復興文明拡大記 過ちを繰り返しながらも、進め―― 作:えぴっくにごつ
VACの掌握管轄下となった、フォークラン国際空港。
そこから、一度打ち捨てられて朽ち果てたはずの空港施設の、その姿光景の変貌は目まぐるしかった。
まずはVAC AFの部隊が、前線部隊から後方部隊まで多数入り。
空港の各施設が、拠点として使用可能なように修繕修復が成され。
空港はこの大陸中央部での拡大戦略の司令部、兼前進拠点、また補給点となり。また航空隊の各航空機を運用するための重要航空拠点となった。
そして、この場を活動の拠点とし始めたのはAFに限定されず。
逞しい商売魂やら、国、政府から出る危険保障目当てで出張ってきた、VACに存在する民間企業、サービスなどがまた多数入り。
元より国際空港という施設環境も助け、フォークラン国際空港はVACの巨大な拠点として形を成した。
「――……」
空港の制圧掌握からまた二日ほどたったその日。
空港の滑走路を見渡せるガラス張りの広いロビー空間にて、佇む一人の少女の。
エクスティアからの脱走強化人間の一人、レフィンの姿があった。
彼女たちは現在、一応VAC AFの預かり、監督下にあり。VAC本国からの処遇決定まで留め置かれている状況であったが。
実際の所は、その所在を明確に伝えておけば。危険な場所にでも行こうとしない限り、その行動はほとんど制限されておらず。
よく言えば自由、悪く言えばほとんど放って置かれているのが現状であった。
「……!」
何か物鬱気に佇むレフィンは、しかし次には「音」を聞き留めて視線を上げる。
ロビー空間を覆うガラスの向こう、空港施設の少し低めの上空を。直後には二機編隊のジェット戦闘機が飛んで通過する姿が見えた。
それはやはりVAC AF 航空隊が保有運用する機体――Fu-70 ストレングスアーム。
大戦争の前からすでに旧式の兆候が見えていた機体であったが。
VACがそれをやはりレストアから、魔改造の域のアップグレードを施して運用してる戦闘機。
先程に空港滑走路から離陸し、編隊を完成させてこれより空域パトロールに向かうその二機は。空港上空を飛び抜けた後、向こうの大空へと飛び去っていった。
「……」
そんな飛び去った戦闘機の姿を追いかけ見つつ、しかしその顔にはやはり物鬱気な色を浮かべるレフィン。
「どうした」
「!」
そんな彼女に、唐突に背後より声が掛かる。
振り向きそこに在ったのは、他ならぬアイザック。そして同行していたユーダイドの女中尉。
「そんな気落ちした顔して、気になるよ」
アイザックに続け、女中尉は少し揶揄う色を混ぜてそんな言葉を向ける。
二名はまたその立場故に求められる、仕事、各種調整に赴いていた身であった所で。それから戻る所に、物鬱気に立つレフィンの姿を見止めて声を掛けたのだ。
「……ここまでの、文明の再興が成されているなんて……」
そんなアイザック等からの声に。少し迷う色を見せた後に、レフィンが零したのはそんな言葉だ。
先日に初めてアイザック等、VACと邂逅した際にも、彼女はその存在に驚いたが。
そのVACはそれから、保有する巨大な戦力にて。この国際空港を根城としていたローグの連合体を、容易く退けてみせたばかりか。
それから国際空港を修繕し、隊の大きな拠点として見せ。
さらには空港には「本国」とやらからやってきた、民間のサービスらしきものまでが多数入り、運用運営を開始。
それらによってVACという存在が、確かな、そして巨大な「文明」であることを見せつけた。
それらを目の当たりにしたレフィンは、驚愕、いや愕然とするまでを覚え。同時に非常に複雑な感情に苛まれた。
「私たちが成し遂げるべき、復興再興の役目は……?」
次にそのレフィンは続け、そんな言葉を零す。
エクスティアに帰属して来たレフィンは。荒廃した地上を、その民を導き復興することこそが、己たちの役目であると。
そう教えられてきた。
しかしどうだ、地上は己たち以外の存在によってとっくに再興され。巨大な国が誕生しており。
挙句、己たちもその彼等に危機を救われた始末だ。
複雑な感情をレフィンが抱くには、十分であった。
「シチズン・シェルの住民みたいなことを言う」
それに対し、アイザックが零したのはそんなワードを含む言葉。
