転生して型月版・沖田総司になったけど、労咳を克服したら明神弥彦の母になっていた件 〜るろ剣世界で最強のママやってます〜   作:だいたい大丈夫

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子の刻。

ついに京都大火が始まった。

しかし、待ち構えていた警官隊は、十本刀を倒すのではなく、一人ずつ別々の戦場へ引き離していく。



京都大火、開戦

子の刻 京都

 

油樽を抱えた男が、軒下へ松明を差し入れる。炎が枯れ板を舐めるより早く、鳶口が男の手首を打ち据えた。

 

「今だ! 捕らえろ!」

 

閉ざされていた格子戸が開き、警官たちが路地へ殺到した。

松明を踏み消す者、油樽を奪う者、抜刀して抵抗する男を斬り伏せる者。

笛が三度鳴ると、屋根の上から同じ音が返り、さらに遠くで怒号が上がった。

 

「火付けを一人も通すな! 水組は油を流せ!」

 

桶の水を浴びた油が石畳を黒く濡らす。志々雄一派の男たちは、軒を埋める警官の列へ突っ込んだ。背後から来た者まで押し重なり、狭い道で刃が振れなくなる。

 

「絶対に火を出させるな! 押し返せ!」

 

短い笛が隣の町筋で返り、その先でも男たちの怒号が続いた。

 

「全隊へ伝えろ! 持ち場を死守せよ!」

 

鎌足は家の屋根へ飛び乗り、まだ暗い町並みを見渡した。

待ち望んだ火の色はない。代わりに、提灯を掲げた警官の列が縦横の道を塞いでいる。

 

「火の手はまだ上がらないの?」

 

血を流した伝令が、人波を縫って駆け込んできた。

 

「つけられません! どの持ち場にも警官が待ち伏せております!」

 

「あらあら……これじゃあ商売あがったりねえ」

 

鎌足の隣へ円が上がり、血のついた短剣を袖で拭った。

 

「とりあえず行きますか。数が多すぎるなら、全部叩き潰せばいいだけの話だしね!」

 

「我らの役目は撹乱だ。抗う力を失った者まで殺める必要はない」

 

安慈の声に、琴が振り向いた。

 

「嫌なら黙っていなさい」

 

人を斬る前から、琴の呼吸は荒れていた。血走った目が、警官の壁、その向こうで油樽を奪い取る水組、さらに奥の暗がりまで射抜いている。柄を握る指が、待ちきれぬように鍔を鳴らした。

 

――この人海戦術を指揮しているのは操ちゃん? 蒼紫君? それとも、お彦?

 

誰であろうと関係ない。邪魔をするなら、斬り抜けるだけだ。

宇水が口の端を上げた。

 

「ほう、筆頭自らのご出陣か。ずいぶんと気が逸っているようだな」

 

「茶化さないで。行くわよ、宗次郎くん。敵陣を一気に斬り裂くわ」

 

宗次郎は笑ったまま琴の隣へ降り立った。

 

「うわあ……お母さん、もの凄く殺気立っていますね。凄いことになりそうだなあ」

 

「お母さんって言うな! 止まれば死ぬわよ」

 

琴の姿が消えた。

 

警官の先頭に三つの穴が開いた。喉、胸、腹。遅れて血が噴き、男たちが折り重なる。

 

その隙間を琴が駆け抜けた。左右から伸びた刀を払い、返した切っ先で二人の肩を貫き、石突で背後の顎を砕く。一歩も緩めない。

 

「どけどけぇぇッ! 火をつけさせなさい! 焼け死ぬか、私に切り刻まれるか、好きな方を選びなさいッ!」

 

「な、何だ、あの二人は! 化け物か!」

 

「陣を閉じろ! 一人を囲め!」

 

十人が横から殺到した。琴の三段突きが正面の三人を倒したところへ、宗次郎がふわりと跳んだ。屋根より高く舞った羽織が、警官たちの頭上を通り過ぎる。

 

着地と同時に、十人の膝から力が抜けた。首や手首から血が溢れ、握っていた刀が石畳へ落ちる。

 

