霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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96誰が裏切り者か1

「外にまた死体が届いてる。八体。骨砕きは俺がやるから、死体を運んでくれ」

 

 杖をついて歩いてきたマーデルが焼却炉のある部屋に入ってくる。

 どうやらマーデルは膝が悪いらしく、長いこと杖をついているようだ。

 

「分かりました。エリシオ、手伝ってくれ」

 

「はい」

 

 プニマッツはタオルで顔の汗を拭く。

 ガッチリとした体格のプニマッツは普段は寡黙に働く。

 

 指示はちゃんと出してくれるので不便はないが、それ以外で会話をすることはほとんどない。

 幽霊どもがうるさいので、静かに作業させてもらえるのは俺としてもありがたい。

 

 俺も仕事中は薄手のシャツ一枚になっている。

 倒れないように適時休憩するものの、冷蔵庫と氷が欲しくなる。

 

「よいしょ……」

 

 焼却場の外に、麻袋に詰められた死体が転がっている。

 プニマッツは両手に一つずつ麻袋を鷲掴みにして、引きずっていく。

 

 俺もそれに倣って袋を引きずる。

 日々たくさんの死体が集まってくる。

 

 それは死体がこの町のものだけじゃないからだ。

 一つの町に一つの焼却場。

 

 それは理想に過ぎない。

 実際焼却場の用意は大変で、そんなものがないなんて町も珍しくない。

 

 焼却炉が二つもあって処理能力高く作られているのは、近隣の町や村の死体も処理するためなのだ。

 

「俺が運んでくるから放り込んでくれ」

 

「はーい」

 

 マーデルがハンマーを振り下ろして骨を砕く音が響く。

 プニマッツが焼却炉の前に死体袋を投げるように置いた。

 

 俺は分厚い手袋を身につけて、焼却炉を開く。

 部屋も暑いのに、焼却炉の熱が一気に襲ってきて俺は目を細める。

 

 プニマッツの仕事ぶりは悪くないが、死体を丁寧に扱うような様子はない。

 だからってマーデルも同じようなものだ。

 

「結構肉体労働だよな」

 

 赤々と燃える炎は数日に一回の骨を回収する時まで絶やすことはない。

 俺は炎の中に袋ごと投げ入れていく。

 

「ふう……」

 

 こんな感じで数日を過ごしている。

 仕事そのものは単純明快なので覚えるようなこともなく、慣れることは難しくない。

 

「そっちが終わったらこっち手伝え」

 

「はいはい」

 

 タオルで汗を拭った俺はハンマーを手に取る。

 焼却炉の片方は火を落としてあり、中から骨を回収して大きな木のトレーに乗せてある。

 

『ああ……俺の骨が……』

 

 うるせえな。

 何が原因なのかは知らないが、時々すごく意識のはっきりした幽霊もいる。

 

 俺の手元を覗き込んで悲しそうな顔をしているが、俺は機械的に骨を砕いていく。

 もはやどれが誰の骨なのか区別もつかない。

 

「仕事は慣れたか?」

 

 マーデルは骨から視線を逸らすこともなく俺に話しかけてきた。

 

「ええ、慣れましたよ」

 

「そうか、それならよかったよ。いつ嫌だと泣き出すか心配していたんだ」

 

「意地悪な上司に当たって毎日泣いてますよ」

 

「ふん、減らず口は生まれつきのようだな」

 

 疑わしいのは二人。

 それはもちろんマーデルとプニマッツのことだ。

 

 死体が集まる焼却場は死体を悪魔に横流しするのにもうってつけの場所だ。

 ここから死体を持っていっているのではないかと俺たちは疑っている。

 

 バレずに持っていくなんて無理だ。

 とするならマーデルとプニマッツのどちらかが悪魔に協力している。

 

 いわゆる悪魔崇拝者というやつになる。

 あるいは、マーデルもプニマッツも両方とも悪魔崇拝者かもしれない。

 

「昼飯でも食ってきていいですか?」

 

「好きにしろ」

 

 骨を砕いてデカい箱の中に入れる。

 今回も遺骨を欲しいなんて人はいなかったので教会の近くにある骨捨て場に捨てることになる。

 

 砕いた骨を悪魔が持っていくことはないだろうが、教会がしっかり監視して供養することになっているのだ。

 もう昼時なので、俺は服を着て焼却場から出る。

 

 特に涼しさもないような陽気な日であるが、焼却場から出てくれば暖かな外でも涼しさを感じる。

 俺はそのまま町の方に向かっていく。

 

「ようやく汗引いてきたな」

 

 風が頬を撫でる。

 噴き出すように出てきていた汗も止まってきた。

 

「連れが来ているはずなんですけど」

 

 俺は一軒のレストランに入った。

 店員に奥の個室に案内される。

 

「よう色男。調子はどうだ?」

 

 個室の中にはゲルディットを始めとしてチームで動いている三人がいた。

 

「仕事には慣れましたよ。聖騎士からの転職を考えるぐらいです」

 

「絶好調だな」

 

 ゲルディットの正面に座る。

 四角いテーブルの右にはデラ、左にはパシェが座っている。

 

「今のところ怪しい感じはあるか?」

 

「何もないですね。そっちは?」

 

「監視しているが、死体をこっそり運び出すような様子はない」

 

「俺がいるから行動を控えるのかもしれませんね」

 

 俺が中に入り込み、ゲルディットたちは外から監視をしていた。

 行動してくれれば嬉しいんだけど、今のところ動きはない。

 

 俺という急に現れた異分子のために警戒しているのかもしれない。

 

「向こうの方は?」

 

「向こうも似たような状況だ。なかなか尻尾は掴ませない」

 

 タランたちの方は領主であるエダモスディを調べている。

 魔物は明らかに領地を避けるように出没するなんてミスを犯しているが、普段の生活で悪魔だと分かるような行動は取らない。

 

 ただ聖職者でもない一般人ならバレるリスクはそんなに高くもない。

 悪魔の尻尾を捕まえるのも結構大変だ。

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