霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~ 作:犬型大
「すごいな……」
強い神聖力のおかげで周りを見る余裕も少しだけできた。
他の聖騎士たちにもエリオルゴールの神聖力は送られている。
エリシオも複数の人に神聖力を送ることはできるが、エリオルゴールの神聖力はエリシオよりも強いらしい。
「素手じゃ厳しいか」
エリオルゴールの神聖力のおかげで、一人でナナフシ馬魔物を引きつけることはできる。
ただ殴りつけてもあまりダメージを与えられていない。
倒すことは厳しそうだった。
「エリシオ!」
とりあえず他のところが魔物を倒すことを期待するしかない。
そんなふうに考えていたら聞き覚えのある声が聞こえてきた。
ついでに鎧が擦れる大きな音。
ナナフシ馬魔物の攻撃をかわしながら視界の端で確認すると、見慣れた大きな鎧がこちらに走ってきている。
「これ使って!」
倒れた聖騎士の手からこぼれ落ちた剣を拾って投げてくれたのは、パシェであった。
「よう。会いたかったぜ」
クルクルと回転して飛んでくる剣の柄を俺は巧みにキャッチする。
そして体にまとわれる強い神聖力を剣にも流し込み、無造作に伸ばされるナナフシ馬魔物の手首を切り落とす。
「さて、お遊びの時間は終わりだ」
俺は返す刀でもう一本腕を切り落とす。
ナナフシ馬魔物が二本の手を失った痛みでいななくように鳴いた。
「おお、悪魔祓いもきてくださいましたか。ではあなた方にも」
エリオルゴールが手を打ち鳴らす。
するとパシェの体にも神聖力がまとわれていく。
「エリシオ、よく頑張ったね」
パシェが自らの魔力も放ち、神聖力と混ざり合って銀色のオーラに変わっていく。
勢いよく振り下ろされたパシェの剣は、ナナフシ馬魔物の右側の三本の腕をまとめて叩き斬る。
チラリと確認するとゲルディットの姿もある。
よく分からない神聖力お化けの枢機卿と、パシェとゲルディットの悪魔祓いコンビまで来てくれたらあとは魔物を倒すだけ。
「クレンシア、お前は休んでろ」
「……う、でも…………」
「力の配分ミスだな。このままだと倒れてしまうぞ」
パシェがナナフシ馬魔物を切り刻んでくれている間に、クレンシアとペリフェの様子を確認する。
ペリフェは大丈夫そうだが、クレンシアはかなり顔色が悪い。
クレンシアから送られてくる神聖力も不安定になっている。
送り込む神聖力が強すぎて力を使い果たしてしまっていると俺は気づいた。
初めての実戦に力の調節がうまく行っていない。
本来クレンシアの神聖力ならまだ余裕があるはずなのだけど、緊張や経験不足から神聖力の浪費が大きくなってしまっているのだ。
このままじゃクレンシアが倒れてしまう。
「休め」
「ですけど……」
「ここは今戦場だ。倒れられたら迷惑になる」
「うっ……」
優しさ、というところもある。
だが今戦いが巻き起こっている。
力を使いすぎて倒れれば、それだけ気を使わねばならないところが増えてしまう。
無理を通して周りに負担をかけるなどしてはいけない。
俺が肩に手を乗せてじっと目を見つめると、クレンシアの瞳が揺れる。
俺は別に優しく休めと言ってやるつもりはない。
休まねば邪魔になる。
これは警告といってもいい。
「……はい」
ほんの少し泣きそうな顔をして、クレンシアは神聖力を引っ込める。
神聖力を受けている俺としても、急に神聖力がなくなると困るのだ。
今はエリオルゴールの神聖力があるからいいけれど、いざ本当の戦いでいつ力尽きるか分からない支援など受けてはいられない。
「安定感が違うな」
パシェとゲルディットが来てくれただけでかなり楽になった。
やはり悪魔祓いとして鍛えられた二人はただの聖騎士よりも遥かに強い。
「おっと、他にも来てくれたか。ならもう出番はなさそうだな」
騒ぎを聞きつけた聖騎士たちが走ってくるのが見える。
まだ一応研修生な俺が出張ることはない。
胸を殴られて気を失っている聖騎士を引きずって戦いから離したり、サポート的な立ち回りに徹している間に駆けつけた援護も戦いに加わり魔物は全て倒されたのであった。
「安らかに……」
泣き叫ぶような声が消えていく。
別に神を信じちゃいないが、立ち昇って消えていく魂が安らかになれるのなら神ってやつがいてもいいのかもしれない。