普段はオンラインゲームに生息しているカスに会いに行く。

なお、玄関前で出会って一言目は俺、この世の創造神なんだよね、である。



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生ゴミにも劣る外道

 

 

 

「ゲハ! ゲハハハハ!」

 

 今、私の前で人があげていい笑い声ではない声で笑って畳の上を転げ回っているのは、自称この世を創った創造神の産業廃棄物以下のゴミクズだ。

 

 無論、言葉通りの産業廃棄物以下のゴミクズが前に有って笑い声を上げて転げているのではない。目の前のコレはこの形容では足りないような人間性をしているのだ。

 

 そう、ネットで知り合い遥々遠くからやって来た私にお茶の準備させてこうしているくらいには人間性、性格、その他諸々が終わっている。

 

「お前の部屋だろう? お前がやれ」

「嫌だね。そもそも、茶くらい出せとその口でしっかりと喋ったのはお前じゃないか。なのに何でこの部屋の主人である俺がやんなきゃならないんだ?」

「お前、ホントに、……終わってるな」

 

 目の前の楽しそうにしているコイツを罵る言葉を思いつかなかったことに腹立たしさを感じる。

 帰ったら絶対に罵倒の語彙を増やそう。いや、今からでも遅くはない。そう、決意を固める。

 だが、それは目の前のコレを片付けてからだ。そうして、私は茶を十分に蒸らした後に2つの器へと注いだ。

 この、人間性と性格と行動と言動がこの世の終わりの時よりも酷い人間であっても最低限の茶を淹れられる物を揃えているとは意外だった。

 三角コーナーは茶の準備をした時にないことに気付いたため茶殻を捨てるために、ゴミ袋を探す。

 

「そうだ、ゴミ袋は何処にある?」

「あ? ある訳ねぇだろ。もっと頭を回せよ。この部屋をしている奴がゴミ袋を常備している様に見えるのか? それじゃあ、頼んだ」

 

 中身の減った急須を置き、器をコレの前に一つ置いてから部屋を見渡す。

 

 私が今いるのはとあるアパートである。この部屋はその一室で非常に殺風景な畳張りの小さな部屋だった。他にはフローリングが貼ってある小さな台所があるが他には何も無い。

 そして、特徴的なのは本当に人間が暮らしているのかも怪しいほどに生活感が無かったことだ。ゴミ箱が無い。流しに水垢が無い。コンロに油汚れが無い。

 

 だが、装うように私が今いる畳張りの部屋にはずっと置いてあるのであろう草臥れた布団があるし、ちゃぶ台やその上に乗った、今は横に退けられているパソコンなどが置いてあった。

 

 この急須と湯呑みも使われた感じが無い。ここまで綺麗なのは潔癖というより、本当にここで生活しているのかと疑問を抱かせるものであった。

 

 ここまで生活感が無いと逆に草臥れた布団とパソコンだけが妙に異質に感じられて気味が悪い。

 

 それでも、私がまだここにいるのはネット上でも十二分に伝わり、現実でこうして会ってみて想像以上に外道さが伝わってきたコイツに約束を守るとはどういうことかを教えるためである。

 実際にはコレに約束守れないとかお前頭マトモにできてんのかよ? 本当に人間名乗れますか〜? などと言われるのが非常に癪であったからだ。

 

 本当は、それに鏡を百枚は突きつけて普段のお前の行動が如何であったかを滾々と説教してやりたいが、そうしたらネット上であることを良いことに簡単に逃げ出すだろうからこうやって来たのだ。

 

「それで、いきなりここに来いと言ってきたのは何故なんだ」

「いや〜、ホント。マジで来るとは思ってなかったわ。すげぇな、お前」

 

 まさか、コイツあんなに誘っておいて来るとは思っていなかったのか? 

