《完結済み》勇者パーティーを追放されたオレが、女になって出戻る話   作:タンクトップ桶狭間

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即断、即飛び!

「ふむふむ……面白い話っすね。ウチもついていけば良かったって、今さらながら後悔してしまうくらいには」

「はっはっは、氷鷹(ひだか)にゃ世話になったな! この大砲のおかげで助かったぜ」

 

「オレたちの実体験を見世物みたいに言ってんじゃねえ」

「あはは……氷鷹(ひだか)先生、あんまり失礼なことを言わないでください」

 

 オレとガラドの間に起きた出来事を簡単に説明し終えると、氷鷹(ひだか)が面白いものを発見した子どものような表情を見せる。

 とはいってもその目は、楽しそうな玩具を発見した幼児のそれではなく、弄ぶに足る獲物を見つけた時の猫に近しい。

 

「まあ、文句言いに来たんじゃねえさ。氷鷹(ひだか)の発明品のおかげで助かったのは事実だからな、ありがとう。そんで用事があって……」

 

「言わなくてもわかるっすよ。今度は王都にひとっ飛び、っすよね?」

 

 オレの言葉を先取りして、氷鷹(ひだか)が口角を上げて見せる。

 どうやら新聞を読んで、オレたちの情報を読み取った末に結論へと至ったのか。

 

 というかそこまで難しい話でもない。

 勇者パーティの活躍により、セルトール王国を囲んでいた魔族四天王が全て討伐された。残るのは、おそらく旧リナトー皇国の城に待ち受けるだろう魔王だけ。

 

 魔族と正面からぶつかり合った時点で、もうこの戦争はどちらかが死に至るまで止まることはあり得ない。魔族の習性を加味すればなおのこと。

 

 オレたち……いや、セルトール王国が真に平和を勝ち取るためには、旧リナトーの首都を奪還し、魔王を討ち取るより他に道はない。

 

 反面、魔王軍からすれば、リナトーから奪い取った城壁や施設を駆使しつつ、残存兵力をありったけぶつけてオレたちを消耗させる。そして疲弊しきったオレたちを討ち取る作戦が最も勝機があるだろう。

 

 つまり魔王軍側からすれば、旧リナトー皇国の領地から打って出るメリットはなく、オレたちはそのナワバリに足を踏み入れなければいけない。

 

 あるいはこのまま静観し合うことで、戦争状態を続け、消耗戦に移行することも出来なくはないが……様々な理由からそれは現実的ではない。

 

 まず第一に、魔族の好戦的な種族特性と個々人の力量。戦いが続けば、一般兵の能力差でより被害を受けるのは王国側だ。ここまで呪装持ちがいなくなれば、どれだけ長引いても最終的に勝つのはオレたちだが……損害は計り知れないだろう。

 

 次に状況。四天王を討ち取った現状と、長期間魔族の脅威に晒されていた国民感情を汲めば、ここで攻めに転じる好機を逃すわけにはいかない。

 

 そして最後に、リナトーから逃げ延びた旧皇国民のこと。王城に亡命した旧リナトー皇族を含む多くの人が、現在もセルトール王国内にいる。

 

『彼らの故郷を取り戻してあげたい』というわけではない。同盟国であったリナトーとセルトールの関係性と、現状を踏まえた場合……もし魔王軍を全滅させ、リナトー皇国領地を奪還した時の恩恵は凄まじいものになる。

 

 魔王軍討伐を成し遂げ、皇国の再建まで支援したとなれば、もう対等な同盟とはならない。

 皇国は属国へと名を変えて、実質的にセルトール王国はリナトーの全てを手に入れることになるだろう。

 

 セルトールは周辺国全てと仲良しというわけではない。魔王軍との戦争以前から、小競り合いが頻発していた反友好的態度を示す隣国も当然存在する。

 

 しかし『リナトーを滅ぼした魔王軍を、セルトールが討ち倒した』という肩書きがあれば、周辺国への牽制としてこれ以上のものはない。

 

 そして前述した項目から発生する直接的、あるいは間接的な利益を見逃すほど、現国王は愚かではない。

 

 今、セルトール国王(こくおう)が求めているのは魔王軍討伐を成し得る強者。勇者パーティを含んだ、魔王討伐部隊の再編成だ。

 そのためにオレたちは王都へ急ぐ必要性がある。

 

 オレですらこのことに気付いているのだから、天才の氷鷹(ひだか)がそれを理解できないわけがない。

 

「話が早くて助かるが……この前のと合わせて請求は防衛軍に……」

「それも、言うまでもないっすよ。ちゃちゃっと台座に乗ってください二人とも」

 

 氷鷹(ひだか)に促されるままガラドが台座に上がり、オレの方へ顔を向ける。

「ほら、雪月(ゆづき)

 

「なんだよ……エスコートのつもりか……よ!?」

 手を差し伸べてくるガラドに近づき、なんとなくそれを握った瞬間、オレはガラドの腕の中に幽閉されてしまった。

 

 いきなり抱き締められてしまったオレは抗議の声を上げる。

「なんっ……!? おま……!?」

 だがそれは声にこそなってはいるものの言葉にはなっておらず、オレの意思は形を成してくれなかった。

 

「だってお前、高いとこ苦手なんだろ? そん時の記憶もちゃんとあるって言っただろうが」

(だからっていきなり抱き締めるやつがあるか!!)

 

 知り合いの眼前でいきなり体を密着させてきたことへの羞恥心。

 まともに言葉にすらならなかった、オレの意図を汲み取ってくれたことに対する嬉しさ。

 

 二つがないまぜになって、もはやなにがなんだかわからなくなってきた。

 

「ヒューヒュー、お熱いっすね!」

氷鷹(ひだか)先生、茶化しちゃダメですよ!」

 

 からかう氷鷹(ひだか)に怒りが湧き、苦言を呈するレミオに感謝を抱く。

 

 色んな感情が入れ替わり立ち替わりオレの胸中をかき乱すものだから、ついにオレは意識を手放してしまった。

 

「お、おい雪月(ゆづき)!? どうし……」

 落ちゆく意識の中、オレの鼓膜に張り付いたガラドの声が、またオレに喜びを与えてくれる。

 

 

 それを抱き締めつつ、オレは瞼を閉じた。

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