霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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68魔物とは3

「お前らとて例外ではない。むしろ魔力や神聖力が使えて、体を鍛えている方が魔物としても強いものを作る材料になる」

 

 以前大司教であるソコリアンダの死体を欲しがった魔物製作者なる悪魔がいた。

 強い魔物を作るために必要だったようなことを言っていたのを俺も覚えている。

 

「悪魔に負けないように。これはお前たちの命を思ってのことだ。だがそれだけではない。お前たちが死んで魔物として利用されると、敵としても厄介なことになるのだ」

 

 魔力や神聖力を扱えて鍛えられた存在。

 それこそ聖騎士というわけである。

 

 聖騎士を魔物化されたら強い魔物になるし、戦う側の心情としても嫌だろう。

 そんなだから最低限死ぬなというのだ。

 

 死ぬなと言って人が死なないなら楽な話だが、気持ちだけの問題ではなかった。

 

「そしてこれからやるのは……この魔物を攻撃してもらうことだ」

 

 訓練用の木剣が下げられて、木箱に無造作に立てられた別の武器が運ばれてくる。

 

「いざ聖騎士として本番……そんな時になって魔物と戦えないということになったら困る。魔物と戦う……そのことを今のうちから慣れてもらう」

 

 訓練教官が木箱に立てられた剣を手に取る。

 鞘から剣を抜くと、それは刃のついた真剣であった。

 

 戦う覚悟、やる気があっても実際に相手を切るという感覚に慣れない人もいる。

 俺自身も生の肉を斬り裂く感覚はなかなか独特のものがあると思う。

 

「一人一度ずつ魔物を突き刺してもらう」

 

 訓練教官は厳しい目をして研修生たちのことを見る。

 魔物を前にして緊迫した空気がより一層張り詰めたものとなる。

 

「そう心配するな。檻に入れたまま突き刺してもらうだけだ。危険なことはない」

 

 剣を鞘に戻し、柄を研修生の方に向ける。

 

「さて、誰が最初にやる?」

 

 そう言われてもなかなか前に出る人はいない。

 俺に対抗心を燃やしているギュドスもひっそりと列に戻っているのに、前には出ない。

 

 俺はもう戦闘経験があるけれど、多くの研修生は魔物を見たことがあっても戦ったことはない。

 ためらうのも無理はない話だ。

 

「ここはポイント稼ぎしとくか」

 

 誰もやらないなら、と俺が軽くため息をついて前に出る。

 ギュドスの腕をへし折ったせいで訓練教官の印象は良くない。

 

 卒業も何もないが、印象悪く終わるより良く終わった方がいいには決まっている。

 

「おっ、二人もか」

 

「ん?」

 

 たまたま、俺と同時に前に出たやつがいた。

 割と綺麗な顔をした長身男性で、走り込みでも上位にいたやつだと記憶している。

 

 名前は知らん。

 

「お先にどうぞ」

 

 誰もいないならさっさと終わらせてしまおうというぐらいで、最初じゃなきゃ嫌と言うつもりもない。

 先にやりたいやつがやればいい。

 

 そう思って俺は先を譲るように隣を見る。

 

「いや、お前が先だ」

 

「えっ?」

 

 特に何番目でもいいので下がろうとした俺に向けて、訓練教官は剣を差し出す。

 やはり目をつけられているらしい。

 

「はいはい……」

 

 面倒だが、ご指名なら仕方ない。

 俺が剣の柄を握ると、訓練教官はパッと剣から手を放す。

 

「……ふん」

 

 おざなりに握って剣を落とすとでも思っていたのだろうが、俺はちゃんと剣を持っている。

 手を放した状態からほんの少しも動かない剣を見て、訓練教官は少し驚いたように眉を上げた。

 

「はい、これでいいですか?」

 

 こんなものためらうことはない。

 俺はサッと剣を抜いて、檻の隙間から悪魔に対して剣を突き立てる。

 

「……ああ」

 

 想像よりもあっさりと俺が剣を突き刺したことに訓練教官は驚いている。

 魔物は剣を突き刺されて呻き声を上げる。

 

 これが本当に呻き声なのか、俺には分からない。

 本当に痛みを感じていて呻いていると考えるのは普通の子であるが、ただ相手を怯ませるためのポーズである可能性も否めない。

 

「……ごめんな」

 

 あれは誰にも気づかれないように魔物に謝る。

 本当なら魔物を殺してしまいたいぐらいだった。

 

 他の人には見えていない、聞こえていないだろう。

 だが俺には見える、聞こえる。

 

 魔物にまとわりつく幽霊の存在が。

 それはきっと魔物にされた人の幽霊なのだろう。

 

 ただ悲しげな声をあげて、魔物の体から離れられずに嘆いている。

 魔物を殺して解放してしまいたいが、今はそれができない。

 

「きっと全部終われば……楽になるはずだから」

 

 誰に向けたのでもない言葉を、聞いている人はいなかった。

 その後、俺やもう一人が魔物を刺したことに勢いづいて、他の人たちも魔物を次々と突き刺していった。

 

 中には突き刺した後吐いてしまう人もいるし、いざ魔物を前にするとためらってしまったひともいた。

 クレンシアは少しためらいの色を見せつつも大きく息を吐き出した後に、魔物を刺した。

 

 魔物に対しても思っていたより覚悟ができている。

 ギュドスは俺への対抗心からか刺した後に俺を睨みつけていた。

 

 ただ腕を折られたせいか絡んでくることはなかった。

 

「今後もこうした訓練は続ける。魔物への同情は消せ。殺してやることのみが奴らに対する救いだ」

 

 訓練教官の言葉には同意する。

 最後に訓練教官に殺されて魔物にまとわりついていた魂は解放された。

 

 殺すことで救われる。

 何とも悲しいものであると、天に昇る魂を見ながら俺は思ったのだった。

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