霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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66魔物とは1

「全員走り終えたな。次は剣術訓練だ」

 

「まっ、待ってください!」

 

「なんだ?」

 

「走り込みで……みんな疲れてます」

 

 ギュドスとの無駄な争いのせいで余計な体力を使うことになった走り込みも、何とか全員乗り越えた。

 ただ走り込みだけでは終わらない。

 

 木剣の入った箱が置かれて、訓練教官はサラッと次にいくと言い出した。

 俺も俺で怪訝そうな顔をしているが、中でも順番的に後方でまだまだ休憩し足りなそうな奴が口を出した。

 

 俺は別に疲れてるからとか言うつもりはないけれど、面倒な訓練なんてしたくない。

 

「だからなんだ?」

 

「えっ?」

 

「疲れているから。だからどうしたと言うんだ?」

 

「えっ、いや、その、疲れていてはちゃんと訓練できない……」

 

「悪魔は疲れていたら襲わずにいてくれるのか?」

 

 みんなの声を代弁したような意見に、訓練教官は鋭い質問を返す。

 

「悪魔が襲いかかってきて、万全の状態ではないから、疲れているからとそんなことを言えば待ってくれると思うか?」

 

「それは……思いません」

 

「常に万全の状態でいられると思うか? 悪魔や魔物が出たと聞いたら俺たちは走って駆けつける。魔物に息が整うまで待ってくれと言うのか?」

 

 ようやく走り込みが終わったというホッとした空気が、一瞬にして重たくなってしまった。

 

「次の町への移動中に襲われることもあるし、真夜中に叩き起こされて戦うこともある。魔物が一体だけではなく連戦になることだってあるのだ。疲れているから戦えないと悪魔の犠牲になった者に言えるか?」

 

「………………言えま、せん」

 

「どんな状況でも戦え。たとえ万全でなくても剣を手に取れ」

 

 訓練教官はぐるりとその場にいる研修生たちを見回す。

 

「戦えないなら逃げろ。生きていれば立て直して戦えるし、仲間に情報を伝えれば次に繋がる。何もしないなんて選択肢はない。疲労困憊でも動く……このための訓練だ」

 

 まあ、正しい。

 悪魔がこちら側の不調に合わせて力を抑えてくれるはずもなく、見逃してくれるわけもない。

 

 万全だったら勝てたなんて言い訳は、天国じゃ笑い話にもならないかもしれない。

 天国なんてものがあるのか知らないけど。

 

 疲れ切った体で動く。

 いきなり実戦で疲れ切った状態になってしまうと危険だ。

 

 一度でも経験しておけばなんとなくは動けるかもしれない、という訓練だった。

 

「お前、俺とやるぞ」

 

「なんでだよ……」

 

 ただ初回なので訓練の強度も抑えめである。

 素振りをして、次はペアで戦うことになった。

 

 適当な相手と見栄えするように戦いたいと俺は思っていたのだけど、ここでもギュドスが絡んでくる。

 ペアは自由に作れと言われて、ギュドスが俺と組むと突っかかってきた。

 

「嫌だ」

 

「なんでだ!」

 

「それが分からないならもう一度勉強やり直してこい」

 

 舌打ちでもしたい気分だけど、我慢する。

 別にマナーとかそんな意味ではなく、舌打ちするとギュドスを刺激してしまいそうだからだ。

 

「…………くそ」

 

 しかし周りはすでに俺を避けてペアを作っている。

 もはや組む相手の選択肢がない。

 

「クレンシアさんに近づく資格がないと証明してやるよ」

 

「……チッ!」

 

 俺も人間だ。

 我慢の限界というものがある。

 

 別にクレンシアには興味ない。

 自ら関わりに行ってないし、研修が終われば関わることもないだろう。

 

 なのにこんなふうに何回も絡まれては仏のエリオスといっても怒ってしまうというものだ。

 だれが仏のエリオスなんて言った、何て疑問はこの際置いておく。

 

「魔力や神聖力はなし、それぞれの実力を見せてもらうためのものでもあるから、それなりに本気で戦え」

 

 走り込みで体力は見た。

 次は実際にどれほど剣を振れるか、というところもこれで確かめるらしい。

 

「素行不良の輩の実力など高が知れている」

 

 俺の苛立ちが収まらないままに、俺とギュドスの番を迎えた。

 

「ここは一つ……痛い目見てもらうか」

 

 こんなふうに絡まれるのはいい加減飽きた。

 ここでなあなあに済ませてしまうと今後も絡まれてしまうかもしれない。

 

 たった数ヶ月であってもできるだけストレスフリーに過ごしたい俺としては大問題である。

 だから今、分からせる。

 

「始め!」

 

 開始の号令がかかる。

 

「うっ!?」

 

 木製の剣を手にした俺はギュドスと一気に距離を詰める。

 鋭く素早く振り下ろされた剣をギュドスは何とか防いだ。

 

「くそっ!」

 

「へぇ……結構強いんですね」

 

 ただ攻撃は一度で終わりじゃない。

 品の良いマナー教室でもないのだから攻め続けられるなら攻める。

 

 俺は激しくギュドスを攻め立てた。

 ギュドスの方は防戦を強いられて、反撃もできずに苦い顔をしている。

 

 クレンシアが感心したような顔をしていて、それもまたギュドスをイラつかせているようだが、俺は気にせずギュドスを追い詰める。

 

「うっ……」

 

 木剣でも当たれば当たればかなり痛い。

 ギュドスの頬を剣先が掠めて切れる。

 

 反撃の糸口すら見つけられずにギュドスは苛立ちが募っているようだけど、俺はギュドスに反撃の隙を与えるつもりはない。

 

「ぐっ!」

 

「そろそろ降参したらどうだ?」

 

 脇腹を狙った一撃。

 ギュドスの防御が遅れて、木剣が脇腹に僅かに食い込む。

 

 真剣でも致命傷にはならないが、脇腹にしっかりとした切り傷は残るだろう当たりだった。

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