霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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33魔物製作者1

「ここから真っ直ぐ走ってきたのだろうな」

 

 俺たちは村を出てデリンを見つけた崖までやってきた。

 崖から落ちた、ということは崖に向かって真っ直ぐ走っていた可能性が高い。

 

 デリンを助けにきた時は何も思わなかった森だけど、近くに悪魔がいるかもしれないと思うだけで不気味さを感じるようになるのだから不思議だ。

 もしかしたらデリンを助けた時にも近くに悪魔がいたのかもしれない。

 

 そんなふうに考えると背筋が寒くなる。

 

「とりあえず向こうに行ってみよう」

 

 デリンが走ってきたと思われる方向に俺たちは歩みを進める。

 本当ならデリンに案内してもらいたいところだが、悪魔がいるかもしれない危険な場所に連れて行くわけにいかない。

 

「こんな時になんだが、一つの追跡術は覚えておくといい」

 

「急になんですか?」

 

「ひっくり返った石、折れた枝、剥がれた土……何かがそう遠くない時間に走ってここを移動したな」

 

 俺はゲルディットの言葉を受けて地面を見る。

 平たい石が落ちている。

 

 表面に土がついてわずかに湿っていた。

 他にも枝が折れていたり、何かに蹴られたように土が剥がれたりしている。

 

 言われてみれば何かが通った跡のようだ。

 

「今回はデリンだろう。だが悪魔は狡猾で隠れたり、逃げたりすることもある。こうした痕跡から追跡することもある。覚えておけ」

 

「……分かった」

 

「なるほど……めざとくなるわけだ」

 

「めざとくなきゃやってけないんだよ」

 

 ひとまずデリンが真っ直ぐ逃げてきたという予想はあっているみたいだ。

 俺とパシェも痕跡はないかと目を皿のようにしながら、森を進んでいく。

 

「……臭い」

 

「臭い?」

 

 パシェがボソリと呟いた。

 俺は臭いに集中してみるが、嗅いでも湿った森の匂いがするだけだ。

 

 嫌いじゃないし、臭いというほどでもない。

 

「なんの臭いだ?」

 

「死体みたいな臭い」

 

「……さて、そろそろ相手も近そうだな」

 

 ゲルディットが剣を抜く。

 それを見て俺とパシェも剣を抜いた。

 

「臭いって何が? 俺には分からない」

 

「俺にもだ。だが、パシェが鼻がいい。臭いというのなら近くに何かがある」

 

「何かがある……」

 

 パシェの能力はゲルディットの方が詳しいだろう。

 口を挟むつもりはない。

 

 ならば信じる。

 周りに何かないか。

 

 俺は目をこらす。

 

「……声が聞こえる」

 

 しかし俺の感覚に反応があったのは目ではなく耳だった。

 叫び声。

 

 ひどく苦痛を感じているような声だ。

 子供の声のようにも聞こえる。

 

「……俺には聞こえないぞ」

 

「私にも」

 

 ゲルディットとパシェには聞こえていない。

 ということは幽霊の声ということになる。

 

「臭いは……あっち」

 

「声もあっちだ」

 

 偶然だろうか、俺の声が聞こえる方向とパシェの臭いを感じる方向が一致した。

 

「……だいぶ強い」

 

「うん、臭い」

 

 それぞれが感じるものを信じてそちらに向かう。

 叫ぶ声が強くて俺は顔をしかめる。

 

 少しうるさすぎて頭が割れそうだ。

 

「…………これか」

 

 周りのことを注意深く見ていたゲルディットが軽く屈んで手を伸ばす。

 そこには木の枝が積み重なるようにしておいてあり、そのうちの一本の枝を手に取る。

 

 まるでどこかでへし折ってきたような枝は緑の葉っぱが豊かに生い茂っている。

 

「地面が割れてる。裂け目……?」

 

 枝を取り除くと、下には地面が大きな裂け目があった。

 俺とパシェも枝をどけていく。

 

 すると人が入れそうな大きさの裂け目が現れた。

 叫び声は裂け目の奥から聞こえてきている。

 

「奥に続いていそうだな」

 

 ゲルディットは枝を切って程良い大きさにすると、布を巻き付けて油を染み込ませる。

 そこに火をつけて松明にする。

 

「いくぞ。心の準備はいいな?」

 

「もちろん」

 

「大丈夫」

 

 ゲルディットを先頭に裂け目の中を降りていく。

 中はやや急な斜面になっていて、滑り降りるようにしながら慎重に下を目指す。

 

「洞窟のようになってるのか」

 

 中は思っていたよりも広い。

 ゲルディットが松明を高く上げるが、奥まで光が届かない。

 

「助けてください!」

 

「……今のは!」

 

「俺にも聞こえた」

 

「私にも」

 

 囁くような声が耳に届いた。

 ゲルディットが周りを松明で照らして捜索する。

 

「あっ!」

 

「子供たちか」

 

 裂け目からほど近いところに子供たちがいた。

 大きくへこんだところに、何かで格子をした簡易的な牢屋のような場所に閉じ込められている。

 

「なんだこれ? ……骨か?」

 

 格子は鉄ではなく、白い何かで出来ていた。

 硬い棒状の白いものは骨ではないかと俺は顔をしかめる。

 

 本当に骨だったとしたら、相当悪趣味な牢屋だとしか言いようがない。

 

「下がれ。ふっ!」

 

 ゲルディットが剣に魔力を込める。

 黒いオーラをまとった剣は骨の格子をあっさりと切り裂く。

 

「大丈夫か?」

 

 子供たちはやや衰弱しているように見えた。

 こんな地下に水も食料もなく閉じ込められていたら当然の話だろう。

 

「歩けそうか?」

 

「私は……大丈夫そう」

 

「何人か弱っているような子もいるな。体も、精神的にも」

 

 俺が手近な子から神聖力で治療して、パシェは牢屋の外で警戒する。

 ゲルディットは牢屋の奥の方から子供を連れてくる。

 

「ひとまず子供を逃すべき……」

 

「あーあーあーあー、何をしている?」

 

 悪魔を倒すことも大切だが、子供の保護も大事。

 先に子供を逃がそうと考えていたら、しわがれた老人のような声が聞こえてきた。

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