転生して型月版・沖田総司になったけど、労咳を克服したら明神弥彦の母になっていた件 〜るろ剣世界で最強のママやってます〜   作:だいたい大丈夫

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斬左イベント前夜。
ただし、桃髪妖怪が介入します。

原作は壊すものではない。
管理するものです。


歴史の修正力は働かない

『今日は私、赤べこの看板娘、永遠の十七歳こと明神琴(実年齢三十二歳)は、堂々のお休みの日! 非番なの!』

 

『お休みなんだから、本当ならヤクザの組の布団の中で昼過ぎまでゴロゴロして、弥彦の顔でもつまみながらダラダラ過ごしていたいところなのよ。でもね、今日はどうしても気になることがあって、こうしてわざわざ職場に隠れて張り込みをしているのよね』

 

昼時をすっかり過ぎた、牛鍋屋「赤べこ」の店内。

ピーク時の戦場のような忙しさはどこへやら、現在の客足はすっかりまばらになっている。

 

文明開化の象徴である牛鍋の甘辛い、醤油と砂糖とお肉の焼ける最高の匂いだけが、平和な空間にふんわりと漂っている。

 

そこにはすっかりウチの店の常連になった緋村さんと薫ちゃんの姿がある。

 

「剣心!ほら、お肉がちょうどいい具合に煮えてるわよ!早く食べないと焦げちゃうから!」

 

「おろっ!かたじけないでござる薫殿!いやあ、赤べこの牛鍋はいつ食べてもほっぺたが落ちそうでござるなあ。ハフハフ!アチチッ!」

 

「もう、急いで食べるからよ。はい、冷たいお水。……でも本当に、最近はこうして剣心と一緒に牛鍋を食べに来られるようになって、すごく嬉しいわ」

 

「左様でござるな。薫殿の道場も、琴殿のおかげで随分と潤っているようで何よりでござるよ」

 

二人で一つの鍋をつつき合いながら、何やらすごく良い雰囲気でキャッキャウフフとやっている。

 

『そう!私が神谷道場に、弥彦の月謝という名目で相場の十倍近いお金を毎月ドーンと振り込んでいるおかげで、道場の食生活が劇的に向上したみたいなのよね!』

 

『以前は毎日大根の葉っぱのお味噌汁とメダカみたいな干物しか食べていなかったらしいけど、今ではこうして、週に一度は赤べこで特上牛鍋を注文できるくらいには財政が安定しているのよ。私が弥彦を預けたのは、ある意味、神谷道場の救済事業でもあるの。私ってば本当に慈愛に満ちた聖母みたいな存在よね!』

 

奥の座敷席から、鼓膜をビリビリと震わせるような大声が飛んでくる。

 

「てぬるい!!!てぬるいぞお前たち!!」

 

鍋のスープが跳ねてこぼれている。ああ、後で拭くの面倒くさいな。

 

「そんな弱腰な事では、永遠に自由民権の世など来ないぞ!!我々が立ち上がらなくて誰がこの国を変えるというのだ!!」

 

「しかしだな! あの内務卿・大久保利通は、泣く子も黙る冷血漢だぞ!!」

 

「あの大西郷、西郷隆盛先生でさえ容赦せんかった、血も涙もない男だ!我々のような若輩者がいくら声を上げようとも、あの鉄の心臓を持つ男が話を聞くわけがないだろうが!!」

 

「だからこそだ!!」

 

「だからこそ!我らが板垣退助先生を神輿として盛り立てて、この腐りきった政府に目にもの見せてやらねばならんのだ!!民の、民による、民のための政治!それを勝ち取るまで、我々の戦いは終わらん!!」

 

「おおーっ!!そうだそうだ!!」

 

「大久保の首を取れーっ!!」

 

壮士たちが一斉に盃を掲げ、うおおおお! と雄叫びを上げる。

 

『……自由民権運動の壮士ね。』

 

『まあ、お金を払って牛鍋を食べてくれるお客さんなら、どんな政治思想を持っていようと、政府の悪口を言おうとどうでも良いんだけど……とにかく声がデカいわね。そしてお酒の飲み方が汚い。畳にこぼしたらシミ抜きが大変なんだからね。』

