転生して型月版・沖田総司になったけど、労咳を克服したら明神弥彦の母になっていた件 〜るろ剣世界で最強のママやってます〜 作:だいたい大丈夫
志々雄一派との決戦を前に、それぞれの戦力と被害状況を確認する合同軍議が始まる。
そしてお彦から、とっておきの情報が明かされる。
皆を葵屋の大広間へ通す間、私はまず席順に困った。
『神』と『時守』と警視庁。どこを隣同士にしても、軍議が終わる前に誰かが誰かを斬りそうなのよね。
仕方がないので、私は床の間を背にして中央へ座り、斎藤さんたちと時守の面々を左右へ分けた。操ちゃんは私の後ろにいる。何かあれば止めてくれる……とは思うけれど、今日ばかりは操ちゃんごと逃がした方が早いかもしれないわ。
座り直すと、傷が痛んだ。
困ったわね。まだ刀を振るどころか、座っているだけでこれだもの。
もっとも、顔には出さない。あとで自分から戦力外に近いと申告するのと、斎藤さんに先に見抜かれるのとでは、話が違うでしょう?
列は、さっきから襖の方を気にしていた。誰かを待っているのかしらと思ったところで、その襖が開いた。
「やっほー。列! 来ちゃった♪」
芹さんが、ずいぶん楽しそうな声で入ってきた。
「…………芹…………」
芹さんは皆の前を平然と横切り、列さんの後ろへ回った。何をするのかと思えば、その首へ両腕を絡めて、背中からぴったり抱きついてしまう。
あら。
阿久津芹さんって、こんなふうに人前で甘えるキャラだったかしら。
「俺は、今は時守の人間じゃあ……」
「同盟者には優しくしないと…………ね?」
仲が良さそうで何より――と思いかけたけれど、芹さんの腕がかかっているのは首の急所だ。抱き締めたまま締め落とすことも、首の骨を折ることもできる。
随分と怖い甘え方をするのね。
「……やれやれ。他所の痴話喧嘩を眺めさせられる身にもなってほしいものだな」
斎藤さんが煙草をくわえたまま吐き捨てた。
「良いではないですか、あなた。仲良きことは美しきかな。……隙が生じているなら、いつでも首を刎ねられますもの」
隣に座る時尾さんは、包帯だらけなのに、金色の瞳を細めて穏やかに笑っている。
この夫婦の場合、あれでも冗談なのかしら。それとも、本当に首を刎ねるつもりで言っているのかしら。
「…………不穏すぎる。この人たち、絶対に味方の空気じゃないよ……!」
ええ、操ちゃん。私もそう思うわ。
口に出すと話が進まないので、私は閉じた扇子を卓へ置いた。
「集まってもらったのは、他でもありません。志々雄真実を討滅するという一点においてのみ、我々は利害を一致させ、協力できる。……今日は、そのための良い情報を共有し、手はずを整えましょうということよ」
言い終えてから芹さんを見ると、まだ列さんへ抱きついていた。列さんの顔色は先ほどより悪い。
まあ、話を聞けるなら、そのままでもいいでしょう。
「…………肝心の、そちらの首領の姿が見当たらんようだが? 抜刀斎の姿もな」
「そうねぇ。薫ちゃんがいないと、会議の場も締まらないんじゃないかしら?」
「私が代理として取り仕切ります。うちの首領と剣心は、現在極秘の鍛錬中ですから」
薫ちゃん、ねえ。
芹さんは薫ちゃんと、そんなに気安く呼び合う仲だったかしら。
列さんへの甘え方もそうだけれど、私の知っている阿久津芹とは何かが違う。
でも、今ここで尋ねても、素直に答える方ではないわね。なら、放っておきましょう。妙な動きをしたときに斬ればいいわ。
「この大事な時にか?」
「大事な時だからこそです。……あのままの剣心では、弱すぎて話になりませんからね」
「ふん……。言わせておけば」
剣心が弱いという部分は否定しなかった。
負けず嫌いなのに正直なのね。私はそういう方、嫌いではないわよ。
「では、まず各勢力の戦力確認から始めましょうか」
私が促すと、芹さんが列さんの肩へ顎を乗せたまま答えた。
「『時守』は現在、古料理屋『根元』に集められるだけの番人が集結したわ。総勢八名よ」
「誰が来ている?」
芹さんに抱きつかれていても、仕事の話はできるらしい。
「秘密……と言いたいところだけど、列には筒抜けよね。部瀬に、黒鉄に、蓮に、矢田親子に、神原の爺様もよ」
「それと、みどりさんか……。加里は?」
「そうね……。ここへ来る途中で、志々雄の十本刀とおぼしき刺客に襲われて重傷よ。当面は動けないわ」
芹さんの腕から力が抜け、ようやく列さんの首が解放された。
使える人数が八人いるのはありがたいけれど、志々雄側はもう時守の動きを掴んでいるかもしれない。
嫌ねえ。こちらが皆で集まって相談している間に、向こうはもう一人潰しているじゃない。
「……こちら詰めの戦力だが。志々雄討伐のために俺が集めた腕利きの剣客五十名は、神戸の地で全滅した」
五十人を失ったことも痛いけれど、それだけの人数をまとめて殺せる相手が向こうにいる方が、もっと困る。斎藤さんたちを抜いてそれをできる…。宇水にそれほどの力が?
