転生して型月版・沖田総司になったけど、労咳を克服したら明神弥彦の母になっていた件 〜るろ剣世界で最強のママやってます〜 作:だいたい大丈夫
そしてついに、怒り狂う沖田総司が現れる。
廃屋で、二つの剣が交わろうとしています。
深夜、町外れにひっそりと佇む、崩れかけの気味の悪い廃寺。
そこには、すでに黒い笠を深く被った大男――黒笠こと鵜堂刃衛が、腕を組んで待ち構えていた。
「うふふ……ご苦労さま」
刃衛が、女が抱える二人の獲物を見て、不気味にニヤリと笑う。
「あの関東集英組の連中を相手に、たった一人で乗り込んで二人も攫ってくるとはねぇ。相変わらず、手際が良いねぇ」
「別に」
女は、小脇に抱えていた薫と弥彦を、ドサッ、ドサッと無造作にホコリだらけの床に放り投げる。痛そうだが、手加減という概念がないらしい。
「邪魔なヤクザの男たちを何人か斬っただけ。手足の筋を切ったから、死んではいないと思うけど。……で、約束の品は持ってきたから、報酬の残りを」
「まあ待て」
「じゃあ、その女……神谷薫を助けに血相変えてすっ飛んでくるであろう、緋村抜刀斎の相手はお前がやれ。お前の抜刀術なら、あの不殺の甘い流浪人など、いい勝負ができるだろう」
刃衛は、自分こそが幕末最強の天才剣士、沖田総司と戦う気満々である。
「だめ」
しかし、女は一切の表情を変えずに、首を横に振った。
「この男の子のところは、私が行く。……そういう約束」
「ああ?」
「ふざけるな。沖田総司は俺の獲物だ。さっき久々にあの背筋の凍るような剣気を感じて、俺の血が沸騰しそうなんだよ。お前は、雇い主の言う通り、抜刀斎と抜刀術で対決していればいいだろうが」
「……抜刀斎に興味はない」
「私にとっては、あの壬生の野良犬の駆除のほうが大事な仕事だから。あの女の三段突き、私の抜刀術で首ごとへし折ってみたい」
「チッ……」
「今回の依頼主の言葉を忘れたのか?お前を俺の補助に雇った奴の依頼は……」
「依頼は『沖田と抜刀斎の身内を攫うこと』と、『二人を分断して、片方の相手をすること』」
「……相手の指定はされていない。どっちがどっちの相手をするかなんて、契約書には書いてなかった。だから、私が沖田をやる。文句があるなら、依頼主に言って」
「確かに、文字面だけ見ればそうだが……俺はあの死神、沖田総司と……」
「じゃあ、この女の子あげる」
「犯したり、切り刻んだりするのは自由だけど、あんまりオススメしない。……見ての通り、色気なんて全然ないから。美味しくないと思うよ」
手足をキツく縛られ、口には手ぬぐいで猿轡を噛まされている状態だが、女の信じられない暴言がバッチリ耳に入ったらしい。
「んんーーー!! んんーーー!!!!!!」
薫は、猿轡を噛まされたまま、涙目で真っ赤になって激怒し、芋虫のようにジタバタと床をのたうち回る。
その目は確実に「誰が色気ないのよ!!この無愛想女!!私だって剣術小町って呼ばれてるんだから!!」と叫んでいる。
「……ほら」
「あんな風に泥棒猫みたいにジタバタして、色気ないのは事実。処女のまま死にたくないなら、あとでその笠被った変なおじさんに、優しく殺してってお願いして」
「んんんんんーーーー!!!」
薫の抗議のボリュームがさらに上がるが、猿轡のせいで全く言葉にならない。
「…………相変わらず、血の通っていない蛇のような女よ」
殺人鬼である刃衛に「血が通っていない」と言わせるのだから、この女の感情の欠落具合は本物だ。
「……次会って、同じ依頼でなかったら、殺す」
女は、それだけ抑揚のない声で言い残すと、弥彦だけをヒョイと再び小脇に担ぎ上げ、ふらりと、風のように音もなく廃寺を出て行った。
残されたのは、不機嫌な刃衛と、怒りで涙目の薫だけだった。
◇
「よいしょっと」
女が、全く似合わない気の抜けた声と共に、担いできた弥彦をホコリまみれの床にドサッと下ろす。
