霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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37秘密交換1

「大司教とはおそらくソコリアンダ大司教のことだろうな」

 

 そうゲルディットは言っていた。

 つまり教会で倒した悪魔と長鼻の悪魔には繋がりがある。

 

 墓地に現れた魔物と長鼻の悪魔が出した魔物も同じであった。

 そうしたところから考えると、教会で倒した悪魔はソコリアンダの死体を長鼻の悪魔に渡して、魔物にしようとしていたのだ。

 

 悪魔同士にもある程度横の繋がりや協力関係のようなものがある。

 そうなると結構面倒な話だとため息も漏れてしまう。

 

 長鼻の悪魔を撃退した俺たちは出発した教会に助けを求めた。

 悪魔事件があったおかげで、悪魔祓いの聖騎士が教会に来ていた。

 

 ソコリアンダを中心にして関係がありそうだったので、そちらの聖騎士に任せることになったのだった。

 

「俺も少し鈍ったかな」

 

「どこかですか?」

 

 俺たちは旅を再開した。

 一応俺はまだ正式に聖騎士でもないし、ゲルディットは一線を引退した身なのだ。

 

 長々と悪魔の調査をするわけにもいかない。

 村々を抜けて、次の大きな町に着いた。

 

 そこからは馬車が出ていたので、馬車に乗って移動している。

 馬車に乗れれば少しは安心。

 

 他に客もおらずのんびりと走る馬車の中でゲルディットはポツリとつぶやいた。

 

「昔の俺なら鼻じゃなくて顔面を削ぎ落としてぶっ殺してた」

 

 ゲルディットは長鼻の悪魔との戦いを思い出していた。

 あの戦いにおいてゲルディットは長い鼻をぶった斬った。

 

 だがもっと上手くやっていたら一撃で倒せていたのではないか、と反省している。

 俺から見てゲルディットが衰えたなんて思わないけれど、ゲルディット自身ではあの一撃は満足なものではなかったようだ。

 

「体の衰えもあるが……魔力の移動も少しばかり遅くなったな」

 

「ゲルディットさんの仇は俺が取ってあげますよ」

 

「人を死んだみたいに言うな! おっ!」

 

「うおっ!」

 

 揺れる馬車は決して快適ではない。

 歩くより速いが硬い座席に、でこぼこした道を走る衝撃は歩いた方が楽なんじゃないかと思わせるほどだった。

 

 クーデンドはお尻も腰も痛いと漏らすので神聖力で治してやったりしていた。

 ガタンと馬車が大きく揺れて傾く。

 

「悪い。大丈夫か?」

 

「大丈夫」

 

 俺は衝撃で前に座っていたパシェに飛び込む形になった。

 腕を伸ばしてどうにか耐えたので鎧に顔面を打ち付けることはなかったけれど、壁ドンしているみたいになってしまった。

 

「……近い」

 

「すまないな」

 

 初めて近くでパシェの目を見た。

 深いブラウン色の瞳。

 

 初めて見たので思わず見つめてしまうと、ヘルムの奥でパシェの瞳が揺れた。

 隣のクーデンドもゲルディットに突っ込んでいたが、こちらの方はゲルディットに頭を手で押さえられている。

 

「おい、どうした?」

 

 馬車が思い切り斜めになっている。

 こんなのでは座ってもいられない。

 

 ゲルディットが馬車の御者に声をかける。

 

「ああ、すいません! 少しお待ちください!」

 

 御者の慌てたような返事が聞こえてくる。

 

「ああ……こりゃあ……」

 

「なんだ? なるほどな」

 

 壁ドンしたままだと変なので、俺も馬車の後ろから外に出る。

 馬車の状態を見てみると車輪が外れている。

 

 素人目に見ても馬車が傾いた原因は明らかだ。

 

「目の前……村が近いのにね」

 

 少し先に目を向けてみると家がある。

 本当に村が目の前だった。

 

「あそこの村まで運んで修理できないか試してみます」

 

「しょうがないか」

 

 俺たちは歩いて村まで行って、村に一軒だけあった宿をとった。

 小規模の村ではちゃんとしたお店がないこともある。

 

 食料なんか買える場所はないか、あるいはお店がないならお金で交換してもらえないかと尋ねたりして過ごした。

 村入り口のところでは馬車をどうにか直そうとしていたが、遠目に見た顔色の感じでは厳しそうだった。

 

 ーーーーー

 

「申し訳ありません」

 

「車軸が折れて、修復不可能ならしょうがない」

 

「お代は半分返しますので……」

 

「いや、いいさ。そのまま受け取ってくれ」

 

 結果的に、馬車は直らなかった。

 車輪が取れただけではなくて、車軸が折れてしまっていた。

 

 というか、車軸が折れたから車輪が外れたのだ。

 車輪が外れただけならすぐに直せるが、車軸が折れていたら直せない。

 

 結局馬車が直らないので歩いていくことになった。

 村から馬車は出ていないし、乗れるかも分からない次に来る乗合馬車を待つより歩いてしまった方が早かった。

 

「これを持っていってください」

 

「釣り竿?」

 

 ちゃんと運べなかったのだけど、ゲルディットは料金を返さなくてもいいと断った。

 馬車が壊れたらお金が入り用になるだろう。

 

 そんなに多額でもないし、ちょっとした温情みたいなものだ。

 そんな恩に何か報いれないかと渡されたのが釣り竿だった。

 

 細長い枝に糸をつけただけの簡易的なものだ。

 

「この先野営地となっている場所の近くに川があります。綺麗な川で、魚がよくとれるんですよ。こんなでもです」

 

「へぇ……」

 

「もしよければ使ってください。使った釣り竿は野営地の近くに置いといてください。後で回収しますので」

 

「じゃあ、ありがたく借りていくよ。あんたに神の祝福を」

 

「聖職者様たちも良い旅路を」

 

 ということで、再び歩き旅。

 

「まあ今だから言うが、あの馬車ガタついてたもんな」

 

 歩きながらゲルディットは体を伸ばす。

 確かに言われてみればやたらと揺れていたような気もする。

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