 脳みその血管が数本は切れそうになるのを茶を啜って怒りを落ち着けながら問い返す。

 

「お前の顔面に私の拳がめり込むのが嫌なら理由を早く話せ。そうしたら無料で整形してやるのを勘弁してやる」

 

 思った以上に怒りが抑えきれずに内容が物騒になってしまった。いかんな、コイツに怒っても体力を消費するだけだ。

 

「分かったって、話すよ。俺はな、実はこの世の創造神なんだわ」

 

 実は私がこの話を聞くのは2度目だ。一度目は内容が理解できずに落ち着かせてくれと言って茶の準備をしたのだ。

 ちなみに一度目の時のその告白に対する返答は、は? である。

 

 ならば2度目はどうか。一度話を聞いて茶を淹れるくらいの時間は経った。その間に脳内を何回かその言葉が巡ったのだ。なにか心境が変わってもおかしくはない。

 2度目の告白に対する私の答えは

 

「は?」

 

 である。

 

 何回、このこの世の全ての汚濁を集めても足りないくらいの、まだミジンコのほうが綺麗というか、比べることが失礼なコレに騙されてきたことか。

 ネットゲームで、手に入れるのに3ヶ月を費やした武器を二束三文で売り捌き、私の怒る姿を笑いながら見ていた事を鑑みればミジンコのほうが素晴らしい。

 彼らは天敵を感知したら一日かけて頭に角を生やすのだぞ。その頃には殆ど食べられているとは言え、天敵を見つけたらなすりつけ食われる様を見て高笑いをする姿がやすやすと想像できるコレとは違う。

 

「理由は話したぜ」

「そうか。で、本題はなんだ。そんなつまらない嘘を言うために私を呼んだ訳ではあるまい」

 

 いや、コイツならあり得る。コレを言うためだけに250kmの距離をネットの友人に渡らせる事がコイツには出来る。

 

「いや、ホントにこれが理由だよ。……、フハッ」

「どうした、何が可笑しい。……あぁ、私がお前のくだらない冗談に惑わされた事がそんなに面白いのか」

「いやいや! 違うって! そんなんじゃないんだよ! ッンフフ」

「そうか、最後の言葉はそれでいいんだな」

「いや! コレは違くて! お前が面白いんじゃないんだよ!」

「ほう、遥々やって来た友人を嘲笑う為に呼び寄せた挙句それが面白くないと?」

「だから! ちげぇよ! なんなんだよ! その厄介な解釈の仕方は!?」

 

 私は分かっている。慌てた様子で否定しているが今も半笑いであることを、それどころか私が訪れたときからずっと半笑いで、耐えきれなくなって笑い出したことを。

 

「お前じゃなくてこの世界が面白すぎんだよ!」

 

 その言葉を聞いて私は思考が一瞬止まってしまった。

 あぁ、ついにコレは壊れてしまったのだな。あの外道以下のゴミクズといえども哀れである。惨めだ。

 いや、そんな事は言ってはいけない。今の時代差別や偏見は良くない。壊れてしまったコレの為にも優しく接してあげなければ。

 いい頭の病院を知っているんだ。そこに行くといいと思うよ」

「お前、無茶苦茶言いすぎだろ! それ、俺に聞こえてんだからな! 俺は精神がイカれちまった哀れな人間じゃねぇ! この世の創造神なんだよ!」

「あぁ、彼はそう思わないと自我を守っていられないのか。可哀想に……。いや、そう思うのも良くない。彼が悪いのではない、彼をここまで追い詰めた社会が悪いのだ。

 否定してあげるのは良くない。

 そうだね、貴方はこの世の創造神なんですよと言ってあげながら病院へ上手いこと連れていかねば彼のためにならないであろう。

 創造神としてのお勤めとして行かねばいけない所があるのです。風林の心クリニックという所なのです……」

「お前わざとやってるだろ!」

 

 正直に言おう。目の前のコレがてんやわんやしている姿がこの上なく面白い。愉快で楽しくて、積年の恨みを果たすにはちょうど良く、おもちゃとして何度も遊べて良い。

 それをやめる理由が何処にあろうか。いや、ない。そんな理由など何処にも、天地のあらゆるところを探しても存在するはずがない。

 コレを弄れる時間など値千金である。今、この瞬間が人生で絶頂である。

 

 だが、それもここまでにしておこう。これ以上やるとコレと同類になりかねない。それはとてつもなく業腹である。コレと同類になってしまうのは死んでも御免被る。

 

「ふぅ、わざとやっているに決まっているだろう」

「お前、罪悪感とか感じないのか!?」

「私は大いに感じるとも、だがお前相手に罪悪感というものが芽生えることは今後一生ない」

「他の奴になら感じるんだろ!? なんで俺には感じねぇんだよ!?」

「お前のこれまでの所業を思い出せ」

「えぇ〜……。俺、そこまでなんかしたっけな」

 