「あはは……ごめんなさい。とりあえず死んでくれると助かります」

 

「ぐふふふふふ!」

 

夷腕坊が腹を波打たせ、倒れた者たちの上へ落ちた。潰れた警官を踏み台にして跳ね上がり、道の反対側へ落ちる。次の跳躍では三人を家壁へ叩きつけ、さらに丸い背で刀の列を押し潰した。巨体が落ちるたびに瓦が鳴り、警官の悲鳴が別の路地まで飛んでいく。

 

「絶景ねえ! とても真似できないわ。皆も突撃よ!」

 

鎌足の大鎌が夷腕坊の脇を薙ぎ、逃れた男の刀ごと胴を刈った。返す刃で背後の槍を巻き込み、三本まとめて宙へ放り上げる。

 

「死神の鎌へ自分から寄ってくるなんて、物好きな殿方ね」

 

「ほい、ほい、ほほーいっ!」

 

円は崩れた列へ潜り込み、顎を肘で跳ね上げ、折れた身体へ膝を突き入れた。

右手の短剣で喉を裂き、左手の刃を男の肩へ残したまま、柄尻の輪へ指を通して身体ごと回す。刃に振り回された男が隣の警官を薙ぎ倒し、空いた腹へ円の踵がめり込んだ。

 

「まだまだ! 千人どころか百人も減ってないでしょう? ほら、次、来なよ!」

 

宇水の鉄球が地を擦った。槍を突き出すたび、宝玉が別の方角へ跳ね、避けた警官のこめかみを打ち砕く。鎖の鳴る範囲へ踏み込んだ者は、盾を構える間もなく倒れた。

 

「宝剣宝玉、百花繚乱」

 

警官隊が割れた。琴の前から退いた一隊が右の狭路へ走り、宗次郎の背後で別の一隊が屋根へ上がる。宇水を囲む隊は、届く寸前で左へ引いた。

代わって前へ出た警官たちは、安慈をめがけて斬り込んでくる。

 

「退くな! 一人ずつ受け持て!」

 

号令を発した警部が、琴の刃に胸を裂かれた。それでも笛を吹き切った。東で二度、西で四度、屋根の上で一度。警官たちは仲間の骸を踏み越え、十本刀の間へ入り続けた。

 

宇水の槍が止まった。

 

「ふむ。容易なことだと思ったが……仲間の音が減ったな」

 

「あれ? みんな、どこへ行ったの?」

 

円の声は、いつの間にか二筋向こうの路地から聞こえていた。

 

「これは……」

 

鎌足が大鎌で槍を弾きながら、その声へ怒鳴り返す。

 

「こいつら、斬っても斬っても間へ入ってくる!」

 

「ぐふ……ぐふふ?」

 

夷腕坊の笑い声も遠ざかり、屋根の上から宗次郎の声が落ちてきた。

 

「いやはや。警官たちから仲間を守りながら進んでいたつもりでしたが、逆に離されてしまいましたね」

 

「命を代金にして、私たちを一人ずつ別の道へ誘い込んだのよ。腹が立つけれど、見事だわ」

 

琴が声のした屋根を見上げた時、警官の一団が二人の間へ雪崩れ込んだ。

 

宗次郎が屋根へ逃れた射手を追う。鎌足は大鎌を受け止めた槍隊に囲まれ、南の大通りへ押し出された。

円の前では、斬られた警官が倒れ際にその足へしがみつく。

宇水を囲む足音は、他の者たちから少しずつ遠ざかっていった。

 

夷腕坊が警官の一団を追って角を曲がり、丸い背が見えなくなる。

 

「ぐふふふふふ!」

 

安慈が男を殺さぬよう峰で払い、その一歩の遅れへ次の三人が飛び込んだ。

 

「退け。死に急ぐな!」

 

「通すな! この先へ一人も通すな!」

 

油樽を担いだ兵たちが、開いた隙間から町の奥へ走った。長い笛が鳴り、警官の半数がその後を追う。残った者たちは琴と宗次郎の間へ割って入った。

琴が四人を斬って振り返った時、そこに宗次郎の顔はなかった。

 

