転生して型月版・沖田総司になったけど、労咳を克服したら明神弥彦の母になっていた件 〜るろ剣世界で最強のママやってます〜   作:だいたい大丈夫

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転生したら沖田総司でした。
しかも型月世界じゃありませんでした。
さらに労咳も回避しましたが、代わりに妊娠しました。
今は牛鍋屋の看板娘をしながら、息子を育てています。
幕末も明治も、人生はいつだってハードモードです。


沖田総司、転生したら明神弥彦の母になる

「琴さーん!三番卓に牛鍋と白ごはん、追加のご注文ー!」

 

妙さんの元気な声が、文明開化の象徴である牛鍋の甘辛い匂いが立ち込める店内に響き渡る。昼時の牛鍋屋「赤べこ」は、今日も満員御礼で大パニックだ。

 

「はーい、ただいま〜!お待たせしました、熱いので気をつけてくださいね!」

 

私は満面の笑みを浮かべて、グツグツと音を立てる鉄鍋とほかほかの白ごはんを乗せたお盆を掲げ、小走りで三番卓へと向かう。桜色の髪をまとめたポニーテールが、私のステップに合わせてぴょこぴょこと揺れる。

 

「いやあ、お琴ちゃん今日も可愛いねえ!お琴ちゃんの笑顔が見たくて、つい牛鍋たくさん頼んじゃうよ〜!」

 

「えへへ、嬉しい〜!今日も売上貢献、お琴さん大勝利〜!!いつもありがとうございます!」

 

常連のおじさん客が、だらしない顔でデレデレと私に話しかけてくる。

 

パチンとウインクを飛ばすと、おじさんたちは「くぅ〜っ!」と胸を押さえて喜んでいる。チョロい。実にチョロい。

 

「お琴ちゃん、こっちにもお銚子一本追加で頼むよ!」

 

「はーい!すぐお持ちしますね!お酒の飲みすぎには注意ですよー!」

 

「こっちにはお新香と、あとお琴ちゃんの笑顔ひとつ!」

 

「笑顔は無料ですけど、お持ち帰りはお断りしてますよー!店内でたっぷりお楽しみくださいね!」

 

「あはは!さすがお琴ちゃん、返しが上手いねえ!」

 

「でしょでしょ〜?赤べこの看板娘ですからね!ほらほら、そっちのお肉、もう食べ頃ですよ!焦げちゃう前に卵にくぐらせて!」

 

私が厨房へと戻っていく背中を、客たちが顔を寄せ合いながらヒソヒソと見送っている。距離が近いから、全部聞こえている。

 

「お琴ちゃん、本当に可愛いよな〜。あんな奥さんが家にいたら最高なんだけどなあ。毎日真っ直ぐ家に帰るぜ」

 

「おいおい、お前知らないのか?お琴ちゃん、ああ見えてもう三十過ぎで、しかも子持ちの未亡人だぜ?」

 

「本当に!?嘘だろ、どう見ても十代の小娘にしか見えないけどなあ……肌もツヤツヤだし」

 

「マジマジ。ほら、いつも店の裏で竹刀振り回して遊んでるガキいるだろ?あれがお琴ちゃんの息子らしいぜ」

 

「ええ〜、もったいない……いや、でも子持ちの未亡人っていうのも、それはそれで色気があって良いかもしれないな……!」

 

「お前、趣味悪いな……でもまあ、確かにあの見た目で人妻っていうのは、男のロマンだよなあ」

 

聞こえている。全部聞こえている。三十過ぎで悪かったな!人妻で悪かったな!