 コイツ覚えていないのか……! まぁ、確かに人の道から外れる事をさせたら右に出るものはいないコレなら覚えているはずなどないか。

 

「だが、一つくらいなら覚えているだろう?」

「いや、覚えてるって! ……え〜っと、アレだろ? ほら、あれあれ。あの、そんときのアレ」

「なんだその具体性に欠いた話は。まさかお前一つとして身に覚えがないのか? 悪逆非道の人間として名を馳せているくらいには悪行を積み重ねてきたのにも関わらず?」

 

 あたふたとしながら弁明を重ねようとする目の前の相対評価の対象に未処理の下水を選んだらその下水が超純水をはるかに超えた純粋さを持った霊験あらたかな聖水と同じ評価になるくらいには性格がこの世の物とは思えないほどに汚れているコレを見て、コレがやった事が頭の中に列挙される。

 

 先ほども言った私が3ヶ月の月日を費やして入手した装備を二束三文で売り捌いたこと。

 約束を守ったことは数えるほどしかなく、やりたいことをやるためには手段を選ばず、えげつない事を平然とする。

 初心者を騙してゲーム進行不可にするというのは日常茶飯事で、殺人(プレイヤーキル)は息をするように行う。

 詐欺、脅迫、騙し討ち、虚偽の噂の流布、市場の崩壊を目的としたある物品の一大生産地(湧き位置)の占拠。

 これら全てが許されているサーバーでの出来事であったらどんなに良かったことか。それならまだ、ゲームの遊び方の範疇と言えただろうに。

 だが、コレはそれら全てを許されていないゲームでもルールの穴をついて行った。それらが出来ないゲームではボイスチャット機能を使い人間関係を崩壊させ地獄絵図を作り出して高笑いしながらそれを眺めるということを行っていた。

 

 コレはカスである。人に迷惑をかけ、それでも憚ることなくむしろ普通の人間より堂々と生きている事が不思議なくらいのカスである。

 

 思い出したら腹が立ってきた。目の前にはまだ、何も思い出せておらず、ああでもないこうでもないと呟きながら悩んでいるアレがいた。

 

「黙れ汚物めが」

「え、急になんだよ! 思い出せって言われて、思い出そうとしてやったのによぉ!」

 

 いけない、コレと関わるとどうしても口が悪くなってしまう。一旦落ち着かなければ。

 お茶を口に含んで飲み干し、腹の中で煮えくり返る感情を鎮めてから器に急須からお茶を注ぎ直す。

 

「ふぅ、それで本当にお前がお前自身をこの世の創造神だと思っているのは分かった」

「おぉ、ようやく分かってくれたか」

「信じてはないがな」

「酷えなぁ。これまでネットの海越しとはいえども仲良くやってきたじゃないか」

「私がお前の尻拭いをするだけの関係を仲良くとは言えないと思うが……。それに、信じてほしいのなら証拠の一つでも見せて欲しいものだ」

 

 どんなに頑張った所でコレが出せる証拠など、根拠など何一つとしてない妄言か、ありふれた手品の一つぐらいが限度であろう。

 

「分かったよ。……そうだなぁ、お前、何か欲しいものはないか?」

「金、物質としての金だ。用意できないなら、用意できないでいい。……嘘をついたのは認めてやろう。お前自身がそれを信じ続けているのなら本当にせい……」

 

 私が言葉をそのまま続けなかったのはコレが本当に自分自身の事をこの世の創造神だと思っていた場合、精神病院を紹介してやると告げるのはコレにとって酷であると思ったからではない。

 

 目の前にある、ちゃぶ台の上に乗ったコレの右腕が蚯蚓のように波打ち、何かを吐き出そうとするように手までその波が何度も押し寄せる。

 波の上に下の筋肉が痙攣したことによって出来た模様とそれに押し出されて皮膚に押し付けられて浮き出た血管によって覆われたその右腕に気がついたからだ。

 

 痛そうな腕に反してコイツの顔はまるで変わっていなかった。半笑いのまま、大したことはないと言うように口を開いた。

 

「お、気付いたか。この世界はな、緻密に作っちまったからな。こういうことしないといけねぇんだよ」

 

 その声音は苦しげでもなくやはり普段のコレであった。それがどうしようもなく異質で気味が悪い。

 

