転生して型月版・沖田総司になったけど、労咳を克服したら明神弥彦の母になっていた件 〜るろ剣世界で最強のママやってます〜   作:だいたい大丈夫

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張から明かされた京都破壊計画。

しかし、その情報に違和感を覚えたお彦たちは、志々雄の本当の狙いを探り始める。

そして志々雄の本拠では、ついに十本刀が集結する。



十本刀、集結

「十本刀が揃い次第、京都中へ一斉に火を放つ。それが志々雄様の京都破壊計画や」

 

あれほど勿体をつけておいて、それだけ?

 

「誰がどこへ火をつけるの?」

 

「知らん。ワイも火付けへ回るとは聞いとったが、持ち場までは決まっとらん」

 

「火を放ったあと、志々雄さんはどこへ向かうのかしら」

 

「それも知らされとらん」

 

これ以上聞いても、話は増えそうにない。指を一本もらったところで、知らない話まで生えてくるわけではないものね。

 

使えるのは、十本刀の集結が合図だということだけ。なら、こちらも残りが集まる時を待てばよい。

 

張を地下牢へ残し、私たちは大広間へ移った。斎藤さんは丸卓に広げた京都の地図を眺めたまま、煙草を吸い終えた。

 

「……妙だな」

 

「そうね。いくら責め苦に怯えたとはいえ、張から漏れたものが多すぎるわ。あれが捕らえられたことくらい、もう志々雄の耳へ入っているはずよ」

 

芹さんは地図ではなく私を見た。

 

「河上さん。張を奪い返す者か、口を封じる者は来た?」

 

「いいえ。見張りを増やして待っていたけれど、影の一つも見当たらないわ」

 

助ける価値がないと切り捨てたのなら、それまでよ。

 

「それなら、この京都大火は私たちの目を引きつけるための欺きである可能性が高いわね。知った者が京都へ集まるところまで、向こうの狙いかもしれない」

 

さて、陽動の裏に何を隠すつもりか。

 

私の知っている原作なら、答えは甲鉄艦『煉獄』による東京への砲撃だ。京都を守ろうと戦力が西へ寄った隙に海から東京を襲い、日本そのものを震え上がらせる。

志々雄らしい、派手で悪趣味な一手だった。

 

ただし、今の海には原作になかった神谷艦隊がいる。

 

観柳が集め、神谷の名を掲げた軍艦は十五隻。他の目に触れさせたのは五隻だけだから、お義母さんが知っている数も、おそらくそこまででしょうね。一隻の甲鉄艦で五隻を食い破れる算段が立ったのなら、東京砲撃を捨てる理由にはならない。

残り十隻を知らないまま出てきてくれるなら、こちらとしても実にありがたいわ。

 

問題は、原作どおりだと決めつけてよいかどうかだった。

 

「敵の本当の狙いは、どこだ」

 

斎藤さんに問われ、私は地図の端へ目をやった。

京都大火という策は、幕末の池田屋をわざとなぞっている。倒幕派が火を放ち、帝を長州へ連れ去ろうとした――そう語られてきた企てを、明治政府を倒す志々雄さんが今度こそ実行する。

そこまで皮肉を利かせた男が、本命だけ何の因縁もない場所へ置くとは思えない。

 

「池田屋事件をなぞること自体が志々雄さんの趣向なら、本当の狙いにも幕末への当てつけがあるはずよ。京都へ火を放ち、こちらを西へ縛りつけたうえで――」

 

私が言い終えるより先に、列の指が大阪湾へ下り、そこから海をなぞって東へ走った。

 

「ここだ。大阪湾から船を出し、かつて浦賀へ現れた黒船のように東京を砲撃する。京都を囮にして焼き払ったとしても、国の中枢を海から叩けば余りが来る」

 

やはり、そこへ行き着くわよね。列は原作を知らなくても、志々雄の側に立って地図を見れば同じ答えを出せる。

 

「なるほど。危うく出し抜かれるところだったぜ」

 

さっきまで地図を見ていた芹さんは、もう列だけを見ていた。

 

「さすがね、列。あなた、時守へ戻る気はない?」

 

声まで甘くなった。

 

