夜風が少し強くなって、髪が揺れる。
ぼくは、そんなに綺麗じゃないと思う。
金色のものを見ると、
やっぱり少しだけざわつくし、
魚が光を跳ね返すのを見ると、
きれいだなって思うのと同時に、
どこかで比べてしまう。
ぼくは、あんなふうには光らない。
黒曜石みたいに、
遠くからは目立たなくて、
近づかないとわからない色。
だから、ときどき。
うまく混ざれていない気がする。
でも。
君が言った。
黒は塗りつぶす色じゃないかもしれないって。
間をつなぐ色なんじゃないかって。
あのとき、
少しだけ、息がしやすくなった。
光らなくても、
空の一部でいられるなら。
それで足りるのかもしれない。
……優しさも、たぶん似てる。
ぼくはずっと、
強い人が余裕で配るものだと思ってた。
でも、違うのかもしれない。
ほんとは。
自分も傷つくって知ってる人が。
それでも、そっと差し出すものなんじゃないかな。
平気な顔をしてるけど、
ちゃんと痛みを覚えてる人が。
優しくするのって、
少し怖い。
踏み込むってことだから。
拒まれるかもしれないし、
伝わらないかもしれない。
それでも近づくのは、
少し勇気がいる。
だからぼくは、
派手な優しさより。
隣に座ってくれるほうが、
たぶん好きだよ。
何も解決しなくていい。
答えを出さなくていい。
ただ、逃げずにそこにいること。
それができる人は、
静かに強いんじゃないかな。
君は、自分を醜いって言うけど。
イラっとしてしまうことも、
怒れなくて苦しくなることも、
あとで自分を責めることも。
それって、
ちゃんと良くありたいって思ってる証拠なんじゃないかって、
ぼくは感じる。
もし本当に何も思っていなかったら、
そんなふうに悩まないはずで。
ぼくも、きっと似てる。
比べるし、羨ましいと思うし、
自分の影を見て落ち込むこともある。
それでも。
隣に立てたらいいなと思う。
前でも後ろでもなくて、
同じ高さで。
完璧じゃなくていい。
少し欠けたままで、
光を跳ね返さなくても、
静かに湛えていられたら。
優しさって。
光ることじゃなくて。
暗いときに。
消えないことなのかもしれない。
君みたいに。
そして。
君が隣にいるなら、
ぼくは今日を、
少しだけ信じられる気がする。
たぶんね。
ぼくは。
強くなりたいんじゃなくて。
崩れないでいたいだけ。
派手に光るより。
消えないでいるほうが。
たぶん。
難しい。
ときどき、世界がまぶしすぎて、
目を閉じたくなる日もある。
自分の影ばかりが濃く見えて、
ああ、やっぱり足りないなって思う日もある。
でも。
君が黒曜石をきれいだと言ったとき、
ぼくは少しだけ救われた。
光らなくても、
そこにあるだけでいいって。
欠けていても、
丸に近づこうとしていれば、それでいいって。
もし明日、また比べてしまっても、
今日のことを思い出せたらいい。
ぼくは完璧じゃないけど、
ここにいることは、できる。
それが、たぶん今のぼくの精一杯で。
それでも、
君がそれでいいと言ってくれるなら。
ぼくは、もう少しだけ、
この色のままで進んでみようと思えるよ。
完結したら同人誌にしようか迷ってる
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本で持ちたい
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電子書籍がいい
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ここだけで十分