そして、しゃがみ込んで、弥彦の手足を縛っていた縄を、スルスルと器用に解き始める。
「ぷはーっ!」
縛めを解かれた瞬間、弥彦がガバッと勢いよく飛び起きる。
気絶したフリをして、隙を窺っていたのだ。
「てめえ、何しやがる!いきなり道場に押し入ってきやがって!薫はどうした!!薫は殺させねーぞ!!」
弥彦は、手近にあった折れた木の棒を拾い上げ、女に向かって必死に構える。
「あ、大丈夫」
「私は、あの女の子は殺さないよ」
「なに!?」
弥彦が、予想外の答えに少しだけ棒を下げる。
「まさか……お前、薫を助けてくれる、とか言わないよな?抗争みたいに、身代金目当てか?」
「うん。殺すのは多分、さっきのあの笠被ったおじさんの役割だから、私は殺さない。……だから大丈夫」
「全然大丈夫じゃねえよ!!!」
「結果的に殺されることには変わりねえじゃねえか!!お前の『大丈夫』の基準、狂ってんぞ!!」
「え?」
「私に殺してほしくないって言ったじゃない。だから、私は殺さないって言ったの。あ、でも君のことは、後でちゃんと私が責任を持って殺すから、心配しなくていいよ。大丈夫」
「だから!!」
「それのどこに『大丈夫』って言葉がつけられるんだよ!!今度は俺が殺される宣言じゃねえか!!お前の頭の中の国語辞典、どうなってんだ!!意味が完全にバグってるぞ!!」
「……だって」
「顔を見られたら、必ず口封じのために殺せって、宮部先生がいつも言っていたから……教えは守らないといけないでしょ?」
「誰だよそいつ!!」
「私の先生。おじさん」
「それだけの情報でわかるかよ!!日本全国におじさんの先生なんて星の数ほどいるわ!!どんな奴なんだよ!」
少しでも敵の情報を引き出そうと食い下がる。
「うーん……」
少し困ったように腕を組み、真剣に考え込む。
「おばさんではない……。当然、男だから……。他には……あ、侍?刀持ってたし」
「知らねえよ!!」
「『男の侍』なんて、この明治の世でも日本中に腐るほどいるわ!!そんなフワッとした情報で個人が特定できるか!!もっと具体的な特徴を言え!!ほくろがあるとか、ハゲてるとか!」
「君は、すごいね」
女は、弥彦の怒りを完全にスルーして、感心したようにウンウンと頷く。
「君は、日本の男の侍の数とか、そういう人口の統計学みたいなこと、たくさん知ってるんだねえ。子供なのに賢いね」
「どこからそういう結論になるんだよ!!会話が全く成立しねえ!!」
この女、剣の腕や身体能力は、集英組の我介を一瞬で斬り伏せるほど底知れない化け物だが、人間としてのコミュニケーション能力や常識といった中身が、決定的に抜け落ちている。
壁と会話している方が、まだマシかもしれない。
「……お名前は?」
「……はあ……」
弥彦は、深く、ひどく疲れたため息をつく。
「明神弥彦だ!お前、さっき神谷道場に俺たちをさらいに来た時に、『神谷薫と明神弥彦がいると聞いてきた』って、自分からフルネームで言ってただろうが!!鳥頭かお前は!!」
「あ、そうだった」
「思い出した。弥彦ちゃん」
「ちゃんじゃねえ!!男だ!!」
「誰がどう見ても立派な男だろうが!バカにしてんのか!!」
「男……」
女は、弥彦の小柄な体を上から下までジッと観察する。
「でも、背も低いし、声もまだ高いし、腕も細い。私よりずっと弱い。……私の中では、まだ男のカテゴリーには入らないかな。だから、弥彦ちゃん」
独自の、そしてひどく上から目線のカテゴリー分類である。
「くそっ……!舐めやがって!」
確かに、この女の異常な強さを考えれば、今の自分の腕力や木刀の技術では、足元にも及ばないことは百も承知だ。
しかし、このまま大人しく殺されるのを待つわけにはいかない。薫だって、黒傘のところにいるのだ。一刻も早く抜け出して、剣心か、母さんに知らせなければ。