 

それに、あの人たち、威勢がいいのは口先だけで、剣だこ一つない白魚のような手をしている。本気で大久保卿の首を取るつもりなら、あんな真っ昼間から居酒屋で大声で暗殺計画なんか叫ばないわ。

 

京都の町なら、新選組に見つかって三分で全員の首が飛んでいるレベルの危機管理能力の低さだ。

 

その時である。

すっかり酔っ払ってテンションが最高潮に達した壮士Aが、ふらつきながら立ち上がり、大げさな身振り手振りを始める。

 

「いいか!!我々の魂は!この盃のように、熱く、そして高らかに舞い上がるのだ!!そおおおれええええ!!」

 

士Aが、勢いよく、本当に意味のわからない勢いで、手に持っていた空の盃を背後の空間に向かって放り投げる。

 

「あっ」

 

放り投げられた陶器の盃は、美しい放物線を描いて宙を舞う。

 

そして、その落下地点には……ちょうど、美味しそうに牛鍋の白滝をフーフーと冷まして、口に運ぼうとしている緋村さんの後頭部がある。

 

あ、これ絶対当たるやつ。

 

カコンッ!!

 

見事な、本当にクリティカルヒットとしか言いようのない、小気味良い音が店内に響き渡る。

 

「おろろろろろーっ!?」

 

緋村さんが、謎の叫び声を上げながら、箸を持ったままカエルみたいにビターンとテーブルに突っ伏す。そして、打たれた後頭部を両手で押さえながら、グルグルと目を回して悶絶し始める。

 

「ちょ、ちょっと剣心!!大丈夫!?何!?いきなりどうしたの!?」

 

向かいに座っていた薫ちゃんが、血相を変えて立ち上がり、緋村さんの頭を撫で回してパニックになっている。

 

「いてててて……!な、何故か突然、空から石礫のようなものが降ってきたでござるよ……!拙者の日頃の行いが悪かったのでござろうか……おろろ……」

 

「違うわよ!石礫じゃなくてお猪口よ!ちょっと、誰よこんなもの投げたの!!剣心の頭に当たったじゃないの!!」

 

「お客さん!お客さんたち!!ちょっと待ってくださいな!!」

 

妙ちゃんは小走りで壮士たちの席へ駆け寄り、ペコペコと頭を下げる。

 

「お客さん!お酒が入って国の未来を語って熱くなるのはよぉわかりますけど、ものを投げたり大声を出したりすると、他のお客さんの迷惑になりますよって……!もう少しお静かに願えませんかねえ?」

 

素晴らしい接客態度だ。さすが私の雇い主である。

 

しかし、血に酔い、酒に酔った壮士たちに、その優しい言葉は全く通じない。

 

「うるさい!!」

 

「たかが牛鍋屋の、しかも女の分際で、国家の大事を語る我々に意見するつもりか!!国家の夜明け前夜なのだぞ!少々の無礼講は当たり前だろうが!!この無知蒙昧な小娘が!!」

 

「きゃっ!」

 

ドンッ!と、壮士Aが妙ちゃんの肩を思い切り突き飛ばす。

 

「いっ……」

 

「妙ちゃん!!」

 

『(ピキッ)……』

 

私の中の、絶対に切らしてはいけない導火線に、チリッと火がつく音がする。

 

『……私の、大事な大事な働き場所の、しかもあんなに優しくて可愛い妙ちゃんが、ただのチンピラもどきの酔っ払いに突き飛ばされちゃった!!』

 

厨房には、牛の骨を叩き割るための分厚くて鋭い出刃包丁が腐るほどある。あれを両手に一本ずつ持って、あいつらの顔の形が完全に変わって、二度と「自由民権」なんて言葉が発音できなくなるまで、顔面にぶち込んでやる……!!

