霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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80遠征5

「あいつがこっちを水中に引きずり込むつもりなら俺たちはあいつを陸上に引きずり出してやる」

 

 俺は怒りに歯を食いしばり、川面を睨みつける。

 

「どうするつもりだ?」

 

「文字通り引っ張ってやりましょう」

 

「簡単に言ってくれるな」

 

 人を容易く川に引きずり込むような力がある。

 そんな相手を川から逆に引っ張り出すのは簡単なことではない。

 

「やるしかないですよ。ともかくあっちが片付くまでに……一本腕をもらいましょうか」

 

 一人二人で川から引っ張り出すのは無理だろう。

 だが今は他にも聖騎士たちがいる。

 

 みんなで協力すれば悪魔も川から引きずり出すことができるはずだ。

 ただ腕が二本もぷらぷらしていては引っ張る時に邪魔になる。

 

 一本ぶった斬って溜飲下げつつ、引っ張りやすくさせてもらう。

 

「ふっ!」

 

 まっすぐ突っ込んでくる悪魔の手をパシェは正面から受け止める。

 叩きつけるような攻撃ばかりではなく、魔物よりも腕の動きは柔軟だ。

 

「チッ! グニャグニャと!」

 

 ゲルディットが悪魔の腕に向かって剣を振り下ろす。

 しかし悪魔の腕は軟体生物かのように剣をかわしてしまう。

 

「おっと!」

 

「エリシオ、大丈夫か!」

 

「こっちは平気です!」

 

 悪魔が俺を狙った。

 ギリギリまで力を隠すつもりの俺は、今なんの強化もない状態になっている。

 

 強化がない分二人より遅いし、攻撃を受ければ大ダメージになる。

 ただ安全圏まで離れてしまうと神聖力を送り込むのも大変になってしまう。

 

 危険でもある程度近くにいるしかないのだ。

 それに俺だってやられるつもりはない。

 

「にしたってウニョウニョウニョウニョと面倒だな……」

 

 二本の腕は互いにフォローするように動く。

 手の先まで柔らかく自由に動かせるようで、回避はともかく攻撃を当てるのが難しい。

 

「……いや、ならやってやるか」

 

 安全な川の中から腕だけ伸ばして攻撃してくるなんて非常にムカつく。

 今もこちらの攻撃が当たらなくて、水の中でニヤニヤとしているのかもしれないと思うとハラワタが煮えくり返りそう。

 

「こっちだって命懸けるぐらいの覚悟はあるんだよ……!」

 

「エリシオ!」

 

 悪魔の手が伸びてくる。

 俺はわざと動きを鈍くして、回避する。

 

 叩きつけられた腕はかわしたものの、動き鈍くかわしたことを察した悪魔は俺の足首を掴んだ。

 

「……これを狙ってたんだよ!」

 

 強い力で体が引きずられる。

 しかし俺は焦ることもなく冷静だ。

 

 俺は剣を振り上げ、悪魔の腕に突き立てる。

 突き刺さった剣は悪魔の腕を突き抜けて、そのまま地面に刺さった。

 

 剣がギシリと音を立てて、悪魔の腕が止まる。

 

「今です!」

 

「無茶なことをするものだ……!」

 

 川の中に引きずり込みたいという意図は感じていた。

 だからそれを利用させてもらった。

 

 ゲルディットが俺の横を通り過ぎていき、高く飛び上がる。

 剣に銀のオーラを集めて、俺によって地面に固定された腕を斬りつける。

 

「よし……!」

 

 ゲルディットの一撃によって悪魔の腕が斬り裂かれる。

 悪魔の腕から汚い紫色の血が飛び散って、川面に大きな気泡が上がってくる。

 

「ヤバっ……ぐっ!」

 

 もう一本の悪魔の腕が俺に迫ってくる。

 地面に突き立てた剣を手放して逃げようとしたが、足首に激痛が走った。

 

 見ると俺の足首は悪魔の手の形でくっきりと変色していた。

 バカみたいな力で掴まれたせいだった。

 

 逃げられず、俺は悪魔の腕に横から叩きつけられてぶっ飛んでいく。

 

「くっ……てぇ…………」

 

 世界がグルグルと回って、地面に叩きつけられる。

 ギリギリのところでガードしたものの、ガードした左腕が折れてしまった。

 

 それでも俺は意識を手放さず、ゲルディットとパシェに神聖力を送り込み続ける。

 

「エリシオ……」

 

「俺は大丈夫だ! 悪魔と……戦え!」

 

 パシェが心配そうな視線を向けてくる。

 だが今は俺よりも悪魔との戦いに集中すべきだ。

 

「とりあえずこれで残り一本……あっちも終わったようだな」

 

 残っていた魔物の方も聖騎士たちが倒している。

 俺の痛みの仇討ちは聖騎士たちに任せよう。

 

「エリシオさん!」

 

「これは……」

 

 エリシオの体に白いオーラがまとわれる。

 

「クレンシア……」

 

「少しでも……お力に!」

 

 振り向くとクレンシアが両手を俺に向かって伸ばしている。

 悪魔に狙われないよう、だいぶ離れたところから神聖力を飛ばしてくれている。

 

 離れれば効率は悪いが、効果がないわけじゃない。

 

「うっ……」

 

 折れた腕がくっついていく感覚はやや気持ち悪い。

 それでもかなりの速度で体が治っていくので、クレンシアは全力で神聖力を注いでくれているのが分かる。

 

「大丈夫か!」

 

「俺は大丈夫です! あいつの腕を引っ張って川から引きずり出してください!」

 

 聖騎士たちが駆けつけてくれた。

 ここからが反撃の時。

 

「ふぅっ!」

 

 パシェが横に振られた悪魔の腕を受け止めて掴む。

 大柄でパワーのあるパシェでも、一人では抗いきれずに体が引きずられる。

 

「逃すな!」

 

 聖騎士たちが一気に悪魔の腕に群がって掴む。

 

「引っ張れ!」

 

 ゲルディットも加わり、悪魔の腕を綱引きのように引く。

 

「さっさと出て来い……このクソ野郎!」

 

「せーの!」

 

 聖騎士たちが息を合わせて一気に力を入れる。

 すると川の中から飛び出すようにして悪魔が引きずり出された。

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