 

……はい!私、明神琴!または沖田総司!ガチの転生者です!この明治の世界に転生して、もう三十二年になりますね!色々あったけど、今はシングルマザーとして元気に幸せに暮らしています!思い起こせば赤ん坊の頃。視界がぼやける中、私を見下ろす母親の顔は明らかに引きつっていた。

 

「まあ……桜色の髪だなんて。なんだか不気味な子ね……。誰の血を引いたのかしら……」

 

不気味って言うな!桜色だよ、桜色!可愛いじゃん!と、声にならない産声を上げながら私は猛烈に抗議した。

 

ていうか、桜色の髪で剣士の家系っぽいってことは、これ絶対型月世界、つまりは「Fate」の世界に違いないと当時の私は確信した。

 

私は桜セイバーだ!やったー!大勝利!チート能力で無双する未来が見える!きっとカッコいいマスターが現れて、聖杯戦争とかで大活躍するんだ!そんな感じでひっそりと育ち、順調に剣の才能に目覚め、自分が「沖田総司」だと気づいた時は軽く絶望した。

 

だって、新選組なんて血で血を洗うハードモードすぎるじゃないですか!しかも労咳で死ぬ運命とか、バッドエンド確定ルートじゃないですか!でもでも!試衛館で近藤さんに初めて会った時、私は自分の目を疑った。

 

「新入りか。俺が近藤勇だ。よろしく頼むぞ」

 

「ゴ、ゴリラが喋ってるぅぅぅぅぅ!?」

 

「誰がゴリラだ!俺は近藤勇だと言っているだろうが!」

 

そこには、巨大なゴリラが立っていた。

 

「嘘だ!私の知ってる近藤さんは、もっとこう、シュッとした細身のイケメンか、せめて人間のはず!なんですかその丸太みたいな腕!肩幅どうなってるんですか!なんでバナナ食べてるんですか!」

 

「失礼な奴だな!武士たるもの、これくらいの体格でなくてどうする!バナナは栄養満点だから食べているだけだ!」

 

「いやいやいや!絶対おかしい!騙されないぞ!私の美少女設定はどこいったの!じゃあ土方さんは!?斎藤さんは!?」

 

「トシなら奥で俳句をひねっている。一、ちょっとこっちへ来い!」

 

ズカズカと足音を立てて現れたのは、鋭い三白眼でタバコを吹かす、死神のような男だった。

 

「……あ?何をブツブツ言っている阿呆め」

 

「ひっ!?」

 

「なんだ、その貧相なガキは。これが新しい身内か?弱そうだな」

 

「タバコ!三白眼!絶対『悪・即・斬』って言いそうな顔!」

 

「……貴様、俺の顔に何かついているか?斬るぞ」

 

「あっ!悪・即・斬!るろ剣の世界か!!!!!!」

 

「……何を言っているんだ、この阿呆は。近藤さん、こいつ頭がおかしいんじゃないですか?」

 

「ひどいです!斎藤さん悪魔です!私の知ってる斎藤さんはもっとこう、前髪が長くて無口でクールなイケメンなんです!」

 

「知るか。俺は俺だ。文句があるなら木刀を持て。稽古をつけてやる」

 

「嫌です!絶対痛いもん!その突き、絶対岩とか砕けるやつでしょ!牙突でしょ!」

 

「牙突?なんだその技は。俺の得意技は左片手一本突きだ」

 

「それが牙突なんですよおおおお!やだあああ!ハードモードすぎるうううう!」

 

幕末は本当に色々あった。型月世界じゃないと分かった時点で私のチート無双の夢は絶たれ、血みどろの剣客浪漫譚の世界を生き抜く羽目になったのだ。

 

当然、あの緋村抜刀斎とも何度か戦うことになった。燃える京都の路地裏での死闘は、今思い出しても冷や汗が出る。

 

「緋村さん……貴方の飛天御剣流……今日こそはこの天才剣士が落としてみせます!」

 

「…………来い!」

 

私は刀を青眼に構え、ニヤリと笑ってみせた。強がっていないと足が震えそうだったからだ。

 

抜刀斎の冷たい声とともに、目にも留まらぬ速さで刃が迫る。キィィィン!と金属音が響き渡り、火花が散った。

 

「くっ、重い……!なんでそんな細い体でこんな力出せるんですか!?物理法則無視してませんか!?」

 

「戦いの最中に余計な口を叩く……」

 

「出たな理不尽の極み!龍槌閃とか絶対ジャンプ力おかしいから!」

 

「……龍巣閃!」

 

「連撃やめてえええ!腕が痺れる!刀重い!ああもう、今日はここまで!帰って手洗いうがいします!」

 

結局決着はつかなかった。というか、私が適当なところで逃げたからだ。それよりも何よりも!私は若くして労咳、つまり結核で死ぬ運命にある女!

