霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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30友の声3

「緊急事態の可能性がある。クーデンドを叩き起こして荷物を片付けろ。俺とエリシオで先に行くから後から、片付け終わったらついてこい」

 

「……了解」

 

 ゲルディットは手短に指示を出す。

 焚き火用の細い枝とは別に置いていた太い木に火をつけて松明にする。

 

「さて、行こうか」

 

 起きてから瞬く間に行動する準備を整えてしまった。

 この行動力の高さも見習うべきところだろう。

 

 俺たちは森の方に向かう。

 

「お前の‘すごく’嫌な予感がするということは……悪魔か?」

 

「そうかもしれません」

 

 俺の後ろには少年の幽霊が一緒に来ている。

 少年の意識がぼんやりとしてきている。

 

 もしかしたら危険な状態なのかもしれない。

 

「魔物騒ぎがあったからな。ないとも言い切れないな。これ食っとけ。少しでもなんか腹に入れとくんだ」

 

 ゲルディットは腰につけていた袋から干し肉を取り出して、俺に投げ渡した。

 保存がきくように少ししょっぱくて、硬い干し肉を俺は口に放り込む。

 

 ゲルディットも干し肉をかじりながら周りを警戒する。

 

「ふむ……何かがいる気配はないがな……おっと?」

 

「崖?」

 

 慎重に進んでいくとゲルディットが突如して立ち止まる。

 ゲルディット越しに前を覗くと足元の地面が途切れていた。

 

「かなり高いな」

 

 ゲルディットが松明を前に出して崖の下を覗く。

 下までしっかりと照らすことができないぐらいの高さがあった。

 

「ん?」

 

 少年の幽霊が崖下に向かって飛んでいく。

 

「…………あそこ」

 

「あそこ? んん……何かがある?」

 

「人です!」

 

 少年の幽霊が何かに吸い込まれて消える。

 俺の目には実態のある人が倒れているように見えた。

 

「崖から転落したのか? どこからか回り込んで……」

 

「そんなことしてる場合じゃないです」

 

 少年は幽体離脱していた。

 つまりかなり危険な状態ということだ。

 

 最後には話さない状態にもなっていたことを考えるにもう時間がない。

 

「そのまま照らしててください」

 

「あっ! おいっ!」

 

 俺は崖の様子を観察し、飛び降りる。

 ゲルディットが慌てるも、すでに飛び降りた俺を止めることはできない。

 

「チッ! 馬鹿野郎が!」

 

 仕方ないとゲルディットは腕を伸ばして松明をできるだけ崖の外に出す。

 

「フッ!」

 

 俺は黒い魔力のオーラで体を覆う。

 今ならなんでもできそうな万能感に包まれながら腕を伸ばす。

 

 崖から突き出ている木の根っこを掴み、体をスイングさせて跳ぶ。

 また別の根っこに手を伸ばして掴み、今度は突き出した崖の一部に片足で着地し、すぐにひるがえりながら飛び上がった。

 

「ゔっ……!」

 

 地面に着地し、足に衝撃が走って俺は顔をしかめる。

 想定では華麗に飛び降りられたはずだったけれど、少し勢いを殺しきれなかったみたいだ。

 

 それでも多少の足の痺れで済んだのだから大成功。

 

「大丈夫か!」

 

 俺が駆け寄ってみると、そこに倒れていたのは確かに幽霊の少年だった。

 

「こりゃひどい……」

 

 両足があらぬ方向に曲がり、顔も打ちつけたようで鼻が潰れている。

 顔をしかめてしまうようなひどい有様だった。

 

「よく頑張ったな」

 

 呼吸も弱く、死にかけ。

 この世界に来る前の世界だったなら助からなかっただろう。

 

 だがこの世界には一つ優れたものがある。

 

「今治してやるからな」

 

 俺の体から神聖力の白いオーラが溢れ出す。

 少年の胸に手を当てて、神聖力を体に流し込んでやる。

 

「悪いな、痛いぞ」

 

「ううっ!」

 

 神聖力を流し込みながら少年の折れた足をまっすぐに戻す。

 少年はうめき声をあげるけれど、痛いのも生きているからこそだ。

 

 弱かった呼吸が安定してきて、潰れた鼻が治っていく。

 

「また痛いぞ」

 

 俺は剣を抜くと少年の足を軽く斬りつける。

 足が折れてパンパンに腫れていたので、少し傷をつけると濁った血が出てくる。

 

 完全に治るのには時間がかかるだろうが、もう峠は越えたといっていい。

 足の傷も治して、俺は神聖力を送り込むのを止める。

 

 病院まで運んでるような時間のない相手でも、神聖力を使えば助けられる可能性がある。

 それがこの世界の摩訶不思議な優れた力の神聖力だった。

 

「しかし話を聞くのは無理そうだな」

 

 怪我を治しても、一瞬で完全回復させるようなものじゃない。

 ギリギリの状態にあった少年は体力も消耗していたのか、そのまま気を失ってしまった。

 

「エリシオ!」

 

 揺れる松明の炎が近づいてくる。

 

「ゲルディットさん」

 

 どこからか崖を回り込んで降りてきたようだ。

 俺は神聖力を使って疲れたので地面に座り込んでゲルディットを待つ。

 

「こんなところ飛び降りるなんて、何考えてる?」

 

「何考えてるかっていうと、人助けですかね?」

 

「人……まだ子供じゃないか。なんでこんなところに?」

 

「分かりません。ただすっごく嫌な予感がしますよ」

 

 俺は深いため息をついてしまう。

 少年がこんな状態になったのには、きっと悪魔が関わっている。

 

「その子は生きてるんだな?」

 

「治療しました。まだしばらく安静が必要でしょうけど、命に別状はないはずです」

 

「……子連れで悪魔の捜索はできないな。もうすぐ夜明けだ」

 

 ゲルディットが空を見る。

 いつの間にか空が白んできていた。

 

 もうすぐ夜が明ける。

 

「子供を連れて村に行こう。それから何があったか聞いてみる必要がありそうだ」

 

「はぁーあ、もしかして……この旅、めんどくさい?」

 

「行きはこうじゃなかったからな。原因はお前だろ」

 

「人が悪魔引き寄せてるみたいに言わないでくださいよ」

 

 子供を背負い崖上に戻って、追いかけてきたパシェとクーデンドと合流した。

 俺たちは少し予定より早いが出発して次の村に向かったのだった。

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