転生して型月版・沖田総司になったけど、労咳を克服したら明神弥彦の母になっていた件 〜るろ剣世界で最強のママやってます〜   作:だいたい大丈夫

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志々雄の私室にて、琴はお彦生存の報せに揺れていた。
しかし、そんな隙を狙って現れたのは十本刀『盲剣』の宇水。
奇襲、事故、そして戦況報告が入り乱れる、志々雄陣営の一幕。


盲剣、閨を襲う

【志々雄の私室】

 

地下深く、迷路のように入り組んだ陣地のさらにその最奥。

 

部屋のあちこちに配置された松明の炎が、ゆらゆらと妖しい影を壁に落とす中、私の視界はとめどなく溢れる汗と熱のせいで白く霞み続けている。

 

燃え盛るような熱の塊が、私の中を何度も何度も、それこそ理性を根こそぎ焼き尽くすような乱暴さで蹂躙している。

 

「はあ……はあ………どうだ? 俺の熱さは?」

 

彼の体温は、常人のそれを遥かに凌駕する高温を保っている。

 

こうして肌を合わせていると、まるで稼働中のボイラーに直接抱きしめられているかのような錯覚すら覚えさせる。熱い。とにかく熱い。

 

「あ……あんっ……もっと……もっと奥まで、壊して……っ!」

 

私と志々雄くんは、豪奢な装飾が施された寝台の上で、互いの存在を確かめ合うように獣のように激しく燃え上がっている。

 

ちなみに、由美さんはどうしているかというと、最初の二時間で完全に白目を剥いて気絶しダウンしている。

 

元花魁ということで、さぞかし凄いテクニックと持久力を見せつけてくれるのかと期待していたのだけれど、あっさりと限界を迎えてしまったのだ。

 

私とスタミナ勝負で張り合おうなんて土台無理な話なのだ。

 

私たちは真夏の炎天下でもフル装備で京都中を走り回り、何日も寝ずに不逞浪士を追い回していた集団なのだから。由美さん、あなたにはちょっと荷が重すぎたわね。ゆっくりおやすみなさい。

 

そんな限界突破の情事の最中、私の脳裏の片隅に、ふと一つの情報がよぎる。

 

張くんは、私の忠告を無視してお彦に叩きのめされて捕縛されたらしいのだ。

ほら見なさい、だからやめとけって言ったのに。原作のフラグが折れていようが関係ない、あのレベルの化物に単独で突っ込むなんて自殺行為以外の何物でもないのだ。

 

でも、その報せを聞いた時の志々雄くんの反応が、たまらなく最高だった。

 

『弱かったから負けた。それだけのことだ。放っておけ』

 

ああっ、好き。なんて器の大きい人なんだろう。普通なら、自分の手駒が捕まったとなれば、組織の面子を気にして救出部隊を派遣したり、あるいは激怒して周囲に当たり散らしたりするものだ。

 

しかし志々雄くんは違う。情に一切流されず、弱肉強食という己の哲学に基づいて、敗者をあっさりと許容し、切り捨てる。その度量の広さ、悪のカリスマとしてのブレのなさに、私は心底痺れてしまう。

 

やっぱり、弥彦の父親は志々雄くんに違いないわ。蒼紫くんなんて、私がちょっと冷たくしただけで、すぐに世界の終わりみたいな顔をしてストーカーじみた重すぎる愛を押し付けてくるのだから。

 

あんな湿度の高い男に弥彦の父親が務まるわけがない。その点、志々雄くんはカラッとしていて、熱くて、最高に男らしい。

 

…………お彦、生きてて良かった。本当に、本当に良かった。この手にかけてしまったと思っていたけれど、生き延びてくれていた。弥彦にも、会いたいな。

 

でも……ダメね。私はもう、あの温かい神谷道場には戻れない。私は弥彦とお彦を裏切り、彼らに刃を向けた修羅なのだから。私はもう、この業火の中で、彼と一緒にどこまでも堕ちて、焼き尽くされるしかないのだ。

 

そうよ、これでいいの。これが私の選んだ道なのだから。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

その直後。

背筋を凄まじい殺気が貫く。

 

「志々雄くん!!」

 

この殺気は尋常ではない。並の暗殺者やそこらの剣客が発するような、生温かいものではない。

 

私は咄嗟に、私の上に覆い被さっていた志々雄くんを蹴り飛ばして射線から強制的に退避させると同時に、寝台から跳ね起きる。そして、枕元に置いていた愛刀の柄を掴み、電光石火の速度で抜き放つ。

 

暗闇の中で、一瞬の交錯が起こる。

 

「……相変わらず可愛げのない女よ。閨にまで刀を持ち込むとはな」

 

