つぶやきギデオン   作:赤銀

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ぽとり7個目

 

洞窟の外。

 

雪の縁に、ガヴィアがしゃがんでいる。

 

手の中に、丸いもの。

 

みかん。

 

しばらく見ている。

 

雪と土の境目を、指で触る。

 

少し考える。

 

それから、みかんをそこに置く。

 

ころ。

 

転がらない。

 

ガヴィアはそれを見ている。

 

ぽつり。

 

「……丸い……」

 

少し間。

 

土を触る。

 

「……まだ……深い……」

 

風が吹く。

 

ガヴィアは立ち上がる。

 

みかんはそのまま。

 

雪の上に残る。

 

ガヴィアは振り返らない。

 

次の日。

 

冬の空気は、透明で、少し硬い。

 

ギデオンが

 

雪の縁で、足を止める。

 

みかんを見つめている。

 

その少し後ろ。

 

雪の縁に、しゃがんでいる影がある。

 

ガヴィアだ。

 

あなたが気づく前から、

地面を見ている。

 

「どうしたいか、訊いてる。」

 

ギデオンが言う。

 

あなたが笑う。

 

皮をむく。

 

ぱり、と音。

 

種が落ちる。

 

ぽとり。

 

雪の上に、小さく沈む。

 

その瞬間。

 

ガヴィアの指が、わずかに動く。

 

雪と土の境目に触れる。

 

「……あったかい……」

 

小さな声。

 

あなたが振り向く。

 

「え?」

 

ガヴィアは種を見ている。

 

「……まだ……動いてる……」

 

意味がわからない。

 

でも、それ以上言わない。

 

 

冬がゆるむ。

 

ガヴィアは何度か、

その場所に来ている。

 

何も掘らない。

 

ただ、触る。

 

雪と土の境目に、

指をそっと置く。

 

ときどき、耳を近づける。

 

長く。

 

静かに。

 

ぽつり。

 

「…まだ…深い……」

 

別の日。

 

雪は少し減っている。

 

水が土に染みる。

 

ガヴィアはまた来る。

 

同じ場所にしゃがむ。

 

指で触る。

 

少し間。

 

「……まだ……」

 

耳を近づける。

 

土は冷たい。

 

でも、奥が少しだけゆるい。

 

雪解けの水が、

 

ゆっくり染みている。

 

その奥で、

 

小さなものが押している。

 

ガヴィアが小さく言う。

 

「……通ってる……」

 

 

 

 

 

春。

 

芽が出る。

 

あなたとギデオンがしゃがむ。

 

ガヴィアは、少し離れて見ている。

 

でも、

 

いつもより、声がはっきりしている。

 

「……押してない……」

 

「え?」

 

「……上に……無理してない……」

 

芽を見ている。

 

「……ちゃんと……待った……」

 

あなたが、少し息を止める。

 

ガヴィアが続ける。

 

「……腐らなかったの……」

 

少し間。

 

「……消えてないから……」

 

ギデオンが言う。

 

「なくなったと思っても、形、変わるだけかも。」

 

ガヴィアが、小さくうなずく。

 

そして、珍しく少しだけ長く話す。

 

「……沈んだものは……なくならない……」

 

間。

 

「……下で……変わる……」

 

芽を見ている。

 

ぽつり。

 

「……通った。」

 

あなたが聞く。

 

「何が?」

 

ガヴィアは芽を見る。

 

「……冬。」

 

少し間。

 

「……中。」

 

風が、芽を揺らす。

 

春の光が、静かに広がる。

 

ガヴィアは芽に触れない。

 

触れたら壊れるのを知っている。

 

でも、土をそっと押さえる。

 

「……ここまで……来た……」

 

 

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