霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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101裏切り者1

「ほっと」

 

「朝の素振りか? 精が出るな」

 

 俺は焼却室で火かき棒を振っていた。

 マーデルは俺が火かき棒を振っていても悪ふざけか、暇つぶしの運動程度にしか思っていない。

 

 しかしこの動きにはちゃんと意味がある。

 マーデルが入ってくる直前まで、火かき棒には魔力と神聖力を混ぜた銀のオーラがまとわれていた。

 

 俺が火かき棒を振り回していたのは除霊のためだった。

 

「いい運動ですよ。やりますか?」

 

「仕事で嫌でも体動かすんだ、そんなこと必要ないさ」

 

 あんまり幽霊に手を出さず、自然に任せて成仏を待つ。

 いちいち銀のオーラを出すのは面倒だし、周りに隠していることもあるのだけど、やはり自然の摂理に任せるのがいいだろうなんて思いもあった。

 

 しかしここ数日、幽霊が多すぎる。

 焼却室に満員電車さながらに幽霊がすし詰めになっていて、他の人はともかく俺は辛い。

 

 だからここ数日火かき棒に銀のオーラをまとわせて、焼却場の中の幽霊たちには成仏いただいていた。

 おかげで焼却場の中はすっきりした。

 

 流石に外だったり、屋根や煙突だったりはバレたりするかもしれないので手を出していない。

 というか、なんで煙突に集まるんだ、幽霊ども。

 

「プニマッツはまだ来ておらんのか?」

 

「まだ来てないですね」

 

 魔物襲撃の前ぐらいからバレないように少しずつ除霊を進めていた。

 基本的にマーデルもプニマッツもいるし、死体が運ばれてくるのでなかなか除霊が進まなくて大変だった。

 

「ふん、女でもできたかな」

 

 俺は放り投げるように火かき棒を置いて、マーデルと共に休憩室に向かう。

 

「おお、ようやく来たか」

 

 マーデルが靴を履き替えているとプニマッツもやってきた。

 三人集まるも、会話はない。

 

 無理に話さなくていい空気というのは割と好きだったりする。

 

「どうして……」

 

「ん?」

 

「どうして、悪魔に魂を売り払ったんですか?」

 

 静けさを切り裂いて、俺は口を開く。

 

「何を急に……」

 

「ここに裏切り者がいます。悪魔に魂を売った悪魔崇拝者が」

 

「何を言う? 頭でもおかしくなったか?」

 

 プニマッツもマーデルも怪訝そうな顔をする。

 

「おかしくなんてなってませんよ。少なくとも悪魔の味方をする人よりはまともなつもりだ」

 

「貴様……本当におかしくなったのか!」

 

 俺の物言いにマーデルは顔を赤くして怒る。

 今にも杖で殴りかかってきそうだ。

 

「ブマリビュート・エダモスディ……悪魔ですね?」

 

 マーデルの顔も、プニマッツの顔も凍りつく。

 

「本気で言っているのか?」

 

「本気ですよ」

 

 人のことを悪魔だ、なんて言うのはこの世界において最低の侮辱にあたる。

 プニマッツの目つきが鋭く、俺のことを睨むように見ていた。

 

「ここ最近、この辺り魔物の出現が増えています。その原因は悪魔がいるから。そして、悪魔に死体を供給している奴がいるからです」

 

「それで俺やマーデルさんを疑っているというのか? だとしたらお門違いだな! 俺たちはそんなことしていない!」

 

「本当にそうですか? ……マーデルさん」

 

「何?」

 

 俺はマーデルに視線を向けた。

 マーデルは何も言わず、ただただ俺を睨む。

 

「何を証拠にそんなことを言っている?」

 

「マーデルさん、歩けますよね?」

 

「そりゃ杖をつけば……」

 

「杖なしでも、ですよ。この間、靴を置くときに裏を見たんです」

 

 俺は少し前のことを思い出す。

 マーデルに言われて靴を片付けた時、靴裏を見ていた。

 

「それがどうかしたか?」

 

「マーデルさんは杖がなきゃ歩けないほどに足が悪いんですよね?」

 

「……そうだ」

 

「そうなると、自然と杖にかなり体重を預けて歩くことになります。その長年使っていそうな靴の靴底のすり減り方は不自由な足とそうでない足でだいぶ違うはずです」

 

 マーデルの足はかなり前から悪いと聞いている。

 靴は長いこと使っていそうだし、左右で靴底のすり減り方が大きく違っていて然るべきなのだ。

 

 なのに、靴底のすり減り方はそれほど変わらなかった。

 杖をついている分なのか多少の違いはあったが、それでもすり減り方の差は想像よりもはるかに小さい。

 

 買い換えればいいのと思うぐらいだった。

 

「魔物に襲われそうになった時に見ていればよくわかりますけど、杖のつき方が乱雑になっていましたね」

 

 魔物から逃げる時、足と同時でなく杖をついているのを俺は見ていた。

 杖をつかずとも歩けるから、普通ではない場面でボロが出たのだ。

 

「……それだけでか?」

 

 マーデルは特に否定しない。

 足の件については半ば認めたようなものだ。

 

 だが足が悪くないから悪魔崇拝者であるとは言えないだろう。

 

「魔物に襲われた時、冷静だったし、プニマッツさんを止めてさっさと逃げようとしましたね」

 

「歳を取れば嫌でも冷静になるさ。若い奴が命を投げ出す必要はないんだから逃げるに決まってる」

 

「プニマッツさんを帰らせて夜、一人で作業することもあると聞きました」

 

「死体が多いとどうしてもな。お前も大量に死体が来てみれば日中じゃ間に合わないと分かるはずだ」

 

「エダモスディさんとも仲が良さそうでしたね」

 

「良くはない。時々様子を見に来るというだけで、悪魔だったなんてこと知らん」

 

 ああいえば、こういう。

 確かにどれも決定的な証拠とは言い難い。

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