火花に照らされた暗闇の中に立っていたのは、両目を分厚い布で覆い隠した男。十本刀が一人、『盲剣』の宇水くんだった。

 

「あら、宇水くん。せっかくの私の素晴らしい肢体を見て……いや、見えないか。それにしても、ボスの情事の最中に奇襲をかけるなんて、相変わらず悪趣味な男ね」

 

全裸で刀を構えているという、客観的に見ればとんでもなくシュールで変態的な状況なのだけれど、命のやり取りにおいて羞恥心などというものは無用の長物だ。

 

「ふん……。お前らの情事になど興味はない。俺は志々雄に、隙があればいつでも斬り掛かってよいという条件で手を組んでいるのだからな。お前たちがいやらしい声を上げながら油断しきっているこの瞬間こそが、絶好の死角だと思ったのだがな。だが……志々雄は大丈夫か?」

 

え?

大丈夫か、とはどういうことだろう。私は志々雄くんを蹴り飛ばして、間違いなく退避させたはずだ。彼なら、蹴り飛ばされたとしても受け身を取り、即座に戦闘態勢に移行しているはず……。

 

そう思いながら、私は背後へと視線を巡らせる。

そこには、信じられない光景が広がっていた。

 

「えっ? 志々雄くん!?」

 

志々雄くんが、床の上で、まるでダンゴムシのように丸くうずくまっている。両手で己の股間を強く押さえつけながら、小刻みに、ガタガタと激しく震えているのだ。

 

「ぐうう………………ッッ」

 

顔面は苦痛で歪みきり、口からは声にもならない、呻き声とも嗚咽ともつかないくぐもった音が漏れ続けている。

 

え、嘘、何があったの??刃は私が完全に防いだはずよ。どこからも攻撃は受けていないはずなのに、なんであんなに致命傷を負ったみたいな状態になっているの!?

 

「沖田よ。お前、自分が何をしたのか分かっていないのか? お前、さっきまで志々雄と繋がっている状態だっただろう。その状態のまま、志々雄の股間を蹴り飛ばしたのだぞ?」

 

――あ。

 

殺気を感知した。志々雄くんを庇わなければならない。手で押すのでは間に合わない。足を使うしかない。私は膝を曲げ、上に向けてフルスイングで蹴りを放った。私の狙いとしては、志々雄くんの「胸板」を蹴り飛ばしてベッドから弾き出すつもりだった。

しかし。

 

私の足の甲は、志々雄くんの胸板ではなく、男の最も無防備な急所――金的へと、完璧な角度と速度でクリーンヒットしていたのである。

 

どんなに悪のカリスマであろうと。

どんなに圧倒的な熱量と剣気を持つ最強の男であろうと。

 

国家転覆を企む強大な組織の首領であろうと。

人間のオスである以上、股間を蹴り上げられれば、例外なく生物としての機能は停止する。それは大自然の絶対の摂理なのだ。

 

「俺は……強い……。俺は、これしきの痛みには……絶対に屈さねえ……。俺は………強い……!!」

 

床をのたうち回りながら、志々雄くんが何かブツブツと必死に呟いている。

 

「ごめーん!! 志々雄くん! 本当に悪気はなかったの! わざとじゃないのよ! 大丈夫!? 潰れてない!? 卵、割れてない!?」

 

「…………殺す気が、完全に失せたわ。なんだこの茶番は。早く服を着ろ、沖田。見苦しいにも程がある」

 

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

 

 

そして、現在。

 

私は、冷たい床の上で、全裸のまま正座させられている。

 

私の首からは、太い麻縄で吊るされた一枚の大きな木札がぶら下がっている。そこには、達筆な筆致で、こう大書されている。

 

『私は桃髪淫乱です』

 

なんという辱めだろうか。いくらなんでも理不尽すぎる。

 

「お前は色狂いが過ぎる。常に発情しているからこういう失態を犯すのだ。しばらくそのままの姿で反省しろ」

 

「そんな〜〜! 殺気を感知して咄嗟に庇っただけなのに、こんな仕打ちって理不尽よ! 私はただ志々雄くんの命を救おうとした健気な忠臣じゃないの!」

 

私が涙目で抗議する横で、股間の痛みを気力と自己暗示だけで無理やりねじ伏せた彼は、腰掛けながら宇水くんに向き直る。彼の顔はひきつっており、時折思い出したように股間付近の筋肉がピクッと痙攣しているが、それを悟らせまいとする姿勢は流石というべきか。

 

「で、宇水。ご苦労だったな。『時守』や『神』との小競り合いはどうだ?」

 

「貴様こそ、ご苦労なことだ。子を残せなくなったのではないか? 跡継ぎがいなくなれば、国盗りも虚しいものになるぞ」

 

「…………そうからかうな。殺すぞ。で?」

 

