる。
あなたが聞く。
「大丈夫?」
ガヴィアは小さくうなずく。
「……ん。」
少し考える。
それから、
ぽつり。
「……しみる……」
沈黙。
ガヴィアは、ゆっくり体を引く。
穴に戻る。
するり。
肩。
頭。
消える。
最後に声だけ。
「……あとで……」
土が少し崩れる。
しばらく沈黙。
あなたとギデオンが穴を見る。
そして。
さっきまで置いてあった場所に、
植木鉢が残っている。
ただし。
半分沈んでいる。
穴の分だけ。
まるで、
地面から生えているみたいに。
ギデオンが言う。
「……植木鉢。」
少し間。
「……育った。」
あなたは笑う。
2人で穴を眺める。
さっきより、少し土が湿っている。
洞窟の下から、
遠くで小さく音がする。
ごそ。
たぶん、
ガヴィアは
まだ掘っている。
ごそ。
今度は近くから聞こえる。
鉢の上は
静かだ。
でも、
中ではたぶん、
まだ何かが
ゆっくり
動いている。