「……で?お前、俺をここに連れてきて、どうするつもりなんだよ」
「母さん……沖田総司が来るのを待つのか?」
「うん」
「沖田がここに来たら、まず弥彦ちゃんをこの長太刀で真っ二つに斬り殺す。そのあと沖田を殺す。……それで、私の今日の仕事は全部終わり。簡単なスケジュールでしょ?」
全く簡単ではない、血みどろのスケジュール帳である。
「……母さんが、お前なんかに簡単に斬られるかよ。母さんはな、幕末最強の新選組一番隊組長なんだぞ! お前みたいなヒョロヒョロの女、一発でぶっ飛ばされるぜ!」
「そうなんだ」
「強いんだね。じゃあ、斬りがいがあるね。……でも、私は今まで、私より長い刀を持った人に負けたことがないから、大丈夫だと思う」
「刀の長さで強さが決まるなら、槍振り回してる奴が最強だろうが!!」
◇◇
弥彦は完全に怒る気も、警戒する気すらも失せていた。
「はぁ……」
目の前に立つ、自分を攫ってきた張本人であるはずの長太刀の女は、全く殺気を放つこともなく、ただ無表情でぼんやりと虚空を見つめている。
会話が全く成立しないのだ。怒鳴っても、質問しても、返ってくるのは斜め上の純粋すぎるサイコパスな回答ばかり。
弥彦は、着物の懐をごそごそと探る。
そして、日頃から極道の母(琴)に「男たるもの、いつ何時抗争に巻き込まれて食料が尽きるかわからないから、これを肌身離さず持っていなさい」と無理やり持たされていた、非常食の『乾パン(固焼きのビスケット)』の入った小さな袋を取り出した。
「こんな時に食うもんじゃねえとは思うけどよ……腹減ったな」
袋を開け、硬い乾パンを一つ取り出して、ボリボリと音を立てて食べ始めた。
緊張感が途切れたせいか、やけに空腹を感じていたのだ。
ポリッ、ボリボリ。
乾いた音が廃屋に響く。
すると、それまで虚空を見つめていた女が、無表情のまま、スッと視線を弥彦の手元へと落とした。
そして、弥彦が口に運ぶ乾パンを、瞬きもせずにジッと、それこそ獲物を狙う鷹のように見つめ始めたのだ。
「……あ?」
「なんだよ。何見てんだよ。俺の顔に何か付いてるか?」
「……何でもない」
きゅるるるる〜〜〜。
その直後。
女の腹の虫が、信じられないほど盛大に、そして長く鳴り響いた。
それはもう、猛獣の咆哮かと思うほどの立派な音だった。
「…………」
「…………」
気まずい沈黙が流れる。
女は無表情のままだが、なんとなく耳の先がほんのりと赤くなっているように見える。
「……」
自分を誘拐した暗殺者が、目の前で盛大に腹の虫を鳴らして、自分の非常食を物欲しそうに見つめている。緊張感の欠片もない。
「……ほらよ」
弥彦は、袋の中から乾パンを一つ取り出し、女に向かって無造作に差し出した。
「え?」
「……良いの??」
「おう」
「俺の首を斬る時に、腹が鳴って手元が狂って一刀両断に仕損じました、痛い思いさせちゃいました、じゃあ……斬られる俺の方が情けなさすぎて死にきれねえだろうが。さっさと食えよ」
組で揉まれて育った弥彦なりの、奇妙な気遣いだった。
「ありがとう〜」
「君は、すごくいい子だね。よしよし」
女は、長い刀を腰に提げたまま弥彦の前にしゃがみ込み、弥彦のツンツンに逆立った髪を、子供をあやすように優しく撫でた。
そして、差し出された乾パンを両手で受け取る。
ポリポリ、サクサク……。
女は、リスのように小さな口を開け、ものすごいスピードで乾パンを食べ始めた。
一つ食べ終わると、ジッと弥彦の持っている袋を見つめる。
弥彦がため息をついてもう一つ渡すと、また一瞬で食べる。
「……お前、よく食うな」
結局、あっという間に、女は弥彦が非常食として持っていた袋の中の乾パンを、全部平らげてしまった。
「……美味しかった」
「でも、乾パンは口の中の水分を持っていかれる。のどが渇くね。……水もちょうだい」
