入稿しました。
50部依頼したら9万円もした...。
冬の湖。
表面は、白く凍っている。
あなたとギデオンは岸に立っている。
風は冷たい。
あなたが言う。
「滑れるかな。」
ギデオンは湖を見る。
「……わからない。」
あなたは片足だけ、氷に乗せる。
ぎし。
少し音。
でも、割れない。
体重を預ける。
大丈夫そう。
腕を少し動かす。
あなたは湖へ出る。
つる。
すべる。
思ったより滑る。
氷の上は静かだ。
ギデオンも真似をする。
勢いよく、湖に漕ぎ出す。
次の瞬間。
ステーン。
仰向けに転ぶ。
そのまま滑る。
つるー。
止まらない。
あなたの方へ、ゆっくり流れてくる。
まっすぐ。
出荷されるマグロみたいに。
あなたの足元で止まる。
仰向けのギデオン。
目が合う。
少し間。
二人で笑う。
吐いた息が白く広がる。
ギデオンはまだ仰向けのまま、氷の上を見ている。
空は薄い灰色。
雲はゆっくり流れている。
白い息が消えていく。
ギデオンがゆっくり起き上がる。
少しだけバランスを崩す。
でも、今度は転ばない。
「……立てた。」
あなたは笑う。
「最初から立ってたよ。」
ギデオンも少し笑う。
氷の上を、少しだけ滑る。
つる。
ゆっくり。
急がない。
湖は広い。
真ん中まで行くと、岸が遠く見える。
氷の下は黒い。
水は見えない。
ただ、奥の方で何かが動いているような気もする。
風が吹く。
湖の上を、静かに渡る。
あなたは足を止める。
氷の下からコツンと音がする。
そのとき。
横に滑る影。
ガヴィア。
姿勢はまっすぐ。
膝も曲げない。
腕も振らない。
ただ立ったまま。
あなたの視界の右から、左へ。
こちらを見たまま。
すー。
すー。
すー。
あまり滑っていない。
でも、転ばない。
ガヴィアが何か言っている。
「……そっち……」
聞き取れない。
「……薄い……」
ぶつぶつ。
「……下……」
でも、
そのまま横に流れていく。
ガヴィアの通った跡。
さらさらと、小さな粒が氷の上を転がる。
視界の端で、何かが動く。
あなたは少し気になる。
氷の奥へ進もうとする。
ギデオンが言う。
「……氷の上…向いてないかも。」
ギデオンは岸の方へ戻る。
その影を見送る。
ガヴィアの方へ振り向く。
そのとき。
ぎし。
小さな音。
氷に、線が走る。
あなたが止まる。
もう一歩で、
割れそう。
ギデオンが枝を拾う。
岸から差し出す。
「つかまって。」
あなたは枝をつかむ。
少し引かれる。
氷が、
ぱき。
小さく割れる。
足先が飲まれかける。
一瞬、冷たい。
あなたは跳ねるように岸へ。
湖を見る。
割れたところから、
小さなカワウソが出てくる。
濡れた毛。
震えている。
氷の下にいたらしい。
出口を探していたみたい。
ガヴィアが隣に来る。
いつの間にか。
ぽつり。
「……通った。」
あなたが聞く。
「何が?」
ガヴィアは湖を見る。
「……中。」
氷の下。
水は黒い。
カワウソは岸へ走る。
ギデオンが湖を見る。
「……いたんだ。」
ガヴィアが言う。
「……上は、閉じてる。」
少し間。
「……下は、動いてる。」
三人で湖を見る。
その下では、
水がゆっくり流れている。
氷の下から、
小さくコツン、と音がした。
氷の上は静かだ。
でも、
確かに息づいている。