霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~   作:犬型大

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99怪しい襲撃1

「おお、来たか。悪いが靴を片付けてくれないか」

 

「分かりました」

 

 怪しさあれど証拠無し。

 エダモスディが悪魔なことは俺の中で確信となっている。

 

 しかしその証拠となるものはない。

 幽霊がつまみ食いされてますなんて信じてくれる人はいないだろう。

 

 だからと言って焼却場の方もまた動きはなかった。

 流石に毎日嫌味を言い合っているわけでもなく、マーデルとも少しは打ち解けてきた。

 

「靴を片付けたら表の死体を頼む」

 

 焼却炉の灰や砕いたり骨のせいで焼却室には白い汚れが溜まる。

 気づけば靴が真っ白になる。

 

 そのために外を出歩くための靴と室内で作業するための靴を分けていた。

 マーデルの靴置き場はやや高いところにある。

 

 足が悪いんだからもっと楽なところに置きゃいいのに。

 

「何見てる? 高いものでもないぞ」

 

「あ、いえ」

 

 手に持った靴をじっと見る俺にマーデルは怪訝そうな顔をしている。

 俺はマーデルの靴を置いて、自分も靴を履き替える。

 

「今日は多いな」

 

 外に出てみると持ってきた死体袋を下ろしているところだった。

 悪魔がいずとも人は死ぬ。

 

 病気に怪我、あるいは寿命。

 様々な原因から人は死ぬ。

 

 神聖力は人の怪我を治してくれるが、病気にまで及ばないことが多い。

 俺は医者じゃないから知らないけれども、神聖力で治せるのは病気によるダメージで、病気の根本的な原因そのものを根治させられないのだろう。

 

「よいしょ……」

 

 燃え盛る焼却炉に死体を投げ込む。

 残っていた倫理観も一緒に燃えていってしまいそうだ。

 

「しょうがないけど、大変な仕事だよな」

 

「これで終わりです」

 

「お疲れ様」

 

 焼却場の二人ではなく、死体を持ってくる人が悪魔崇拝者なのではないかと考えたことがある。

 けれども死体を持ってくるのは教会の聖職者なのだ。

 

 死体は悪魔に狙われないように各町にある教会に集められて、そこから運ばれてくる。

 だからこの一箇所に死体が運ばれてきても、運んでくる先は様々で、運んでくる人も様々だった。

 

 全員抱え込んでいるのだとしたら、この国の教会丸ごと腐っていることになってしまう。

 

「流石にそこまでは行かないよな」

 

 二年で国中の教会に崇拝者抱えるなんてあり得ない話だ。

 そんなカリスマ性を持った悪魔なら、こんなふうに疑われる真似はしない。

 

「ん……?」

 

 焼却場から少し離れたところに森がある。

 木々の間に何か蠢くものが見えた気がした。

 

「……魔物だ!」

 

 草は顔を出したのは逆さの顔だった。

 青白く血の気を失った顔に、何も映していないような虚ろな目を見れば、ただの悪ふざけではないとすぐに分かる。

 

「うーん……五点ってところだな」

 

 森の中から魔物が出てくる。

 ベースは大きな犬かオオカミだろう。

 

 胴体はケモノのもので、前足に人間の足、後ろ足に人間の腕をあしらい、頭は人間の頭を逆さにつけてある。

 オモチャのパーツでもつけ間違ったようにも見える。

 

 逆さになって上に位置することになった口から垂れたヨダレが顔を流れて落ちていく。

 

「点数付けてる場合じゃないな……!」

 

 魔物が街の近くに現れた。

 これは危険な出来事である。

 

 マーデルとプニマッツを逃さなきゃと俺は思った。

 

「……なんだ?」

 

 何体か同じような魔物が出てくる。

 人を見ればすぐに襲ってくるようなものが魔物のはずだ。

 

 けれども魔物は森から出てきたところで立ち止まって、ウロウロとこちらの様子を窺っている。

 

「……まさか」

 

 俺は手を上げて大きく振る。

 

「……魔物です! 逃げてください!」

 

 そして、焦ったように大きな声を出しながら焼却場に飛び込んだ。

 

「魔物だと!?」

 

「……なんだってこんな時に」

 

 焼却室で働いていた二人の反応はそれぞれだ。

 物静かなプニマッツも突然の魔物に驚いたような顔をする。

 

 マーデルは大きく舌打ちをしていた。

 

「早く逃げるぞ」

 

「しかし……」

 

「いいから! 大事なのは命だ! ここにあるのはもう命の無い連中だ」

 

 マーデルは杖をついて立ち上がる。

 

「……早く逃げよう」

 

 プニマッツは渋い顔をして壁に掛けてあった剣を手に取る。

 さすがは元聖騎士。

 

 こんな時の備えもある。

 

「お前さんは走って助けを呼びにいってこい。こんな年寄りわけはないが、お前はまだ若いしな」

 

「ええ、分かりました」

 

 焼却場を出ると、森の方から魔物がゆっくりと向かってきていた。

 いかにも速く走れそうな見た目をしているのに、入るような雰囲気はない。

 

 俺は走って教会に向かう。

 プニマッツは剣を構えて、足の悪いマーデルを守るようにしながら逃げている。

 

 俺はそのまま教会に飛び込んで魔物が出たと伝え、教会は聖騎士たちを派遣した。

 

「プニマッツさんは魔の聖騎士だったのか」

 

 教会に走り出す前にチラリと後ろを見た時に、プニマッツは黒いオーラをまとっていた。

 元聖騎士だとは聞いていた。

 

 その中でも魔力を扱う魔の聖騎士であったようだ。

 ひとまず二人も魔物に襲われることなく、教会から向かった聖騎士たちがついた頃には魔物はいなくなっていた。

 

 ただ魔物だけじゃなくて、表に置いてあった死体も消えていたのだった。

 

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