霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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104悪あがき2

「くそっ! なぜこんなに少ないんだ!」

 

 エダモスディは何かを探すように周りを見回し、吠えるように叫んだ。

 

「チッ……!」

 

 牙を剥き出すような険しい顔をしたエダモスディは視線を上げる。

 どこを見ているのと思ったら、焼却場の煙突を見ているようだった。

 

「なっ……」

 

「何をしている?」

 

 エダモスディが飛び上がる。

 爪をめり込ませて煙突に掴まった。

 

『うわぁ!』

 

『痛い! なんだ……』

 

『助けてぇ!』

 

「……あいつ!」

 

 エダモスディは手を伸ばし、煙突に集まっていた幽霊を鷲掴みにする。

 口を大きく開け、手に持った幽霊を放り込んで咀嚼するように口を動かす。

 

「あれは何をしてるのかしら?」

 

 俺以外の人には幽霊は見えていない。

 だから急に何もないところを掴み、何もないのにモグモグとし始めたように見えるだろう。

 

 デラが不思議そうな顔をしても不思議ではない。

 ただ俺には見えている。

 

 悪魔に食われるのが苦痛なのか、助けを求めるような声や叫びが耳につく。

 なぜこんなところに来たのか分かった。

 

「あいつ……体を治すつもりなんだな」

 

 悪魔は幽霊を喰らう。

 幽霊のエネルギーを奪い取って自らの力とするのだ。

 

 今、エダモスディは怪我を負っている。

 怪我を治療して力を得るために幽霊を摂取している。

 

 そして、幽霊が大量にいる場所として焼却場を選んだのだと俺は気がついた。

 

「パシェ!」

 

 このまま幽霊が犠牲になって、エダモスディが回復していくのを見ているつもりはない。

 ただ煙突に集まっていただけで悪魔に喰われるなんてとんでもない話だ。

 

 幽霊の悲鳴が俺の怒りに火をつける。

 

「なに?」

 

「俺を投げ飛ばせ!」

 

 珍しく大声を出した俺に、パシェは驚いた目をしていた。

 

「……分かった」

 

 俺はパシェに向かって走り出し、パシェは腰を落として手を差し出す。

 

「あれは……」

 

 俺の体から黒いオーラが溢れ出す。

 デラから受けている神聖力の白いオーラと混ざり合って銀色に変わっていく。

 

「ふざけたこと……してんじゃねえよ!」

 

 俺は差し出されたパシェの手に足をかける。

 パシェは思い切り力を込めて俺の体を持ち上げ、俺はパシェの手を蹴って大きく跳躍する。

 

「その薄汚ねぇ手を放せ!」

 

 一気に煙突まで飛び上がった俺はエダモスディの背中に剣を振り下ろす。

 

「がああああっ!? この……貴様は!」

 

「よう、久々だな。そろそろこの仕事も飽きてきたから異動しようと思うんだ」

 

 ざっくりと背中を斬りつけられてエダモスディは叫び声を上げて、煙突から落ちる。

 屋根が大きくへこんで、手に掴んでいた幽霊が慌てて逃げていく。

 

 怒りに血走った目をして起き上がったエダモスディは、どうやら俺に気づいたようだ。

 

「銀のオーラ……貴様、悪魔祓いなのか!」

 

「そうだよ。お前をぶっ殺しに来たんだ」

 

 今回悪魔と戦うことはないかなと思っていたが、目の前に自ら転がり込んできてくれるなら話は別だ。

 

「エダモスディになりすまし、死体を奪い取って好き勝手やってくれてたようだな」

 

「ふん……あのジジイ、バレたのか」

 

「お前と同じで、顔にクソ野郎ですって書いてあったからな」

 

「口が減らない若造だと言っていたが……本当のようだな」

 

 まだ魔物の数は多い。

 他の三人のフォローは期待できなさそう。

 

「……プニマッツの堅物を片付けて、お前を誘うつもりだったようだが…………そうしなくてよかったようだな」

 

「やだなー、もっと早く誘ってくれてたら応じたかもしれないのに」

 

「チッ! いちいち気に触る!」

 

「知るかよ。俺はお前の存在が気に食わないんだよ」

 

 エダモスディは俺の物言いに怒りを覚えているが、俺は悪魔そのものが気に入らない。

 

「ぶっ殺してやる!」

 

 会話を引き延ばそうとしてみたが、何を言っても挑発にしかならないんじゃ限界がある。

 エダモスディが俺に襲いかかってくる。

 

 両手の爪は鋭く、パンのスライスには便利そうだ。

 

「くっ……」

 

「ふん! そんなものか!」

 

 振り回される爪を剣でガードするも間に合わなくて胸が浅く切り裂かれる。

 流石に三等星クラスの悪魔となると一味違う。

 

 足場も悪い。

 屋根の上は不安定で、滑って戦いにくい。

 

「しょうがないだろ、まだ新人なんだからさ」

 

「ぬっ!」

 

 お返しと言わんばかり俺はエダモスディの脇腹を斬りつける。

 

「おっと!」

 

「待て!」

 

 戦えないこともなさそう。

 ただ屋根の上じゃ分が悪い。

 

 俺が屋根から飛び降りるとエダモスディも追いかけてくる。

 

「おっ?」

 

 俺に送り込まれる神聖力が強くなった。

 魔力と神聖力のバランスが崩れて、銀のオーラがやや白みを帯びる。

 

「なんだか知らないけど、サポート君に集中しろっていうからね」

 

 デラがパシェに神聖力を送るのをやめて、俺に集中して支援し始めてくれたようだ。

 パシェたちが戦っているのは魔物なので、銀のオーラでなくとも構わない。

 

 それなら俺に神聖力を集めようということらしい。

 

「ありがとうございます!」

 

 俺は魔力を増やして均衡を取る。

 再びオーラが銀色に染まっていく。

 

「さあて、ワンちゃんの調教のお時間だ」

 

 俺は剣を構える。

 三等星の悪魔。

 

 少しばかり不安だけど、戦うしかない。

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