霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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52悪魔現る1

 二日が経った。

 成功すれば助けを呼べる。

 

 失敗しても見張りの分の聖職者の手は空く。

 そんな説得でゲルディットはノートムの死地への出陣を押し切った。

 

 馬に乗り、日が出る前の闇に紛れてノートムが町を飛び出したのが二日前のことだった。

 

「町中に凄惨な死体はなし……上手くいったのかな」

 

 相変わらず聖堂には溢れている。

 ダモンのような派手なアピールに使われた死体は出ていない。

 

 ノートムがうまく逃げ切ったのか、あるいはただ殺されてそこらに捨てられたのかはまだ判然としない。

 聖騎士の巡回が無くなったことを町の人たちが気づき始めた。

 

 なんとか言い訳をつけているが、鋭い人なら不穏な空気を感じていることだろう。

 

「助けてください! 魔物が現れました!」

 

 仮初の平穏。

 それを打ち破るように、急報が飛び込んできた。

 

 次々と助けを求めて人が教会にやってくる。

 あっという間に騒ぎが広がっていく。

 

「魔物が現れたらしいけど……なんか数が多くないか?」

 

 魔物が現れて慌てるのは理解できる。

 しかし魔物が現れたと教会に飛び込んでくる人の数が多い。

 

 聖職者も聖騎士もみんな出てきて状況を把握しようとしている。

 

「エリシオ、パシェ、こっち来い」

 

 押し寄せる人を避けるうちに、壁際まで追いやられた俺たちのところにゲルディットが来ていた。

 ゲルディットについて、聖堂から移動する。

 

 一つ奥に入れば人はおらず、魔物騒ぎなど嘘のようだ。

 

「悪魔が動き出した」

 

 ゲルディットは険しい目をしている。

 この騒動が単なる魔物騒ぎではないことなど、俺も分かっている。

 

「まずは魔物の状況を把握せねばならないが……それは他に任せよう。俺たちはそれとなく例の奴を気にかけるぞ」

 

 俺とパシェは頷く。

 例の奴とはクレンシアのことだ。

 

 クレンシアの正体を知っているのは俺たちだけなので、どうにか悪魔に狙われないようにする必要がある。

 

「見習いどもは部屋で大人しくしていろ! 鍵をかけて、外に出てくるな!」

 

 見習いたちが止まっている部屋がある廊下まで来ると、みんな、なんの騒動だと部屋から顔を出していた。

 怖い顔をしたゲルディットの指示で各々部屋に引きこもり始める。

 

「ねえ! 何があったの!」

 

「いいから大人しくしてろ!」

 

 クーデンドはちょっとだけドアを開けて、俺にひっそりと声をかけてきた。

 細かく説明している時間もない。

 

「気をつけてね……」

 

 俺が下がってろと手を振ると、クーデンドは少し心配そうな顔をして部屋に閉じこもった。

 

「ここにいましたか!」

 

 聖騎士がゲルディットを見つけて走ってくる。

 

「状況が少し分かってきました! お集まりください!」

 

「分かった。すぐに向かう」

 

 慌てる聖騎士、対してゲルディットはどこまでも冷静。

 教会の会議室に向かう。

 

 そこには悪魔祓いだけでなく、教会の司祭以上の役職の人も集まっていた。

 俺たちは最後に来たものだから、視線を集めてしまう。

 

「それで、状況は?」

 

 ゲルディットが椅子にどかりと座り、一言で話を促す。

 俺とパシェはゲルディットの後ろに立っている。

 

「魔物が現れました」

 

「それは分かっている」

 

「騒ぎがかなり大きくなっていまして、その原因は魔物が複数現れたからです」

 

「なんだと?」

 

「三カ所……町の三カ所に同時に魔物が現れたようです」

 

 悪魔が動いた。

 証拠などなくても、もう疑いようもない。

 

 悪魔に対する複雑な感情で胸が締めつけられるような思いがする。

 これから訪れる危機が俺の後ろに立っている、そんな感じが鼓動を速める。

 

「三カ所だと……!」

 

「聖騎士も足りないのに……そんな」

 

 聖職者たちがざわつく。

 やはりこんな時でも冷静なのは、聖騎士や悪魔祓いの人たちだ。

 

 俺も三カ所もと思いながらも、そうした問題をどこかで冷静に見つめている自分がいるのを感じている。

 

「ゲルディット司教、どうしますか?」

 

 困り果てた教会の大司教がゲルディットに意見を求める。

 

「一般の方々を放ってはおけない。魔物を討伐しましょう」

 

「ですが……」

 

「一カ所は俺に任せてください。残りの二カ所はそれぞれ悪魔祓いを中心に聖騎士をつけて向かわせましょう」

 

 正直人手が足りない。

 だが魔物によって何の罪もない人たちが犠牲になるのは許せない。

 

 仕方なくゲルディットは判断を下す。

 二組いる悪魔祓いをそれぞれ魔物が出た場所に向かわせる。

 

 そして残りの一カ所をゲルディットが処理するつもりなのだ。

 この判断の速さはやはり、見習いたいなと思う。

 

「今いる聖騎士を全て動員して素早く終わらせましょう。悪魔が出たら退散だ。他の場所の処理が終わるまで悪魔との交戦は禁じる」

 

 不安はある。

 けれども他にどうしようもない。

 

 クレンシアを守るために一般の人を犠牲にするわけにはいかず、ゲルディットは自分の責任において最善の策を取った。

 

「動くぞ。こうしている間にも魔物は暴れている」

 

 ゲルディットが立ち上がると続けて悪魔祓い、少し遅れて聖騎士が立ち上がる。

 

「エリシオ、パシェ」

 

 ゲルディットが俺たちのことを見る。

 

「パシェの方はついてこい。魔物なら魔だけでもいける」

 

「……俺は?」

 

「お前はここにいろ」

 

「どうして……!」

 

 ゲルディットの口から出た言葉に俺は思わず顔をしかめてしまう。

 この期に及んで連れていかないなど、納得できるわけもない。

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