霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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44悪魔崇拝者2

「お前らも気をつけろよ」

 

 ノートムの手を木の手錠で拘束し、別の部屋に連れて行くために立たせる。

 

「悪魔はどこに潜んでいるかわからない。悪魔祓いとしてやってきて……少し気が緩んでいたのかもしれない。相棒失うと、体の半分持ってかれたみたいだ」

 

 やはり燃やしきれぬ悲しみはどこかにある。

 ノートムは悲しそうな目で俺のことを見た。

 

「ゲルディットさんは超人だ。普通の人はこんなふうになれない。ただ、馬鹿なことをした先輩の姿を目に焼き付けておけ。死んだ馬鹿と死なせちまった馬鹿のことを、な」

 

「……勇敢な悪魔祓いのことは忘れませんよ」

 

 これで答えがよかったのか、俺には分からない。

 ゲルディットほど上手く表情も隠せない。

 

 あるがままの言葉をぶつける。

 

「そうか。あんがとよ」

 

 でもノートムは涙を流しそうな顔をして笑った。

 お礼を言われるような言葉だったか。

 

 ほんのわずかな胸の痛みを覚えてしまう。

 外から鍵のかけられる部屋にも大人しく入って、ベッドに腰掛け、最後は天井を見上げて、一筋の涙をこぼしていた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「俺か? 俺は大丈夫だよ」

 

 珍しくパシェが俺のことを心配して声をかけてくれた。

 やるせ無い気持ちはある。

 

 だが後ろ向きなことばかり考えても仕方ない。

 

「心配ありがとな。パシェの方は大丈夫か?」

 

「うん」

 

 パシェは短く答える。

 戦闘パートナーとしてはまだどうなのかというところはあるが、普通に仲間としては良い距離感だ。

 

「戻ったか」

 

 尋問室として使っていた部屋に戻った。

 部屋に入る一瞬、ゲルディットも少し悲しげな目をしていたように見えた。

 

 ゲルディットのことを超人だとノートムは言ったが、俺そんなこともないと思う。

 誰よりも人間らしい。

 

 だからこそ悪魔に対して強く怒りを感じ、誰よりも悪魔祓いであろうとしている。

 それがゲルディットであり、はたから見たら超人らしく見えるのかもしれない。

 

「この後はどうするんですか? 孤児院探し?」

 

「そう行きたいところだが……教会の外に不用心に出るのは危険だ」

 

 順当に行くなら話にあった孤児院探し出して、幼馴染の恋人やらを見つけるのがいいだろう。

 だがそうもいかない事情がある。

 

「この町にいる悪魔祓いは四組八人。今回ダモンがやられたから残るは三組六人。これをどう配分するか揉めてるらしい」

 

 ゲルディットは一応引退の身だ。

 魔のゲルディットに対して、聖の聖騎士もペアでいないので悪魔祓いの戦力として見られていない。

 

 当然ながら俺やパシェも戦力外だ。

 惨状を見て悪魔が原因である可能性は、誰の頭にでもよぎる。

 

 そうなると貴重な悪魔祓いの戦力をどうするのか、色々な意見が出るものだ。

 

「目下の心配はどう助けを呼びに行くか、だな」

 

「そこの何が問題なんですか?」

 

 早く助けを呼びに行けばいい。

 何を迷うことなどあるのか。

 

「悪魔祓いを一組つけるか、二組つけるか、だ」

 

「……はぁ?」

 

 一瞬冗談かと思ったけど、ゲルディットのめんどくさそうな顔を見れば本気だと分かる。

 

「聖とはいえ訓練された悪魔祓いを倒した悪魔だ。危険なことに変わりはない。助けを呼ぼうと町を出て孤立した連中を襲う可能性は否定できない」

 

「だから一組行かせるか、二組行かせるかで争ってる……と?」

 

「くだらないだろ?」

 

 ゲルディットはため息混じりに答えた。

 聖都まで安全に助けを呼びに行かせるのに、確実に人を送るために聖騎士に加えて悪魔祓いを行かせる計画を立てている。

 

 だがそこに加える悪魔祓いを一組にするか、二組にするかで今争いが起きているのだ。

 俺もくだらねぇ、という顔をしてしまう。

 

「くっだらねぇ……」

 

 ついでに心の声も漏れる。

 より安全確実なのは二組つけることだろう。

 

 ただ二組行かせると教会に残るのは一組だけとなってしまう。

 教会を守るにしても、一組じゃ不安。

 

 調査するのも動きが制限されてしまう。

 

「どっちでもいいだろ……」

 

 だからといって一組だけでも大丈夫だろうか。

 もし悪魔に襲われて、負けてしまったら助けも呼べずに人だけ減ることになる。

 

 なんてくだらない心配をしている。

 分かる部分もあるけれど、なんというか、そんなことで言い争っている場合なのかという感じだ。

 

「最悪の場合、俺たちは悪魔と戦える」

 

 ゲルディットはもう俺のことも戦力として見てくれているようだ。

 それはちょっと嬉しい。

 

「単独で調査に出てもいいが、まずはこのくだらない問題がどうなるかだな」

 

 一組だけ行かせるとなるなら、悪魔祓いを連れて調査に出てもいい。

 二組行かせるならリスクを冒しても自分たちだけで孤児院探しとなる。

 

「お前と違って他の青二才を動員するわけには行かないからな」

 

 クレンシアは聖騎士に配属されている。

 つまりは多少神聖力を扱うこともできるだろう。

 

 だがまだほとんどなんの訓練も受けていない見習いを連れ回して危険に晒すわけにはいかないのだ。

 他にも聖騎士希望の聖職者が二人ほどいたけど、クレンシアを含めて戦力として見るのはちょっと難しい。

 

「問題が起こると悪魔の醜悪さも見えるが、人間の醜悪さも出てきてしまうな」

 

「もう俺たちだけで行きません?」

 

 俺は深いため息をつく。

 

「問題が起きたら怒られるのは俺なんだぞ?」

 

「誰がゲルディットさんのこと怒るんですか?」

 

「俺にだって怖い人はいっぱいいるんだよ」

 

 誰しもが自分の命が可愛いものだ。

 未来的な安全か、今の安全か、どちらを取るのかどこかの会議室で話し合っている。

 

 どっちでもいい。

 さっさと決めてくれ。

 

 俺の隣に立つパシェも小さなため息を漏らしていたのだった。

 

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