霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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95潜入捜査官エリシオ4

「分かっています。大切な仕事だ」

 

「……そうか。プニマッツ、仕事を教えてやれ」

 

「了解しました。こっちに」

 

 とりあえず頑固爺から追い出されることは避けられた。

 俺はプニマッツについて隣の部屋に移動する。

 

「なるほど」

 

 隣の部屋のドアを開けた瞬間に、さらにもう一段階熱い空気に襲われた。

 まるでサウナ。

 

 プニマッツが袖のない服を着ている理由がすぐに分かった。

 俺の体も暑さに汗が吹き出してくる。

 

「ここには大きな焼却炉が二つ。二つか……あるいは一つ、必ずどちらかには火を焚いておく」

 

 部屋の左右に大きな炉が二つ。

 金属の扉は開け放たれて、中に赤々とした炎が見えている。

 

 そしてひどい臭い。

 人をよく火葬する世界なので、高温でしっかりと処理する技術が発達していて意外と人が燃える臭いが外にすることはない。

 

 ただ室内では臭う。

 パシェがいたら倒れているかもしれない。

 

「仕事は簡単だ。死体が運ばれてくる。それを燃やす。定期的に炉の火を落として骨を回収する。骨を砕いて、希望者がいれば骨を箱に入れて渡してやる。希望者がいなければ教会のそばにある骨捨て場に埋める」

 

 死体が魔物にされる。

 このことは一般にはあまり知られていない。

 

 だが死体は不浄なものであると教会によって周知されている。

 おそらく死体が魔物にされると伝えずに、どうにかするための方便だろう。

 

 そのおかげでこの世界の人は死体を重視せず、遠ざける傾向にある。

 代わりに遺品を大事にする。

 

 墓には遺品を入れ、死体や骨を入れることはない。

 骨すら受け取らない人も珍しくはないのだ。

 

「毎日この繰り返し。単純だが……人に嫌われる仕事だ」

 

 死体が不浄だと信じる人々のせいで、死体を処理するこの仕事は嫌われる。

 臭いがあるとかそんなこともあるけれど、不浄な死体を処理する仕事は同じく不浄に見られて避けられるのだ。

 

「それに職場は賑やかだ」

 

「賑やか? 俺とマーデル、お前しかいない」

 

「ええ、そうですね」

 

 俺の言葉をプニマッツはタチの悪いと解釈したかもしれない。

 ただ冗談でも何でもない。

 

 臭いのは嫌だがしょうがない。

 嫌われる仕事なことは別に構わない。

 

 だが俺は死体処理の仕事があまり好きじゃない。

 なぜなら、幽霊がたくさんいるからだ。

 

「見てろ」

 

 分厚い革の手袋を着けたプニマッツは、部屋の隅にあるテーブルに並べてあった死体を抱えて、焼却炉の中に放り込む。

 死体を丁寧になんてことはない。

 

 死んだら終わりで、死体はただのもの。

 幽霊に見られていようとプニマッツにはそれが分からない。

 

「……そして扉を閉める。開けておくとひどい臭いがするから気をつけろ」

 

 幽霊のシステムってやつは謎も多い。

 大体死ねば成仏するけど、そうじゃないことも少なくはない。

 

 恨みが深いと成仏しないで残って悪霊になるが、あんまり恨みもなく残っている幽霊もそこら中にふよふよしてる。

 そんな幽霊もいつしか消えている。

 

 恨みもないのに残っていられるエネルギーがないのか、何かして満足するのか、死んだと自覚でもするのか、悪魔につまみ食いされたかだ。

 

「あまり死体を詰め込みすぎると燃えにくくなる。ほどほどに入れていくんだ」

 

「分かりました」

 

 自分の体を離れて町中をウロウロしているやつもいるが、自分の体ってやつは思い入れがたくさんある。

 死体についてくる幽霊も多くいる。

 

 だから、この建物の近くには幽霊がいっぱい。

 遠くから見た時、建物にある煙突には幽霊が集まってぶどうみたいになっていた。

 

 きっとそのうち幽霊も勝手に成仏していくんだろうが、幽霊が見える俺としては焼却場は幽霊のお見合いパーティー会場みたいになっているのだ。

 ナンパしてる幽霊もいる。

 

 さっさと成仏しやがれってんだ。

 

「……汗拭くタオルと分厚い手袋、買ってきてもいいですか?」

 

 どこ見ても目が合う。

 最悪の職場だ。

 

 早くこの仕事終わらせたい。

 焼却炉の方じゃなく、悪魔ぶっ殺して次に行きたいと俺はこっそりため息を漏らすのだった。

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