あ、これ以上いじったら本当にキレるやつだ。宇水くんもそれを察したのか、肩をすくめて報告に入る。

 

「末端の構成員なら問題ない。こちらのアジト周辺を嗅ぎ回ってきた裏の連中はすべて殺した。『時守』の兵隊が三十人ほど、『神』の構成員の方が二十人ほどだ。塵芥の掃除としては上出来だろう」

 

「雑魚ばかり片付けてもな……大本を叩かなければ意味がねえ」

 

「そう言うな。こちらの防諜にはなる。奴らの情報網も少しは麻痺するはずだ」

 

「ああ。まあ、よしとするか」

 

「それに一度、番人と交戦した」

 

「ほう」

 

「ねえ志々雄くん、で、これはいつ解いてくれるの? 石の床が冷たくて膝が痛いんだけど」

 

「黙ってろ。……それで、宇水。名高い『時の番人』はどうだった? 俺も新月村で阿久津という女に会ったが、やり合ってはいない。連中の実力はどの程度のもんだ?」

 

鬼! 悪魔! 金的の痛みに八つ当たりする器の小さい男!

 

「途中で邪魔が入ったので仕留めてはおらんが、それなりの手傷は負わせた。なかなか強かったぞ。奇妙なしなりを持つ鞭を使う女だった。俺のティンベーをかすめるほどの速度だったが、しばらくは動けまい」

 

「お前は?」

 

「俺が傷など、負うわけがないだろう。無傷だ」

 

説明しよう!! 私が暇つぶしに鍛えに鍛えまくったこの宇水くんは、原作のちょっと強いだけの中ボスという立ち位置から、地味に、しかし確実に超絶強化されているのである!

 

原作の彼は、ティンベーで視界を塞いでローチンで刺すという、初見殺しのギミック頼りの戦闘スタイルだった。しかし、私は彼に「そんな小手先の技は幕末じゃ三日で死ぬわよ」とダメ出しをし、地獄のようなスパルタ特訓を課したのだ。丸太を背負わせて山を走らせ、私が本気で石礫をマッハで投げつけまくり、心眼だけでなく純粋な筋力と反射神経、そして剣客としての基礎ステータスを極限まで引き上げた。

 

その結果、現在の宇水くんは、おそらく宗次郎くんと真っ向からやり合っても互角以上に戦えるレベルの、正真正銘のバケモノクラスにまで成長しているのだ! えっへん、やっほい! 私の育成スキル、完璧すぎない? 原作改変もここまでくれば立派な芸術よ、あっはっは。

 

「…………おい」

 

「え?」

 

「どうも先程から不快な思考をしていないか? 沖田」

 

――ギクッ。

え、ちょっと待って。心眼!? 聴覚で相手の微細な筋肉の動きや呼吸を読み取るはずの心眼が、私の心の声まで読み取ったの!?

 

私の育成スキルが高すぎたせいで、宇水くんの能力がテレパシーの領域まで進化しちゃったってこと!?

 

「お前は心音が騒がしすぎる。何かを誇っているような、非常に腹立たしい鼓動が手に取るように分かる。分かり易すぎるのだ、お前は」

 

いや、心音でそこまで詳細な感情読み取れるの、控えめに言って妖怪の類よ。

 

「反省の色が全く見えねえな、沖田。……まだ余裕があるらしい。そのままの姿で、兵士たちの前に立たせるぞ? 組織の士気を高めるための慰安行事としてな」

 

この男なら、冗談抜きでやりかねない。全裸で『私は桃髪淫乱です』の木札を下げて、血の気の多い野郎どもの前に立たされるなんて、社会的な死どころの騒ぎではない。

 

「ごめんなさーい!! 許して〜!! 私が調子に乗ってました!! 心を完全に無にして正座しますぅぅぅ!! なんなら般若心経でも唱えますから、それだけは勘弁してくださぁぁぁい!!」

 

ああ、神様、仏様、弥彦。あなたの母親は、今日も京都で、尊厳の危機と戦いながら逞しく生きています。




ここまで読んでくださりありがとうございます。
今回は志々雄陣営側の裏話と、宇水の登場を描きました。
琴の情緒、志々雄との関係、強化された宇水について感想をいただけると嬉しいです。

第ニ回キャラクター人気投票(コメントもぜひ感想欄に)

  • 明神琴(沖田総司)
  • 明神弥彦
  • 緋村剣心
  • 神谷薫
  • 相楽左之助
  • 河上彦斎(お彦)
  • 三条燕
  • 高荷恵
  • 四乃森蒼紫
  • 心網列(太郎)
  • 志々雄真実
  • 瀬田宗次郎
  • 武田観柳
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  • 水野和親
  • 巻町操
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