 

そのまま暖簾から飛び出そうとした、まさにその時である。

 

「おっと……どういう事だ、酔っ払い?」

 

その声に、全員の動きがピタリと止まる。

突き飛ばした壮士も、尻餅をついた妙ちゃんも、目を回している緋村さんも。

 

私はハッとして、暖簾の隙間から入り口の方を見る。

 

そこには、入り口の柱に気だるげに寄りかかり、白いダボシャツの背中にデカデカと墨で「惡」の一文字を背負った、長身でガタイの良い男――相楽左之助(十九歳)が、短い前髪の隙間から鋭い目を光らせ店内をジロリと睨みすえている。

 

「おたくらの高尚な『自由民権』ってのはよ……」

 

左之助は、尻餅をついている妙ちゃんを一瞥し、そして壮士Aを真っ直ぐに指差す。

 

「なんの罪もねえ、真面目に働いてる女に暴力を振るう自由の事かい?随分と都合のいい『自由』じゃねえか、ええ?」

 

『お!!左之助!!来たわね!!』

 

『これよこれ!!私が今日、せっかくの非番なのにわざわざ店に隠れて、ずっとこの時間まで張り込んでいた理由のその人!!』

 

「なんだと貴様!!」

 

「どこから湧いて出たゴロツキか知らんが、我らの崇高な思想を愚弄するか!!我らに喧嘩を売るつもりか!?」

 

「ああん?」

 

両手の手のひらを合わせて、バキバキッ!と大きな音を立てて拳を鳴らす。

 

「そうだな……たまには自分から売ってみるか。……俺は普段は、喧嘩は『買う』のが専門なんだけどな。女に手ェ上げるようなクソダサい野郎を見ると、どうにも腹の虫が収まらねえんだよ」

 

「ほざけ!!この無学なチンピラめ!!」

 

「痛い目を見ないとわからないようだな!表に出ろ!!貴様のような社会のゴミは、我々が直々に粛清してくれるわ!!」

 

「へっ、上等だ。表に出るまでもなく、ここでまとめて片付けてやってもいいんだぜ?店がぶっ壊れても俺は知らねえけどな」

 

 

 

◇◇

 

 

 

赤べこの店前。

 

通りにドカドカと飛び出した壮士たちと、それを追うように悠然と歩み出た、背中に「惡」の文字を背負う長身の男、相楽左之助。

昼下がりの路上でいきなり始まった揉め事に、行き交う人々が何事かと足を止め、あっという間に野次馬の輪が出来上がる。

 

私は、赤べこの入り口の柱の陰から、腕を組んでその様子を見物している。

私の少し後ろからは、お猪口のダメージから復活した緋村さんと、心配そうな薫ちゃん、そして道場の稽古帰りにたまたま店に立ち寄っていた弥彦も顔を出し、息を飲んで成り行きを見守っている。

 

「まずは小手調べだ」

 

野次馬の輪の中心で、左之助がニヤリと不敵に笑い、自分から両手をだらりと下げる。完全にノーガードの構えだ。

 

「おっさん、一発ドカンと俺の顔面にやってみな。それで俺が倒れたら、お前らの勝ちってことにしてやるよ。その崇高な自由民権の拳とやらを見せてみろや」

 

「ガキが……!調子に乗りやがって!!舐めるなよ!!」

 

左之助の挑発に完全に頭に血が上った壮士Aが、怒号とともに猛烈な勢いで踏み込み、右の拳を左之助の眉間めがけて全力で突き出す。

 

ドスッ!!

 

鈍く、そして嫌な音が響き渡る。

壮士Aの拳は、狙い違わず左之助の眉間にクリーンヒットしている。

しかし。

 

「……あれ?」

 

野次馬の中から、誰かの間の抜けた声が漏れる。

私も思わず目を瞬かせる。

 

左之助は、顔面を全力で殴られたというのに、微動だにしていないのだ。

首の角度一つ変わらず、瞬き一つせず、ただ薄ら笑いを浮かべたまま、拳を突き出した壮士Aを見下ろしている。

 

『あ、あれは……!』

 

『寸鉄! 手の中に隠し持つ、金属製の短い暗器!あいつ、ただの素手じゃなくて、あんな卑怯な武器を握り込んで眉間を殴ったの!?痛いわぁ、あれ!骨にヒビが入るレベルよ!』

 

「……寸鉄使って、こんなもんかよ。てんで話になりゃしねえ!!蚊が止まったのかと思ったぜ!!」

 

左之助が、眉間に当てられた壮士Aの拳を、そのままの姿勢で額の筋肉だけでグッと押し返す。

 

バキィッ!!