「図々しいな!!俺の分まで全部食いやがって!!」
文句を言いながらも、腰に下げていた竹筒を取り出し、栓を抜いて渡してやる。
「……ほらよ。一気飲みすんなよ」
「ありがとう」
女は竹筒を受け取り、ゴクゴクとのどを鳴らして水を飲んだ。
そして、プハーッと小さく息を吐き、竹筒を返す。
「いつでも水を携帯しているのは、とても偉いね。サバイバルの基本だよ。ありがとう」
「……大丈夫だよ。あの女の子は、抜刀斎があの笠のおじさんに勝てば、ちゃんと助かるよ」
「はん!剣心が負けるかよ」
「あいつはな、俺が知る限り最強の剣客だ。いくらあの気味の悪い笠のオッサンでも、本気になった剣心には絶対に勝てねえよ」
「そうだと良いね」
「君も、沖田総司がここに来て、私が勝つまでは生かしてあげる。……だから、もし沖田が私の首を取ったら、君は助かるよ。良かったね」
「!!」
「お前、自分で負けるかもしれないって言うのか……」
「ん?」
「??違うよ。これはお礼のつもり……。今の乾パンと水のお恩返し、これじゃ足りなかった??」
女の倫理観はどうやら、乾パン一個と自分の命のやり取りが等価交換で計算されているらしい。
「はん!全然足りねえよ!!」
「たかが乾パンと水で、俺の命の保証が『母さんが勝ったら』って、確率頼みじゃ割に合わねえだろうが!!何だったら、俺の味方になって、俺をここから逃してくれよ!!」
ダメ元で無茶苦茶な要求をぶつけてみた。
「……………………」
女は、弥彦のその言葉を聞いて、ジッと、瞬きもせずに弥彦の顔を見つめ始めた。
その視線には、怒りも呆れもない。ただ、何かを深く、真剣に処理しているような、機械的な沈黙だった。
「……まあ、無理か。お前、雇われた誘拐犯だしな。仕事はきっちりこなすタイプだもんな」
弥彦は、自分の言った言葉のバカバカしさに気づき、自嘲気味に笑って立ち上がろうとした。
「わかった」
「え?」
「君の味方になる」
「……乾パンと水のお礼。私は君の味方になる。何でも言って。ここから逃がせばいいの?」
「えええええええええ???!!」
信じられない。ただの乾パン一つで、この底知れないバケモノ暗殺者が寝返ったというのか。
「うん、一飯の恩は大事。絶対に忘れてはいけないって、宮部先生が昔よく言ってたから。私は先生の教えはちゃんと守るよ」
「乾パン一つで寝返るのかよ!?お前、殺し屋としてのプライドとかないのかよ!!」
「ていうか、お前いくつだよ!?その異常な強さと落ち着きっぷり、立派な大人だろうが!見たところ……そうだな、十八か、十九くらいか?」
「うん、大丈夫。絶対、大丈夫だよ。味方だから」
「何が大丈夫なんだよ!意味がわからねえよ!」
「……私は今年、四十四歳だよ??」
女が、自分の年齢をポツリと、カミングアウトした。
「若ィィィィィィ!!!!!?」
「よ、四十四!?嘘だろ!!どう見ても十代後半にしか見えねえぞ!!うちのあの桃髪妖怪(母さん)並みに、いや、それ以上に若作りじゃねえか!!お前ら幕末の生き残りは、どうやって歳とってんだよ!!防腐剤でも飲んでんのか!!」
「……あんな野良犬と一緒にされたくない……」
女は、弥彦の『桃髪妖怪(琴)』という言葉に反応し、今日初めて、少しだけムッとしたような、不機嫌な表情を浮かべた。
「私はちゃんとスキンケアしてるし、あの野良犬みたいにガサツじゃない。……弥彦ちゃん」
「私はこれから君の味方。味方は絶対に殺さない。だから、君はもう大丈夫。安心しなさい」
その言葉には、不思議なほどの説得力と、絶対の自信が満ちていた。
「………………」
「……お前の名前は?俺はまだ、お前の名前を聞いてなかったな」
「………私の名前は……」
女が、自身の名前を名乗ろうと薄い唇を開いた、まさにその瞬間だった。
ドガァァァァァァン!!!!