「組織には……いいえ、私にはあなたが必要なのよ。分かるでしょう?」

 

「職務上の責任は果たす。だが、戻るつもりはないよ、芹」

 

「冷たい男。せめて、麗には顔を見せてあげなさい」

 

「ああ。そのつもりだ」

 

麗というのは、たしか芹さんの娘だったわね。戻ってこいと誘う女がいて、娘には会えと念を押し、その男は芹さんを役職ではなく名で呼ぶ。

これで何もないと言われたら、私でも人の機微を疑うわ。

 

「芹さん、娘さんがいるとおっしゃっていましたよね。もしかして、列さんが……」

 

燕ちゃんも同じところへ辿り着いた。銃弾だけでなく、こういう話にも目ざといのね。

 

「ふふ、秘密よ。暗殺者が自分のことを明かしすぎるのは御法度なの」

 

「はあ……」

 

そこで秘密にするなら、せめて本人を見つめながら言うのはやめた方がよいと思う。

ドラマなら、次に列の昔の女が障子を開けて入ってくるところでしょうね。

 

今はよその男女の過去まで気にしている場合ではない。

残念だけれど、続きは本人から聞き出すことにしましょう。

 

「ともかく、敵艦が大阪湾から外洋へ出れば、陸からは手を出せなくなる。今から押さえに行くぞ」

 

立ち上がろうとした斎藤さんを、私は止めた。

 

「無用よ。敵がこちらを上回る大艦隊でも用意していない限り、大阪に残した艦隊で封じられるわ」

 

一対三ならともかく、一対十五を覆すには、船の強さだけでは足りない。

もちろん、お義母さんが何も仕込まず送り出すはずもないから、砲台の数だけ比べて安心する気はないが。

 

「宇佐美、燕ちゃん」

 

「へい」

 

「はい」

 

「二人は今すぐ大阪湾へ向かい、海路の部隊と合流しなさい。敵艦を見つけ次第、神谷艦隊の砲撃管制に就いてもらうわ」

 

「任されたぜ」

 

宇佐美はすぐに受けたけれど、燕ちゃんは返事の代わりに私を見返した。知らない弓使いを自分が殺すと、つい先ほど決めたばかりだものね。

 

「私は、あの十本刀の弓使いを仕留める役目ではなかったのですか?」

 

「艦隊の撃ち合いでは、一発をどこへ落とすかで何十人もの生死が決まるの。離れた場所から敵艦の動きと弾道を読み切り、味方の砲手へ伝えられるのは、燕ちゃんと宇佐美しかいないわ」

 

けれど、今は名も知らない一人を追わせるより、一隻の船を東京へ近づけない方が先だ。

 

「分かりました。弥彦くんのために、船ごと撃ち抜いてきます」

 

船ごと撃ち抜くのは大砲の役目なのだけれど、燕ちゃんなら自分でやりかねないのが怖いわね。

 

「なるべくなら沈めず、浅瀬へ追い込んで座礁させる。積み荷も人員も回収する――そういうことですね、大将」

 

「ええ。分かっているならよろしい。行きなさい」

 

「「承知」」

 

こちらの戦力を二つに割るのは、気に入らない。

けれど、敵の本命が分からない以上、片方を捨てるわけにもいかないか。

さあ、どう出るのかしら、お義母さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「何だと! お前は『煉獄』へ乗らないというのか!」

 

志々雄くんの私室へ入るなり、方治が怒鳴った。

 

耳元で叫ばなくても聞こえている。志々雄くんの隣で、せっかく機嫌よくお茶を飲んでいたのに。

横顔を眺めながら飲むお茶は、同じ葉を使っても味が違う。

方治には一生分からないでしょうけれど。

 

「そうよ。何なら宗次郎くんも乗せないわ」

 

「何を考えているのだ、この馬鹿者が! 東京への砲撃に合わせ、お前の手配で関東の極道者を一斉に立たせる手筈だろう。お前がいなければ、誰があの無頼の者どもを束ねる!」

 

「方治がやればいいでしょう。そのために私と一緒に東京の組長たちへ顔をつないだんじゃない」

 

「私に、道理の一つも通じぬ獣どもを率いろというのか……!」

 