 

「ぎゃあああああああ!!!」

 

今度は、先ほどとは全く違う、骨が砕けるような凄惨な音が響き、壮士Aが手首を押さえて地面にのたうち回り、絶叫を上げる。

 

『殴った男の腕の方が折れたわね。相変わらず、異常なまでに打たれ強いわぁ、あのバカ。あんなの、まともな人間の骨格してないわよ。やっぱり左之助の耐久力はチート級ね!』

 

「こ、この野郎!!よくも同志を!!」

 

手首を押さえてのたうち回る壮士Aを見て、壮士Bが激高する。

彼は持っていたステッキのような杖を強く握りしめ、カチャリと音を立てる。

 

『あ、仕込み杖!刀を隠し持ってたのね!』

 

壮士Bが、仕込み杖の刃を抜こうと腰を落とした、その瞬間である。

いつの間にか、本当にいつの間にか、野次馬の輪をすり抜けて背後に回っていた緋村さんが、壮士Bの杖の鯉口(こいくち)を、上から親指でカチリと静かに押さえ込んでいた。

 

「……喧嘩は、素手でやるものでござるよ」

 

緋村さんの声は、いつもの「おろろ」とした気の抜けたものではなく、冷たく、低く、そして圧倒的な威圧感を伴っていた。

 

「ヒッ……!!」

 

「ひぃぃっ! ば、化け物!!」

 

壮士Bは、折れた腕を抱えて呻く壮士Aを無理やり抱え起こし、野次馬をかき分けて逃げ出していく。残りの壮士たちも、蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げ去ってしまった。

 

あっという間に片付いた喧嘩に、野次馬たちも拍子抜けしたように散っていく。

 

「ふん、口ほどにもねえ連中だ」

 

左之助はつまらなそうに首をポキポキと鳴らすと、背後に立つ緋村さんの方を振り向き、ニヤリと人の悪そうな笑みを浮かべる。

 

「……怪我はねえか、兄ちゃん」

 

「さっきの店の中で、わざとあの親父の投げた盃を避けないで、自分の頭で受けて怪我したんじゃ、世話ねえぜ。あんなモン、あんたの身のこなしなら、あくびしながらでも避けられただろうに。なんでわざわざ当たったんだ?」

 

「……なんのことやら? 拙者はただの流浪人、あのような不意打ちを避けられるはずもないでござるよ」

 

緋村さんが、とぼけた顔で首を傾げる。

おおお!これぞ原作通りの熱いやり取り!左之助が緋村さんの実力を見抜く名シーン!

 

「フッ……隠しても無駄だぜ。俺の目は誤魔化せねえ。……気に入ったぜ。あんた、俺の喧嘩、買わねえか?久しぶりに、骨のある奴とやり合いてえ気分なんだ」

 

「遠慮しておくでござるよ。拙者は喧嘩など、好まないのでござる」

 

緋村さんは苦笑いして、ヒラヒラと手を振る。

 

「気が変わったらいつでも言ってくれや。俺は町外れの破落戸(ごろつき)長屋にいるからよ。あんたとなら、最高の喧嘩ができそうだ。……じゃあな」

 

左之助が、緋村さんにキザに背を向け、片手を上げて去ろうとする。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

ここだ!!!!現行犯!!!!!