 

そう思って、手洗い・うがい・マスク着用と、現代知識をフル稼働して感染対策を徹底しまくった。

 

「ストップストーップ!屯所に入る前は必ず手洗いとうがい!これ絶対ルールですからね!」

 

「おい総司、面倒くさいぞ。俺たちは今、見回りから帰ってきたばかりで疲れているんだ」

 

「土方さん!疲れている時こそ免疫力が落ちてるんです!ほら、アルコール!手を出して!」

 

「ひっ!目にしみる!なんだこのキツイ酒は!」

 

「酒じゃありません、消毒用アルコールです!はい、ゴシゴシして!指の間も!手首までしっかり!」

 

「お、おい、総司……俺はもういいだろう?」

 

「永倉さんもダメ!ちゃんと石鹸で三十秒以上洗いましたか!?トイレの後も絶対ですよ!」

 

「洗った洗った!水でパパッとな!」

 

「パパッとじゃダメ!菌は残ってます!ほら、もう一回!石鹸使って!」

 

「斎藤さん!マスク!鼻が出てる!鼻マスクは意味がないって何度言ったら分かるんですか!」

 

「うるさい。息苦しいんだよ、これ。それにタバコが吸えないだろうが」

 

「タバコは禁止です!屯所内は全面禁煙!副流煙で私の肺がやられたらどう責任取ってくれるんですか!私は絶対に死にたくないんです!健康第一!規則正しい生活!はい、全員うがいして!ガラガラペー!」

 

その結果!池田屋では吐血することもなく無傷で大暴れ!

 

油小路でも元気に参戦し(平助を斬ったのは本当に悲しかったけど……)、これで死の運命は完全に乗り越えた!と確信した。

 

函館までみんなについて行くかどうか思案していたその時――鳥羽伏見の戦い直前の陣幕でのことだった。遠くで大砲の音がドォォォン!と響く中、私は急激な吐き気に襲われた。

 

「ごほっ!おえええええええ!!!」

 

「おい総司!!大丈夫か!!?」

 

私はその場に崩れ落ち、口元を両手で激しく押さえた。土方さんが血相を変えて飛んできた。

 

「土方さん……私…………」

 

「馬鹿野郎!お前は天才剣士なんだぞ!こんなところで死んでたまるか!」

 

「歴史の修正力……恐るべし……手洗いもうがいも、あんなに頑張ったのに……」

 

「総司ぃぃぃぃ!死なないでくれぇぇぇ!誰か!医者を呼べ!!」

 

「おめでとうございます。ご懐妊です」

 

静かに死を覚悟した私のもとに、深刻な顔をしたお医者様が駆けつけてきた。脈を診て、お腹の辺りを軽く触り、そして医者は言った。

 

「………………えええええええ???」

 

「え?」

 

「は?」

 

「ですから、お腹に赤ちゃんがいます。この吐き気は、労咳ではなく『つわり』ですね。安静にしてください」

 

「………………」

 

陣幕の中に、気まずい沈黙が流れた。

 

「総司ぃぃぃぃぃぃ!?お前、誰の子だあああああ!!!」

 

「いや、私に聞かれましても……」

 

「お前以外に誰に聞くんだ!言え!その男を今すぐ叩き斬ってやる!」

 

「あー……それはですね……若気の至りというか……春の夜の夢というか……」

 

「誤魔化すな!」

 

