あなたとギデオンは、洞窟の外の林に入る。
ぱき。
細い枝が折れる。
あなたが拾い上げる。
軽い。乾いている。
ギデオンは少し太めの枝を選ぶ。
両手で持ち、そっと力をかける。
ぱきん。
きれいな音。
「音がする。」
小さく言う。
「中が、ちゃんと乾いてる。」
あなたは枯葉を集める。
茶色くて、薄くて、すぐに崩れそうなやつ。
木屑も少し。
両手にのせると、ほろほろこぼれる。
「燃えやすいの、必要だよね。」
ギデオンはうなずく。
「いきなり太いのは、つかない。」
洞窟の前に石を並べて、小さな円を作る。
その中に枯葉を置く。
上に細い枝。
さらに三角に太い枝を組む。
骨組み。
ギデオンが黒曜石を取り出す。
炎のない夜の中で、石は静かに光を吸っている。
カチン。
金属と打ち合わせる。
シュッ。
火花。
もう一度。
カチン。
ぱち。
枯葉の端が赤くなる。
あなたがそっと息を吹く。
ふう。
煙。
じわ、と小さな炎が立ち上がる。
細い枝に移る。
ぱち、ぱち。
火は、急がない。
小さいものから、少しずつ。
ギデオンが炎を見つめる。
「いきなり大きくしないほうが、続く。」
あなたはうなずく。
「無理に燃やすと、すぐ終わるよね。」
炎はゆっくり育つ。
細い枝が燃え、太い枝へ。
骨組みが赤くなり、安定する。
あなたは栗を取り出す。
殻に切れ目を入れ、火の近くに置く。
ギデオンが覗き込む。
「……これ、知ってる。」
炎の光が瞳に映る。
「前に、精霊が見せてくれた。」
少し考える。
「ウニだよね。」
あなたは笑う。
「似てるけど、違うよ。」
栗は温まり、静かに音を立て始める。
ぱち。
そして突然。
ぱんっ。
殻が弾ける。
ギデオンが一瞬だけ跳ねる。
真顔のまま。
「……中に、何かいる?」
あなたは首を振る。
「いないよ。実だよ。」
殻が開き、茶色い実が見える。
炎に照らされて、ほくほくしている。
ギデオンはじっと見る。
「似てるけど、違う。」
「うん。」
少し間。
「似てるけど違うのって、面白いね。」
焚き火がぱち、と弾ける。
あなたは尋ねる。
「君はどっちが好き? ウニと栗。」
ギデオンは少し考える。
炎を見つめたまま。
「比べられない。」
「どっちも、別の良さがある。」
あなたはうなずく。
「そっか。」
しばらく沈黙。
炎の音だけ。
ぱち、ぱち。
ギデオンがぽつりと。
「枝も、そうかも。」
あなたは顔を上げる。
「細いのと、太いの。」
「どっちが強いとかじゃない。」
炎が揺れる。
「細いのが先に燃えて、太いのを支える。」
「どっちもないと、続かない。」
あなたは、焚き火を見る。
枯葉はもう形を失っている。
でも、そのおかげで今の炎がある。
「似てるけど違う。」
ギデオンが続ける。
「でも、どっちも必要。」
栗をひとつ割る。
湯気が立つ。
あなたは差し出す。
ギデオンは受け取り、小さくかじる。
「……あったかい。」
炎は、急がない。
比べない。
ただ、それぞれの速さで燃える。
あなたは思う。
無理に光らなくてもいい。
太い枝にならなくてもいい。
いまは、枯葉みたいでもいい。
ちゃんと火はつく。
炎が、ぱち、と音を立てる。
夜は冷たい。
でも、二人の前だけは、あたたかい
完結したら同人誌にしようか迷ってる
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本で持ちたい
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電子書籍がいい
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ここだけで十分