 

私は、去ろうとする左之助の背中めがけて、地獄の底から響くような、甘ったるくも恐ろしい声を張り上げる。

 

「……左〜之〜助ぇ〜? ♥」

 

「のわっ!!??」

 

「こ、琴の姐さん!?なんでここに!今日は非番で、組の事務所でゴロゴロしてるはずじゃ……!」

 

「いや〜ねえ、左之助くん?」

 

一瞬で距離を詰めて、左之助のダボシャツの胸ぐらをガシッと両手で掴み上げる。

 

「妙ちゃんから『琴さんが非番の時に限って、高い牛鍋を腹一杯食って、食い逃げをする鳥頭のバカがいる』って、泣きながら相談を受けてねぇ……?アタシ、本当に悲しくなっちゃったわ」

 

「え!あ!そ、それはその……!!今日は!今日こそはちゃんと払うつもりで来たんでさぁ!!ほ、本当ですよ!!」

 

「てめえ!!」

 

私は笑顔のまま、凄まじい握力で左之助の胸ぐらをギリギリと締め上げる。

 

「『カタギには絶対に迷惑かけるな』って、アタシがいつも耳にタコができるくらい言ってるだろうが!!赤べこは私の大事な職場なの!そこで食い逃げするってことは、私に対する喧嘩と見なすわよ!!」

 

「ぐえーっ!苦しい!姐さん、首が!お、俺は集英組の組員じゃねえ!!ただの喧嘩屋だ!!そんな極道の決まりを押し付けんな!!」

 

「同じだバカ!!」

 

「うちで裏の揉め事や喧嘩を回してやって、わざわざお前に小遣い稼がせてやってるじゃねえか!誰の金と口利きで、毎日そのデカい体を維持するだけのおまんま食ってやがると思ってんだ!!恩知らずが!!」

 

「……べ、別にそっちだけの依頼があるわけじゃ……俺は腕が立つから、色んなところから声が……!」

 

「ほう!なら、なおさら金持ってるはずよねえ!よし決めた!お前、赤べこのツケを全額払う分まで、これからタダ働きな!今日から集英組の専属のパシリ兼、私の荷物持ちに任命してあげるわ!!光栄に思いなさい!!」

 

「か、勘弁してくれよ〜!俺は一匹狼なんだ!束縛されるのが一番嫌いなんだよ!!自由に生きるのが俺のモットーなんだ!!」

 

ジタバタと暴れる左之助の首根っこを、私は無理やり掴んで、唖然として見ている緋村さんたちの方へと向ける。

 

「あ、緋村さん。こいつは相楽左之助。『喧嘩屋』なんていう因果な、そして全然儲からない商売してる、ただの口の減らないガキよ!腕っぷしだけは少し強いけど、頭の中身はスッカラカンだから、適当にあしらってやってください!」

 

「おい!ガキとはなんだ、ガキとは!!俺はもう立派な大人だ!十九歳だぞ!!」

 

「十九の小僧は、私から見たら全員ガキ!!」

 

左之助の後頭部をスパーン!と平手打ちする。

 

「だいたいね!お前の親父さん、上下ェ門(かみしもえもん)さんに私がわざわざ話通してやって、家飛び出したの和解させてやったじゃねえか!『盆と正月くらい、顔出して安心させてやれ』って言ったでしょ!!なんで一回も帰ってないのよ!!」

 

「痛い痛い痛い!叩くな!あれは姐さんの余計なお世話だったってんだろ!喧嘩屋なんてヤクザな商売してるのに、今更どの面下げて親父に会えって言うんだよ!恥ずかしくて行けねえんだよ!!」

 

「じゃあ、毎日あんたの帰りを待って心配してる、右喜ちゃん(妹)と央太ちゃん(弟)にも同じこと言えるんだねー!!あんなに可愛くて健気な妹と弟泣かせたら、私が承知しないわよ!!次に顔出さなかったら、あんたの背中の惡の字、『善』に書き換えてやるからね!!」

 

「な!ば!が!!うぐぐぐぐ……」

 

「……左之助。母さんに逆らうだけ無駄だって、いつも言ってるだろうが。諦めてツケ払えよ」

 

弥彦が、心底呆れた顔で左之助に声をかける。

 

「えっ」

 

「弥彦、この背中に惡って書いてる怖い人と、知り合いなの?」

 

「ああ」

 

「ウチの組の構成員並みに、毎日シノギの相談だのなんだのにかこつけて、飯を食いに来るからな。完全に母さんの尻に敷かれてる、ただのデカい図体したパシリだぜ」

 

「ち、違う!!俺はパシリじゃねえ!!俺はいつ何時、姐さんからデカい喧嘩の依頼があっても良いように、組の近くで待機をしてだな……!」

 

