転生して型月版・沖田総司になったけど、労咳を克服したら明神弥彦の母になっていた件 〜るろ剣世界で最強のママやってます〜   作:だいたい大丈夫

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十本刀『刀狩』の張から情報を得るため、地下牢へ向かうお彦たち。
まずは穏便に話を聞く予定だった。
――もちろん、張が素直に話してくれるなら、の話である。


十本刀、転職面接

地下牢へ降りる階段は、左之助の胸板で塞がれていた。

 

横を抜ける隙間はあるけれど、傷を押してまで試す気にはなれない。

 

「おい。俺も中に入って話を聞くぜ。さっき握り飯を運んでやったってのによ、あの箒頭……態度がデカくてむかつくんだよ」

 

「俺を呼んでおきながら、先に中へ入れないとはどういう了見だ、河上彦斎」

 

後ろには斎藤さんまでいる。左之助だけなら押しのければ済むけれど、味方を二人斬ってから尋問を始めるのは、さすがに手順が悪い。

斬らずにどかすとなれば、笑ってお願いするしかなかった。

 

「大丈夫ですよ。女だけのメンツなら、張さんも油断して口が軽くなるでしょう?」

 

「誰が相手でも同じだろ。あいつは十本刀だぞ」

 

「そうかしら。少なくとも、あなたがその怖い顔で睨むよりは話しやすいと思うわよ」

 

「貴様に言われたくはない」

 

失礼ね。私はこんなに愛想よく笑っているのに。

牢へ入るのは、私と芹さん、時尾さん、燕ちゃんの四人だけ。それを聞いた操ちゃんは、左之助の後ろから牢の方を覗き込んだ。

 

「…………あたしが捕虜の立場だったら、絶対に斎藤さんたちに聞かれた方が気が楽だと思う」

 

宇佐美も「同じく」と頷いた。

 

「うちは、男より女の方が遥かに恐ろしいからな……。首領といい、先生といい……」

 

水野まで同意すると、左之助も道を空けた。

 

分かっているなら、最初からそうしてほしいわね。

 

私だって拷問は好きではない。時間はかかるし、血で着物は汚れるし、男の悲鳴はお世辞にも綺麗とは言えない。

では女の悲鳴ならいいのかと聞かれれば、外で聞いている男たちが妙に浮き足立つから、あれはあれで腹が立つ。

 

痛めつけるより、逃げ道を一本だけ残して、そこへ自分から飛び込ませる方が楽なのよ。掃除も着替えもいらないもの。

 

「では、行ってくるわね。中から悲鳴が聞こえても、張さんが助けを求めても、勝手に扉を開けないでくださいな」

 

「待て。それは本当に話を聞くだけなのか?」

 

「もちろん。まだ話を聞くだけよ」

 

返事の代わりに、階段の踊り場が妙に広くなった。時尾さんの袖で、五寸釘が触れ合ったせいかもしれないわね。

 

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

張は目を覚ましていた。

縄は緩んでいない。水と握り飯を口にし、運んできた左之助へ悪態までついたらしい。

元気な男を脅すのは面倒だわ。

 

「………ちっ。せっかく気持ちよう寝てたのに、起こさんといてくれへんか?」

 

「……って、河上彦斎……!」

 

「あらやだ。そんな物騒な本名じゃなくて、『お彦』と呼んでくださいな」

 

「なんや! 揃いも揃って女子供で、拷問でもする気か!? ワイは十本刀やぞ。何も喋らへんで!!」

 

威勢の割に、鉄扉を盗み見る目が忙しい。

 

「いや……大丈夫ですよ。喋りたくなるようなことを、これからしてあげますから」

 

燕ちゃんの小さな声に、張が鼻で笑った。

 

「はん! お前みたいな小娘に何ができ――」

 

三発の銃声が、石牢の空気を叩いた。

 

塞げたのは、刀を持っていない側の耳だけ。狭い場所で三発も撃てばうるさいに決まっているでしょう。だから拷問は嫌なのよ。始める前から耳が痛いじゃない。

 

