霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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85異常個体1

「はぁーあ、自由になったが、自由を失ったな」

 

 日が昇る前、周りは薄暗くてまだほとんど人も起きていないような時間に俺は聖都を出発した。

 わずらわしかった研修から解放された。

 

 その代わりに俺は聖騎士、そして悪魔祓いという戦いの道に本格的に歩みを進めることになったのだ。

 誰に挨拶もしない寂しさはあるものの、挨拶交わしたところで何が変わるわけでもない。

 

 クーデンドだけには手紙を残してきた。

 まっ、元気にやれよと思う。

 

 良いやつだから、死なないで欲しいとは願っているさ。

 

「枯れたオッサン見てると若い連中に囲まれてたことが懐かしく思えるな」

 

 旅の同行者はパシェとゲルディット。

 なんの文句もないけれど、若い華やかな雰囲気はない。

 

「まだ枯れちゃいない」

 

 ゲルディットは深いため息をつく。

 

「ため息つくと幸せ逃げますよ?」

 

「どこの言葉だ、そんなの? 聞いたことないぞ」

 

 こちらの世界にため息で幸せが逃げるなんて概念はないらしい。

 そういえば今自分で口に出すまで聞いたことがなかった。

 

「ため息程度で逃げる幸せならいらんさ。俺は自分で自分の幸せを掴むからな」

 

「ゲルディットさんらしいや」

 

 自分の幸せは自分で掴む。

 素敵な言葉だ。

 

 俺も精神性は見習おうと思う。

 

「そんで……ミルド王国でしたっけ?」

 

 ミルド王国の領主が悪魔とかそんな話だった。

 横文字多くて細かくは覚えてない。

 

「そうだな。ここからだと割と遠い。急ぐぞ」

 

「行ったことあるんですか?」

 

 俺はミルド王国とやらに行ったことはない。

 

「一度だけな。国の三方を山で囲まれた小国だ。特に何かに優れた国ではないが、周りを囲む山々が天然の要塞となって脅威から守られた安定した国だ」

 

「へぇ」

 

「教会にも好意的だから活動はしやすいはずだ」

 

 全ての国が同じ宗教を信仰しているわけじゃない。

 中には別宗教を信仰していたり、信仰そのものを嫌っている国もある。

 

 嫌っている国の方が少ないが、そんな国で活動することがあれば気をつける必要はあるのだ。

 今回はそんな心配もない。

 

「それに……」

 

 ゲルディットは懐から小袋を取り出した。

 

「騎士団長様はお前に期待してるらしいからな、軍資金もたっぷりともらってきた。こういう時期待の新人がいるとありがたいもんだ」

 

 中身の重たさで少し縦に伸びたような袋にはお金が入っている。

 活動資金なんかも教会は支援してくれる。

 

 目的地への移動ぐらいなら大体それで事足りる。

 贅沢したいなら自分のお金も使わなきゃたりないだろう。

 

 ゲルディットはどうやら俺の名前を出して、アーゲインからお金を引っ張ってきたらしい。

 おこぼれに預かれるんだから俺も文句はない。

 

「普通新入りなら安宿に泊まらにゃならんが……普通の宿ぐらいには泊まっていけるだろ」

 

 無くさないようにと懐にお金をしまって、ゲルディットはニヤリと笑う。

 

「なんにしてもしばらくは移動だ」

 

「だってさ、パシェ」

 

「ん、歩くのは嫌いじゃない」

 

「そうだな。馬車も言うほど楽じゃないしな」

 

 ーーーーー

 

 町に教会があれば教会に泊まり、なければ宿を取る。

 町につかなきゃ道端で野宿をして移動をしていく。

 

 時に馬車を使ったりして足を休めたりと、移動にもリズムをつけながらミルド王国を目指す。

 

「済まない……今そっちの方向に馬車は出てないんだ。それどころか歩きの方も道が封鎖されてるから……」

 

「道が封鎖? 何があった」

 

 少し雨の多い地域にやってきた。

 歩きだといつ雨に降られるか分からない。

 

 だから馬車でも使おうと思ったのだけど、御者のオヤジは深いため息をついた。

 

「たぶん、魔物だよ」

 

「たぶんで魔物?」

 

「ああ、この先の山間の道に問題があるらしくてな。こっから向こうに行くやつが帰ってこないし、向こうからこっちに来るはずのやつが来ない」

 

 人が行方不明になる。

 こうなった時にこの世界で真っ先に疑われるのは人の犯罪ではなく、魔物や悪魔の仕業というところだ。

 

「教会に助けは?」

 

「さあな。俺は普段あっちの方に行かないからあまり細かくは知らないな」

 

「町に教会は?」

 

「お祈り用の小さいのがあるぜ」

 

「分かった。ありがとう」

 

 俺たちはオヤジから離れる。

 

「なんだか面倒なことになってそうですねぇ」

 

 会話をしっかりと聞いていた俺はこっそりため息をつく。

 面倒事があったせいで幸せなんかないから、ため息で逃げるなら逃げてみやがれ。

 

「迂回するのにも遠いしな」

 

 ここまで順調だったのに急に足止めをくらった。

 予定では大きな山の間にある道を通っていくつもりだった。

 

 別の道を行こうと思えばぐるっと山を迂回しなきゃならない。

 途中に町はないし、あまり使われる道でもないので雨が多い中で移動するにはあまり好ましくない選択肢だった。

 

「ひとまず教会に向かうぞ。何か話が聞けるかもしれん」

 

 俺たちは教会に向かった。

 教会といっても小さな建物で、中に女神像が置いてあるだけのようなものになっている。

 

「何か御用ですか?」

 

 教会に入って聖職者はいないかと見回していると、向こうの方から見つけて声をかけてくれた。

 白髪の目立つ老年の聖職者だ。

 

「聖騎士のゲルディットだ」

 

 悪魔祓いと最初から言うと相手に警戒されてしまうこともある。

 こんな時にはまず聖騎士から名乗っておくのだ。

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