シチズン・シェルとは。
大戦争を凌ぎ、後の再興に備えるべく、世界各地に用意された巨大シェルター群。
正しくは、それを企画した企業の商品名でもある。
その内の少なくない数の住民は、VACに合流しており。
今のレフィンが零したような台詞は、同じく再興役目と教えられてきたそんなシチズンの住民からも。時折落胆や呆れとして聞く言葉であった。
そんな事項を思い出しての、アイザックの言葉。
「――ちょっとショックなのは、分かるけどさ」
そんな所へ、入れ替わるように反対方向より声が届き掛かった。
そこに立っていたのは、レフィンの仲間の少女、ステラだ。
「別にマイナスなことじゃないし、そこまで思い詰めなくてもいいんじゃない?」
続け、そんな言葉を紡ぐステラ。
通り掛かりにやはり仲間であり友人の姿を見つけ。そのレフィンの物鬱気な様子を、そして同時にアイザック等とのそのやり取りを聞き留めたステラは。
そこからレフィンの心情に気づき察し、そんな言葉を掛けたのだ。
「……ステラ、それは?」
「え?あぁ、お店で売ってたから。持ってた旧紙幣も使えるって言われたからさ」
しかしレフィンは、そんな合流したステラのある姿に。少し呆れた色で声を返す。
ステラはその片手にシェイク飲料のカップなど持ち、片手間にそれを可愛らしく吸う姿などを見せていたのだ。
ステラはVACに留め置かれ、実質ほとんど自由な身の上から。
VACの民間サービスの多数入った空港内を、興味本位に散策して回っていたのだ。
レフィンを見つけたのも、その最中の途中。
今の自分の立場に憂うレフィンと比べて、そこには大分温度差が見えた。
「ところで、なんかコチラ物価が微妙にお高くない?地上の経済状況は詳しくないけど、お店の人に聞いたら、税金についてボヤいてたけど」
「実際VACの税率は安くはない。ただ、これでもマシになったがな」
自分に呆れた色を向けるレフィンをよそに、次にステラがアイザック等に向けたのはそんな言葉。
そんなVACへの経済状況への言及に、アイザックは隠すでもなくそう返す。
「ありゃ、大丈夫なん?」
「まぁ、すべてが綺麗ではないだろうが――」
VACの政治、経済状況。その背景に少し言及が及ぶ。
VACは巨大な国家だ。政治や経済のその裏で、全くの不正やちょろまかし、後ろ暗い動きも全く無いとは言い切れないが。
少なくない税についての、大きくの理由はそうではない。
その多くは、拡大戦略に伴う費用、参加人員への補償のためのもの。
そしてそれについては、当初より公約として広く明かされていたものだ。
より詳細な所を言及すれば。
基本的に質より量、物量押しを武器とするきらいがあるVACだが。
何も人命を軽視、人口に物を言わせて安価で徴用などしているわけではなく。
過渡期の国の防衛が切羽詰まっていた時期には、動員も行われたが。現在にあっては基本は志願制。
そして此度のように、外地への戦闘を伴うなど作戦がある際には。その参加人員には本人にも親族共にも、大きな保障が約束される。
前線への志願者には、さらに特典を付加する場合もある。
悪く言えば物で釣っていると言われてしまうが。危険に伴う対価は払われているとも言える体制だ。
そういった所への費用を補うために、全盛期よりはマシにはなったが、VACは税の類が安くないきらいがあった。
無論、拡大政策そのものや、それに伴う税率については。VACにおいても賛否が多分に別れ、軽減を求める声を少なからず上がっていたが。
少なくとも今回の大陸中央部の拡大戦略政策、及びそれに伴う税率の維持については。国民の意見は支持に傾き。
問題はないではないが、まあまあ悪くは居ない程度の形で、諸々は運行されている現状であった。
「はーん」
「……」
そんな説明を搔い摘んだ形で受け、ステラは零したのはそんな、軽くも少しの感心を含める声。
一方、レフィンは「変わったもの」を見る目でアイザック等を見る。
正直言って、彼女たちからすればVACは「異質」に。そしてある種、「マトモ」に見えて思えるものであったのだ。
実際それは、VACがこの荒廃した暴力まかり通る世界にて、成し遂げ形作るべく掲げた目標であり。
そして数々の困難や戦いの上に、血と犠牲の果てに。ようやくここまでに形作った結晶であった。