顔をつないだ時には、志々雄様のためなら誰とでも話すと胸を張っていたくせに。

酒が入るたび肩を組み、俺の若い頃はと同じ話を三度も聞かせる組長たちに、よほど懲りたらしい。

 

「おいおい、喧嘩するな。宗次郎まで京都へ残すなら、思いつきだけじゃあるまい。説明しろ、沖田」

 

「そうね。志々雄くんが聞きたいなら、教えてあげる」

 

目が合っただけで頬が熱くなるのは、私のせいではない。

あの声で名を呼ばれて、何も感じない女がいたら連れてきてほしい。

 

「私には説明することさえ惜しんだくせに、志々雄様の前でだけ女の顔をしおって……!」

 

「私を寝床で組み敷けるくらい強くなってから文句を言いなさい、この口だけ参謀」

 

「誰がお前のような色狂いを抱くものか!」

 

「方治、もういい」

 

「……はっ」

 

最初から私へ怒鳴らなければよいのに。私が言っても聞かず、志々雄くんが言えば聞く。忠義というものは便利ね。私にも少しくらい分けてほしいわ。

 

「煉獄による東京砲撃は、本来ならそのまま本命にしてよい策よ。ただ、『神』には最新鋭の軍艦からなる艦隊があることを忘れてはいけないわ」

 

「忘れてねえさ。急ごしらえの策だったが、だからこそ、あれをよういさせたんだろうが」

 

「ええ。東京を撃つ目は、まだ潰れていない。だから煉獄は出すし、関東の極道者も立たせる。でも、私や宗次郎くんのように人を斬るための者を、砲弾が飛び交う海へ乗せても仕方がないでしょう」

 

敵の船へ乗り移るところまで近づけるなら、私も宗次郎くんも役には立つ。

 

ただし、距離を保って煉獄を囲めば、私たちの刀が届く前に船の方が穴だらけになる。

泳いで追いつけと言われたら、さすがの私も考えたい。

 

「……そうかな。まあいい、続けろ」

 

志々雄くんは、何か別の使い道を考えている顔だった。

私を海へ投げ込むつもりでないことだけ、あとで確かめておきましょう。

 

「今、京都には私にとって邪魔な連中が集まっている。個々の武だけなら、おそらく日本で最も強い化け物たちよ。正面からぶつかれば、こちらの方が数で劣るわ」

 

お彦、剣心、斎藤さん、芹に列。それ以外にも、神谷側はどこから人を拾ってくるか分からない。誰が誰と当たるかも決めず、一所へ集めて斬り合えば、こちらが先に数を減らされる。

 

「でも、市中へ同時に火を放てば、あの連中は炎も人も見捨てられない。町を守り、逃げ遅れた者を助けるために散る。火と煙で道が塞がれ、夜の闇まで重なったところを、一人ずつ斬ればいい」

 

強い者ほど、自分より弱い者を守ろうとする。お彦もそうだ。家族を殺せない甘さを捨てられないから、私の剣に身体を貫かれた。

今度は家族だけではなく、京都中の命を目の前へ並べてやれば、あの女は何度でも自分から隙を作る。

 

「なるほど。陽動だった京都大火も、同時に本命へ格上げするというわけか」

 

「そうよ。京都大火で狙うのは、『神』の首領どもと『時守』の番人たちの首。火を消す者に紛れ、邪魔者を一人残らず消す。煉獄が東京を撃てば私たちの勝ち、沈められても京都で連中を殺せば、次に東京を落とす時の邪魔者はいなくなる。どちらか一方を止めただけでは終われない形にしてやるのよ」

 

東京か、京都か。艦隊か、人か。

 

お彦たちは、きっと両方を守ろうとする。ならば戦力は割れ、私が斬りたい相手は京都に残る。

 

煉獄が一隻で五隻を沈めてくれれば申し分ないけれど、そこまで働かなくてもよい。

敵の目と手を海へ奪うだけで、船を出す値打ちはある。

 

「志々雄くん。どうかしら?」

 

「悪くねえ」

 

その一言を聞けただけで、方治と口喧嘩をした甲斐があった。

さすが私の志々雄くん。話が早くて、強くて、声までいい。

 

