《完結済み》勇者パーティーを追放されたオレが、女になって出戻る話   作:タンクトップ桶狭間

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相談

「……とまあこんな感じだな」

 オレが説明を終えると三人とも一様になんとも言えない表情を見せた。

 

「道を歩いていたら四天王のキリアナに会って……」

「死んじゃいそうになったら希望(ホープ)が発現して……」

「おまけに、いつの間にか女になっちまってた……なぁ?」

 

 状況を再確認するようにシドニス、リーナ、ガラドは言葉を繋げながら「うむむ……」と唸り声をあげる。

 

「ちっと色々起こりすぎじゃねえか? なんか悪いもんでも取り憑いてんのかよ」

「うるせぇぞこの筋肉やろう。こっちだって混乱してんだよ」

 

 いつものように軽口を投げつけ合うオレたちの様子が面白かったのか、シドニスが微笑んだ。

「ふふ、なんだか元気だね二人とも。とりあえずはミリア、君に発現した希望(ホープ)を確認させてくれないか?」

 

 シドニスの言葉に二人も頷く。四天王の出現に疑問を呈する奴はいなかったが、これに関してはそうもいかない。

 

 何故なら希望(ホープ)を保有するコイツらは皆、生まれた時からその異能を扱えていたからだ。ある日突然なんの前触れもなく希望(ホープ)が使えるようになったわけではない。

 

 伝説として語り継がれる大昔の希望(ホープ)持ちも、コイツらと同様に生まれつき異能を操ることができたという話だ。

 

 つまり今のところその唯一の例外がオレ、ということになる。その事実を踏まえた上で考えれば疑うのも無理はない。

 

 そんなコイツらの疑問を払拭してやるために、オレは氷王の両眼(アイス・アイズ)を実演してみせることにした。

 

「ああ、じゃあこれを見てくれ。さっき話したよな、キリアナに粉々にされたオレの槍の破片だ。これを……よっ!」

 

 オレは実体化させた槍の破片を上に投げ、窓から差し込む陽光を乱反射させるそれらに向かって希望(ホープ)を使用する。

「《氷王の両眼(アイス・アイズ)》」

 

 次の瞬間、バラバラに床に散らばるはずだった槍の破片たちは、仲良く氷塊の中に収まったままオレの手中に降りてくる。

 

 その光景に、シドニスとリーナは息を呑んでいた。

 唯一オレたちの中で魔法に明るくないガラドだけは首を傾げていたが、二人にはわかってもらえたようだ。

 

「なあこれ……普通の氷結の魔法とはなにがどう違うんだ?」

「……はっきり言えば、次元が違うよ。僕やリーナが氷結の魔法を使ったとしても、おそらく破片を三つか四つまとめて凍らせるのが関の山だろう」

 

「でもミリア君は数えられないほどの破片を一発で凍りつかせたの。たしかにこれは……ただの魔法じゃできないことだわ……」

 

 二人がそこまで言うとガラドの奴も理解したのか、ニカッと健康的な歯を見せつけながら、

「おおそうか! それじゃあ、まだミリアと旅を続けられるってことだな!?」

 と喜んだ。

 

「いや、そうはいかねえ。まだオレは筋を通してねえからな」

 だが、オレは親友の言葉に待ったをかける。

 

「なあシドニス。聞いてくれ」

 オレにはやるべきことが、いや、やらなきゃいけないことがあるからだ。

 

「オレはお前らの仲間でいるに相応しい能力を手に入れた。だから……もう一度オレを仲間に入れてくれ」

 真っ直ぐにパーティーのリーダーであるシドニスを見つめる。

 

「ああ勿論だ。だけどその前に僕からも言っておかなきゃいけないことがあるんだ」

 シドニスは笑顔で頷いた後にバツの悪そうな表情を見せた。

 

(あん? シドニスが言わなきゃいけないことってなんだ?)

 オレは首を傾げるが、その答えはすぐにシドニスの口から出てくる。

 

「その……君をパーティーから追い出す時に、たくさん悪口を言ったことを謝らせてくれ。本当にすまなかった」

 

「……え?」

 

 オレはその言葉を聞いて数秒間止まったままになってしまった。

 

 だってそうだろ? オレは今まで戦闘に関しては全くのお荷物でしかなかった。この前のオルデム戦の時はそれが最も顕著に現れ、今朝追放されるに至ったのだ。何一つとして疑問を挟む余地はなかった。

 

 その上コイツはオレが責任を感じないようにと、慣れない悪者を演じてオレを追い出す役を担った。

 

 責任感の強いシドニスはこれがリーダーの責務だとか思っているんだろうが、オレにはその不器用な優しさがわか……って……

 

「!!」

 そうか、シドニスはオレが気付いたということを知る手段がない。他ならぬオレ自身が、何も言わずに出て行ったのだから。

 

 それを理解した上で、オレを追放した後ろめたさを抱えながら旅を続けるつもりだったってことなんじゃないのか?

 そんな覚悟を決めていたんじゃないのか?

 

 今までさんざん不器用で優しい男だとは思っていたが……

 

「ここまで突き抜けてるとはな……」

 小さく呟く。

 

(だったらオレは、シドニスの覚悟にちゃんと答えなきゃいけねえよな)

 オレはシドニスの発言に笑顔で返す。

 

「謝る必要なんかねえよ。オレはシドニスのやったことに恨みとか微塵も感じてねえからな」

 するとシドニスは一瞬だけキョトンとした顔を見せ、次いで微笑をにじませる。

 

「そうか……そう言ってもらえると助かるよ。それじゃあミリア、また僕たちと旅をしてくれるかい?」

 

「おう! よろしくなみんな!」

 

 これは、一度は勇者パーティーを追放されたオレが、女になって出戻る話。

 そして、その後を書き記す冒険譚である。

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