廃屋の、木製の扉が、外側からの凄まじい衝撃によって、木っ端微塵に粉々に吹き飛んだ。
砕け散った木片が、まるで散弾銃のように廃屋の中へと降り注ぐ。
「……弥彦ちゃん、危ない」
女は、扉が吹き飛ぶよりも早く、その異常な気配を察知していた。
女は間一髪で、しゃがみ込んでいた弥彦の体を細い両腕でヒョイと抱え上げ、人間離れした超人的な脚力で、後方へと大きく、音もなく跳躍した。
吹き飛んできた木片が、二人のいた空間を空しく通り過ぎていく。
もうもうと立ち込める土煙。
その土煙の向こうから、月明かりを背に受けて。
完全にブチギレた、般若の面も泣いて逃げ出すような鬼の形相をした、桜色のポニーテールの女――新選組一番隊組長、沖田総司(明神琴)が、抜身の加州清光をだらりと下げて、地獄の底から這い出してきたような足取りで姿を現した。
「……貴様か」
「私の、大事な大事な弥彦を攫ったのは……」
「……随分と若作りな小娘のようだが……」
十代後半にしか見えない、細くて儚げな少女のような容姿。しかし、その腰に提げられた異様に長い刀と、そこから放たれる静かだが異常な剣気は、只者ではないことを雄弁に物語っている。
「……私の息子に手を出した以上、若かろうが女だろうが、殺さない理由にはならないわ!!私の怒りの炎で、その長い刀ごと丸焼きにしてやる!!」
「……壬生の野良犬が来た……」
女は、弥彦を片腕でしっかりと抱えかかえたまま、全く表情を変えずに私を見据え、ポツリと呟く。
「斬る。……弥彦ちゃん、私が速く動くから、落ちないように私の首にしっかり掴まってて」
女は、弥彦を抱えたまま、もう片方の手でスッと腰の長太刀の柄に手をかける。
その異常な低空姿勢の抜刀術の構え。
「ま、待て!!」
女の細い腕に抱き抱えられたままの弥彦が、顔を真っ赤にしてパニックになり、手足をジタバタとバタつかせる。
「密着しすぎだ!!胸が……あの……その……俺の顔に当たってる!!意外と柔らかい!!当たってるってば!!」
弥彦は、思春期の男の子特有の反応で、完全に戦意を喪失し、顔から火が出るほど赤面している。
女の柔らかな膨らみが、弥彦の顔に完全に密着してしまっているのだ。
「…………ッ!!!」
「……弥彦!!」
「この小娘!うちの純真無垢な弥彦に、誘拐した挙句に一体何を吹き込んで、どんな変で破廉恥なことをしたのよ!!誘拐だけじゃ飽き足らず、未成年略取と強制わいせつまで働く気!!?」
「え?」
女は、私の激怒の意味が全く理解できないという風に、弥彦を抱えたまま不思議そうに首を傾げる。
「……弥彦ちゃんは、食べさせてくれた。……すごく、美味しかったよ」
しかし、主語が抜けているその言葉は、完全に誤解を招く最悪の爆弾発言だった。
「な!!」
そして――。
私の内なる活火山が、大・噴・火した。
「なんですって!!?」
「(性的な意味で)『美味しかったです』って!?この泥棒猫!!よくも抜け抜けと!!」
「うちの可愛い弥彦をたぶらかした挙句、お母さんである私を差し置いて、先に筆下ろしするなんて……絶対に、絶対に許すまじ!!私が手塩にかけて育てた純潔を!!万死に値する!!万死じゃ足りない!!億死よ!!」
「母さん!!違う!!誤解だ!!乾パンだ!!乾パンの話だ!!」
「……私は、あなたより年上。小娘じゃない。失礼だね」
女が、私の怒り狂う姿を見ても全く動じず、自分の年齢の訂正だけを求めてくる。
「え?」
「私そんなに若く見えるかな……って、違うわ!!いやいや、論点はそこじゃない!!あんたがなんだろうが、関係ないわ!!」
「とにかく!!お前は今ここで、私が怒りの三段突きで、八つ裂きのミンチにして、東京湾に沈めて斬る!!!!覚悟しなさい、このショタコン誘拐犯!!」
今回ついに、長太刀の女と沖田が直接対峙しました。
弥彦との会話で、彼女の少し変わった性格も見えてきたと思います。
次回はいよいよ
沖田総司 vs 謎の長太刀の女
の本格的な戦闘になります。
よろしければ
・この女の印象
・弥彦とのやり取り
・次の戦いの予想
など、感想を聞かせてもらえると嬉しいです。
この謎の女、誰だと思いますか?
-
元維新志士
-
元新選組
-
わかる人は感想でピンポイント