「何だ、その右腕は。ついに肉体もお前のカスの様な性格に合わせ始めたのか?」

「え。酷えなぁ。お前を説得する為にちゃんと金を作ってやろうとしているのに。まぁ、信じてくれているだけで有り難いが」

「信じてなどいない。私を説得する為には……」

「金を出せ、だろ? ちょっと待ってな、今出す」

 

 ゴトリと音を立てながら歪な黄金が掌からちゃぶ台の上に乗せられた。

 

「これで信じてくれるか?」

「まぁ、信じてやろう。それで、お前は何がしたいんだ。ここまでやって来た私への労いとしてその金を渡して終わり、ではないのだろう?」

「あっさりと受け入れるんだな」

「私が考えても分からないことは世の中には沢山あるし、知る事、理解する事を諦めらめる事も知っているし、諦めてきたからだ」

 

 それに、塵屑のほうが意思を持たぬだけまだ良いコレは、認めたくないがネット上とはいえ長い付き合いの友なのだ。私くらい信じてやらねば。

 

「まぁ、理由は分かったよ。それで、お前を呼んだ理由だな。それはこの世界を自慢したかったからだ」

 

 世界を自慢したかった……か。

 

「この世界はそれほどに素晴らしいものであったか?」

 

 世界には、悲劇などが溢れているのに? 性格が終わってるからこそ素晴らしいというのかもしれないが。

 

「矛盾が存在しないのにこんなにも複雑なものになるんだぞ? 複雑すぎても面白くない。単純すぎても予測できてしまう。ただ単にランダムなだけでも面白くない。ある程度は規則があって予測できるが、たまに外れるくらいの感じ。その点この世界は完璧だ」

「そういうことではない。この世界にはお前という創造神かいるらしいではないか。ならば、何故こんなにも苦しみが多いのだ?」

 

 仮にも神を名乗るなら世界に平穏の一つくらいもたらしてほしいものである。

 

「俺は、お前らの想像してる神とは違うんだよ。う〜ん、近しい解釈を上げるとするならば理神論って奴かな。実際はこの世界、唯物論に近いが世界を創ってるのが俺って時点で理神論みたいなもんだろ。ま、この通り世界に干渉しちまってるから理神論とは言えねぇがな。

 それで、苦しみが多いって? そりゃあ俺の管轄外だ。俺は世界とルールを創ったがお前らみたいな奴が生まれるなんて想像もしていなかった。わざわざ想定外の存在のためのルールなんて俺は創らない。世界はルールに則って秩序だって動くだけだ。ま、だからこそ見ていて面白いんだけどな?」

 

 世界を救うから神ではなく、世界を創ったから神、ということなのだろうか。

 

 それに、コレにとって重要なのは世界のルール、物理法則が正しく動いていることであって、その結果偶然生まれた私たちがどうなろうとコレが創った物理法則に従っている限りはどうでもいいのだろうな。

 

 ライフゲームのようにルールだけをコレは創り、ルールに則って動いた結果がこの世界。この世界がライフゲームと違うのはルールが複雑であるということぐらいだろう。

 

 目の前にいるコイツはそう言った後ニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべて口を開いた。

 

「もちろん、お前はただの物質だよ。俺が創った素晴らしいルールに則って動く物だ」

「そうだな。私はただの物質だ」

「案外すぐに納得するんだな。前に魂とか、魔法とか、神とか信じているって言っていたからもっと反論するのかと思ったけどなぁ」

 

 私の言葉を受けてコイツはつまらなさそうに言ってから、寝転がってしまった。窓から入る光が顔面に降りかかって、眩しそうに目を細めて外の景色を見ている。

 今の季節は春。最近季節の2極化が進んでいるせいか日差しは夏かと思うくらいには熱い。それでも寝っ転がったまま私の返答を待っている。

 

「そうだな。その通り、私は魂や神を信じている。そうでなければ死の恐怖を乗り越えられなかったからだ。来世があると信じなければ私は夜も寝られぬからだ」

「魂は無ぇ、神も俺以外にはいねえけどな」

「それでも、だ。信じることは自由だろう? たとえ、私が今感じている感情も、思考もただの物理法則に従った結果であっても、厭世観に呑まれて世を儚む必要は無い。私は一時期無神論を信じて、死んだ後を考えてしまって無になるという結論しか出てこなくてその恐怖に怯えたから魂や神を信じようとしているのだ」