「現れたのは、十本刀『盲剣』の宇水。そして――」
「『災剣』の円。……私の鼻をへし折ってくれた上に、肋骨を叩き砕いてくれた女です」
時尾さんが続きを引き取った。
怒っているのだと思う。たぶん。
ただ、包帯の隙間から見える目が妙に楽しそうなのよね。
会うのが嫌なのではなく、早くもう一度会いたくて仕方がないように見える。
「戦力として数えられるのは、京都一帯に集結させる手はずを整えている警官隊五千名。ただし、個人の実力で十本刀に抗し得るのは俺と時尾……と言いたいところだが、時尾は休ませたい」
「あら、あなた。あの女の腸を掻っ捌いて床の間に晒すまでは、死んでも休めませんわ」
「…………」
あらあら。
時尾さんを休ませるには、寝床へ縛りつけるしかなさそうね。でも、縛ろうとした方が先に床の間へ飾られる気もするわ。
「……というわけだ。一応、蝦夷地から永倉さんを呼び寄せてはいるが……到着まで一ヶ月以上はかかるな」
一ヶ月。志々雄が到着まで行儀よく待ってくれるはずもない。
警官隊五千名は使える。でも、宇水と円とやらを止めるために正面からぶつければ、神戸の五十名と同じことになるだけね。
「なるほどね。……では、こちらの陣営『神』の戦力よ」
扇子を持ち直したところで、また脇腹が疼いた。
本当に、嫌になるほど正直な身体だわ。
「私は傷がまだ深く、お義母……いえ、沖田総司とやり合えば、間違いなく相打ちで力尽きるわ」
今の言い間違いには触れないでちょうだい。私だって、軍議の最中くらいは敵として扱おうと努力しているのよ。
「そして蒼紫も重傷。完治には一ヶ月を要するわね。……まあ、あの男のことだから無理を押して這い出てきそうだけど」
寝ていなさいと言って聞く方なら、最初からこんな傷を負っていないでしょうね。
出てきたら使うしかないけれど、途中で倒れられても困る。扱いづらい男だわ。
「なるほど。ある程度の敵戦力に対する評価と、こちらの穴が見えたということね」
列さんから離れた芹さんは、もう甘える顔をしていなかった。
いつもの目で、私の話を聞いている。
さっきまでのあれは何だったのかしら。
「ええ。前線に投入できる我が方の主戦力は、奥義を修得して戻る緋村抜刀斎こと剣心、そして私。……操ちゃんは?」
「あたしは明日には完調になる! イケるよ!!」
こういうところは蒼紫さんによく似ているわね。
「心強いわね。操ちゃんに、燕ちゃん、太郎さん、左之助。そして雷十太に、宇佐美、水野……といった陣容かしら」
「十本刀には、充分に対応できる計算です」
列がそう言うのなら、まったく根拠のない楽観ではないでしょう。
両方の実力を比べられるのは、ここでは列さんだけだもの。
ただし、私たちがまだ知らない十本刀が混じっていなければ、の話だけれど。
「……で? 前置きはここまでだ。お彦殿、貴様が言っていた『とっておきの情報』とは何だ?」
斎藤さんは、とうとう待ちきれなくなったらしい。
そうそう。私はその顔が見たくて、これを最後まで取っておいたのよ。
「ええ。その敵の戦力の要である十本刀の一角……生け捕りに成功いたしました」
「ほお……」
「ふふ……それは素晴らしいわね」
張には申し訳ないけれど、これから会う相手がこの二人だと知ったら、もう一度眠りたくなるでしょうね。
「その名も、十本刀『刀狩』の張。今朝方、目を覚ましましたので、これから皆で快くお話を聞きに行くところです」
「それはそれは……。願ってもない獲物だな」
「ぜひとも口を割らせ……いえ、快く喋ってもらわないとならないわねぇ……」
斎藤さんも芹さんも、先ほどまでより機嫌がよくなった。
そこで、時尾さんの袖から金属の擦れる音がした。
何を持ってきたのかと思えば、取り出したのは五寸釘だった。続けて蝋燭まで出てくる。
全身を包帯で巻かれているのに、いったいどこへ隠していたのかしら。
「…………五寸釘と、熱い蝋燭は既に手元に用意してございます」
時尾さんは満面の笑みだった。
「待って待って! それ、お話を聞くための道具じゃないよね!?」
「ふふふ。時尾さん、拷問は『まだ』ですよ。まずは紳士的に、お茶でも振る舞いながらお尋ねするのですから」
私が止めると、時尾さんは残念そうに五寸釘と蝋燭を袖へ戻した。
「『まだ』って……。やる気満々じゃん、この人たち……!」
失礼ね、操ちゃん。
張さんが素直に話してくれるなら、拷問なんてする必要はないわ。私たちだって、美味しくお茶をいただいて終わりたいもの。
素直に話してくれるなら、ね。
「それでは、参りましょうか。お客様をあまり待たせては気の毒ですもの」
張の口から何が出るのか。それによって、志々雄さんとの戦い方も、お義母さんと斬り合う場所も変わる。
さて。
張は、私たちと楽しくお茶をしてくれるかしら。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
今回は三勢力による合同軍議と、現在の戦力整理を描きました。
各陣営のやり取りや、次回の張への聞き取りについて感想をいただけると嬉しいです。
実はリストラがある十本刀!!だれが落ちる?
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鎌足
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蝙也
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夷腕坊
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方治