「宗次郎くん!」

 

返事の代わりに、遠い屋根で銃声が鳴った。

 

琴は足元の警官を蹴りのけ、最も広く開いた道へ踏み込んだ。前にいた者たちは刀を構えたまま退く。追えば追うほど、左右の路地が閉ざされていく。

 

警官の一人が斬りかかった。琴は刀を振り向けず、その喉を鞘で突いた。男が倒れると、残った者たちは一斉に角の向こうへ退いた。

 

静けさが落ちた。

 

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

「さあ、ここまで連れてきた責任を取りなさい」

 

琴の問いに答える声はない。

 

血を吸った石畳を踏み、ゆっくり進む。曲がり角の先は、灯りのない袋小路だった。琴は足を止めず、そのまま壁へ向かう。

 

「見事ね。だけど、隠れるなら殺気まで消しなさい」

 

背後で鞘走りが鳴った。

 

刃が石畳すれすれを滑り、琴の脇腹へ跳ね上がる。琴は振り返りざまに受けた。刃と刃が噛み合い、火花が二人の顔を照らす。

 

低い姿勢のまま、お彦が手首を返した。

 

「返し薙ぎ」

 

二撃目が逆から襲う。琴は鍔元で弾き、後ろへ飛んだ。割れた石が裾を打ち、白い刃の切っ先が喉の前で止まる。

 

「やっぱり貴女ね、お彦」

 

「できれば、家族仲良くしていたかったんだけどね」

 

お彦の手には、逆刃刀があった。峰に刃を置き、向けられた側は人を斬れない。それでも琴の刀を受けた刃筋には、欠け一つない。

 

「新井赤空の真打。剣心の刀を、貴女が持ってくるとは思わなかったわ」

 

「剣心さんは奥義の修得が間に合わなかったの。だから今夜は私が代わり。これじゃ本当に『メイド抜刀お彦さん』ね」

 

「警官を撒き餌にした女が、いまさら可愛い題名を名乗るの?」

 

「火を消すのも、貴女たちを一人ずつ止めるのも、五千人だけじゃ無理よ」

 

路地の入口で、警官たちが傷ついた仲間を運び出していた。誰も二人の間へ入ろうとはしない。

 

「私をここへ運ぶために、何人死んだのかしら」

 

「数えている暇があったら、刀を納めてちょうだい」

 

「嫌よ。あの命令が解けるまで、私は誰も抱けないの」

 

琴の肩が落ち、切っ先が低く沈んだ。次の踏み込みに備えて、足の下で石が軋む。

 

「都を焼けば志々雄くんが勝つ。だったら、邪魔するものは全部斬るだけよ」

 

お彦は逆刃刀を正眼へ上げた。

 

「相変わらず、ひどい理屈ね。弥彦ちゃんに聞かせられないわ」

 

「嫁が姑へ刃を向ける方が、よほど親不孝じゃない?」

 

「一心一意。想いはすべてを越える」

 

琴が笑った。先ほどまでの焦りが消え、口元だけが静かに吊り上がる。

 

「そう。その目が見たかったのよ」

 

二人の姿が同時に消え、路地の中央で火花が弾けた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

 

鉄球の鎖が、薄暗い路地を横切った。

 

警官たちは壁際へ退き、その向こうから荒い息遣いが近づいてくる。宇水は槍の穂先を向け、地を蹴る音へ顔を上げた。

 

屋根瓦が砕けた。

 

頭上から落ちてきた極太の棍を、宇水は槍の柄で受けた。両足が石畳を滑り、鉄鋲の打たれた草履が二筋の溝を刻む。

 

棍を握っていたのは、宇水の胸ほどの背丈しかない少女だった。朱や翠の飾り金具を隙間なく打ち込んだ極太のデコ・トンファーが、煤けた灯りを弾いている。

 

「あんたの相手は、この私よ!」

 

宇水は鎖を引き戻しながら、少女の胸へ耳を向けた。鼓動は速く、強い。一拍ごとに血が太い管を押し広げている。

 

