霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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58友が守りたかったもの2

「教会に助けを求めればきっと教会は手を差し伸べた。しかしあなたは教会から手を差し伸べてくるまで、教会の助けは得なかった」

 

 教会も時に非情だ。

 その時の情勢や上に立つものの考えによって、全く対応が違うこともある。

 

 だが、凍えそうな子供がいる孤児院が助けを求めて応じないこともないだろう。

 応じなかったこともあるだろうが、そもそも助けを求めなきゃそこまで細かく目を配ることも難しい。

 

「復讐、ですか?」

 

 ウルモンは俺の話を聞いてるのか、聞いてないのかも分からない目をして、睨むように地面を見ている。

 

「あなたの婚約者を奪い、遺産も渡さなかった教会への」

 

「……あの人の遺品の中には…………結婚した時に渡すはずだった私への指輪もあった」

 

 ウルモンの目から涙が流れた。

 手が震えて、杖に体重を預けるように体を丸める。

 

「悪魔祓いだったから……死んでしまうことはしょうがないと思っていた。でもせめて……指輪だけでも手元にあれば……それなのに! 教会はまだ結婚していないからと指輪さえくれなかった!」

 

 手の震えが酷くなって杖を落とす。

 体を支えていられなくなったウルモンは地面に倒れ込んだ。

 

 か弱い老婆が倒れても助ける人はいない。

 世界は寒い。

 

 その言葉は間違っていないのかもしれない。

 

「心の優しい復讐だったんですね」

 

 教会の役割を奪ってやろうとした。

 孤児を救い、教会でなくともいいのだと証明しようとした。

 

 あまりにも、心のある復讐の仕方。

 

「けれどそれに固執して子供を危険に晒した。悪魔の手を借りて、教会への復讐を果たして……満足ですか?」

 

 今思えば教会でウルモンを見たが、あれも一つの復讐だったのだろう。

 単純に聖騎士の手が足りていないという情報を引き出しただけでなく、聖騎士を派遣しろなど普段から要求を突きつけることもまた復讐だったのだ。

 

「善行による復讐……そして悪魔はそれにつけ込んだ」

 

 ウルモンは間違ったことをしていない。

 孤児を救うという大義は立派だ。

 

 だがそれを復讐に利用してはいけなかったのだ。

 

「シウに……謝っておいておくれ」

 

 ウルモンは拘束された。

 一応これから調査されて、罪の重さに応じて罰を受ける。

 

 もう歳だし処罰がどうなるか、あるいは処罰に耐えられるのかも分からない。

 ただちょっと、この胸の痛みは慣れることがなさそうだなと思ったのだった。

 

「よう」

 

「どうも、ノートムさん」

 

 悪魔祓いによって手を拘束されてウルモンが連れていかれる。

 その様子を複雑な思いで見つめていた俺に、ノートムが声をかけてきた。

 

 悪魔祓いがタイミング良く到着したのは偶然ではなく、ノートムが怪しさを覚えてこちらに向かっていた悪魔祓いに悪魔の脅威を伝えたから急いで来てくれたのだ。

 ただし、その代償は大きい。

 

「悪魔と戦ったって聞いたぞ。死にかけた、ともな。だが元気そうだな」

 

「ええ、死んだのは悪魔の方です。俺はピンピンしてます」

 

「そんな冗談言えるなら平気そうだな。死にかけると精神的に参っちゃうやつもいるんだがな」

 

「俺は平気です。でもノートムさんの方は……」

 

 風が吹いた。

 朝の冷たい風がノートムの肩にかかったマントを揺らす。

 

 その下に腕はなかった。

 やはりノートムも悪魔に狙われた。

 

 魔物に追いかけられて、左腕を失ったのだ。

 

「生きてるだけでもありがたい話だよ」

 

 流石に神聖力でも腕は生やせない。

 腕が残っていれば繋げられたかもしれないけれど、魔物に食われてしまったらもう無理。

 

「……これからどうするんですか?」

 

 ノートムの利き腕は左だった。

 つまり利き腕を失ったことになる。

 

 魔力はあるだろうが、利き腕を失っては戦うのは厳しかろう。

 

「悪魔祓いは引退だ。いや……俺は教会を辞めることにしたよ」

 

「教会を?」

 

 ノートムの言葉に俺は驚いてしまう。

 悪魔祓いや聖騎士として戦うのは難しいだろうが、他にやれることはいっぱいある。

 

 教会まで辞めることはない。

 

「今回の功績もあるし、こうなった場合教会から結構な見舞金がもらえる。それ携えて……ここで働こうかなって」

 

 ノートムは孤児院に目を向けた。

 

「ここはアイツが守ろうとしたところだ。ウルモンが捕まって、シウさんが真相聞いたらきっと孤児院は大変になる。死んじまったバカの代わりに、生き残っちまったバカが少しばかり手を貸してみようかなって」

 

「…………いいですね」

 

 立派な考えだと思う。

 

「アイツ怒るかな……? 俺が生き残って、腕まで失って、孤児院手伝うのも半分シウさんに手を出すようなもんだしな」

 

 冗談めかしてノートムは頭を掻く。

 

「多分怒ってないですよ」

 

「本当か?」

 

「ええ、多分じゃなくて、絶対」

 

 俺も孤児院を見ていた。

 ただノートムよりも視線は上を向いている。

 

 悪魔がいなくなったせいだろうか、孤児院の周りにも幽霊が戻ってきている。

 そして孤児院の屋根のところに一人の男の幽霊がいた。

 

 微笑みを浮かべてノートムのことを見ているのは、ダモンの霊だ。

 悪魔に囚われていたのか、孤児院のところに戻ってきたのだ。

 

 ウルモンのことを見て、寂しそうな顔をしていた。

 だけどノートムの発言を聞いて目を細めて笑っている。

 

「君がいうと本当に感じるな」

 

 ノートムにダモンのことは見えていない。

 でも俺の言葉にノートムも微笑んだ。

 

「俺は死ねなかった。なんだか生き残っちまったから……後でお前に謝るよ」

 

 ダモンは謝らなくていいと首を振った。

 そしてゆっくりと天に昇っていく。

 

 ノートムがいるなら何も心配ないと思ったのだろうか。

 

「帰りましょう。怪我人に朝の冷たい風は良くないです」

 

「そうだな。遺産もシウさんが受け取れないか直訴してみるか。またこんなこと起こるぞって脅せばいけるかもな」

 

「きっといけますよ」

 

「やめてくれ。君がいうと、なんでもできそうだ」

 

 孤児院の今後も心配だった。

 ウルモンがいなくなり、婚約者を亡くしたシウが一人でやっていけるのか不安を覚えていた。

 

 しかしノートムがいるなら大丈夫だろう。

 元悪魔祓いがいれば悪魔もきっと手を出さない。

 

「頑張ってください。孤児院の仕事も、きっとできますよ」

 

「ありがとう。ダモンのことも、全部色々な」

 

 こうして一連の事件は幕を閉じた。

 アーゲインたちの到着で被害は思ったよりも小さく済んだのであった。

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