洞窟の外。
雪の縁に、ガヴィアがしゃがんでいる。
手の中に、丸いもの。
みかん。
しばらく見ている。
雪と土の境目を、指で触る。
少し考える。
それから、みかんをそこに置く。
ころ。
転がらない。
ガヴィアはそれを見ている。
ぽつり。
「……丸い……」
少し間。
土を触る。
「……まだ……深い……」
風が吹く。
ガヴィアは立ち上がる。
みかんはそのまま。
雪の上に残る。
ガヴィアは振り返らない。
次の日。
冬の空気は、透明で、少し硬い。
ギデオンが
雪の縁で、足を止める。
みかんを見つめている。
その少し後ろ。
雪の縁に、しゃがんでいる影がある。
ガヴィアだ。
あなたが気づく前から、
地面を見ている。
「どうしたいか、訊いてる。」
ギデオンが言う。
あなたが笑う。
皮をむく。
ぱり、と音。
種が落ちる。
ぽとり。
雪の上に、小さく沈む。
その瞬間。
ガヴィアの指が、わずかに動く。
雪と土の境目に触れる。
「……あったかい……」
小さな声。
あなたが振り向く。
「え?」
ガヴィアは種を見ている。
「……まだ……動いてる……」
意味がわからない。
でも、それ以上言わない。
⸻
冬がゆるむ。
ガヴィアは何度か、
その場所に来ている。
何も掘らない。
ただ、触る。
雪と土の境目に、
指をそっと置く。
ときどき、耳を近づける。
長く。
静かに。
ぽつり。
「…まだ…深い……」
別の日。
雪は少し減っている。
水が土に染みる。
ガヴィアはまた来る。
同じ場所にしゃがむ。
指で触る。
少し間。
「……まだ……」
耳を近づける。
土は冷たい。
でも、奥が少しだけゆるい。
雪解けの水が、
ゆっくり染みている。
その奥で、
小さなものが押している。
ガヴィアが小さく言う。
「……通ってる……」
春。
芽が出る。
あなたとギデオンがしゃがむ。
ガヴィアは、少し離れて見ている。
でも、
いつもより、声がはっきりしている。
「……押してない……」
「え?」
「……上に……無理してない……」
芽を見ている。
「……ちゃんと……待った……」
あなたが、少し息を止める。
ガヴィアが続ける。
「……腐らなかったの……」
少し間。
「……消えてないから……」
ギデオンが言う。
「なくなったと思っても、形、変わるだけかも。」
ガヴィアが、小さくうなずく。
そして、珍しく少しだけ長く話す。
「……沈んだものは……なくならない……」
間。
「……下で……変わる……」
芽を見ている。
ぽつり。
「……通った。」
あなたが聞く。
「何が?」
ガヴィアは芽を見る。
「……冬。」
少し間。
「……中。」
風が、芽を揺らす。
春の光が、静かに広がる。
ガヴィアは芽に触れない。
触れたら壊れるのを知っている。
でも、土をそっと押さえる。
「……ここまで……来た……」