つわりだったというオチ!いや、全く心当たりがないわけじゃなかったですけど!もー!父親探しのロマンスはまたの機会に語るとして……私は「妊婦は戦場にふさわしくない」という正当な理由で戦線を華麗に離脱し、密かに息子を産んで、今は明神琴として東京にいるのです。

 

 

 

◇◇

 

 

 

「ふぅー、やっと休憩時間ですよー。牛鍋の匂いが髪に染み付いちゃって、本当に困るんですよね。毎日毎日、お肉の匂いをプンプンさせて帰る可憐な乙女の身にもなってほしいですよ、まったく」

 

赤べこの裏路地。私はどんぶり飯をかき込んだ後のお腹をさすりながら、レンガ造りの壁に寄りかかって大きく伸びをする。

 

視線の先には、警察官の制服を着こなし、壁に背を預けてスパスパとタバコを吹かしている死神みたいな男、斎藤一が立っている。

 

「……お前、その年齢で乙女を自称するのは詐欺罪で引っ張れるんじゃないか?警視庁に連行してやろうか、阿呆め」

 

「ちょっと!冗談でもそういうこと言うのやめてくださいよ!私は永遠の十七歳!精神年齢も見た目もピチピチのギャルなんですから!だいたい、わざわざ私の休憩時間を狙って裏路地で待ち伏せとか、ストーカーですか!?気持ち悪いですよ!」

 

「誰がストーカーだ。俺はお前のような色気も風情もないガサツな女に興味など一切ない。仕事の話をしに来ただけだ」

 

「仕事ぉ?私の仕事は赤べこの看板娘として、ニコニコ笑顔で牛鍋を運ぶことだけですー!それ以外の怪しいお仕事は一切お断りしておりますー!」

 

……もうお分かりですね?私の愛する一人息子は明神弥彦!そう!東京府士族、明神弥彦なのです!まだ緋村さんは東京に来ていないようだけど、弥彦ももう十歳!そろそろ原作のストーリーが始まって、あの逆刃刀を持ったるろうにと関わることになるのかな〜と、毎日ワクワクしながら過ごしている。

 

その前に、目の前のこの面倒くさい元新選組三番隊組長をどうにかしないといけないんだけど。斎藤さんは紫色の煙をふぅーっと吐き出しながら、鋭い三白眼でジロリと私を睨みつけてくる。

 

「で、総司。お前もそろそろ、志々雄の件について協力してくれないか?内務省だけでは手が足りんのだ。あいつの動きが最近活発になりすぎている」

 

「えー!斎藤さーん!私、この十年まともに剣なんて振ってないんですよ?ただの可愛い給仕のお姉さんに無理に決まってるじゃないですか〜?か弱いシングルマザーをそんな血生臭い事件に巻き込まないでくださいよ!」

 

「白々しい。どの口がそんな寝言をほざくんだ」

 

「寝言じゃないです!真実です!私の腕はもう完全に牛鍋のお盆を運ぶためだけに最適化されてるんですから!」

 

「……お前の身柄を預かっているヤクザの組にカチコミに来たゴロツキどもを、先日お前が一人で、長ドス一本で膾斬りにしたという報告を聞いているが?」

 

「なっ!?」

 

「しかも、相手は三十人近くいたと聞く。それをたった一人で、しかも鼻歌交じりに全員の急所を的確に突いて、路地裏を血の海に変えたそうだな。か弱いシングルマザーが聞いて呆れるぞ」

 

斎藤さんがジリッと私に詰め寄ってくる。タバコの煙が顔にかかって煙い。

 

「大体、お前ほどの腕がありながら、何でヤクザなんかに身を寄せているんだ?警察の剣術指南役にでもなれば、安定した給金も出るし、こんな油臭い店で働く必要もないだろうが」

 

「いやいやいや!あんな奴ら動きが遅すぎて、私には完全に止まって見えたから!仕方ないでしょ!売られた喧嘩を買っただけです!完全に余計なお世話!それに、あの組には、弥彦の父親絡みでちょっと恩と思い入れがあるんでーす!私は義理と人情の女ですからね!」