 

 まぁ、魂や神を信じようとしているが特定の神を信仰しているわけではない。実に日本人らしく私は私の都合の良い神を都合のいい時に信じている。

 それも、信じていると言っても大袈裟なものではない、受験の時に太宰府天満宮などにお参りに行くのと同じだ。

 

「へぇ、そんなものなのか。俺にはわからんな。死ぬという事はないし、同族がいねぇから死を見たことがねぇ。まぁ、結構前にそれっぽい物を創った時もあったがな」

 

 前? という事は複数回世界を作ったのか。コレは一体どれだけの間生きてきたのだろう。

 少なくとも宇宙一回分くらいは生きているということか。それでここまで人間性があるのは凄いというべきか、コレの性質からなのか。

 

 私が驚きを感じて黙ってしまっていると、おっ、雀だ。と間抜けな声が室内に響き渡る。

 

「世界を創るのは何度目なんだ?」

「うーん。……八万四千七百三十一回目くらいか? でも、その上にやったことが有るやつが並ぶからな。まぁでも、そんくらいかな」

「なんだ、その曖昧な言い方は」

「俺がいるところはお前らがいるこの世界と違って時間というものがあやふやなんだよな。俺は大体無限に続く世界創造を繰り返して、それが終わったらまた一から世界を創り始めるみたいな感じなんだよな。だからこの……ループ? が始まってからが八万四千うんたらかんたら回って訳だ」

 

 それは、地獄と同等ではないのか? 

 

 自分以外誰もいない空間で何億年と言う時間を過ごすのだ。

 世界を創れるような力を持っているとはいえ所詮は一人遊び。仮に私が同じ立場だとしたら他の人間を求めて世界を創り続け、結局は私の創ったルールに従う物でしか無いと突きつけられ続けられてしまい精神をおかしくしてしまうであろう。

 それどころが人間である私は宇宙一つの寿命に耐えられるのかも分からない。

 

 世界を一つ創り出鱈目な法則に従って動く奇妙な世界を何億年と眺め続ける。

 

 世界を一つ創り至極単純な法則に従って予想通りにしかならない退屈な世界を何億年と眺め続ける。

 

 世界を一つ創り無作為に動くだけの法則に従いテレビの砂嵐のような意味のない行動を繰り返す世界を何億年と眺め続ける。

 

 それを、何万回も。賽の河原にも似て永遠と終わりのない徒労感だけが積み重なっていく虚無の時間だ。

 楽しいのは最初の数瞬だけだろう。その後は退屈か、膨大な時間にゆっくりと削られて、ただ生きているだけの屍に少しずつ変貌していく。

 

「辛くないのか?」

 

 よっと声をだしながら腹筋を使って起き上がったコレは、私の目を見て言った。

 

「辛い? どうしてだよ。今こうして楽しく話しているのに? 辛いなんてことあるわけないだろ」

「だが、辛い時もあるのではないか? 無限に続く時間というのは精神を摩耗させるものだ」

 

 問われたコイツはちゃぶ台の上にまだある黄金を手で弄びながら悩むように唸る。

 そして、歪な形に合わせて光る黄金を眺めながら話し始める。

 

「俺は全知全能の神じゃねぇからなぁ。だからこそ俺が創ったルールに従うこの世界の未来も分からない。それが面白くて退屈を感じる暇がねぇ。ま、そうなるように創ったのも俺だがな」

「面白くない世界を創ってしまった時はどうするんだ」

「次を考えながらその世界を見る。良い感じに思考の時間があるのは助かるぜ? 世界はクソつまらんせいでそれしかやることがねぇけどな」

 

 思った以上になんでもなさそうなコイツを見て少し安心する。それと同時にやはり、異質であるとも感じる。

 

 だが、まぁ。こんなものだろう。

 

 何処かの小説か、テレビか、それとも友人との会話の間だっただろうか。こんな話が頭の中に残っている。

 

 どんなに恵まれた環境であっても当人にとって辛ければそれはちゃんと地獄であるのと同じように、どんなに過酷な環境であっても当人にとって幸福なものであればそれは天国である。

 

 という話。

 