弾は張の左右の脇腹を浅く抉り、残る一発が柱を削っていた。急所には入っていない。燕ちゃんは脅し方をよく分かっている。

 

「ぎゃああああッ!? いってええええええッ!!」

 

「何事だ!」

 

扉の向こうから斎藤さんの声が飛んできた。

 

「挨拶です。開けないでくださいな」

 

「挨拶で撃つな!」

 

左之助まで騒いでいる。開けるなと言ったそばから、ずいぶん元気な見物人たちね。

 

「いい鳴き声……。次は、脇腹の肉を抉るだけじゃ済まないですよう?」

 

「耳を削ぎ落とすのは簡単ですが……やっぱり、指から行っときますか?」

 

「刀鍛冶の息子さんを脅した罰です。剣客として二度と刀を握れないようにしてから……あは、話してくれると……ふふ……嬉しいです」

 

効いているわね。

怯えても口だけは減らないのが、この手の男の困ったところだった。

 

「こ、この餓鬼……! 縄ほどいて勝負してみい! そんな鉄砲――」

 

「燕ちゃん。次の弾は取っておいてね。質問する前に死なれると困るもの」

 

「はい、お彦さん」

 

銃は下がったけれど、しまわれてはいない。その方が張にもよく見えるから、私から言うことはなかった。

今日も素晴らしい仕上がりね。弥彦ちゃんが見たら、惚れ直すより先に卒倒するでしょうけれど。

 

「やだ、血がたくさん出てるじゃない!」

 

「私に任せて。傷口の手当ては陸軍で慣れているから」

 

「お、おう……。あんたは話が通じるんか。はよ、何とか――ぐぎゃあああああああッ!?」

 

芹さんが銃創へ押し込んだ止血布は、たちまち赤く染まった。

傷は塞がるでしょうけれど、手当てを受けた張の方は、先ほど撃たれた時より派手な悲鳴を上げている。

 

「痛ええええええッ!! 何すんねん!!?」

 

「布を巻いてあげただけでしょう? 軍では、手当ての最中に痛い痛いと泣いても、敵は待ってくれないのよ。これくらい我慢しなくちゃ。ねえ?」

 

悪態が悲鳴に変わっただけでも進んではいる。ただ、まだ質問を一つもしていない。

できれば今夜のうちに終わらせたいのだけれど。

 

「私たちの問いに素直に答えてくれたら……この四人の美女が、とっても気持ちいいことをしてあげるわよ?」

 

「あら、それはいけません。私は貞淑な人妻ですので」と、時尾さんが即座に辞退した。

 

「私も、弥彦君以外にそんな破廉恥なことをするつもりは、一切ありません」と、燕ちゃんまで続いた。

 

「…………あら。ごめんね、二人になっちゃったわ」

 

ちょっと待ちなさい。

なぜ私が、気持ちいいことをする側の二人に当然のように数えられているのよ。

 

訂正はしたい。けれど張が私と芹さんを交互に見て、先ほどより青ざめている。役に立つ誤解を、わざわざ解いてやることもないかしら。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

時尾さんが袖から五寸釘と蝋燭を出した途端、張は顎を引いた。

賢明だわ。もっとも、黙る相手を時尾さんが喜ぶとは限らないけれど。

 

「張さん、と言いましたか。……大丈夫ですよ? 無理に話さなくても」

 

「……え? そ、そうなんか……?」

 

「ええ。私個人の望みとしては、貴方が最後まで口を割らずにいてくれた方が……ふふふ……腕が鳴りますもの」

 

五寸釘が右目の前へ来ると、張の後頭部が柱に当たった。釘はまだ触れてもいない。痛みには耐えられても、これから何をされるか考える時間には弱いらしい。

 

「新選組にいた頃、土方さんのやり方をよく見ておりました。あの方もお上手でしたが……私はもっと上手く、生きたまま解体してみせますから」

 

