霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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91夜明けの戦い3

「やはり首は大事か」

 

 ゲルディットの一撃は何本もの手に防がれる。

 全く無視しているように見えて、ゲルディットのこともしっかり気にしているようだ。

 

「チッ……なんで俺ばっかり……!」

 

 何本もの手が絶え間なく襲いかかってきて、俺はダンスでもするように動いて腕ゴリラ魔物の腕をかわし続ける。

 ただ俺も楽じゃない。

 

 腕ゴリラ魔物の攻撃速度が速く、一撃一撃余裕を持ってなんて回避していられないのだ。

 ギリギリでかわさねば、次をかわせない。

 

「くっ……」

 

 腕ゴリラ魔物の腕が俺の脇腹を掠める。

 それだけでも鈍い痛みが走る。

 

 まとまっていない腕一本、ただかすめただけなのにダメージがある。

 魔物というやつの脅威を身に染みて感じざるを得ない。

 

 能力の違いがズルい。

 

「だからって……魔物になるつもりはないがな!」

 

 俺はかわしながら腕ゴリラ魔物の腕を一本斬り落とす。

 

「ははっ! 随分と貧相になったな!」

 

 主にゲルディットとパシェによって、腕ゴリラ魔物の腕が斬り落とされていった。

 十何本もあったような腕も、気づくと残り三本ずつになっている。

 

 こうなるともう腕もゴリラの太さにならないだろう。

 俺たちは逃がさないように腕ゴリラ魔物を取り囲み、トドメを刺す機会を狙う。

 

「まだ悪あがきするか」

 

 腕ゴリラ魔物は残った腕を一つにまとめる。

 最後の最後に悪あがきのつもりかもしれない。

 

「ぶった斬ってやるよ!」

 

 三本ぐらいならまとめて斬ることも難しくない。

 そろそろ俺も疲れてきた。

 

 三人分の神聖力を維持するのも限界に近い。

 終わらせる。

 

 そんなつもりで腕ゴリラ魔物に斬りかかっていく。

 

「はっ!」

 

 三本ならばちょっと太い腕ぐらい。

 俺は顔面を目掛けて突き出された拳をかわすと、肘から先を一気に切断する。

 

「もう一本ももらうぞ」

 

 斬り飛ばされた腕が三本にばらけながら宙を舞い、腕ゴリラ魔物はそれでも反対の腕で俺を狙う。

 しかしそこにゲルディットが入ってくる。

 

 振り下ろされる腕を横から斬り裂く。

 

「ふっ!」

 

 とうとう腕ゴリラ魔物は両腕を失った。

 ただ俺たちは油断なんてしない。

 

 パシェが体当たりするように腕ゴリラ魔物の胸に剣を突き刺し、そのまま木に打ちつける。

 

「魔物には懺悔の時間も惜しい。さっさと死ね」

 

「シ……シニタク……」

 

 俺は銀のオーラを込めた剣を真横に振る。

 手にかかる重みを振り切るように俺は手に力を込める。

 

 そして打ち付けられた木ごと、腕ゴリラ魔物の首を斬り飛ばす。

 激しい戦いの終わりにしては案外あっさりと首が飛んでいく。

 

「ふん、気色が悪いな」

 

 腕ゴリラ魔物の頭が転がり、ゲルディットは足で止める。

 目がギョロッと動き、バカみたいな生命力に軽くため息をついてそのまま足で踏み潰す。

 

「……終わりだな」

 

 魔物に殺された無念は魔物が倒されれば晴れる。

 周りで戦いを見守っていた幽霊たちが空に立ち昇っていく。

 

 魔物は死んだ。

 幽霊たちの動きから俺はそれを感じ取った。

 

「問題解決だな。町に戻って死体処理の手を借りるとしよう」

 

 木に吊るされた死体をそのままにはしておけない。

 ただ俺たち三人だけで全てを処分することは難しい。

 

 腕ゴリラ魔物の死体をさらに分解して、完全に死んだことを確認して一度町に戻った。

 人手を率いてまた森の中にやってきて、死体を下ろしたり町に運んだりする。

 

「はぁーあ……」

 

 悪魔や魔物にやられた多くの幽霊は、その元凶が倒されるとそのまま成仏する。

 しかしあまりにも長いこと放置されて悪霊になりかけている幽霊は逝かずに、生きている人に恨み言を呟く。

 

「悪いな。どうしようもないから逝ってもらうよ」

 

 このまま悪霊になられても困る。

 町の人たちが死体を運び出す横で、俺は悪霊になりかけの幽霊を銀のオーラで処理する。

 

 剣で切り裂くと多少の呻き声のようなものを上げながら幽霊が散って消えていく。

 幽霊を切っても全く手応えはない。

 

 ただ物悲しさが残るのみだ。

 

「いてて……」

 

 剣を振ると体が痛む。

 

「あっ、おい、何する……」

 

 顔をしかめた俺を見て、パシェが俺の服を捲り上げる。

 

「赤くなってる」

 

「あいつが俺ばっか狙うせいでな」

 

 俺の体には赤い筋が残っている。

 腕ゴリラ魔物の攻撃が体を掠めた跡がくっきり残っているのだ。

 

「……ごめんね」

 

「何を謝ることあるんだ?」

 

「神聖力、使えないから」

 

 神聖力が使えれば治してあげられたのにとパシェは少ししょんぼりする。

 

「別にいいって。こんなの唾つけとけば治るから」

 

 俺は思わず笑ってしまう。

 痛いが所詮かすり傷だ。

 

 パシェが落ち込むようなことではない。

 

「生きてればそれでいいんだよ。心配ありがとな」

 

「ん」

 

「それにしても……眠くなってきたな」

 

「おんぶする?」

 

「それは遠慮しておくよ」

 

 いつの間にか完全に日が昇っている。

 寝る時間ではないけれど、今なら気持ちよく寝れそうだと俺は欠伸しながら体を伸ばしたのだった。

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