霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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23結末1

「さぁて、どうするかな」

 

 事件は解決した。

 何が起きたのか解明したものの、まだ全ては公になっていない。

 

 悪魔を倒したことはもう知れ渡っている。

 流石に聖堂に悪魔の死体が転がっていて、そのことを隠すのは無理だ。

 

 教会内は今騒然となっている。

 悪魔の侵入があったことで、みんなが不安に駆られているのだ。

 

 そろそろ事件は解決したと公表する時が来た。

 ただどういう内容で終わらせるのかはゲルディットの手に委ねられている。

 

「あのお嬢ちゃんがソコリアンダの娘で、胸ブッ刺したとはな」

 

 俺たちは教会の外にあるレストランにいた。

 酒と肉が美味いレストランはやや教会から遠くて、あまり聖職者は来ない。

 

 要するに他の人に話を聞かれる心配がない場所なのだ。

 

「会ったことをありのままに話すのは簡単だ。だがそれではあまりにもな」

 

 ソコリアンダが不貞を疑われるような相談の乗り方をして、それを勘違いした実の娘が悪魔にそそのかさされて父を刺した。

 悪魔を倒し、真犯人を見つけた。

 

「収まりは悪くないが気分が悪い。これだとすべてあのお嬢ちゃん……ウーリエにひっかぶせるみたいだ」

 

 ゲルディットはウーリエが悪くないなどというつもりはない。

 けれど悪魔のせいで凶行に及んだこともまた事実なので、残されたウーリエだけが何かの罰を受けることも違うだろうと考えている。

 

 ソコリアンダの行動にも非はある。

 そして一番悪いのは当然悪魔なのだ。

 

 ただもうどちらもいない。

 唯一生きているウーリエだけが責を負うのは何か違う。

 

「パシェ、お前はどう思う?」

 

「……分かりません」

 

 ゲルディットが珍しくパシェに尋ねる。

 時には自分の考えて行動しなきゃならない。

 

 何もかも周りに流されてばかりではいけないとパシェの考えを問うたが、パシェは静かに答えた。

 目を覗き込むことすら難しいヘルムでどうやって食事を取るのか気になっていたけれど、口のところが開閉するらしくて一瞬だけ開けてものを食べている。

 

 器用なものだ。

 なんでそこまでして顔を隠したいのか気になってきてしまう。

 

「わからない……か。俺も同じだ」

 

 パシェの答えに怒るわけでもなく、ゲルディットは小さくため息をついた。

 

「お前は?」

 

 ゲルディットは期待するように俺の目を見る。

 

「英雄がいてもいいんじゃないですか?」

 

「英雄?」

 

「救いのない物語は……物語の中だけで十分です。俺たちは悪魔を倒す。そして、傷ついた人を助けるんです」

 

「どう助ける? ……どう、助けたい?」

 

「ソコリアンダ大司教様にはヒーローになってもらいましょう。みんなの心に傷を残すのではなく、自分もと思えるような勇姿を伝えればいいんです」

 

 ーーーーー

 

「なあなあなあ」

 

「なんだよ?」

 

「ソコリアンダ大司教様が一人で悪魔に立ち向かったって本当なのか?」

 

「多分な」

 

「多分……ってなんだよ?」

 

 聖堂の掃除中、雑巾を握りしめたマルチェラが俺に近づいてくる。

 俺は仕事解決の手伝いなので、事件が解決してしまえばまた日常に戻る。

 

 剣を返してモップを片手に不真面目に床を磨く俺に、みんなが聞きたいことを躊躇いなくぶっ込んできた。

 

「戦ってる場面なんて誰も見てないからな。悪魔の口から飛び出した嘘かもしれない。でも……ソコリアンダ大司教様ならそうしたのかもな」

 

「お付きの子……なんだっけ? とりあえずソコリアンダ大司教様の娘さんなんだって? 若い頃に悪魔に狙われないように離れたって聞いたけど」

 

「そうらしいな」

 

「らしいって……」

 

「ソコリアンダ大司教様も亡くなってんだぜ? 娘なのは本当だよ」

 

 死人に口なし、という言葉はこの世界の人は知らない。

 だが時として死んでいる人を都合よく利用させてもらうことは、どこの世界にもあるものだ。

 

 最終的にゲルディットと話して、ソコリアンダは勇気を持った英雄となった。

 ソコリアンダは悪魔と戦って殺されたことになったのだ。

 

 朝早くから聖堂でお祈りを捧げていたソコリアンダは悪魔の侵入に気づいて、周りに被害を出さないように一人戦う。

 神聖力によって悪魔を追い払ったものの、代償にソコリアンダもやられてしまったということになった。

 

「悪魔と戦った……カッコいいよな。俺なら命乞いしながら逃げるけどな」

 

「戦えないならそうした方がいい。恥でもなんでもないさ」

 

 そして、ソコリアンダとウーリエの関係も公表された。

 日記にウーリエが娘であることも書いてあったので、認められる可能性は高い。

 

 つまりこの件に関しては、ソコリアンダは自分の娘もいる教会を守ろうとした英雄ということになったのだった。

 それでいいのか、と思うところもないことはない。

 

 だけども全ての人にとって最善の方法を考えた時にこうした結論がいいとなったのである。

 提案者は俺だ。

 

「ほんと……悪魔ってなんなんだろうな」

 

「卑怯者だろ」

 

「そんな一言でまとめるやつ……お前が初めてだな」

 

「二人とも、あとちょっとなんだから真面目に掃除しなよ。僕も話は気になるけど……後で聞こうよ」

 

「噂以上のことは何も言えないぞ。俺もプロだからな」

 

「何言ってんだよ。プロがこんなところで俺たちと掃除するかよ」

 

 クーデンドにいさめられてマルチェラも掃除に戻る。

 

「そろそろ配属先も発表されるんだっけ」

 

「噂よりもそっちが気になるね……」

 

「マルチェラはともかくクーデンドは大丈夫さ。さて、掃除終わり。俺やることあるから片付け頼んだ」

 

「あっ、うん」

 

聖堂は悪魔の死体が転がっていたこともあって、ピッカピカにされている。

 しばらくモップがけだって必要ないだろう。

 

 クーデンドにモップを渡して、俺は教会を出る。

 朝の爽やかな空気を浴びながら、向かった先は花壇だ。

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