 

「……死体と血の海の処理を、警察である俺に黙ってやらせたくせに何を言うか。始末書を書く身にもなれ。上がどれだけうるさいと思っているんだ。あんな派手な斬り方をしておいて、隠蔽できるわけがないだろうが」

 

「え?だって自分で片付けるの面倒じゃないですか!血の掃除とか、お洋服が汚れちゃうし!そういう裏の面倒な処理は、大久保卿の犬である斎藤さんの得意分野でしょ?」

 

「……それに、たまには人を斬っておかないと、天才の腕が鈍るでしょう?私の代名詞である縮地も錆びついちゃいますし!実戦感覚っていうのは、定期的にアップデートしておかないといけないんですよ!」

 

「ふん。牙は抜け落ちていないようで何よりだ……と、言っておこう。だが、次にあんな真似をしたら、俺が直接貴様を逮捕して豚箱にぶち込んでやるからな」

 

「やれるもんならやってみてくださいよー!返り討ちにして、その自慢の触角みたいな前髪を引き抜いてやりますから!」

 

こんな感じで、斎藤さんとは腐れ縁で仲良く喧嘩する日々を送っている。

 

ちなみに、永倉さんともたまに文通している。北海道で元気にやっているらしく、毎回ヒグマを素手で倒したとかいう嘘か本当か分からない自慢話が便箋五枚くらいに渡ってびっしり書かれて送られてくるのだ。

 

「母さーん!!」

 

「ちょっと弥彦!!学校はどうしたの!まだお昼過ぎでしょ!」

 

「サボった!!あんなお坊ちゃん学校、つまんねえんだもん!算術だの歴史だの、ちまちま机に向かって何になるんだよ!俺は早く剣術で強くなりたいんだよ!」

 

そう!誰に似たのかこの悪ガキである。原作では学校に行っている描写はなかったけど、うちはヤクザの用心棒代や赤べこのお給料でそこそこお金があるから、将来のためにちゃんとした学校に通わせているのに……!なかなかどうして、この子は血の気が多すぎる。

 

「馬鹿言ってんじゃないの!お前は東京府士族なんだから、教養ってもんが必要なの!剣術だけ強くて頭が空っぽな筋肉ダルマになりたいの!?どこかのゴリラ局長みたいになりたいわけ!?」

 

「うるせえ!俺は強い男になるんだ!それに、母さんだって昔は剣ばっかり振ってたって言うじゃねえか!」

 

「私の昔の話は今は関係ありません!ほら、さっさと学校に戻りなさい!」

 

弥彦は私の説教を無視して、壁際に立つ斎藤さんの姿に気づき、あからさまに嫌な顔をする。

 

「おう斎藤!また来てたのかよ!警察の犬の分際で、うちの母さんにちょっかい出すな!母さんを怪しい仕事に誘っても良いことないぞ!そもそもお前、顔が怖いんだよ!」

 

「……チッ」

 

「ていうか、お前が俺の新しい父親になるなんて絶対嫌だからな!!毎日タバコ臭い家なんて耐えられねえ!!」

 

「…………」

 

タバコを持つ手がワナワナと震え、見下ろす三白眼の温度が一気に絶対零度まで下がるのが分かる。

 

「怖いもの知らずも大概にしろよ、阿呆が。誰がお前の父親になるというんだ。俺は妻子持ちだ。時尾という出来た妻がいるんだよ。誰がこんな手のかかる、口ばかり達者で家事もろくにできない面倒な女をもらうか。冗談は顔だけにしておけ」

 

「ちょっと、どういう意味ですか!?2人とも、お琴さんに対して失礼千万ですよ!私は家事だってやろうと思えば完璧にこなせる家庭的な女なんですけど!?そして弥彦!斎藤さんがお父さんになる確率なんて、天と地がひっくり返ってもゼロパーセントだから安心しなさい!」

 

