霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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61根深い問題2

「まあいい。これぐらいの方が悪魔と戦うには向いてるからな」

 

 アーゲインは苦笑いを浮かべて、ため気をつくように息を長く吐き出す。

 

「さて、真面目な話をしようか」

 

 騎士団長が俺に何をいうのだと身構える。

 ゲルディットとは仲が良さそうだし、見習いのくせに悪魔と戦ったことでも怒られるのかもしれない。

 

「俺はお前に謝らねばならない」

 

 アーゲインの暗い茶色の瞳が俺を見つめている。

 謝らねばならないことと言われても、俺には特に思い当たる節もない。

 

 悪魔と戦った時に会ったのが初めてで、その時だって謝られるようなことはされていない。

 助けが遅れた、なんてことでわざわざ呼び出したりもしないだろう。

 

「お前の両親……ヒルデンとスイータのことだ」

 

「俺の……親、ですか?」

 

 わけがわからない。

 俺は眉をひそめてしまう。

 

「君の両親についてはゲルディットから聞いているだろう? どこまで聞いている」

 

「どこまで……両親が悪魔祓いだったことや悪魔に殺されたこと、それに……」

 

 俺はゲルディットに視線を向ける。

 

「リストのことも知っている。そもそもリストを渡してくれたのはエリシオだ」

 

「……そうだったな。ならほとんど知っているようなものだな」

 

 アーゲインは小さく頷く。

 

「お前の両親は俺が殺したようなものだ」

 

「えっ?」

 

 予想外の言葉に驚く。

 

「内部に敵がいると疑い、俺は当時の騎士団長にお願いして内部の調査を秘密裏に開始した。その結果疑わしいものが多く、極秘の内部調査チームが立ち上がることになった。責任者は俺だ」

 

 気づけば窓に水滴がついている。

 雨が降り始めているようだった。

 

「ヒルデンとスイータは優秀な悪魔祓いだった。ヒルデンが聖、スイータが魔としてペアを組んでいて、強いだけじゃなく頭も良かった」

 

 ポツリと降り出した雨のように、アーゲインもポツリと語る。

 

「だからリストの制作を任せていた。……小さい子供もいるのだし、他の者にやらせればよかった」

 

 アーゲインは後悔をにじませて首を振る。

 

「結果として悪魔にバレ、いいようにされてしまった。君は一年間の失踪……探したよ」

 

「はは……それはすいませんでした」

 

「ゲルディットが君を見つけたと報告してきた時には安心したよ。君が見つからなければ二人の墓前に挨拶に行くことすらできなかったろう」

 

 雨が激しくなって、窓を打ちつける。

 アーゲインの悲しみの深さを表しているようにも感じられた。

 

「ともかく……俺の判断ミスだった。いまだにどこから情報が漏れたのかも分かっていない。全て……俺の責任だ」

 

「謝罪は受け入れます」

 

「あっさりしているな。罵られようと、殴られようと……覚悟はしていたのに」

 

 サラッと頷く俺に、アーゲインは悲しそうに目を細める。

 

「仮に何かを要求するなら……」

 

「何でも言ってくれて構わない」

 

 アーゲインの顔を見て、贖罪を求めているのだと俺は感じた。

 責任を感じる相手は死んでしまったので、俺に責めたりしてもらい、責任を軽くしたかったのだろう。

 

 でも俺は怒ってないし、そんなことでアーゲインを責めるつもりはない。

 

「父さんと母さんのことを教えてください」

 

「なに?」

 

「悪魔祓いだったとかそんな話じゃなくて、どんな人だったのかとか二人の話とか」

 

 予想をしていなかった俺の答えにアーゲインは目を見開いた。

 子供の頃に少し一緒に過ごした相手でも、親として愛していた。

 

 もっと一緒にいたかったけれど、それは叶わなかった。

 ただ思い出の中に二人はいる。

 

 新たな側面を知れたら、きっともっと思い出すこともあるだろう。

 重要な仕事を任せるということは信頼していたということ。

 

 ならば二人のこともよく知っていたはずだ。

 

「…………もちろんだ」

 

 アーゲインは優しく微笑んだ。

 

「お前は二人の子だな。ゲルディットのせいで少し皮肉臭くなってはいるが……二人に似ているよ」

 

「似てますか?」

 

「ああ、似ているとも。実は顔を隠して一度会ったこともあるのだ。体がデカいせいで子供は俺を見てよく泣いてしまうのだが……君は泣かなかったな」

 

 そんなデカい人に会ったことあるだろうか。

 今思えば悪魔祓いの同僚だったのだろう、変な人たちが時々家に来ていたことは覚えている。

 

 そんな人たちの一人だったのかもしれない。

 

「君も忙しいだろうし、どこかで時間を作って食事でもしながら話そうか」

 

「……はい」

 

 これでアーゲインの心が救われたのかは知らない。

 でも覚悟をしていた悲しい表情はいくらか柔らかくなった。

 

「もう一つ……君が渡してくれたリストはいまだに調査を続けている。そのおかげで六等星の悪魔を倒して、こうして騎士団長にもなったのだ。だが……巨悪はまだ潜んでいる」

 

「教皇を始めとして、枢機卿にも悪魔がいる」

 

「その通りだ。確定する証拠までは掴んでいないが……頭の痛い問題だ。下手に手を出せば俺たちは聖敵になる。切って悪魔だったとできればいいが、うまく誤魔化されて俺たちが追われる立場になってはいけないからな……」

 

 ある程度確証があるのなら、とりあえず切って倒せばいい、ともいかない。

 悪魔は狡猾だ。

 

 すぐに本性を表さず、切り掛かった悪魔祓いを悪者に仕立てあげることだってするだろう。

 何かがあっても、仮に倒すのに失敗することがあっても相手が悪魔であると主張できるだけのものは必要だった。

 

 これが根深くて、頭の痛い問題なのだ。

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