「な、何を――」

 

「まず右手を落とします。貴方は刀を扱う方ですから、そのときが一番よく鳴くでしょう。次は左手。逃げられないよう両脚も膝の下から。けれど、切っただけではすぐ死んでしまいますので、血はその都度止めて差し上げます」

 

「人間、手足を四本とも失っても、すぐには死にません。両目と両耳を奪っても、心の臓は動きます。見えず、聞こえず、逃げられず。それでも貴方の意識が残るよう、私がきちんと加減いたしますわ」

 

「や、やめ……」

 

「ああ、申し訳ありません。もし、そこまでしても話す気になれなかったら……最後に気持ちよくして差し上げてもよろしいですよ?」

 

「そのあとで首を落としてしまえば、死人に口なし、ですものねぇ。ふふふふふふ……」

 

張の喉から漏れるのは、悲鳴にならない細い息だけだった。縄まで震えている。

あと一押しでいい。ここで本当に手足を落とし始めたら、私の仕事が増えるだけだもの。

 

「あ、それは良いことを聞いたわ。少しくらい破廉恥な姿になっても、相手が死んでしまえば、誰にも言い触らされないものねぇ……」

 

張が芹さんを見てしまった。

見ない方がいいのに。

 

「ねえ? 女と繋がったまま、男の急所を刀で断ち切ったら、何が飛び散るのかしら。白かしら? それとも赤かしらねぇ?」

 

「ひぃぃぃぃぃッ!! 化け物や!! ここにおるんは全員、化け物や!!」

 

今度は外から返事がなかった。代わりに、何人分かの足音が階段を上っていく。

 

左之助たちまで逃げたのかしら。

失礼ね。私はまだ何もしていないのに。

 

扉の外から助けが来ないと分かると、張はこちらを見た。

私なら話が通じると思ったのかしら。

ええ。通じるわよ。こちらの条件を飲む相手となら。

 

「んー。私としては、早く話すことをお勧めするわ。男の悲鳴は耳障りだし、血の掃除も面倒なのよ」

 

「わ、ワイを……どないする気や……」

 

「選ばせてあげる。この三人に全身を肉片へ変えられて、剣客としても男としても何一つ残らず死ぬか。知っていることを全部話して、うちの軍産複合体『神』の傘下へ加わり、生き延びるか。どちらが良いかしら?」

 

「傘下……? 捕虜やのうて、志々雄様を裏切れ言うんか……!?」

 

「ええ。少し喋っただけでは、あとで志々雄のところへ戻ってしまうでしょう? それでは困るのよ」

 

助かる条件が自白だけなら、偽の情報を吐いて逃げることもできる。でも、こちらへ寝返るとなれば話は別だ。志々雄の秘密を売り、帰る場所まで自分で焼いてもらう。

 

牢を血で汚すより、十本刀を一人拾う方が得に決まっている。せっかくここまで怖がらせたのだから、そのくらいは働いてもらわなくちゃ割に合わないわ。

 

「全部話すなら、指は残してあげます。弥彦君たちに逆らわないと誓えるなら、ですが」

 

「話します!! 何でも全部話します! 志々雄様の居場所も、十本刀の顔ぶれも、知っとることは全部や! せやから、このいかれた女どもを今すぐどっかへやってくれええええええええ!!」

 

これで終わり。私は扉を叩いた。

戻ってきた左之助が、用心深く鉄扉を開ける。

 

「終わったのか?」

 

「ええ。張さんは喜んで協力してくれるそうよ」

 

「どこが喜んでや! はよ、こいつらを出せえええええ!!」

 

まだあれだけ叫べるなら、元気は十分に残っている。

本当に、拷問は手間がかからないに限るわね。




ここまで読んでくださりありがとうございます。
今回は張への聞き取りと、神への勧誘を描きました。
お彦たち四人の尋問や、張の反応について感想をいただけると嬉しいです。

実はリストラがある十本刀!!だれが落ちる?

  • 鎌足
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