霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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92潜入捜査官エリシオ1

「ようやくついた……」

 

 途中、中魔と戦うなんて事件はあったものの、そこからは順調に旅は進んでミルド王国までやってきた。

 その中でもスタギイン地方は端の方だった。

 

 娯楽もない世界なので、ただ歩くだけの旅。

 退屈でたまらなかった。

 

 ただ退屈の時間が終わった後は、悪魔との戦いが待ち受ける。

 感情の緩急が激しいものだ。

 

「珍しく高い宿に泊まるんですね」

 

 もうエダモスディのお膝元まで来ている。

 領主たるエダモスディの住まいは、今俺たちが来ている町にある。

 

 教会もあるはずなのに、ゲルディットは高めの宿に来て部屋を取った。

 教会がなく宿に泊まる時だって、贅沢できるといいながらも高い宿なんかには泊まらなかった。

 

 ようやく旅も終わりだから泊まるのかな、なんて思った。

 

「悪魔祓いは悪魔に警戒される。それは当然だが、普通の人にも警戒されてしまう」

 

「まあ、そうでしょうね」

 

 悪魔が悪魔祓いを警戒するのは当然だ。

 ただ普通の人も悪魔祓いのことは警戒してしまう。

 

 それは悪魔祓いがいるということは悪魔がいるということにも繋がるから。

 俺だって同じように考える。

 

 だから悪魔祓いは基本的にコソコソと活動する。

 聖職者、あるいは身分をバラしても聖騎士ぐらいに留めておく。

 

 それが高い宿に泊まることとなんの関係があるのか分からない。

 

「どいつもこいつも金遣いが荒いことを嫌う。宿に泊まって良いもの食うことぐらい良いだろうと思うのだが、小うるさい奴が多い」

 

「まあ、その点は同意しますよ」

 

 荒いというか、命かけて戦ってんだから少し良い生活して何が悪いのかというところは俺も同意する。

 

「つまりだ。聖職者の多くは……教会に泊まったり安い宿に泊まったりするということだ」

 

「そうですね。俺たちもそうしてきましたし」

 

「裏を返せば高い宿に泊まっている時点で、聖職者の疑いが少し薄くなる」

 

「……なるほど」

 

 俺やゲルディットはともかく、パシェは明らかに怪しい見た目をしている。

 人が襲いかかってくることもある世界だから武装していてもおかしくはないが、戦争でもないのにフルアーマーで出歩く奴はそんなにいない。

 

 聖騎士や悪魔祓いを疑われて当然であるが、疑いを逸らす一つの方法として高めの宿に泊まっちゃうなんて荒技もあるのだと納得する。

 いいな、この荒技。

 

 毎回やってほしいものだ。

 

「エダモスディが悪魔かどうかは知らないが、ここから俺たちも隠密に動く」

 

 悪魔祓いが来ているとバレれば悪魔は逃げたり、先に攻撃してきたりする。

 悪魔だという証拠を掴み、こちらから攻撃できるようになるまでは気づかれずに動きたい。

 

「いくぞ」

 

「どこ行くんですか?」

 

 ゲルディットは乱雑に自分の荷物をベッドに放り投げる。

 そして部屋を出て行こうとする。

 

 せっかく良い宿の良いベッドなのに感触を確かめすらしない。

 

「先に来ている悪魔祓いと合流する」

 

「ああ……お昼寝の後じゃダメ?」

 

「ダメだ」

 

「残念」

 

 俺も荷物を置いてゲルディットについていく。

 あれ? と思ったのだけど、ゲルディットは俺たちが泊まっているよりも上の階に向かった。

 

「合言葉は?」

 

 ゲルディットは上の階の部屋のドアをノックする。

 部屋の中から低い男の声が返ってくる。

 

「俺はツノなしだ」

 

 ドアが開く。

 なんだ、その合言葉。

 

 とは思ったが、悪魔にとってツノは大事。

 ツノがないことを自らの口で告白することなんてまずしないから、ツノなしなんて言えるのは少なくとも人間ってことなんだろう。

 

 合理的なんだか、悪魔をおちょくってるのかは分からない。

 

「ゲルディットだ」

 

「ゲルディットさん! よく来てくださいましたね」

 

 大柄の男性が部屋の中にいた。

 朗らかな笑顔を浮かべて出迎えてくれているが、腰の剣に手を添えているのを俺は見逃さなかった。

 

 これが悪魔祓い。

 気の休まる暇もない連中ということだ。

 

「どうぞ中に」

 

 どうしてこの宿だったのか。

 謎であったが、他の悪魔祓いもいたのが理由だったようだ。

 

 部屋の中には大柄な男性含めて男が三人、女性が二人。

 若手の超天才新人が気になるのか、全員の視線が一度俺に集まった。

 

「中魔の件、聞きましたよ。大変でしたね」

 

「あんなもの生まれたての魔物と変わらんさ」

 

 そこまで楽な相手じゃなかったとは思うのだが、ゲルディットの言葉なんて話半分で聞くのがちょうど良い。

 

「相変わらずですね」

 

 大柄な男性がニヤリと笑う。

 この人はゲルディットと面識があるようだった。

 

「そちらの彼が噂の新人だね? 俺はタラン。魔の聖騎士だ」

 

「エリシオです。よろしくお願いします」

 

 一応先輩なので丁寧に頭を下げておく。

 

「あっちがウルボズ、こっちがアデマート」

 

「よろしくな、ボウズ」

 

「よろしくお願いいたします」

 

 壁に寄りかかって腕を組んでいるのがウルボズ。

 ベッドに腰掛けて人の良さそうな笑顔を浮かべているのがアデマート。

 

「それでこいつがデラで、あっちにいるのがフィメートだ」

 

「よろしくね」

 

「どうも、初めまして」

 

 ベッドに寝転がっている赤毛でやる気のなさそうなのがデラ。

 デラの横で小さく座っている茶髪のおさげがフィメート。

 

 多分明日には名前忘れてるかもしれない。

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