霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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43悪魔崇拝者1

「この町は……あいつの出身地なんです」

 

 ダモンの相棒であるノートムは暗い顔をしてそう答えた。

 なんとも世知辛い話だが、二人一組での活動となる悪魔祓いの聖騎士で片方が死んだ時に真っ先に疑われるのは相棒なのだ。

 

 ダモンが死んで、ノートムが疑われた。

 俺たちは実際見習いと引退者なので直接事件に関わるようなものではなかったのだけど、ゲルディットは悪魔祓いとしても役職は高い方でひとまずの調査を依頼されることとなった。

 

 信用できる第三者とでもいうのだろうか。

 まずはノートムから話を聞く。

 

「この町に知り合い……恋人がいるようで」

 

 ゲルディットの補助として俺とパシェもいる。

 最初にノートムにぶつけられた質問はなぜダモンが一人で死んだのか、ということだ。

 

 二人一組で悪魔祓いは動き、基本はあらゆる場所で離れることはない。

 男女ペアだったりすると多少事情が変わったり、生理現象としてトイレなんかは離れることもあるが、長時間相棒が戻ってこなきゃ異変に気づく。

 

 だがノートムはダモンが死んでようやく異変に気付いた。

 

「こっそりと会いに行きたいからと何回か一人で行動していたんです……」

 

 相棒を一人にして殺した。

 ノートムが悪魔、あるいは悪魔と内通した崇拝者な可能性がある。

 

 そんな疑いがあるのだ。

 

「恋人? どこの誰だ?」

 

 質問に対してノートムは正直に答えているように見えた。

 すっかり憔悴しきったような表情も嘘とは思えない。

 

 だがゲルディットは手を抜くことなく、厳しく追及する。

 ダモンを殺した犯人をしっかりと見つけること、そしてノートムの疑いをちゃんと晴らしてやることもまた大切なことなのだ。

 

「直接会ったことは……孤児院で働いてる聖職者だと。いわゆる幼馴染ってやつだと聞いてるぐらいです」

 

「それで一人にしたのか」

 

「こんなことになるなんて……! ゲルディットさんも分かるでしょう? 俺たちの仕事は明日……いや、今日死ぬかもしれないものなんだ。恋人と会うぐらい……ゆっくり……」

 

 ノートムは手で顔を覆う。

 気持ちは分からなくない。

 

 束の間の癒しとして恋人との逢瀬として一人の時間を与えてやる人情は、俺にもゲルディットにも理解はできる。

 

「だが……それでダモンはもう二度と恋人と会うこともできなくなった」

 

「なら……どうしたらよかったんですか!」

 

 ノートムの感情が爆発した。

 

「クソしてる時も、女と抱き合ってる時も、隣にいろとでも言うんですか!」

 

 ノートムは震える拳でテーブルを叩きつけて、怒りと悲しみが入り混じった表情をゲルディットに向ける。

 一触即発の空気に、俺とパシェは剣に手をかける。

 

「そうだ。それが俺たち悪魔祓いだ」

 

 対してゲルディットは冷静だった。

 ノートムに対して声を荒らげることもなく、無表情のままに答えを返す。

 

 なんのためらいもない答えに、ノートムの怒りはあっという間に萎んでいく。

 怒りが無くなると、ノートムは悲しみに支配される。

 

「……せめて近くにいてやればよかった。そしたら……こんなことは起きなかったのかもしれない」

 

「可能性がなかったとは言わない。しかし起きたことはもう変えられない。見るべきは未来だ」

 

 泣いても笑ってもダモンは生き返らない。

 

「復讐に取り憑かれるな。だが復讐で心の隙を埋めろ。後悔や悲しみは悪魔が手を伸ばす。怒りや復讐は身を焦がすが……上手くコントロールすれば悪魔も手を出しにくい」

 

「何に復讐を……」

 

「こんなことしたのはなんだと思う? なぜ悪魔祓いが都市警護なんてやらされていた?」

 

「……悪魔、ですか?」

 

「それをこれから調べるんだ。いつダモンを送り出した? 会いにいくのはいつで、どれほどの時間だ? 全部思い出せ。全部答えろ。それがお前にできる復讐の一歩だ」

 

 ゲルディットの低い声が静かに響く。

 どこか落ち着くようで、どこか心を刺激するような声。

 

「……いつもは巡回を終えた夕方に。三日に一回ほどのペースで会いに行ってた」

 

 ノートムの目に、復讐の炎が宿り始めた。

 悲しみを燃やして、手を出そうとする悪魔を焼き尽くすような復讐の炎を胸に秘めれば、少なくともそそのかされるようなことはないだろう。

 

「それに……あと何か……そうだ、相手は赤毛だ。前に服に長い髪の毛が付いてた。赤毛で、からかうと顔を赤くしてたから……多分恋人のだ」

 

 ノートムは頭を振って何かを思い出そうとする。

 少しでも犯人、あるいは何かのヒントになるかもしれないダモンの恋人について思い出せるものはないかと記憶を探る。

 

 そうしてなんとか情報を絞り出す。

 

「孤児院、ダモンと幼馴染、赤毛。どうにか調べられそうだな」

 

「俺はどうしたら……」

 

「お前のことはしばらく拘束させてもらう」

 

「そんな!」

 

「相棒もいないんだ。俺は疑っていないが、周りはどう思っているか分からん。今中央の方に悪魔祓いを呼びに行かせる予定だ。そっちが来たらお前のことも判断を任せることにする」

 

 態度や話を聞く限りノートムは裏切り者じゃなさそうだと俺も思った。

 ただだからといって手放しに信じるわけにもいかない。

 

 今は聖都に助けを要請するつもりだ。

 そうすればきっとノートムたち若い悪魔祓いではなく、もっと上の権限を持つ悪魔祓いが来る。

 

 ノートムの現場復帰は現役の悪魔祓いに任せようというのだ。

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