霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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81遠征6

「……なるほどな」

 

 川から引きずり出された悪魔の姿を見て、俺は思わず納得してしまう。

 長い腕と黒ずんでヌメヌメとした肌、足は根本から三本ずつタコのようなニョロっとしたものが生えている。

 

 頭は口や鼻がなくツルリとしていて、頭には小さな二本のツノがあった。

 奇妙な姿の魔物は、悪魔が自分を参考に作ったものなのだろうと察した。

 

「逃さぬように取り囲め!」

 

 また川に逃げられたら厄介だ。

 聖騎士たちは悪魔を逃さないように悪魔を取り囲んだ。

 

「くそおおおおっ!」

 

 どこから出しているのか知らないが、悪魔はくぐもったような声をあげる。

 斬られた腕が生々しい音を立てて生えてくる。

 

「気色の悪い化け物め……こちらに手を出したこと後悔させてやる!」

 

 聖騎士たちは悪魔祓いではない。

 主な戦いはゲルディットとパシェが行う。

 

 俺の神聖力を受けて銀色のオーラをまとう二人は、悪魔と距離を詰めていく。

 うなりをあげる悪魔の腕がかすめるほど近くを通り過ぎても全く怯むこともない。

 

「ふうぅん!」

 

 パシェは高く剣を振り上げ、悪魔を狙う。

 振り下ろされる剣は銀の軌跡を残す。

 

「動きが鈍いな。地上じゃ満足に動けないか!」

 

 腕をクロスさせてパシェの一撃を防ごうとするも、パシェのパワーを受けきれずに悪魔の腕が切断される。

 そこにゲルディットが襲いかかる。

 

 腕の切り口からプスプスと黒い煙をあげる悪魔は、後ろから迫るゲルディットの方を振り向くので精一杯だった。

 

「ふん……この程度か」

 

 ゲルディットは悪魔を頭から胸にかけて縦に切り裂いた。

 パックリと上半身が割れて、悪魔は全身をブルブルと震わせる。

 

「パシェ、やってしまえ」

 

「はあっ!」

 

 パシェが真っ直ぐに剣を振り下ろす。

 ゲルディットの切り口を狙った攻撃は下半身を切り裂き、悪魔を縦に真っ二つにしてしまった。

 

「おお……これが悪魔祓い」

 

 周りの聖騎士たちが思わず感心してしまうような手際で、悪魔は倒された。

 

「後処理は頼むぞ」

 

 ゲルディットの剣についた悪魔の血が銀のオーラに焼かれて消える。

 二つになった悪魔が地面に倒れて、ゲルディットは剣を鞘に収める。

 

 聖騎士たちが素早く悪魔の死体に駆け寄って細かく切り刻み始めた。

 まだピクピク動いてるのだから気持ち悪い。

 

「お疲れ様です」

 

「お疲れ様、じゃねーよ」

 

「あでっ!」

 

 怪我も治癒した俺は一応ゲルディットを労う。

 せっかく労ってやったのに、ゲルディットは俺の鼻をデコピンで弾く。

 

「また無茶なことをしおって……」

 

 少し怒ったような目をして俺のことを睨む。

 

「結果はいいじゃないですか?」

 

「結果はな。だが一歩間違えれば危険なところだったのだぞ?」

 

「まあ……確かにちょっと危なかったかもしれませんね」

 

 バレてもいいから魔力で防御しておけばよかった。

 そうすれば骨折しなくて済んだかもしれない。

 

 力を隠しながら戦うのは難しいものである、とため息が漏れてしまう。

 

「あんな戦い方、ダメ」

 

「うっ……悪かったよ」

 

 後ろからパシェに肩を掴まれる。

 その手には思いの外、力が入っていて俺は軽く眉をひそめる。

 

 振り向いたパシェの目は怒っていて、流石の俺も反省する。

 

「一等星……弱い悪魔だな。水の中なら二等星ぐらいあるだろうか。あんな小物、お前の狙いじゃないだろう」

 

「……そうですね」

 

「聖騎士だけなら大変だったかもしれないが、この俺もいるんだ。あんな無茶ことする必要もない」

 

「じゃあ今後は引退したはずのゲルディットさんに任せます」

 

「むっ……」

 

 引退するといいながら結局は悪魔との戦いから逃れられない。

 それもまた一度悪魔祓いという道を選んだ宿命なのかもしれない。

 

「パシェ」

 

「なに」

 

 少しパシェの声も冷たい。

 いつものような無感情な感じでなく、俺は苦笑いを浮かべてしまう。

 

「少し手伝ってくれ」

 

「……何をするの?」

 

「いいから来てくれ」

 

 俺は悪魔の死体に近づく。

 

「…………こっちに立ってくれ。もうちょい右」

 

「…………ん」

 

 俺はパシェを横に立たせて、空中を見つめる。

 

「……助けられなくて済まなかったな」

 

 そこには幽霊がいた。

 クレンシアのペアだった子だ。

 

 何回か名前を聞いたような覚えもあるが、俺はほとんど話したこともない。

 怒りのこもった目で、悪魔を見下ろしている。

 

「満足できなかったか」

 

 世の中誰しも簡単に成仏できるわけじゃない。

 怒り、悲しみ、あるいは残した未練など、色々な感情なんかが人の魂を縛り付ける。

 

 クレンシアのペアの子は悪魔が死んでも心が満たされず成仏できずにいるのだ。

 

「あんまりこんなことしたくはないんだけどな」

 

 俺はナイフを取り出す。

 そして右手に魔力と神聖力をまとって銀のオーラを作り出す。

 

「悪いな」

 

 俺はクレンシアのペアだった子の肩に手を添えると、銀のオーラをまとったナイフを胸に突き刺した。

 クレンシアのペアだった子は驚きに目を見開く。

 

「何を……してるの?」

 

「悪魔に殺された子が何かに囚われてる。心安らかになれずにいる。このままだと悪魔に狙われるかもしれない。だから……逝ったもらったんだ」

 

 光の粒子のようになってクレンシアのペアだった子の幽霊が消えていく。

 銀のオーラ、それは悪魔に対してだけではなく、幽霊に対しても有効だった。

 

 無理やりな成仏。

 本当なら自らが満たされて天に昇ることがいいのだけど、どうしようもない時に俺は幽霊を成仏させてやることができる。

 

 神聖力を持った聖職者の魂は悪魔にも狙われてしまう。

 何があの子を縛り付けているのか分からないし、解決してやる時間もない。

 

 ならば、無理にでも逝かせてやるしかない。

 

「こんなことしかできなくて……ごめんな」

 

 光の粒子が天に昇る。

 俺にしか見えていない光景。

 

 幽霊の警告をもう少し早く理解できていたらと思ってしまう。

 

「パシェも悪いな。目隠しになってもらった」

 

 幽霊を成仏させるには銀のオーラが必要だ。

 一人で銀のオーラを出しているところなんて他の人には見せられない。

 

 だからパシェにそばに立って隠してもらったのだ。

 

「……ううん、手伝えることが何でも言って」

 

「ああ、ありがと」

 

 川に流れた死体もちゃんと回収できた。

 とんだ研修になったものの、悪魔や魔物の危険性は研修生たちに十分に叩き込まれただろう。

 

 悪魔を倒したが重たい雰囲気の中、俺たちは帰路に着くになったのだった。

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