「し、志々雄様!」

 

戸の外から兵の声が飛び込み、せっかくの気分を壊した。

 

「何よ。今、私の立てた策が認められたところなのに」

 

「十本刀の皆様が、大広間へ集まりました!」

 

「おう」

 

「ようやく揃ったわね」

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

 

 

十本刀が一所へ集まれば、殺気で息もできなくなるかと思っていたのに、聞こえてくるのは笑い声と罵り声ばかり。

志々雄くんは、よくこれだけ面倒な者ばかり集めたものね。私もその中に数えられていることは、この際忘れましょう。

 

「お母さん、早く来てください!」

 

宗次郎くんが私を見つけ、真っ先に手を上げた。

 

「お母さんって呼ぶな!」

 

「ふん。子を産んだ女は部屋の隅へ引っ込んで、私に志々雄様を譲りなさいよ」

 

由美さんが、胸を張って言った。そこを張ると目立つのは分かっているけれど、勝負はそこだけではない。

 

「あら。私のお腹は修行で引き締まっているわよ。お尻だって、由美さんより上向きで小さいんだから」

 

「くっ……!」

 

由美さんの反論が喉で止まった。勝ったわね。

 

「お二人とも、まだそんなことで争っているの?」

 

鎌を肩へ担いだ鎌足ちゃんが、私たちの間へ顔を出した。

 

「宗ちゃん、お久しぶり。由美さんも」

 

「鎌足さん!」

 

「……久しぶりね」

 

宗次郎は素直に喜び、由美さんは私へ向けていた棘をそのまま鎌足ちゃんへ回した。

志々雄くんを好いた者同士、仲よくすればよいのに。

私なら二人まとめて可愛がってあげられるわよ。

 

「沖田さん。今度こそ、誰が志々雄様の夜の心を射止めるか、女の勝負をしましょうね」

 

「ええ。男の身体をしたあなたにだけは負けないわ、このオカマの鎌使い」

 

「由美さん、そんなに怒らなくてもいいじゃない。私としては、鎌足ちゃんとも熱い一夜を過ごしてみたいのよ?」

 

あら、志々雄くんを奪い合う話はするのに、自分が誘われるとは思わなかったのかしら。

 

「志々雄くんに抱かれる時は、やっぱり下になるの? 私もそちらは経験がないから、一度試してみたいのよね」

 

「……遠慮しておくわ」

 

身体ごと引かれた。

失礼ね。私はまだ、どちらが先に脱ぐかも聞いていないのに。

 

「ぐふふふ……」

 

部屋の端では、夷腕坊がいつもの笑い声を漏らしていた。あの肉襦袢を被ったまま、暑くないのかしら。

 

「相変わらずね、夷腕坊。いつまでその芝居を続けるの、外印?」

 

「ぐっ……ふ、ふふふふ」

 

声が詰まった。大丈夫、志々雄くんへ告げ口する気はないわ。

私の身体を人形へ作り替えようとしない限りはね。

 

その時、広間の戸が開いた。

 

入ってきた女は、陽に焼けた褐色の肌へ長い黒髪が流れ、両目には赤い鉢巻を幾重にも巻いている。

何も見えていないはずなのに、迷いもせず私へ顔を向けた。

 

「あ、霙ちゃん。久しぶり」

 

「おう。琴も元気そうだな。相変わらず色に呆けてやがるが」

 

「余計なお世話よ」

 

「それにしても、変わらず上等な身体をしてやがる。志々雄様に毎晩かわいがってもらってんだろ。俺にも一晩抱かせろよ」

 

「あなたには、肝心のものが付いていないでしょう」

 

「鎌足とは寝られるんだろ。なら、俺でもいいじゃねえか」

 

「鎌足ちゃんには、立派なものが付いているからよ」

 

隣で鎌足ちゃんが何とも言えない顔をした。褒めたのに、どうして喜ばないのかしら。

 

「けちなことを言うな。俺の手と舌なら、男以上に天国を見せてやるぞ」

 

「もう少し女らしい色気を身につけてから出直しなさい」

 