私が顔を真っ赤にして怒鳴り散らしていると、路地の入り口から、さらにバタバタと慌ただしい足音が聞こえてくる。

 

「ぜぇ、ぜぇ……若!!待ってくだせえ!!勝手に逃げ出さないでくだせえ!!」

 

「げっ!我助!お前、しつこいんだよ!」

 

「若が急に窓から飛び降りて逃げるからじゃねえですか!姐さんにバレたら俺の命がねえんですよ!!」

 

息を完全に切らし、顔面を滝のような汗で濡らしたヤクザの若い衆、我助が飛び込んでくる。

 

「……我助?」

 

「お前が護衛についていながら、弥彦が学校から逃げ出すとはどういうことだ?私の大事な息子をしっかり見張るように、あれほどきつく言っておいたはずだが?」

 

「ひっ!!あ、姐さん!!違うんです!!」

 

「……何が違うんだ?言い訳があるなら聞いてやろう。だが、納得がいかなければ……組長に報告して、私が直々にお前を膾斬りにしてやろうか?先日の連中のように、綺麗なミンチ肉になりたいか?」

 

「か、勘弁してくだせえ!!若が足早すぎて……!!俺ぁ、必死に追いかけたんですけど、若が塀を飛び越えたり、屋根に登ったりするもんで……!!姐さぁぁん!!命だけはぁぁ!!」

 

「まったく……情けない。それでも極道の端くれですか。弥彦!」

 

「な、なんだよ!俺は悪くねえぞ!我助がどんくさいのが悪いんだ!」

 

「弥彦!武術だけじゃ駄目!文武両道でないと、立派な士族にはなれないって何度も言ってるでしょ!刀を振るうには、確固たる信念と知性が必要なの!勉強から逃げるような奴に、剣を握る資格はありません!」

 

「ふっ……」

 

その時、斎藤さんが鼻でフッと冷たく笑い、短くなったタバコをポイと捨てる。

 

「お前そっくりだよ、総司。よく言うぜ。昔、屯所から頻繁に抜け出しては、甘味処を巡ったり、男遊びをしていた奴が、どの口で文武両道などと説教をするんだか。聞いていて虫酸が走るな」

 

「なっ……!?」

 

顔を一気に真っ赤にして、斎藤さんをバシッと指差す。

 

「お、男遊びって人聞きの悪い!遊びじゃないです、ちょっとした付き合いです!情報収集の一環です!だいたい法度に背かない範囲だったからセーフでしょ!!近藤さんだって『総司も年頃だからな』って笑って許してくれてたじゃないですか!」

 

「……局中法度は絶対だ。抜け出して法度違反ギリギリを攻めるのが、一番タチが悪いんだよ。土方さんがお前の素行不良にどれだけ頭を抱えていたか、お前は少しも理解していなかったようだがな。都合の悪い時だけ『労咳で苦しい』などと嘘をついて誤魔化しおって」

 

「うるさいですよ!!昔の黒歴史をほじくり返すのはルール違反です!!あの時はあの時!今は今!私は立派な母親として弥彦を育てているんです!!」

 

「立派な母親がヤクザの用心棒をして、裏路地で人間をミンチにするわけがないだろうが。脳みそが腐っているのか?」

 

「あーあー聞こえない聞こえない!!弥彦、我助!もう帰るわよ!斎藤さんなんてもう知らない!勝手に志々雄でも何でも捕まえてくればいいでしょ!」

 

地面に這いつくばったままひたすら土下座を続ける我助、そして「母さん、昔男遊びしてたのかよ!すげえな!」と目を輝かせて舌を出して笑う弥彦。

 

「弥彦!そこは尊敬するところじゃないからね!忘れて!今すぐ記憶から消去しなさい!」

 

平和で、騒がしくて、そして少しだけ血生臭い日常が、今日も元気に過ぎていく――。




どうでしたかー!?
お琴さん、今日も大暴れでしたよね!?
斎藤さんの嫌味に負けないよう、応援コメントお待ちしてます!
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