 たとえ、私が今日からプロのクリケットの選手になる為の合宿などに招かれても辛いだけで楽しくはないだろう。

 クリケットをやっている人からすれば喉から手が出るほどに羨ましい立場だろうが、興味のない私にとっては肉体的にも精神的にも辛いだけだ。

 

 私は本を読むのが好きだが、活字が好きではない人は本を読めと言われてもつまらない、退屈だと感じるだけだ。

 

 コイツにとっては現状が天国に近しいものだったのかもしれない。

 

 だから。まぁ、いい。

 

「それにしても何故私に正体を明かそうとしたんだ?」

 

 私は、弱くて愚かな人間だ。

 世の中の大抵の人間と比べたら劣っているだろうし、宗教や神、魂という存在に頼らなければ死の恐怖を乗り越えられない。それらを信じようとしても、心まで信じきれないから、まだ怖いままでいる。

 それに、私は目の前のコレの様な私よりも酷い人間がいると安心してしまうくらいには悪人である。加えて、理解する事を諦めてしまったからか、世の中の大抵の事を知らない。

 

 そんな事をつらつらと再確認していると実にあっさりとコレは言った。

 

「普通に付き合いが長かったから。あとお前のこの世界に対する感想を聞きたかったからだ」

「そうか」

「そうだ。で、どうよ。この世界」

「まぁ、良いんじゃないか? 世界は破綻してないし、至極まともに動いているように感じるよ」

「ほ〜。そんなもんなのか」

「あぁ、そんなもんだよ」

「じゃ、用は済んだしもう帰っていいぜ」

「分かった、帰るとしよう」

 

 私は立ち上がり、部屋の扉の前まで歩いていく。そこで一度立ち止まって背後を振り返る。

 手を振っているコレがいた。

 

「最後に一つ言っておこう。人をあまり怒らせるのは辞めておいたほうが良いし、迷惑をあまりかけるんじゃないぞ。ネット上でも節度を守って行動しろよ」

「お、何時もの説教じゃん。分かってるって。一応アレでも配慮した結果だぜ?」

「はぁ、今日はもう良い。なんだか疲れたからな」

「おう、んじゃな〜。また遊ぼうぜ〜」

 

 私が今度こそ帰るために振り返ろうとするとコレはキラリと光る何かを投げ渡してきた。

 

「おい、コレ忘れてんぜ」

 

 慌てて投げ渡されたそれを掴み取ると、それは目の前のコイツが作り出した歪な黄金だった。

 まさか本当に貰えるとは、ゲーム内であんなにも金に執着していたコイツがあっさりと手放すとは考えにくい。

 いや、現実だからこそか。コイツにとって現実での金なんて少し工夫すれば生み出せるものだから、それよりはゲーム内での金のほうが価値があるのかもしれない。

 

「貰っておくよ」

「よし、それで貸し借りチャラにしてくれ」

「それは無理だ」

「えぇ〜。マジかよ」

「どれだけ私に借りがあると思っているんだ」

「え〜。こんくらい?」

「それでは殆どないではないか。……はぁ、もう帰るからな」

「へいへい。んじゃな」

「あぁ」

 

 私は玄関からこの部屋を出た。アパートの廊下を歩いてミシミシと音が鳴る階段を下って行く。

 

 アイツは人間じゃなかったのか。私はその事を受け入れられているようで受け入れられていない。

 心の奥底で何十年とかけて積み上げてきた常識がアイツの言ったことを否定している。だが、ぼんやりと信じている私もいる。

 信じたいから信じる。アイツはきっと創造神だ。だけどあの装備を売ったことは今でも許すつもりはないし、これからも同じように接するだろう。

 だが、いざという時のために評判の良い精神病院を調べておこう。それに、罵倒の語彙も増やしておかなければ。

 

 春のおおらかな空気の中、私はアパートを離れ、帰路についた。

 

 今日の特筆すべき点といえば、アイツの家にはゴミ箱がないということくらいか。

 

 あぁ、あとこれもあったな。

 

 私の手のなかには重い歪な黄金があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





生ゴミにも劣る外道、自称この世を創った創造神の産業廃棄物以下のゴミクズ、カス、コレ、コイツetc.:ただのカス
私:友人を貶すカス
作者:カスを作ったカス

なんてこった、この場にはカスしかいないではないか!

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