「薬臭い血だ。その力、自前ではあるまい」

 

「耳がいいなら、殴られる前に逃げたら?」

 

「幼い身で、ずいぶんと命を削ったものだな」

 

「余計なお世話!」

 

操は棍の両端を引いた。中から短い刃が飛び出し、二本の棍へ分かれる。地を蹴った足が石畳を割った。

 

宇水の槍と操の棍が正面から激突した。宝玉が操の後頭部を狙って弧を描く。操は身を沈め、頭上を抜けた鉄球を片方の棍で巻き取った。

 

「捕まえた!」

 

引き合った二人の間で張り詰めた。操の腕が膨れ、宇水の草履がまた半歩滑る。

 

「なるほど。見かけだけの小娘ではないらしい」

 

宇水が槍を突き出した。操は棍で穂先を逸らし、空いた額をその胸へ叩き込んだ。

 

鈍い音が路地を揺らした。

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

円は、警官の気配が途切れたところで足を止めた。

 

細い水路を挟んだ向こう岸に、四乃森蒼紫が立っていた。羽織の襟から新しい包帯が覗き、右手には小太刀が一本だけ握られている。

 

「手負いのくせに、私の前へ出るの?」

 

円は短剣を逆手に持ち替えた。

 

「神谷道場は、よほど人手が足りないらしいね」

 

「傷は塞がった」

 

「沖田さんのもとへ行く前の前菜には、ちょうどいい相手だ」

 

円の頬から笑みが消えた。

 

「誰が、誰の前菜だって?」

 

「二度言わせるな」

 

円が欄干へ飛び乗った。蹴りが蒼紫の顔を狙い、短剣が脇腹へ伸びる。

蒼紫は首を傾けて踵をかわし、小太刀で短剣を受けた。

 

傷口を覆う包帯に、赤い点が滲んだ。

 

「その傷ごと開いて、琴の前へ転がしてあげるよ!」

 

円は着地せず、欄干を蹴って身体を反転させた。蒼紫の小太刀がその足裏を掠め、削れた草履が水路へ落ちた。

 

二人は向かいの屋根へ移り、瓦を砕きながら刃を重ねた。

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

その瓦の一枚が滑り落ちるより早く、隣の屋根で銃声が鳴った。

 

宗次郎は縮地の勢いを殺さず、棟から棟へ飛んだ。羽織の肩が裂け、遅れて細い血の線が浮く。

 

向かいの屋根に、列が片膝をついていた。

愛銃『時堕』の銃口から白煙が上がる。列は引き金から指を離さず、撃鉄を起こした。

 

「相変わらず速いですね。この僕に当てるなんて」

 

「外した。次は肩では済まさん」

 

列が撃つ。

 

火薬が爆ぜた直後、もう一つ小さな衝撃が弾丸の底を叩いた。

 

宗次郎は空中で身を捻った。砕けた瓦の破片が頬を切る。着地した先へ二発目が入り、足元の棟木が折れた。

 

「ずいぶん狙いが厳しくなりましたね」

 

列は立ち上がり、銃把を両手で固めた。

 

「果たせなかった仕事だ。天剣の瀬田宗次郎、今夜こそ貴様を討つ」

 

宗次郎が笑顔のまま腰を落とす。

 

「では、次は外さないでください」

 

列の指が引き金を絞り、宗次郎の足が瓦を蹴った。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

大通りでは、二つの大鎌が夜気を裂いた。

 

柄と柄が噛み合い、湾曲した刃が互いの首筋を狙う。鎌足は腰を落として押し込み、水野は石突を地へ突き立てて受け止めた。

 

「私と同じ獲物を選ぶなんて、真似事は身を滅ぼすわよ!」

 

「その台詞は、熨斗をつけて返してやるぜ!」

 

水野が大鎌の柄をひねった。

 

最初の衝撃を受け止めた鎌足の手へ、遅れて二つ目の震動が食い込む。指が浮き、大鎌の刃が半尺押し戻された。

 

「二重の極みを鎌へ通したの?」

 