「よし!じゃあデカい依頼だ!」

 

「お前は今日、これからウチの組の部屋住みだ!!期限はメシ代と赤べこのツケを全額、一銭残らず払い終えるまで!!もちろん、今日から神谷道場の壁の修繕も手伝わせるから、タダじゃ済まさないわよ!!緋村さんに喧嘩売ってる暇があったら、セメント練りなさい!!」

 

「なんだとーー!!って、引っ張るな!痛え!なんでこんな華奢な体でそんな馬鹿力してやがるんだ、この桃髪妖怪め!!痛え!耳千切れる!痛えって!!!」

 

ズルズルと、巨漢の左之助が、細腕の私に耳を引っ張られて、情けない声を上げながら引きずられていく。

 

「ふう……私のシマでは、勝手な食い逃げはさせないわよ!!」

 

帰り道。

夕暮れのオレンジ色に染まる東京の道を、私は暴れる左之助の首根っこを掴んだまま歩いている。

 

『こいつ……どうにも放っておけないのよね』

 

『原作の知識があるから、これから先、緋村さんの大切な仲間になるってわかってるからってのもあるけど……なにより』

 

「相楽左之助」だなんて。

 

豪快で、いつも槍を振り回して大声で笑っていた、原田さんと同じ名前だからかな。

 

『原田さん……あなたが上野の彰義隊で、腹に銃弾を受けて死んだと聞いた時は……やっぱり、すごく寂しかったよ。バカみたいに真っ直ぐで、裏表のない人だったから。

だからせめて、この同じ名前の、似たようなバカには、無駄死にせずに真っ当に生きてほしいのよね』

 

「ん?なんだ姐さん。ついに俺の魅力に気づいて、解放する気になったか?」

 

「…………あ!!!!」

 

『ちょっと待って!? 私が左之助の食い逃げにブチ切れて、勢いでここまで連行しちゃったせいで……』

 

『緋村さんと左之助の「喧嘩屋斬左との対決フラグ」、完全にへし折っちゃったじゃない!!!この後、左之助が赤報隊の恨みを晴らすために斬馬刀を振り回して、緋村さんと激突して、過去を乗り越えて真の仲間になるという、あのるろ剣屈指の超重要イベントが!!消滅した!?』

 

「おい、姐さん?どうした、急に固まって。腹でも痛いのか?」

 

「や、やってしまった……!」

 

「私、またしても原作ブレイクやってしまったわ!!ど、どうしよう!?このままじゃ左之助、緋村さんと戦う理由がなくなって、ただの『集英組のパシリ兼、弥彦の面倒見の良いお兄ちゃん』になっちゃう!!!」

 

「あ?何ブツブツ言ってんだ?原作?パシリ?」

 

「ええい、うるさい!!」

 

「お前は今日から、死ぬ気で緋村さんに喧嘩売りに行きなさい!!これは姐さんからの絶対命令よ!!斬馬刀でも何でも持って、道場に殴り込みをかけなさい!!」

 

「はああ!?」

 

「さっき『カタギに迷惑かけんな』って、耳が千切れるほど怒ったばかりだろうが!!なんで今度は道場に殴り込みに行けって言うんだよ!!あんたの情緒どうなってんだよ!!わけわかんねえよ!!」

 

「いいから行くの!!アタシのフラグ管理のために!!」

 

あーあ、また歴史の修正力が仕事しなくなっちゃったわ。どうしよう、これ。




左之助は
①自由な喧嘩屋
②集英組の部屋住み
③両立
どれが良いと思いますか?



原田の名前を出しました。
あの人のこと、覚えていますか?

第一回キャラクター人気投票(コメントもぜひ感想欄に)

  • 明神琴(沖田総司)
  • 河上彦斎(お彦)
  • 明神弥彦
  • 緋村剣心
  • 相楽左之助
  • 神谷薫
  • 高荷恵
  • 四乃森蒼紫
  • 志々雄真実
  • 瀬田宗次郎
  • 鵜堂刃衛
  • 宇佐美
  • 水野
  • 我介
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