つぶやきギデオン   作:赤銀

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小石2個目

 

風が強い。

 

あなたは洞窟の入口にいる。

 

空は、暗い。

 

まだ、降ってはいない。

 

風も、ほとんどない。

 

静か。

 

少しして。

 

ぽつ。

 

一つ、音がする。

 

地面に、落ちる。

 

ぽつ。

 

また一つ。

 

間をあけて、

 

ぽつ。

 

雨。

 

強くはない。

 

ただ、ゆっくり落ちてくる。

 

あなたはそのまま見ている。

 

音は、ばらばら。

 

同じじゃない。

 

でも、

 

続いている。

 

ギデオンが近くにいる。

 

空を見ている。

 

それから、

 

足元に目を落とす。

 

「……ちょっと、借りるね」

 

小さく言う。

 

近くにあったものを拾う。

 

木の皿。

 

浅い。

 

少し欠けている。

 

それを、

 

そっと地面に置く。

 

ぽつ。

 

雨が当たる。

 

音が変わる。

 

少しだけ、やわらかい。

 

あなたはそれを見る。

 

ギデオンはもう一つ拾う。

 

石。

 

平たい。

 

少し冷たい。

 

それも、離して置く。

 

ぽつ。

 

音が違う。

 

硬い。

 

「……ね」

 

ギデオンが言う。

 

「音、変わる」

 

あなたはうなずく。

 

もう一つ。

 

竹。

 

細い。

 

空洞。

 

それを、傾けて置く。

 

ぽつ。

 

ころ。

 

転がる音。

 

雨は同じように落ちているのに、

 

音だけが、少しずつ違う。

 

沈黙。

 

あなたは考える。

 

それから、

 

近くの小さな皿を拾う。

 

丸い。

 

手の中で、重さを確かめる。

 

どこに置くか、

 

少し迷う。

 

それから、

 

そっと置く。

 

ぽつ。

 

音が鳴る。

 

やさしい。

 

少しだけ、ひびく。

 

あなたは何も言わない。

 

ただ、聞いている。

 

ぽつ。

 

とん。

 

ころ。

 

ぽつ。

 

ばらばらの音。

 

でも、

 

どこかで重なる。

 

そのとき。

 

地面が、ゆっくり動く。

 

土が、やわらかく盛り上がる。

 

ガヴィア。

 

「……ん」

 

周りを見る。

 

皿を見る。

 

雨を見る。

 

しばらく、そのまま。

 

それから、

 

ぽつり。

 

「……落ちてる」

 

沈黙。

 

ガヴィアは地面にしゃがむ。

 

指で、土を触る。

 

先の方で深く掘る。

 

ギデオンがそれを見る。

 

「……なにしてるの?」

 

ガヴィアは答えない。

 

ただ、

 

深くする。

 

そこに、

 

丸い石を置く。

 

隙間を少しあけて、

 

上に、竹を差し込む。

 

雨が、

 

その中に落ちる。

 

少し間。

 

……ぽん。

 

音が、遅れてくる。

 

あなたは顔を上げる。

 

さっきと違う音。

 

外じゃない。

 

奥から、鳴る。

 

ぽつ。

 

……ぽん。

 

ぽつ。

 

……ぽん。

 

ガヴィアが言う。

 

「……中」

 

少し間。

 

「……ひびく」

 

沈黙。

 

あなたは耳をすます。

 

外の音。

 

中の音。

 

少しずれて、

 

重なる。

 

ギデオンが小さく言う。

 

「……さっきより、静か」

 

あなたはうなずく。

 

音は増えているのに、

 

なぜか、

 

静かに感じる。

 

ガヴィアが、首を傾ける。

 

「……ちがう」

 

ぽつり。

 

「……ふたつ」

 

あなたは少しだけ考える。

 

「ふたつ?」

 

ガヴィアはうなずく。

 

地面を指さす。

 

「……落ちる」

 

次に、

 

あなたのほうを見る。

 

「……ひびく」

 

沈黙。

 

雨は変わらない。

 

でも、

 

さっきとは

 

少し違って聞こえる。

 

あなたはもう一度、

 

音を聞く。

 

ぽつ。

 

……ぽん。

 

ガヴィアが言う。

 

「……同じじゃない」

 

少し間。

 

「……それぞれ」

 

沈黙。

 

あなたは何も言わない。

 

ただ、聞いている。

 

音は続く。

 

止まらない。

 

ガヴィアがあなたを指さす。

 

「…ん」

 

指先は中を指している。

 

「この音…」

 

一拍。

 

「……ここで、鳴る。」

 

沈黙。

 

雨は、まだ降っている。

 

皿に落ちる音。

 

中で響く音。

 

重なって、

 

ほどけて、

 

また重なる。

 

あなたは、

 

気に入った音の場所に、

 

少しだけ手を伸ばす。

 

皿を、ほんの少し動かす。

 

音が、僅かに変わる。

 

それでいい。

 

誰にも決められていない。

 

あなたが選んだ、

 

その小さな器の中で、

 

雨はそれぞれの音になる。

 

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