「よく分かったな、お嬢ちゃん!」

 

鎌足の眉が上がった。押されていた刃を滑らせ、水野の大鎌へ絡める。

 

「嬉しいことを言ってくれるじゃないの」

 

「何がだ?」

 

「知らなくていいわ!」

 

鎌足は柄を軸に身体を舞わせ、遠心力を乗せた刃を水野の胴へ回した。

水野も大鎌を振り抜く。刃と刃が正面からぶつかり、通りの両側へ火花を撒いた。

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

安慈が辿り着いた先には、半ば焼け落ちた寺があった。

 

警官たちは山門の外で足を止めた。中へ入ろうとする者はいない。境内には火も人声もなく、崩れた本堂の前に一人の男が立っている。

 

相楽左之助は、背丈を越す斬馬刀を肩へ担いでいた。

 

「久しぶりだな、和尚」

 

「相楽……左之助」

 

安慈は数珠を左手へ巻き、右の拳を前へ出した。

 

「お前が、警官たちの企てに加わっていたとはな」

 

「警察の犬になった覚えはねえよ」

 

左之助は斬馬刀を肩から下ろした。石畳に触れた切っ先が、重みだけで地へ沈む。

 

「あんたには恩がある。二重の極みも、生き方も教わった。だから、できりゃあ別の場所で会いたかったぜ」

 

「ならば退け。今宵、我らが焼くのは腐敗した世そのものだ」

 

「その火が、俺の仲間まで焼くってんなら話は別だ」

 

左之助は柄を両手で握った。斬馬刀が地を離れ、風圧で砂と小石が本堂へ吹きつけられる。

 

「『神』の前へは、一歩も行かせねえ!」

 

「明治政府の走狗ではなく、己の信ずる者の壁となるか」

 

安慈の足が、石畳へ深く沈んだ。

 

「良かろう。ならば我が救世の拳で、その信念ごと打ち砕く!」

 

安慈が踏み込み、左之助の斬馬刀が横薙ぎに走った。

 

拳と鉄塊がぶつかった音は、崩れた本堂の柱を震わせ、屋根に残っていた瓦をまとめて落とした。

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

落ちた瓦の音に重なるように、琴とお彦の刀が鳴った。

 

琴の突きが、お彦の胸元を続けざまに襲う。

一撃目を逆刃刀の峰が払い、二撃目を白い刃が滑らせる。三撃目は受け切れず、お彦の肩から布が裂けた。

 

「殺さない刀で、いつまで私を止められるかしら!」

 

「やる価値があるんでしょ!」

 

お彦の足が石畳を擦った。琴の懐へ沈み込み、逆刃刀の柄頭を鳩尾へ突き上げる。

琴は肘で受け、間近から切っ先を落とした。

 

逆刃刀が斜めに割って入る。

 

刃と刃が噛み合った。二人は鍔元まで押し込み、互いの息が触れる距離で睨み合う。

 

「その顔よ、お彦。京で、私を殺しかけた時と同じ顔」

 

「昔話をしに来たんじゃないわ」

 

「私は、続きをしに来たの」

 

琴がさらに刃を押した。お彦の草履が石畳を滑る。

 

その背後で、火付け役の松明が民家の屋根へ投げ込まれた。炎が乾いた板へ移り、夜気の中で赤く膨らむ。

 

お彦は琴から目を逸らさない。

路地の入口から警官が駆け込み、燃え始めた屋根へ水を浴びせた。火が白煙に潰される。

 

琴の切っ先が震え、押し合う二人の足元で石畳に亀裂が走った。

 

「町を焼く前に、貴女が折れるわ」

 

「やってみなさい、お義母さん」

 

白煙の向こうで、二人の刃が再び離れた。




ここまで読んでくださりありがとうございます。

いよいよ京都大火が始まり、それぞれの対戦カードも動き出しました。

警官隊による十本刀の分断や、今回始まった各戦闘について感想をいただけると嬉しいです。

実はリストラがある十本刀!!だれが落ちる?

  • 鎌足
  • 蝙也
  • 夷腕坊
  • 方治
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