人のことを言えるのかという顔を、由美さんに向けられた。

少なくとも私は、会って三言目で抱かせろとは言わない。五言くらいは待つわよ。

 

「仕方ねえな。おい、円。お前でもいい、俺に抱かれろ」

 

「私? 私は男が好きだから無理よ。女と肌を重ねるなんて、殺し合いだけで十分だわ」

 

円ちゃんは断ったはずなのに、途中で何かに気づき、赤い瞳を輝かせた。

 

「待って。もしかして今のは、殺し合いのお誘い? それなら今すぐ脱ぎましょうか。どちらが先に裂けるか、試してみたいわ」

 

「面倒な奴だな……。お、由美。相変わらず見事な胸をしてるじゃねえか」

 

霙ちゃんの手が、由美さんの胸を遠慮なく掴んだ。

 

「きゃあっ! いきなり揉むんじゃないわよ! しかも、手つきが上手いのが余計に腹立つ……!」

 

「ほう。では、下の方は濡れてるか?」

 

「やめなさい!」

 

由美さんの平手は霙ちゃんの鼻先を通り過ぎた。

霙ちゃんは指先を舐めて笑っている。

 

「うまいな」

 

「ひっ……」

 

由美さんの口から、そんな声が出るとは思わなかった。

霙ちゃん、私へ同じ手を使おうとしないでちょうだいね。

 

「ちょっと、私を無視しないでよ。殺したあとの死体なら、いくらでも愛してあげるから!」

 

「断る。俺は獲物を殺す前に味わう主義なんだよ。そこは合わねえな」

 

まとまらなくてよい。むしろ永遠に分かり合わないでちょうだい。

 

「やれやれ。ここの女どもは、まことに度し難いな」

 

壁際にいた宇水が、槍で床を一度鳴らした。

 

「それは同意するが、根からの悪人というわけではありますまい」

 

「悪人だろう。少なくとも、全員が人を平然と殺す者だ」

 

「それを、私たちが言えた義理でもありません」

 

安慈の言葉にも、宇水は鼻で笑った。

 

「私は無益な殺生を好まん。このような痴話喧嘩へ加わっていては、志々雄を殺す隙が見つからんのでな」

 

宇水の律儀さは妙なところへ向いている。

 

「宇水さんも、相変わらず励んでいますね」

 

「宗次郎君。君はもう少し、大人の男女の機微を学びたまえ」

 

それを学んだ結果がここなら、宗次郎くんは今のままでよいと思う。

 

「よし。てめえら、全員揃ったな!」

 

志々雄くんが声を張ると、それまで広間を埋めていた罵声も笑い声も消えた。

 

「予定外の事態で張を一人欠くことになったが、ここに俺の誇る最強の十本刀が集まった。俺を慕う者、俺の首を狙う者、腐りきった明治政府に絶望した者、己の力に絶対の自信を持つ者。抱えているものは違っても、国を盗る時だけは一つになれ!」

 

志々雄くんの視線が、広間を巡った。

 

閃剣の沖田総司――私と、天剣の瀬田宗次郎。盲剣の魚沼宇水に、災剣の廻円、明王の悠久山安慈。丸鬼の夷腕坊、その内に潜む外印。百識の佐渡島方治、大鎌の本条鎌足、そして神弓の青野霙。

 

それを一つの広間へ集め、誰にも頭を下げず従わせられる男は、日本中を探しても志々雄真実しかいない。

 

「いよいよ国盗りの始まりだ。明後日、子の刻――二十三時五十九分をもって、京都大火を実行に移す! この千年の古都を、紅蓮の炎で焼き尽くせ!」

 

答える声が、地下の天井を震わせた。

 

私も刀の柄へ手を置き、声を上げた。

私が欲しいのは、火に照らされた京都で、お彦たちともう一度斬り合うことだ。

 

今度こそ。ええ、今度こそ。




ここまで読んでくださりありがとうございます。

今回は京都大火と東京砲撃、それぞれの思惑、そして十本刀の集結を描きました。

新たに登場した霙や、決戦直前の十本刀について感想をいただけると嬉しいです。

実はリストラがある十本刀!!だれが落ちる?

  • 鎌足
  • 蝙也
  • 夷腕坊
  • 方治
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