霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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50男の覚悟1

「体面は大事、か。くだならないな」

 

 大きな町の大きな教会ともなれば、日々お祈りに来る人の数も多い。

 あんな事件があったんだからやめとけばいいのにと思うのだけど、あんな事件があったからこそ祈るような人もいるのかもしれない。

 

 狙われる相手が分かって、ゲルディットがクレンシアの存在をぼかしながらも教会の中に狙われるものがあると周りに伝えた。

 それを受けて教会は自ら悪魔を追跡することを諦めて、防衛に徹することにしたのだ。

 

 しかし教会は一般の民にとっての心の支えでもあり、悪魔に対抗するための希望となっている。

 門を閉ざして引きこもるなんて姿は見せられない。

 

「仮初の平穏ってやつか」

 

 聖職者たちは安全のために教会の外に出ない。

 しかし教会の門を閉ざして引きこもることは、不安を煽らないようにしなかった。

 

 悪魔が入らないようにと、残った二組の悪魔祓いを中心にして聖堂を警護する。

 他の見習いは表に出ないようにと厳命を受けた一方で、俺はなぜなのかパシェとペアで聖堂の警護に当たっている。

 

 いつの間にか俺もまだ叙任前の見習いだって忘れてるな。

 まあ、引きこもっているよりはいいかもしれない。

 

「あれは……」

 

 色んな人がいる。

 若いのから年寄りまで様々。

 

 教会の中だと幽霊は見えないから人を見るしかない。

 ただ見た目だけで何か分かるというものでもない。

 

 ふと一人の老婆の姿が目に入った。

 

「あの婆さんは……孤児院の」

 

 警護にあたっている聖騎士と話しているのは、確かウルモンとかいった悪魔祓い嫌いの孤児院の婆さんだった。

 睨まれると嫌なので離れて様子見る。

 

 何を話しているのか知らないが、聖騎士が困ったような顔をして対応している。

 いるよな、あんな迷惑そうな婆さん。

 

「……何話してたんですか?」

 

 ウルモンが怒った顔をして聖堂の奥の方に向かう。

 俺は会話の内容が気になって聖騎士に声をかけてみた。

 

「騒ぎのせいで子どもたちが心配だから聖騎士の巡回を増やして欲しいと。最後には孤児院に聖騎士を置けだの……」

 

「あー、そうなんですか」

 

 悪魔祓いは嫌うくせに、聖騎士の巡回は増やせというのか。

 むげにもできないだろうから聖騎士も大変だろう。

 

「人手が回らないと言っているのに……あの人毎回めんどくさいものだ」

 

「毎回? そんなに来るんですか?」

 

「あの孤児院は元々私設のものだったのだが、子どもたちを引き取って育てる功績が認められて教会で支援するようになった。ただ以来あれをしろ、これをしろとうるさいんだ。子どもの前では良い人なんだがな」

 

 聖騎士は深いため息をつく。

 

「私設の孤児院……」

 

 ウルモンも結構苦労しているのだなと俺は驚いた。

 今でこそ孤児院も綺麗な状態だったが、自分だけで孤児院をやるのはなかなか大変だろう。

 

「昔から支援してくれている人がいるらしい。今もお祈りや苦情じゃなく支援のために定期的に帳簿を提出しに来ていて、その途中で俺が捕まってしまったのさ」

 

「お疲れ様です」

 

「そろそろ昼だろ? 君たちは早めに休むといい。悪いな、若いのに手伝わせて」

 

「こんな時に若いも何もありませんよ」

 

「最近の若いのはできた奴が多いな。俺の若い時は……おっとこんな話をしていたらせっかく早く上がっていいと言ったのに遅れてしまうな」

 

 俺とパシェは聖堂から移動して、食堂に向かった。

 まだ昼前なので人は少なめだ。

 

 パシェが気を使わなくてもいいように隅でサラッと昼を取ると、部屋に向かう。

 

「あれ? こんなところで何してるんですか?」

 

 歩いていると視界の端に見たことある老婆が映った。

 気になって俺は声をかける。

 

「……なんだい? 私がこんなところにいちゃいけないかね?」

 

 声をかけられて軽くびくりと震えた相手はウルモンだった。

 今いるのは俺やパシェも部屋を当てがわれているところで、その近くにはクレンシアを始めとした見習いたちもいる。

 

 普通の人が入る場所じゃないし、特に今は部外者の立ち入りを禁止しているところになる。

 

「いけませんね」

 

「チッ! なんだい、あんたは! ちょっと道に迷っただけだよ!」

 

 俺の顔を睨みつけて、ウルモンは凄む。

 スイッチが入るのが早いことだ。

 

「迷ったなら外までお送りしますよ。ここら辺は部外者立ち入り禁止です」

 

「フン! 何か隠しとるのかね?」

 

「ええ、お宝、金銀財宝、宝剣、秘密兵器、エッチなもの、いっぱい隠してあります」

 

 そっちがそんな態度なら俺だってそんな態度に出る。

 バカにされたように感じたのかウルモンの顔が怒りで赤くなる。

 

 こんなふうにしても、パシェは何も言わないでいてくれるのだからありがたい。

 

「年寄りを何だと思ってるんだい! お前たちが不甲斐ないから孤児になる子が……」

 

「何を騒がしくしているのですか?」

 

「……クレンシア、出てこなくていい」

 

 ウルモンが騒がしくするものだから、気になったクレンシアがドアを開けて様子を確認する。

 

「私が騒がしいってのかい!」

 

 ウルモンはクレンシアにすら噛み付く。

 狂犬じゃあるまいし、と俺はため息を漏らしてしまう。

 

「これ以上騒ぎ立てると、俺も容赦しませんよ」

 

「今度は脅すのかい?」

 

「脅しだと思いますか?」

 

 俺は剣に手をかける。

 この非常事態にこんなところで騒ぎ立てる人がいるなら警戒して然るべき。

 

 退去に従ってくれないのなら武力行使も辞さないつもりだ。

 

「……はぁあ! 最近の若いのは! 案内しな!」

 

「……この人、私は嫌いだな」

 

 俺の後ろでパシェがつぶやいた。

 同感だよ。

 

 そういう意味を込めて俺は肩をすくめながらパシェのことを見たのだった。

 

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